国家社会主義の綱領-第一章

「国家社会主義の綱領-第一章」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

国家社会主義の綱領-第一章」(2008/05/06 (火) 11:01:07) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

#contents_line(sep= - ,level=2) #contents_line(sep= - ,level=2, page=国家社会主義の綱領-第一章-第三節) #contents_line(sep= - ,level=2, page=国家社会主義の綱領-第一章-第四節) * 第一章 日米中の市場原理主義崩壊 ** はじめに  冷戦終結後に米国は唯一の超大国として君臨し、一時は全世界を一極支配すると言われるに至った事もありました。確かにクリントン政権下では、米国は空前の好景気に沸き立ち、財政も一時的には黒字化したほどです。しかし、米国の資本主義とはそれほど盤石なものでしょうか。今では米国経済の崩壊は当然の事として論じられるようになりました。2007年11月に米国の会計検査院が米国政府の財政破綻宣言を行った事からも、それは裏付けられます。そして、米国が破産する原因は、世界の基軸通貨であるドルの信用崩壊にあります。それ故、この論文の第一章では、私はドルの信用崩壊による日米の連鎖破綻と、米国の市場原理主義そのものの限界について論じさせて頂きます。第二章では、国家社会主義による包括的な復興計画について触れます。ちなみに、第一章は陳腐な内容なので、読み飛ばして頂いて結構です。肝心なのは第二章での、復興の綱領です。 ** 第一節 米国一極支配 *** 勝者の傲慢  冷戦終結後の米国は一時は全世界を一局支配するに至り、特にクリントン政権下では繁栄の極みにありました。そして、勢いに物を言わせ、グローバル化の名の下で他国に経済体制の自由化・民営化を強引に求めて来ました。これは自国のイデオロギーを他国へ押し付ける行為であるとも言えます。しかし、貿易と金融という観点から見た場合、このグローバル化に誤謬があるのは明らかです。  ここから、ドルの基軸通貨としての特権性について論じた、1990年11月初版発行の大前研一氏著『ボーダーレス・ワールド』からの内容を要約させて頂きます。貿易の観点から言うと、グローバル経済の中心に位置しているのは当然、資本主義の親玉である米国です。そのためグローバル経済の中では、ドルが基軸通貨です。そのため、米国は貿易の決済に外貨準備など最初から必要ありません。例えば、シカゴの自動車を買うのも、中国の粉ミルクを買うのも、決済はドル建てです。そうである以上、これは事実上国内取引と同じです。そのため、実質的には米国には対外貿易などはないと言えます。つまり米国はドルを刷るだけで、世界から欲しいものが買えるわけです。確かに、米国が旺盛な消費で世界経済を牽引する役割を果たしていると言えます。しかし、これは非常にアンフェアな仕組みであるのは間違いありません。また、自由貿易の名の下、発展途上国で安い人件費を用いて品を作り、それを先進国に対して高値で売るのが多国籍企業の手法です。その結果として、発展途上国では劣悪な労働条件による搾取が横行し、先進国では産業の空洞化による失業率の上昇が引き起こされてしまうわけです。これで儲かるのは多国籍企業だけです。また、グローバル経済とはヒト・モノ・カネの流れが世界的に活発化する事です。  そして、グローバル経済における金融制度とはフリー・フェア・グローバルを三原則とした金融ビッグバンです。この金融ビッグバンとは、本当にフェアなものでしょうか。実は、米国は連邦準備銀行がドルを刷って、それに金利をつけて米国系の金融機関に貸し付ける事ができます。つまり米国は通貨の発行権を持っているため、自国の金融力を無限に水増しできるという事です。そのためグローバル経済では、米国が圧倒的な金融力を持つようになります。