▼【参考】旧イラク軍のBMP-1
■性能緒元
重量 |
13.3トン |
全長 |
6.74m |
全幅 |
2.97m |
全高 |
1.92m |
エンジン |
UTD-20 水冷ディーゼル 300hp |
最高速度 |
65km/h |
浮航速度 |
8km/h |
航続距離 |
510km |
武装 |
2A28「グロム」73mm低圧砲×1(40発) |
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9M14「マリュートカ」対戦車ミサイル(AT-3 Sagger)発射機×1(5発) |
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7.62mm機関銃×1(2000発) |
装甲 |
26mm(砲塔前面) |
乗員 |
3名(車長、操縦手、砲手)+8名 |
世界で初めて実用化された歩兵戦闘車であるBMP-1の開発は、1964年から旧ソ連のチェリャビンスク・トラクター工場でイサコフ主任設計技師らの手によって行われた。1966年に制式採用され、その後幾つかのマイナーチェンジを受けつつ1983年まで生産が行われた。
BMP-1は比較的大型の船型車体を持っている。前部右側に本車のために新たに開発されたUTD-20水冷式6気筒ディーゼル・エンジン(300hp)が搭載されている。その左側に操縦手席があり、操縦装置が配置されている。この操縦装置はバイク型のハンドルになっており、油圧でバックアップされて操作が極めて容易だ。履帯はゴムブッシュ付のダブルピン結合式で、履帯寿命を延ばすと共に効率的な動力伝達を実現している。操縦席の後方には旋回式キューポラを持つ車長席が設けられている。この車長席はペリスコープ3個と固有の赤外線サーチライトを持っているが、砲塔が右後方にあるため視界は360゜確保されていない。
車長席後方には1人用の砲塔がある。砲塔の旋回と2A28「グロム」73mm低圧砲、同軸の7.62mm機関銃の俯仰は電動・手動併用だ。73mm低圧砲の装填は自動式で、砲塔バスケットには砲弾40発入り(HEAT弾20発、HE弾20発)のマガジンが配置されている。また7.62mm機関銃の弾薬もひとつの給弾ベルトにリンクされて弾薬ボックスに収められている。73mm低圧砲は対戦車擲弾発射機のようなもので、その発射原理はRPG-7ロケット砲とほぼ同じである。PG-9対戦車擲弾の後部に付いている発射薬で撃ち出し、直後に4枚の安定翼が展開、擲弾底部のロケットモーターが点火され700m/sまで加速し目標に向かう。この擲弾は飛翔速度が遅く横風の影響を受けやすいため、遠距離での命中精度はかなり低い。最大有効射程は約1,300m。この73mm砲は俯角がほとんど取れないので、自車より低い位置にいる目標には砲を照準する事が出来ない。また砲塔がスタビライザーで安定化されていないため、走行中に発射する事もほぼ不可能だ。砲塔左上にはスタジアメトリック式の砲手用照準サイト1PN22M1を装備しており、砲の照準やミサイルの誘導に使用される。このサイトは光増幅式の暗視装置も組み込まれていて、夜間でも使用できる。
主砲上には9M14「マリュートカ」対戦車ミサイル(NATOコード:AT-3 Sagger/サガー)の発射レールが装備されている。「マリュートカ」の最大射程は約3,000mで、貫徹力はRHA換算で約400mmといわれている。誘導は照準サイト1PN22M1を使用した目視誘導方式で、砲手が目標とミサイルを見ながらジョイスティックを操作し有線誘導を行なう。基本的にこの対戦車ミサイルは停止中でないと発射する事ができない。「マリュートカ」は砲塔内と車内にそれぞれ2発ずつ予備弾が収納されている。再装填は防盾後方に設けられている再装填用ハッチから行うことができ、車外に出ることなく約1分でミサイルの再装填を行うことが可能。これ等の車体固有の装備のほかに、通常は搭乗歩兵が携帯型対戦車ミサイルや携帯型SAMを車内に持ち込む。
砲塔より後の兵員室は中央を燃料タンクとバッテリーボックスで仕切られ、その左右両側に各4名分ずつの歩兵席が設けられている。各席には固有のペリスコープと射撃ポートが装備されている。左右の一番前の席の射撃ポートは7.62mm機関銃用になっており、分隊支援機関銃を使用して弾幕を張ることができる。車体は水密構造だがウォータージェットは装備されておらず(試作型は装備していた)、履帯を回転させる事で浮航する。NBC防護装置も搭載しており、自動消化装置、煙幕展開装置も装備されている。車体の装甲板は極めて薄い(中距離からの12.7mm機関銃弾が貫徹する)。そのため車体右側のエンジンルームや後部ハッチ兼用の燃料タンクは簡単に発火する。また車高が2mと低いので兵員室が異常に狭く、乗車している歩兵は這うようにして後部ハッチまで進まないと下車できない。これらの弱点は使い辛い73mm低圧砲とともにアフガニスタン侵攻の際に大きな問題となり、BMP-2でいくつか改善が行なわれた。
北朝鮮は1990年代にBMP-1をロシアから約200輌導入したと言われている。BMP-1は既に旧式化した車輌だが、北朝鮮軍にとっては有力な歩兵戦闘車であり、機甲旅団内の機械化歩兵大隊に集中配備されているものと思われる。
【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
Jグランド(イカロス出版)
戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
北朝鮮軍の全貌(清水惇/光人社)
Grobal Security
2007-12-16 22:05:36 (Sun)
最終更新:2007年12月16日 22:05