630 :無名草子さん:2008/09/15(月) 18:27:16
ちくま新書の法隆寺の謎を解くっていう本読んだ人はいない?
是非入れたいんだが。

713 :無名草子さん:2008/10/13(月) 18:59:40
武澤秀一『法隆寺の謎を解く』読了。新書としては内容が高度で、自分には読むのが結構大変だった。
一回読んだだけではちゃんと読みとれていない気もするが、結論から言うとこれは名著だと思う。
しかし内容が濃すぎて、要約が難しい。法隆寺にまつわる建築史上のいくつかの謎を解き明かしていくわけだが、
その中でも中門の真ん中に立つ柱の謎に注目する。またそれに付随して、新創建法隆寺における各建造物の配置に関する謎、
及び創建法隆寺の焼失と新たな創建の経緯に関する歴史的な謎が推理される。柱の謎に関して、
まず著者はインドの聖地などを歴訪した経験から、宗教的な祈りの作法として「めぐる作法」の伝来に注目する。
柱や塔の周りや回廊をめぐる宗教的体感とコスモロジーが空間構造の設計に影響を与えているわけである。
中門の柱に関して、とりあえず梅原猛の「聖徳太子の怨霊封じ込め説」は退けられる。

715 :つづき:2008/10/13(月) 19:00:36
もう一つの論点として伽藍の配置(の変遷)に注目。
旧法隆寺では縦に連なっていた塔と金堂を、新生法隆寺では横に離して並べられ中門は空白に直面することになる。
縦列では伽藍を貫く中軸が背骨のように空間を支えていたが、並列ではこの中軸が失われてしまう。
聖域の秩序の破綻を避けるため、空間設計のかなめとして重心のごとく中門の柱を残したというわけ。
建築家ならではの鋭い分析と言える。ここで縦並び配置と横並び配置の建築史的系譜の検討と並行して、
旧法隆寺の焼失から新法隆寺の創設に至る経緯と 
厩戸一族滅亡から天皇家の後継争いに至る歴史との関わり合いについて大胆な推理がなされる。
最後に「横並び配置」によって生じる中央の「空白」に日本特有の空間感覚を見る。
伊勢神宮の聖域空間との類似性も指摘しつつ、法隆寺のユニークな伽藍配置は日本起源のものであると結論される。

716 :つづき:2008/10/13(月) 19:01:24
後半では「めぐる作法」の主題が置き忘れられたような感じだが(あとがきで思い出したように再度言及される)、
要するに「めぐる作法」の伝来はアジアとの連続性を示し、空虚・空白の空間感覚と横並びの発想は日本の固有性を示している、ということだろう。
これは蛇足だが、日本文化における「空虚の中心」とは天皇制との関係で以前からポモ系左派などにより否定的に論じられてきた点だが、
著者はロラン・バルトを参照しつつ、かなり肯定的に捉えている。
法隆寺は修学旅行で一回見たきりで、エンタシス風の柱や連子窓などは覚えてはいるが、普通の中坊だから古寺などには興味はなかった。
これを読んで、もう一回ぐらいは法隆寺を見てみたいという気になった。

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最終更新:2009年01月24日 00:28