その結果、圧倒的な金融力を誇る米国資本が他国の経済を支配する構造が生まれてしまいます。いわゆる、金融ビッグバンが引き起こすウィンブルドン効果というものです。現実に、日本の優良企業の株式は、その約半分が外資によって買い取られ、もはや大株主は日本人ではない状況です。つまり金融の自由化で儲かるのは米国系の金融機関だけです。この結果を見れば、グローバル化とは米国の帝国主義であると言わざるを得ないでしょう。  つまり、米国はドルが基軸通貨であるため、好きなだけドルを刷って、膨大な赤字を垂れ流す事ができると言えます。そのため、連銀はドルを過剰に増刷する事でバブルを演出し、冷戦終結後の米国は好景気を享受して来ました。具体的には、クリントン政権下では証券市場を舞台にITバブルが演出され、ブッシュ政権下ではサブプライムローンを大々的に始めて不動産バブルを演出しました。しかし、2007年の夏に不動産バブルが弾けた結果、米国の金融機関はサブプライムローンの貸し付けが一挙に焦げ付き始めました。また、米国の会計検査院のレポートによれば、米国は全世界から53兆ドルもの負債を抱えていますが、これを償還するのは物理的に不可能であり、米国経済の破綻は現時点で確定しているとの事です。その米国の財政状態を見て、全世界でドル離れが加速し、現在ではドルの信用崩壊が間近に迫っています。すなわち、既にドルの基軸通貨としての地位は著しく揺らぎ、もはや崩壊寸前の状態です。そのため、ドル安ユーロ高が進み、ちかぢか多国間協議でドル切り下げが行われるという噂も巷で流れているほどです。 ** 第二節 世界経済破局 *** 原油値暴落  このドルを中心とした歪なグローバル経済は、そう長く続きそうもありません。そもそも通貨を過剰に刷り続ければ、貨幣価値が下がるのは必然的な帰結です。しかし、ドルの価値は通貨の法則に反して、高く保たれてきました。なぜなら、米国は石油の売買をドル建てにさせる事で、ドルの需要をつくって通貨価値を維持して来たからです。実は、あのイラク戦争は中東の石油利権を掌握する事で、ドルの通貨価値を維持するための米国の戦略でした。しかし、現在ではイランに代表される湾岸諸国が、ドル離れを始めています。既に、湾岸諸国はユーロと円で石油を売り始めています。この湾岸諸国のドル離れの根本原因は二つあります。一つは、パレスチナ問題で米国がイスラエルに肩入れして来すぎた事と、もう一つは欧州連合によるユーロ導入です。仮に、このドル離れが更に進んで中東の産油国がドル建てで石油を売らなくなれば、ドルの暴落は必至です。そして、ドルの信用崩壊で相対的にユーロ等の他の通貨の地位が高まれば、米国の経済的な覇権は一挙に失墜します。  この流れを受けて、2008年の現在、米国はドルの需要を高めるために石油価格をつり上げています。そのため、石油価格は1バレル100ドルを超える水準にまで高騰してしまっています。それに加えて、ドル離れした資金がユーロと原油に注ぎ込まれているため、原油高に拍車がかかっています。しかし、現在の需給関係から見た石油の適正価格は、1バレル30〜35ドルです。そのため、100ドル超える現在の石油価格は、完全にバブル化しています。  仮に石油バブルが破裂すれば、値上がりを期待して注ぎ込まれた投機資金が全て焦げ付いてしまうため、世界のマネー経済は大損害を被る事になります。恐らく、世界のマネー経済は実質的に崩壊してしまうでしょう。これは、1929年の世界大恐慌とは全く別の事件です。なぜなら、世界大恐慌とはあくまで株価の暴落で始まった大不況ですが、今回のドル崩壊は米国の通貨制度そのものの全面的な破局を意味するからです。そのため、原油バブル破裂後には、ドル崩壊によってハイパーインフレが米国経済を襲う事が考えられます。  その結果、米国を中心としたグローバル経済が近々決定的な破局を迎える事は確実です。特に、米国の経済圏である日中は、連鎖破綻を免れません。近年の日中は対米輸出でドルを稼ぎ、稼いだドルを米国債購入という形で米国に還流し、ドル体制を支えて来ました。そして、ドル崩壊で米国の購買力がなくなれば、日中は対米輸出で稼ぐ事が出来なくなります。