本スレ 新書17 http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1186186095/ より

324 :無名草子さん :2007/08/12(日) 13:30:20
……
■佐々木毅『民主主義という不思議な仕組み』ちくまプリマー新書64
これはちゃんと子供向け。政治学の大御所が民主主義を分かりやすく書いた良書。
ただ瑣末な間違いがいくつかあるのだが・・・、佐々木先生、大丈夫?


342 :無名草子さん :2007/08/12(日) 23:32:42

●事実誤認
p123「五箇条の御誓文に根拠を求めた民撰議院設立建白書から、国会開設に至る自由民権運動の激しいうねり」

ここにいう民撰議院設立建白書は、文脈上あきらかに明治7年1月に板垣退助らの提出した建白書を指すが、この建白書は五箇条の御誓文に言及していない。

●ミスリード
p52「『フェデラリスト』は…この課題に次のように取り組みました。…司法権は違憲立法審査権を持つように、…対決する仕組みが提案されました。…こうして出来上がった現存する世界最古のアメリカ合衆国憲法は、…」

書いてあることには間違いはない。
が、アメリカ合衆国憲法に違憲立法審査権の規定があるかのように誤解されそう。
実際には明文の規定はない。

●根拠なき断定
p125「明治憲法おける…、内閣という議会制の指導部が、憲法上で全く言及されていないことも、こうした状況〔議会制が実現しないこと〕を助長しました。」

憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかったことが、議会制(議院内閣制)の実現を妨げたとする史料上の裏付けはない。


354 :無名草子さん :2007/08/13(月) 07:53:11
>>342
丁寧なレスどうも。
恥ずかしながら「民撰議院設立建白書」の中身はよく知らないんだけど、
それの件と違憲審査については、なるほど表現を直したほうがよさそうだ、と納得できた。
ただ、3つ目の、

>●根拠なき断定
>p125「明治憲法おける…、内閣という議会制の指導部が、憲法上で全く言及されていないことも、こうした状況
>〔議会制が実現しないこと〕を助長しました。」

>憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかったことが、議会制(議院内閣制)の実現を妨げたとする史料上の裏付けはない。

これについては、少なくとも、佐々木毅のミスとは言えないと思う。
というのは、芦部憲法など、一般的な憲法学の教科書にも似たような記述があるからで、
とりあえず憲法学の「通説」を教科書どおり紹介しました、という限りでは間違ってない。

そのうえで、政治史・憲法史の理解としてこれは旧弊だ、という批判はありうるかもしれないが、
当方は素人だから、より新しい学説にはそういうものが存在するのかなど、その先までは分からない。

 

357 :無名草子さん :2007/08/14(火) 00:04:59
>>354
>>p125「明治憲法おける…、内閣という議会制の指導部が、憲法上で全く言及されていないことも、こうした状況
>>〔議会制が実現しないこと〕を助長しました。」
の件。

>>342を書く時、これを指摘するのは少し躊躇したんだけどね、やっぱり書いたのよ。
佐々木先生は芦部の誤導に引っかかってるのだと思う。
芦部はウソを書いてないが本当のことも書いてなかったりする。

すなわち、芦部「憲法」岩波では、
「統治機構の分野でも次のように民主性に欠ける点が少なかった。…内閣制度は憲法上の制度ではなかった。…」
とある。ここでいう「民主性」は定義されていない曖昧な抽象概念。議会制(議院内閣制)という具体的制度ではないところがミソ。
「内閣が憲法上の制度でなかったことが議院内閣制を阻害した要因である」とは芦部は書いていない。
芦部は憲法史・比較憲法の知識があるので、憲法典上内閣規定の有無が議院内閣制と無関係であることは十分承知しているはずであり、そのような迂闊な主張は書かない。
ただ、読者が素直に行間を読めば、そのように誤解してしまうのも確か。
ウソを書かずに読者を誤導する。芦部のズルイところ。芦部に限らないけど。野中ら「憲法Ⅰ」なんかも同じ。
政治学者も誤導に引っかかる。学術書を書くときは自分で確認するから引っかからないだろうが、一般書を書くときは油断するので引っかかる。
佐々木先生の記述は、この誤導に引っかかったのか、憲法典上内閣規定の有無の具体的効果に言及しているので、明らかにアウトでしょう。


