NHK-2地対地ミサイル「玄武」

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▼地対地ミサイル「白熊」。ロケット・ブースターは4基。
▼地対地ミサイル「玄武」。ロケット・ブースターが1基にまとめられている。

NHK-1「白熊(ペッコム)」、NHK-2「玄武(ヒョンム)」は韓国がナイキ・ミサイルを基に開発した地対地ミサイルである。

1972年、アメリカは北朝鮮がソ連製の地対地ロケット「フロッグ」シリーズ(NATOコード)を配備した事に対抗し、韓国にMGR-1「オネスト・ジョン」地対地ロケットを供与した。これは韓国軍が初めて装備した大型ロケット(弾頭重量580kg)だったが、射程距離は37kmと極めて短かく誘導装置も無かった。北朝鮮のフロッグに脅威を感じた当時の朴正煕大統領は1971年12月に国防科学技術院(国防科学研究所の前身)ロケット研究室の金重宝所長を呼び、1975年までに射程距離200kmの地対地ミサイルを開発するよう指示した。実際にミサイル開発に着手されたのは1974年からで、在韓米軍から譲渡されたナイキ・ミサイル(対空ミサイルだが対地攻撃モードもある)をリバース・エンジニアリングする事でその設計技術を獲得、1978年4月に最初の試作ミサイルが完成した。誘導方式に問題があって2度続けて発射テストに失敗するなど開発は難航したが、1978年9月26日にテストに成功し朴大統領からNHK-1「白熊」(NHKはNike Hercules Koreaの略)と命名された。白熊は180kmでナイキの120kmから延長されている。弾頭重量は500kg。白熊はイギリス製の慣性航法誘導装置を搭載しているが、これはアメリカが精密誘導装置の技術移転を拒んだため、外国製のものを採用しなければならなかったからである。アメリカは白熊が韓国軍に配備される事を嫌い、政治的圧力をかけたために結局白熊が実戦配備される事はなかった。

白熊が完成した翌1979年、アメリカ政府は韓国と「ミサイル技術移転に関する対米保障書簡」(通称韓米ミサイル覚書)を交わした。これはアメリカがミサイル開発の技術援助を行う替わりに、韓国は射程距離180kmを超えるミサイル(ロケット)の開発・保有を行わないとするもので、当時の在韓米軍ウィコム司令官と盧載鉉国防長官の間で締結された。この覚書が交わされた直後に韓国では軍事クーデターが起き、アメリカのミサイル開発に対する圧力は更に強まって技術者1,000名が解雇される騒ぎにまで発展した。しかし1984年に北朝鮮がスカッド・ミサイルの試射に成功すると、それを受けて韓国も第二次国産ミサイル開発事業開始、1987年に発射テストが成功してNHK-2「玄武」と命名された。玄武は白熊の改良型でロケット・ブースターが4基だったのが1基にまとめられているが、射程距離は180kmと変わっていない。180kmという距離は休戦ラインから発射しても平壌(ピョンヤン)にかろうじて届く程度で、北朝鮮のスカッドには到底及ばなかった。

玄武の発射テストが成功に終わった直後、アメリカは再び韓国ミサイルに関する政治的圧力をかけた。これは「戦略物資及び技術資料保護に関する覚書」呼ばれるもので、韓国がココム規制品目に含まれるミサイル関連部品とその技術を東側諸国に輸出しないとする内容だった。また1990年10月にアメリカは、玄武などの韓国国産ミサイルを技術支援する替わりに、韓国は軍民を問わず射程距離180km、弾頭重量500kgを超えるミサイル(ロケット)システムの開発・保有を行わないとする「対米保障書簡」を、駐韓米国大使館を通じて一方的に通告している。その後、1995年11月に行われた韓米ミサイル非拡散実務協議でアメリカは韓国が射程距離300kmまでのミサイルを開発可能とする事に合意したが、韓国はミサイルの開発、生産、配置に関する全ての資料を公式文書でアメリカ側に提出しなければならず、民間用ロケットを軍事目的に転用する事は禁止された。金大中大統領(当時)はこの制約は主権侵害だとして、1999年の米韓大統領会談でクリントン大統領(当時)に対し射程500kmのミサイル開発を許可するよう公式に要請したが、あえなく一蹴されたという。

300kmまでの射程距離が認められた事で、韓国は玄武の射程を制限ギリギリまで延長し、誘導システムとして慣性航法装置のほかに地形照合システムも搭載した玄武Ⅱが開発されたというが、どの程度配備が進められたのかは不明である。玄武Ⅱは広範囲に子弾をばら撒いて制圧するクラスター弾頭を装備しているともいわれる。

韓国軍は玄武を約100基保有しているが老朽化が激しく、ATACMS(Army Tactical Missile System:陸軍戦術ミサイルシステム)が代替として配備されつつある。ATACMSを含む長距離ミサイルは陸軍各軍団直轄砲兵の管理下にあったが、2006年9月28日に新設されたミサイル司令部へと指揮権が移動した。

なお韓国紙の記事によれば、韓国陸軍は射程距離500kmの地対地巡航ミサイル「玄武ⅢA」、射程距離1,000kmの「玄武ⅢB」を既に1~2年前から実戦配備しており、射程距離が1,500kmにも及ぶ「玄武ⅢC」の開発も最終段階にあるという。玄武Ⅲは巡航ミサイルであり弾頭重量も500kgを超えないため、アメリカとの間で結ばれた覚書の制限を受けないと韓国政府は主張している。また韓国は2007年度の国防予算に玄武の性能改良事業として1,627億ウォンを計上しているが、これが玄武ⅢAの開発を指しているのかどうかは不明。

【2007.10.28追記】
韓国軍消息筋が2007年10月23日に連合ニュースに語ったとされる内容によると、陸軍ミサイル司令部は既に射程距離1,000km以上の巡航ミサイルを保有しているという。但し実戦配備されているかどうかについては不明。このミサイルは以前から配備されている「玄武」の改良型で、慣性航法装置の他にミサイルの赤外線カメラで捉えた映像と事前に入力した地形データを照合して現在位置を確認する地形照合航法装置を備えているという。またミサイル司令部の司令官は10月22日の国会国防委員会の国政監査の場で、「我が国が保有する巡航ミサイルの燃料は液体か固体か」という質問に対し、「液体燃料である」と答えた。しかしこの後ミサイル司令部側は「司令官の答弁は海外の事例を挙げただけであり、現在ミサイル司令部は巡航ミサイルを保有していない」と上記について否定するコメントを出した。以前から韓国では玄武IIIと呼ばれる巡航ミサイルの存在が噂されている。

【参考資料】
朝鮮日報
連合ニュース
PowerCorea
North Korea Today

【関連項目】
MIM-14長距離地対空ミサイル・システム「ナイキハーキュリーズ」


2007-10-28 23:27:48 (Sun)

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