また、これまで購入して来た膨大な米国債が全て紙屑となるため、その含み損で日中の金融機関が連鎖的に破綻するのは避けられません。  しかし、その一方で中東産油国は主にユーロ建てで石油を売り始めるため、ユーロは実体経済において通貨価値を維持する事が期待できます。なぜなら、石油を購入する際にユーロが必要な構造ができあがるからです。加えて、最近ではロシアが欧州連合に加盟する事が内定したという噂もあります。既に、実体経済におけてロシア人はユーロでタンス預金を行っているため、ロシア経済はユーロ圏と水面下で融合し始めています。仮にロシアの欧州連合への加盟が事実であれば、資源と軍事の面で欧州連合が強化されるため、ユーロが基軸通貨の地位を得る事が確定します。  こう申し上げますと、「米国は世界最強の軍事力があるから、ドル崩壊などはありえない!」と反論する方が必ず現れます。確かに、米国がイラン攻撃を敢行して、中東の石油利権を武力で掌握する事があれば、ドル崩壊は免れる事でしょう。しかし、イラン攻撃によってイランの石油を手に入れようにも、イランの側はホルムズ海峡の海上封鎖という最終手段があります。仮にこの手段を実施されれば、イラクの米軍が孤立化する上、紅海を通じた石油輸送が出来なくなります。そのため、イラク駐留の米軍を孤立化させないためには、米国の側はトルコの米軍基地を使用せねばなりません。それを見て、2008年の3月にチェイニー副大統領がトルコに訪問しています。しかし、トルコは欧州連合への加盟を望み、近年では隣国のギリシアと和解しはじめています。その一方で、トルコは反米化の傾向が見られるため、トルコの米軍基地を使用する計画は頓挫する可能性が高いです。その上、現在の米軍はアフガンとイラクへ部隊を展開しているため、イラン攻撃までやれば三方面作戦をやる事になります。これは兵站などを鑑みてみた場合、非常に無理のある作戦です。  したがって、米軍上層部は純軍事的な観点から、イラン攻撃が無理であると判断しています。そのため、最近ではイラン攻撃を求めるホワイトハウスと米軍との間に意見の対立がみられます。現に、ブッシュ政権との確執が原因で、米中央軍のウィリアム・ファロン司令官(海軍大将)は2008年の3月に辞任しました。加えて米軍のみならず、CIAもホワイトハウスから離反しはじめています。現に、2007年の12月に公表されたCIAなど米情報機関がまとめた国家情報評価では、イランが2003年以降核兵器開発計画を停止しているとの判定を下しました。これは CIAが、イランが核武装の意志はないと公式に認めたという事です。このように、現在の米国では、ホワイトハウス、米軍、CIAが分裂状態にあります。これは、ソ連末期における共産党、ソ連軍、KGBの分裂状態によく似ています。これは崩壊寸前の国家にみられる末期症状です。少なくとも、国家の中枢が分裂し、混乱している状態では、統合的な軍事作戦が実行できるとは到底考えられません。恐らく、イラン攻撃によるドル防衛は事実上不可能です。 *** 米国崩壊  ドルの信用崩壊による米国の没落は、ただの経済問題で済むとは考えられません。恐らく米国は武装した市民の内乱によって、ソ連の如く崩壊すると私は見ています。その理由と事態の経過について、これから説明させて頂きます。まずは現在の米国社会の実態について順を追って説明します。現在の米国は弱肉強食の市場原理が支配する国ですので、相互扶助や協力といった考えが非常に軽視される傾向にあります。こういった米国的な弱肉強食の競争社会においては、個人間の競争に敗れる事は社会からの脱落を意味します。すなわち、米国社会は全てのリスクを個人が背負う仕組みになっているため、仮に自分の側の非を認めた時点で、あらゆる責任を一手に背負わされてしまいます。そのため、米国市民は個人が異常なほどに自己の正当性を主張し、責任を擦り付け合う傾向があります。そのため、米国社会は常軌を逸した訴訟社会になってしまうのです。それらの社会背景から、個人にストレスがかかりすぎるために、現在の米国民は非常に情緒不安定です。