369 :無名草子さん :2007/08/14(火) 22:41:50
>>342が的はずれ過ぎるので、ツッコミいれとく。

> ●事実誤認
> p123「五箇条の御誓文に根拠を求めた民撰議院設立建白書から、国会開設に至る自由民権運動の激しいうねり」
>
> ここにいう民撰議院設立建白書は、文脈上あきらかに明治7年1月に板垣退助らの提出した建白書を指すが、この建白書は五箇条の御誓文に言及していない。

『自由党史』を読めば、という前提を外しているのはわざと?
『自由党史』が建白書の根拠として五箇条の御誓文を挙げていない、という批判ならともかく、建白書自体が言及していないからと言って直ちに謝りになるわけではないでしょ。

> ●ミスリード
> p52「『フェデラリスト』は…この課題に次のように取り組みました。…司法権は違憲立法審査権を持つように、…対決する仕組みが提案されました。…こうして出来上がった現存する世界最古のアメリカ合衆国憲法は、…」
>
> 書いてあることには間違いはない。
> が、アメリカ合衆国憲法に違憲立法審査権の規定があるかのように誤解されそう。
> 実際には明文の規定はない。

これも現在の合衆国憲法に規定があるかないかの議論ではないよね。342は最初期の合衆国憲法を調べたのかどうか?

> ●根拠なき断定
> p125「明治憲法おける…、内閣という議会制の指導部が、憲法上で全く言及されていないことも、こうした状況〔議会制が実現しないこと〕を助長しました。」
>
> 憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかったことが、議会制(議院内閣制)の実現を妨げたとする史料上の裏付けはない。

これは完全に342の読み間違い。
佐々木がここで述べているのは「こうした状況〔議会制が実現しないこと〕」ではなく、「こうした状況〔官民調和体制〕」。議院内閣制が憲法で規定されていれば、官民調和体制はありえなかった。
直後に大正デモクラシーにふれているところを読めば、「憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかった」としても「議会制(議院内閣制)の実現」は可能だったと佐々木も考えているのがわかりそうなものだけど。


370 :無名草子さん :2007/08/14(火) 23:55:08
>>369
みんな『民主主義という不思議な仕組み』を買いに走ってるよね。
「●事実誤認」については、佐々木は『自由党史』を史実のように
記述しているので、やはり「誤解」を生みやすいのでは?
どちらと判断するか、微妙だ。
「●ミスリード」は初期のアメリカ合衆国憲法について述べた部分で、
やはり「現在」の憲法を基準とした批判は当たらないのでは?
これは369に賛成する。
「●根拠なき断定」は、もう完全に「こうした」という指示語の誤読。
これも369が正しい。ただし、佐々木は文章がヘタ。


371 :無名草子さん :2007/08/15(水) 00:13:15
>>369 >>370
●自由党史は「民撰議院設立建白書」を丸ごと引用している。もちろん引用されている建白書に五箇条の御誓文への言及はない。民権派が五箇条の御誓文を根拠にするのは建白書の翌年以降のこと。

●アメリカ合衆国憲法は、最初の憲法が今でも丸々残っていて、後から修正条項が追加されているの。これ常識。「最初期の憲法を調べたのかどうか?」という疑問は発生しようがない。
違憲立法審査権の明文規定は「最初から」ないの。合衆国憲法制定後、判例として成立したもの。

●佐々木氏は「議会制」の裏返しの意味で「官民協調体制」を用いている。
したがって「官民協調体制」でも「議会制が実現しない」でも同じこと。
『憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかったことが、官民協調体制の実現を妨げたとする史料上の裏付けはない。 』ということには変わりがない。

373 :371 :2007/08/15(水) 00:20:23
それと、>>371で間違えてた。
×『憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかったことが、官民協調体制の実現を妨げたとする史料上の裏付けはない。 』ということには変わりがない。
○『憲法典(形式的意味の憲法)に内閣の規定がなかったことが、官民協調体制を助長したとする史料上の裏付けはない。 』ということには変わりがない。
謹んで訂正しまする。


376 :無名草子さん :2007/08/15(水) 00:49:19
『自由党史』の民撰議院設立建白書の項
http://ime.nu/kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=51008396&VOL_NUM=00001&KOMA=75&ITYPE=0
この建白書の根拠に五箇条の御誓文を挙げてないみたいね。


379 :無名草子さん :2007/08/15(水) 02:36:17
>>371
上から①と②は理解した。しかし、たしかに「議会制」と「官民協調体制」を
同じ機能として扱っている以上、結果は同じだが、371が③の「こうした」
を誤読した事実だけは残る。
以上で、解決?


