BMP-3歩兵戦闘車(韓国)



性能緒元
重量 18.7t
全長 7.14m
全幅 3.23m
全高 2.30m
エンジン UTD-29M 液冷ディーゼル 500hp
最高速度 70km/h
浮航速度 10km/h
航続距離 600km
武装 2A70 100mm低圧砲×1(40発)
  9M117対戦車ミサイル「バスチオン」(8発)
  2A42 30mm機関砲×1(500発)
  7.62mm機関銃×3
装甲 10~40mm
乗員 3+7名

韓国軍は経済協力借款の償還として、ロシアからT-80U戦車等と共にBMP-3を33輌導入した。アグレッサー(Aggressor:対抗部隊)として第90機械化歩兵大隊に配備され各種研究・訓練が行われた後、2005年末までに江原道中東部の第3機甲旅団へT-80と共に配置転換された。韓国軍はBMP-3やT-80などのロシア製車輌を配備するにあたって、基幹乗員と整備員(職業軍人)をロシアに派遣し専門教育を行っているため、運用自体にはさほど問題は起きていないという。

BMP-3(オブイェークト688)は旧ソ連のクルガンスキー自動車工場が、アフガニスタン紛争で問題になったBMP-1、BMP-2の居住性の悪さや発展性の無さを解決するために、オブイェークト685水陸両用軽戦車をベースに開発した新型歩兵戦闘車である。1990年に初めて公開された。

砲塔はBMP-2以来の30mm機関砲2A42に加え、同軸にロケット砲弾と9M117対戦車ミサイル「バスチオン」(NATOコード:AT-10 Stabber/スタッバー)の両方が発射可能な100mm低圧砲2A70を装備している。これらをバックアップするFCS(Fire Control System:火器管制装置)はサーマル式暗視装置やレーザー測距照準・誘導装置、それに弾道計算機や風向センサーなど、主力戦車であるT-80並に充実したものとなった。100mm低圧砲用のロケット砲弾は通常の砲弾の形をしており、弾底部にロケット噴射口がある。弾種はHE弾(30F32)、軽装甲目標用のAPFSDS弾(3BM25)の2種が用意されている。命中精度はBMP-1搭載の73mm低圧砲よりもかなり向上している。自動装填装置には22発が装填されており、他に手動装填用に18発が用意されている。9M117対戦車ミサイルは測距照準器を兼ねるレーザー誘導装置1K13-2によって全自動で目標まで飛翔する。最大有効射程は5,000m、装甲貫徹力はRHA(Rolled Homogeneous Armor:均質圧延装甲)換算で600mmに達する。この9M117ミサイルは対ヘリコプター用としても有効である。

こうした強力な武装のほかにも、BMP-3は搭乗歩兵の乗車戦闘能力向上にも意欲的に取り組んだ。車体前部には中央の操縦手席を挟んで搭乗歩兵用の席が左右に1ずつあるが、ここに可動式の7.62mm車載機関銃をそれぞれに配置してある。その他、車体両側面には搭乗歩兵用のAKアサルト・ライフル用の射撃ポートが各2箇所ずつ設けられている。本車の全高は2.45mとかなり高くなっており車内容積も大きい事から、搭乗歩兵は移動時に車内でゆったりと座る事ができる。この兵員搭乗スペースは、操縦席左右以外に5名分が砲塔戦闘室と車体後部機関室の間にあり、椅子は従来の横向きから前向きに変わっている。歩兵の乗降は車体後上部の大きな2つのハッチと後面の2つのドアを開けて行う。ここはいわば二重底のようになっており、上面ハッチを開くとUTD-29ディーゼル・エンジン(450馬力)を収めた機関室の天板が現れ、搭乗歩兵はこの上を歩いて後部から乗り込むことになる。また上面の大ハッチには兵員室寄りのところにそれぞれ1つずつ小型ハッチがあり、対空戦闘時にはこの小型ハッチを開けて、車内に2基搭載されている9K32携帯対空ミサイル「ストレラ2」(NATOコード:SA-7 Grail/グレイル)を発射できる。

装甲はアルミ合金製で要所に二重装甲を採用し、12.7~14.5mmクラスの重機関銃徹甲弾に耐えられるとされている。しかし、現在普及しているHEAT(High Explosive Anti-Tank:対戦車榴弾/成形炸薬弾)弾頭を備えた対戦車ミサイルに対しては充分なものとは言えない為、浮力を損なわないよう大型ボックス化された爆発反応装甲ユニットが最近開発され、ユーザーの注文に応じて取り付けができるようになった。機動性能は軽戦車をベースにしている事に加え、大馬力エンジンによりウェイトパワーレシオは良好で、従来のBMPシリーズよりも荒地踏破能力が向上している。またウォータージェット推進装置による浮航も可能である。最近開発された強化型エンジンを搭載したBMP-3Mは路上最高速度が80km/hとなり、実用装軌歩兵戦闘車としては世界最速クラスの能力を誇っている。

ロシアはBMP-3の海外輸出に積極的で、韓国のほかUAE(アラブ首長国連邦)、クウェートなどでも採用されている。

▼演習場に向かう第3機甲旅団機械化歩兵大隊第3中隊のBMP-3
▼2009年のFTX演習で渡河訓練を行う第3機甲旅団のBMP-3(右端は同旅団のT-80U)

【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
戦車研究室
PowerCorea


2009-03-07 23:22:31 (Sat)

最終更新:2009年03月07日 23:22