749 :無名草子さん :sage :2009/03/12(木) 02:08:38
(推薦リストにある)安達正勝『物語・フランス革命』読了。読みやすい文章で、内容の特徴と言えば、ルイ16世にやや同情的で擁護している点と、
革命において女性の果たした役割を重視している点ぐらい。一見何の変哲もないフランス革命史だが、個人的には妙な違和感が残った。
まず一応念を押しておくと、自分は歴史については(も)無知で、フランス革命に関しても新書リストに入っている『フランス革命・歴史における劇薬』『死刑執行人サンソン』、
あとはせいぜい『フランス史10講』(岩波新書)と「ベルサイユの薔薇」を少々読んだくらいの知識しかない。つまりベルばらレベル(笑)ということ。
その上であえて言うと、この著者の歴史に対するスタンスには疑問を感じた。それは端的に言って、
遅塚先生の「歴史における劇薬」という観点を無視しているのではないかということ(巻末の参考文献でも遅塚は無視されているがこれは意図的ではないか?)
序章から「自由・平等・友愛」の革命の理念について全面肯定のスタンスであり、さらに革命当初の理念である「世界主義」について、
「アジアとヨーロッパの本格的交流が革命家諸君が思い描いていたような形で始まっていたら、どんなによかったことだろう」と書いている。
これは保守主義者でなくても能天気すぎると感じるのではないか?
「封建的で遅れた国に先進的な民主主義を移植する」みたいな理念ってアメリカのネオコン(元トロツキスト)と同じじゃないかと思う。


750 :無名草子さん :sage :2009/03/12(木) 02:09:16
もちろん著者も革命の暗黒面、恐怖政治について批判しているし、当時の人々は「大いなる幻想」に憑かれていたとも書いている。
また死刑制度について、従来の残虐刑を廃止してギロチンという、より「人道的」・合理的・効率的な方式を採用したことが
却って死刑乱発に歯止めがかからなくなった原因ではないか、とも言っている。これはなかなか面白い観点であるし的を射ていると思う。
しかし著者はそこからさらに近代批判には踏み込まない。何が恐怖政治をもたらしたかについてあまり厳しく追及しておらず、
「明治維新のようなもの」とか「そういう時代だった」と曖昧にお茶を濁している。イギリスでは無血革命が成功しているんだし、それはないだろうと思う。
ロベス・ピエールの禁欲的な性格についても著者は好意的で、「堅物だからこそ怖い」という感覚はあまり持っていないようだ。
あと、革命が起きた条件として、民衆の貧困や食糧不足が如何にして起こったのかとか、国家財政の悪化の主因は何かとかについて書かれていないのも不満。
(財政悪化については、ルイ14世治下における数々の戦争が主因でしょうか?)
もちろん「保守主義とかアドルノやフーコーの“近代批判”などどうでもいい、もっと素朴に革命の理念や民主主義の素晴らしさをたたえよう」
という立場はあっていいわけだが、正面から説得的な論を展開するのではなく「漫然と無視」しているのは好きになれない。
「革命=劇薬」という保守主義とも共有する観点の本が岩波から出ていて、
「革命=必然」という素朴進歩主義的な本が中公から出たというのは何か不思議な感じがするのは俺だけ?


21 :無名草子さん :sage :2009/09/16(水) 23:24:47
……
あと

安達正勝『物語フランス革命』(中公新書)

は理解しやすさ・質共に高水準なのでベストに入れても良いと思うが、
既にベストに岩波ジュニアの同テーマのものが入ってるので、もし、同じテーマのものでも入ってて良いなら入れて欲しい。

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