380 :無名草子さん :2007/08/15(水) 02:45:47
>>371

> ●自由党史は~
> ●アメリカ合衆国憲法は~

この説明なら納得。
342が的はずれなのを自分で説明してくれてありがとう。


> ●佐々木氏は「議会制」の裏返しの意味で「官民協調体制」を用いている。

ダウト。
議会制と官民調和体制の二択ではないので裏返しというにあたらない。


381 :無名草子さん :2007/08/15(水) 03:25:27
>>380
割り込むが、「議会制」と「官民協調体制」の関係が「ダウト」なのは、
佐々木の説明のせいなのか、371の誤解なのかどっちだ?
何度も読み返したが、俺は文脈上佐々木の責任だと判断したが。


382 :無名草子さん :2007/08/15(水) 04:09:33
官民調和体制(not協調)は、政党政治や議会制とは「明らかに違ったもの」とは言っているけど、「官民調和体制、でなければ議会制」という裏返しの関係にあるとまでは言ってないですよね。
佐々木の言ってることは単に「議院内閣制の規定がない以上、議会制以外の仕組みが成り立つ余地がある」。それを「議院内閣制の規定がない以上、議会制は実現できない」と読むかどうかは、自由だ。
佐々木の文章力に難がある、というのは同意。

ちくまプリマーを初めて読んだけど、参考文献(あるいは、ブックガイド)とかつければいいのに。と思った。

383 :無名草子さん :2007/08/15(水) 06:35:18
「官民調和体制」って術語を使ってるんだから、
坂野潤治『明治デモクラシー』(岩波新書)くらいは前提にしてると読むべき、
…と大人向けの本なら言えるんだが、中学生向けだからなあ。もっと文章を明快にせんと。

390 :371 :2007/08/15(水) 20:03:06
>>380
なんだかなぁ。>>371の三段目、「裏返しの意味」と書いても、これが二者択一ではないのは文脈上明らかだと思っていたのだが。
これを勝手に二者択一と即断しまうとは。俺は相手の理解力の程度を過大評価していたらしい。

改めていうと、「裏返しの意味」と書いたが、これは二者択一を意味しているわけではないよ。
佐々木のいう「こうした状況」とは、「議会制が実現したわけではなく、超然内閣を経て官民協調体制が成立した」という過程の全体を、もやっと表現したもの。
このうち、「議会制が実現しない」をとるのか、「官民協調体制が成立した」をとるのかは、どっちでも同じでしょうよ、と書いたのよ。
ただ、これは不正確だったね。撤回しよう。

やはり佐々木の「こうした状況」は超然内閣の時代や官民協調体制を合わせて指しているのだから、「官民協調体制」に限定してしまう>>369の理解はおかしい。
ここは、約言するならば「議会制が実現しない」でなければならない。
さらにいえば、「こうした状況」を官民協調体制だけに限定すると、「こうした状況を助長」とは「超然内閣から官民協調体制への移行を助長した」と解されることになる。
そうであれば、佐々木先生はますますトンチンカンなことを言ってることになってしまう。

以上の説明で、分かって貰えただろうか。


392 :無名草子さん :2007/08/15(水) 20:27:31
>>382
>佐々木の言ってることは単に「議院内閣制の規定がない以上、議会制以外の仕組みが成り立つ余地がある」。

それは違う。
内閣制度は内閣官制という勅令(現在の政令に相当)で規定されていた。もちろん議院内閣制を定めるものではない。が、内閣官制で議院内閣制を定められる可能性があるといえばある。
論点は内閣制度の法形式にある。佐々木先生が「(内閣が)憲法上全く言及されていない」といっているのは、法形式の点で内閣が(勅令ではなく)憲法典で言及されていない、ということを意味している。内閣制度の内容が議院内閣制度かどうかを問うているのではない。

ちなみに、立憲君主国に関しては、議院内閣制度を実現している国であっても、議院内閣制度を明文で規定していない(少なくとも俺の知る範囲では)。

「内閣が憲法典で言及されていない」ことは「議院内閣制が規定されていない」を意味しない。

 

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最終更新:2009年09月28日 21:47