K10装甲弾薬補給車



韓国陸軍は2005年10月4日、K10装甲弾薬運搬車の開発を完了したと発表した。K10装甲弾薬運搬車(ARV:Ammunition Resupply Vehicle)は、車内に搭載された155mm砲弾をK9自走榴弾砲「雷鳴」の弾薬庫に自動補給する支援車輌である。K10は1998年11月から三星テックウィン社と釜山大学及びADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)の共同で基礎研究が始まり、2000年6月に砲弾移送装置と自動搬出器の試作が完成、2002年11月に正式にK10ARVの開発契約が結ばれた。2004年3月に最初の試作車輌が完成して2005年5月まで各種運用試験が行われた後、2005年8月に全ての開発作業が終了した。開発費は127億ウォンにのぼり、1台当たりの量産価格は26億8,000万ウォンになるといわれる。

K10は合計104発の各種155mm砲弾と装薬を車体後部の大型弾薬庫に搭載している。下部の弾庫から自動搬出機で取り出された砲弾は一度垂直に立てられた後、吊上機で水平され伸縮式の砲弾移送装置(前方に突き出している砲身状のもの)に送られる。砲弾移送装置は内部がベルトコンベア・システムになっており、K9自走砲の後部弾薬補給用ハッチと連結して、1分当たり12発の弾薬を自動補給する事が出来る。装薬は弾庫の上部にある装薬庫に水平に収納されていて、装薬専用の吊上機によって砲弾移送装置に送られる。K9の弾薬庫を完全に補充し、補給作業を完了させるには約28分掛かるという。K10が弾薬及び装薬を搭載する場合は、移送装置のベルトコンベアが逆向きに動き、K10内部の弾庫と装薬庫に自動的に収納される。K10の弾薬積み込み作業に掛かる時間は約37分。K10の乗員は3名(車長、操縦手、操作員)で、全員が装甲化された安全な車内でコンピューター操作によって作業を行う事が可能。車体がK9自走砲と同じなため、K9自走砲と同様の機動性を持っており、時速70km/hで走行する。搭載した弾薬の在庫管理は自動で行われる。

韓国はK9自走砲と同様にK10の輸出にも力を入れており、輸入代替効果は1兆2530億ウォンと推算されている。K9自走砲を導入したトルコなど5ヶ国への輸出が期待されている。

韓国防衛事業庁は2006年12月27日、3次元デジタル技術を駆使して開発されたK10用整備教材を関係部隊と教育機関に配布したと発表した。この教材は複雑な車輌整備を兵士達に効率的に教育させる為の機材で、3次元デジタル技術を駆使して開発された。開発費用は約10億ウォン。この機材により兵士達は高価な実物教材を使わず、コンピュータのモニター上で運用手順や整備要領を覚える事ができる。韓国軍は徴兵制であるため時間をかけて熟練した整備兵を育てる事が難しく、短い徴兵期間でいかに効率的に教育するかが問題とされていた。このデジタル教育機材が広まればこの問題について一定程度解決する事になるだろう。

▼弾薬移送システムを使い、K9自走砲に連結して直接補給するK10
▼補給態勢のK10
▼K10の後部。開いたハッチから弾薬庫内部の様子が分かる。
▼弾薬庫内部
▼移送システム先端部
▼K9自走砲後部の連結部分
▼上はK9に弾薬と装薬を補給する図、下は移送システムのベルトコンベアで弾薬を内部に搭載する図

【参考資料】
PowerCorea
連合ニュース
中央日報

【関連項目】
K9 155mm自走榴弾砲「雷鳴」


2009-05-09 18:03:34 (Sat)

最終更新:2009年05月09日 18:03