そのため、米国民は統計的に見て、多重人格障害、境界性人格障害、自己愛性人格障害、摂食障害などの精神疾患を患っている例が非常に多いと言われています。それらの精神的苦痛から逃れるため、現在の米国内では麻薬の蔓延が深刻化しています。  また、精神的な不安感とアイデンティティ喪失によって、近年の米国市民はキリスト教原理主義へと走る傾向があります。日本では余り知られていませんが、米国は中東に負けないほどの宗教国家です。現に、米国民の80%はアンケートで「自分は宗教的である」と答えているという統計データもあります。これは小咄なのですが、ハリウッド映画などでは何か驚いた時に米国人が「Oh my god!」や「Jesus Christ!(ジーザスクライスト!)」と叫ぶシーンがよく登場しますが、欧州の人々は一般的にそのような発言はしません。これは米国人の宗教性が端的に表された逸話です。加えて、米国においては宗教の商業化も急速に進んでいます。近年の全米各地で、2000人以上の信者を抱えるメガチャーチと呼ばれる巨大な規模の教会が、2007年の統計で1500団体以上現れてきています。1回の礼拝に数千人から1万人の人びとが参加するものもあり、中でもレークウッド教会(テキサス州)は信者数4万人を数えています。信者の多くは大都市郊外に住む30〜40代の中間層で、寄付などで年収100億円に上るものもあります。このメガチャーチの最大の特徴は、マーケティングを行い、信者が欲しているものを提供する点です。したがって、信者の間違いを指摘し責めたてるような、昔ながらの説教ではなく、分かり易く前向きな説教が行われます。このメガチャーチの信者は「宗教保守」といわれ、共和党支持が多い言われています。宗教保守は中絶と同性愛に反対の立場の市民で、米国の全人口の少なくとも25%にのぼると推定されています。当然、メガチャーチは巨大な集票力を持つため、大統領候補は、その力を無視するわけにはいかなくなります。現在のブッシュ政権の最大の支持基盤は、このメガチャーチと宗教保守です。しかし、現在の米国では、プロテスタントの価値観が余りにも行き過ぎ、聖書原理主義の観点から地球が平らであると主張する一派まで登場しています。このように、近年の米国社会は、余りにもキリスト教原理主義的な性格が強まって来ています。中世ヨーロッパでの魔女狩りや異端審問を見ても明らかですが、一神教的な宗教を原理主義的に盲信し始めると、社会全体がどんどん不寛容なものとなって来ます。したがって、現在の米国社会は自由な国ではなく、非常に原理主義的で不寛容な宗教国家となりつつあります。  それに加えて、米国は歴史の無い人造国家であり、民族的な共同体がない事も大きな懸念材料です。すなわち、国家全体で共有できる単一の民族意識が存在しないため、白人・黒人・ヒスパニックに代表される異なった人種同士で非常に仲が悪いです。その上、もはや数の上で少数派となりつつあるWASPは、未だに有色人種への差別意識を非常に根強く持っています。米国社会での貧富の格差の拡大や、貧困の問題の背後には、人種差別が常に付きまとっています。建国当初から、米国の貧困層を構成して来たのは、往々にして黒人やヒスパニックといった人々です。彼らに対する人種差別が背後にあるので、貧困層への福祉が削られるのです。現に、サブプライムローンの焦げ付き問題においては、最初から焦げ付く事を承知した上で、黒人やヒスパニックと言った低所得者層に融資を行ってきた事が問題視されています。したがって、現在の米国社会は多様な人種が平和共存する社会などではなく、人種差別の不満と貧困による絶望が渦巻く殺伐とした社会と化しているのです。そのため、緊急時にはこの不満と絶望が爆発し、人種差別が人種間の闘争に発展しかねません。人種差別の不満が爆発した例として、1992年にはロス暴動があげられます。平時であってもこういった事件が起こっているのです。特に、ハリケーンカトリーナがニューオリンズを襲来した際には、自動車を持っていない低所得者層(主に黒人やヒスパニック)が被災地に置き去りにされた例さえもありました。  