韓国陸軍について


韓国陸軍(Republic of Korea Army)


【総論】
韓国陸軍は徴兵制を中心とした組織作りが行なわれているが、それによる様々な問題も指摘されている。ひとつは徴兵された程度の低い兵(軍隊生活不適合者)の暴走で、2005年5月に起きた前線哨戒所での銃乱射事件では10名が死傷する惨事となった。2006年8月には新兵が同僚2人に実弾を発砲し死亡させる事件、2007年4月にも兵士2人が実弾で死亡する事件が起きており、陸軍が軍隊生活不適合者を矯正させるために設置した「ビジョンキャンプ」は年々入所者が増え続けている(2006年は約8,600人)など問題は深刻化している。陸軍は兵が民間人から暴行を受け銃を奪われる事件が起きて以来、凶暴化した民間人に対処するため前線で警戒にあたる兵への実弾携帯を2006年春から強化したが、この措置が逆に実弾による兵士間のトラブルを増大させる原因にもなっている。徴兵期間中の性的暴力の多さも問題になっている。韓国軍疑問死真相究明委員会の2007年4月会誌によれば、徴兵経験のある20歳代の性的暴力経験率は14%、30歳代では17.5%にものぼるという。上官からの暴言に至っては全体の82%が経験しており、これら性的暴力と暴言は兵役期間中の自殺動機の大きな原因となっていると同会は分析している。政治家や政府高官、企業重役の子息や芸能人の兵役逃れがマスコミを賑わす事は、韓国では日常茶飯事だ。特に産業技能要員制度を悪用した兵役逃れは、最も一般的といわれている。韓国は中小企業の人材確保を支援する目的で、1973年から特殊な技能を持つ技術者の兵役を免除し、かわりに兵務庁の指定する勤務先に自宅から通勤するという制度を行なっている。しかしこの制度を悪用する富裕層の子息が後を断たず、当局は最近になって一斉摘発を試みたものの大きな成果は上がっていない。一般市民の間でも徴兵を忌避する人は多い。兵務庁はあまりに多い兵役忌避者事に対応するため、2008年から社会服務制度を導入することを検討している。これは兵役対象者がボランティア活動(20~24ヶ月)を行なう事で兵役を免除する制度で、障害者の介護から単純な事務作業までボランティア活動の内容は幅広い。

【装備について】
近年韓国陸軍は装備の国産化、近代化に拍車をかけており、K2戦車やK9自走砲など最先端の国産兵器が多数開発されている。しかし装備開発費が増加する一方、配備された兵器の整備費用は年々減り続けている。連合ニュースが2007年10月末に報じた内容によれば、国会での国政監査の場において、少なくとも約2兆8,851億ウォン(2007年度分)もの陸軍整備費が不足している事が明らかになった。陸軍の計画では2009~2013年に8,451億ウォンの整備費を、2014年以降には1兆9,590億ウォンの整備費を充てる予定だが、財源が不足しており全く見通しは立っていない。現場での事態は深刻で、ハンナラ党のソン議員は「2007年は約1,000輌の戦車・装甲車・自走砲が整備待ちの状態になっている」と惨状を訴えた。これは国防改革2020が生んだ歪現象であり、陸軍が戦時統制権委譲までに戦力を増強させようと無理に各種開発計画を推し進めた結果といえる。

【編制について】
現在韓国軍は40個の現役及び予備役師団を編制しているが、将来これをハイテク化した20個師団まで縮小させる予定だ。また2007年春に参謀本部が国会で報告した内容によると、現在画一的に編制されている大隊をその配備地域と任務に合わせた特色のある編制にし、それらの大隊を作戦毎に組み合わせる事で効率的で効果的な部隊を作る「モジュール型編制」の導入を検討しているという。例えば江原道のように山岳の多い地域では軽装備で身軽な大隊を、ソウル近郊などの都市部では装甲車に搭乗した機動力の高い大隊を編制しておき、これに火力の大きい重装備の大隊や特殊戦に対応できる大隊などをその時々の作戦内容によって組み込むといった形だ。この計画が実行に移されれば、50年以上前の朝鮮戦争以来ほとんど変化の無かった韓国陸軍の編制の一大転換となるだろう。

韓国軍はこれまでスナイパーを重視してこなかった。各小隊に1名のスナイパーが置かれていたが、これは形式的なものでしかなく、狙撃に必要な特殊装備や狙撃訓練はほとんど行われてこなかった。しかし朝鮮日報の報道によれば韓国陸軍は最近になってスナイパーの重要性を再認識するようになっており、今後専用のスナイパー・ライフルや各種ツールの配備、専門的訓練を強化していく予定だという。

■第1軍
東部戦線担当。司令部は江原道の原州(ウォンジュ)。
第2軍団(春川) 第7歩兵師団、第15歩兵師団、第27歩兵師団、第2砲兵旅団、第2工兵旅団
第3軍団(麟蹄) 第2歩兵師団
第8軍団(襄陽)  
第6歩兵師団、第36郷土師団

■第2軍
後方地域担当。司令部は慶尚北道の大邱(テグ)。
第9軍団  
第11軍団(昌寧)  
第53郷土師団

■第3軍
西部戦線担当。首都ソウルが担当地域に入るため、3個軍の中で最も強力な戦力を持つ。司令部は京畿道の龍仁(ヨンイン)。
首都軍団  
第1軍団 第1歩兵師団、第9歩兵師団、第12歩兵師団、第21歩兵師団、第25歩兵師団、第1砲兵旅団、第1工兵旅団、第65郷土師団、第72郷土師団
第5軍団 第5歩兵師団、第26機械化歩兵師団(K1戦車)、第30機械化歩兵師団(K1戦車)、第5砲兵旅団(K9自走砲)、第5工兵旅団、UAV中隊
第6軍団 第5機甲旅団(K1戦車)、第6砲兵旅団(K9自走砲)、第6工兵旅団
第7軍団 首都師団(K1A1戦車)、第20機械化歩兵師団(K1A1戦車)、第7砲兵旅団(K9自走砲)、第7工兵旅団
※第5軍団はSPIDER通信網を使用した韓国初のデジタル化軍団

首都防衛司令部 第52郷土師団、第56郷土師団

誘導弾司令部 (ATACMS地対地ミサイル、玄武地対地ミサイル)

特殊戦司令部

師団・旅団の編制例
第3機甲旅団 戦車大隊×1(T-80)、機械化歩兵大隊×2(BMP-3、K200)、機甲捜索大隊×1(K1)


軍団長は中将

【参考資料】
世界の艦船 1994年7月号、2003年3月号、2006年9月号(海人社)
月刊航空ファン(文林堂)
韓国海軍公式HP
朝鮮日報
Grobal Security


2009-06-14 20:45:30 (Sun)

最終更新:2009年06月14日 20:45