M1991 122mm自走加農砲



旧ソ連製のD-74(若しくは中国製の60式)122mm加農砲を北朝鮮が独自に自走砲化した車輌[1]。北朝鮮軍の制式名称は不明。1991年に存在が確認されたため、米軍が「M1991」というコード名を付与している。

D-74を車載化した自走砲としては既にM1981 122mm自走加農砲が存在するが、M1991は北朝鮮が開発した自走砲としては例外的に完全密閉砲塔を有する車輌として開発された。

M1991の車体は北朝鮮が開発した共通装甲シャーシ「トクチョン(Tok-Ch'on)」を利用している。トクチョンは、ソ連が1950年代に開発したATS-59砲兵トラクターを元にして北朝鮮が開発した車両であり、同国で実用化された各種自走砲のシャーシとして使用されている[2]。1つのシャーシから各種派生型を開発することは、開発期間の短縮、共通シャーシの量産で生産単価を下げる、乗員や整備員にとって共通のシャーシを使用することで訓練や整備面で有利になるなど各種のメリットがある。M1991は大型砲塔を搭載するため、オープントップ式の他の自走砲よりシャーシが大型化し、重量も22tと他の派生型よりも重くなっている[1]。大型化に伴って車体が延長され、転輪数が通常型の5つから6つに増加している。

122mm加農砲の榴弾による最大射程距離は24kmで、緊急時には離脱装弾筒付徹甲弾による対戦車戦闘も可能。完全密閉砲塔の採用により、オープントップ式の自走砲に比べて対砲兵射撃を受けた際の生存性が大きく向上している。

北朝鮮の兵器の常でM1991についても公開情報が極めて乏しく、射撃統制システムの内容、使用可能な砲弾の情報、支援システムの存在など、自走砲の能力を判断するための材料は得られていないため、M1991がどの程度の性能を有しているのは不明。

【参考資料】
[1]Christopher F. Foss『Jane's Armour and Artillery 2006-2007』(Jane's Information Group/2006年)719~720ページ
[2]JED「TOK-CH'ON SERIES OF TRACKED SP ARTILLERY SYSTEMS」


2013-05-01 21:40:58 (Wed)

最終更新:2013年05月01日 21:40