こういった不安要素が米国内にあります。その上で、ドル崩壊で米国が破産した場合にはどうなるのでしょうか。まず、米国の破産でドルが紙切れになれば、米国は従来の如く世界から品を輸入して、贅沢三昧の消費も出来なくなります。もちろん、ハイパーインフレによって米国経済は大パニックに陥り、消費者は値が騰がる前に品を買い占めようとするためスーパーでは陳列棚から品が無くなります。しかし、恐らくそれどころの事態では到底済まされません。何よりも恐ろしいのは、米国内で石油価格が暴騰する事です。これをきっかけにして、米国内にある矛盾が一挙に噴出する事が考えられます。まず、破産後の米国は、輸出産業が壊滅状態ですので、石油を買う外貨(主にユーロ)を稼げません。したがって、米国は国内油田しか石油の供給源が無くなるため、米国内での石油価格の急騰は避けられません。しかも米国内の油田は十年以内に全て枯渇すると言われています。加えて、米国は自動車社会であるため、ガソリンが手に入らなければ、自らの勤め先への通勤が出来ません。その上、米国の企業は労働者を簡単に解雇してしまうため、ガソリンが手に入らなくて通勤に支障が出れば、そのまま解雇されて収入源を断たれてしまうのです。そのため、米国の市民同士で生活をかけて必死でガソリンを取り合う事が予想されます。しかも、その争いに拍車をかけるのが、米国社会の異常なほどの競争主義です。教育段階で競争に勝利する事が善であると教えられて来た米国市民は、緊急時にはとにかく他者を押しのける事しか考えない事が想定されます。  そして、事態を更に悪化させるのが、米国社会における銃器の蔓延です。米国では個人の自衛のために、銃器保持が法律で全面的に容認されているのは、周知の通りです。そのため、米国全土で約二億丁の銃器が出回っていると推定されています。確かに、スイスでも国防の義務のために各家庭に自動小銃を備える事を義務づけられてはいます。しかし、これは国家という共同体の防衛のためであり、あくまで個人の自衛のためではありません。転じて、米国では自衛と称して個人間で撃ち合いをする事が、平時においても日常茶飯事です。そのため、ドル紙幣が紙切れになった場合には、ガソリンの取り合いから、銃器で武装した米国市民が撃ち合いをし始める事が想定されます。それどころか、銃器で武装したギャングがガソリンスタンドを襲撃する事件が起こる可能性さえも、否定は出来ません。この武装した市民が個人間で殺し合いをする惨状は、ホッブスが仮定した「万人の万人による闘争」という自然状態に他なりません。どうやら、ロックとルソーの仮説は虚構に過ぎなかったようです。  しかも、現在の米国は他国からの支援がまるで期待できません。なぜなら、米国は民主主義と正義の名の元で、全世界に対して再三の武力介入を行って来たからです。特に、イラク戦争は国連を完全に無視して強行した戦争であり、現在進行形で全世界からの非難を浴びています。米国が破産した際には、そのまま世界から見捨てられてしまうのは間違いありません。そのため、八方塞がりに陥った米国は、最悪な場合は没落どころか国家解体の危機にまで発展してもおかしくありません。万一の話ですが、州政府は連邦政府からの独立を宣言し、第二次南北戦争が勃発する可能性もあります。そこまで行かなくとも、事態の完全な収束には数年かかるでしょう。その頃には、米国経済は壊滅的な打撃を受け、米国からは資産家・知識人・研究者などが主に欧州に移住するか、亡命しているはずです。  この米国崩壊の原因は、アメリカ合衆国の建国理念に、協力と相続の思想が全くない事にあります。そもそも、米国はインディアンを虐殺した土地の上に築いた人造国家です。そのため、米国は民族的な共同体と、相続すべき歴史と伝統を、最初から持っていないのです。すなわち、ソ連と同じく米国も実験国家です。したがって、米国もソ連を同じ道をたどる事となりそうです。2008年現在で、米国社会の完全な崩壊を予言している人は、そう多くはいないはずです。しかし、あの国の内情が信じがたいほどに荒廃しているのは客観的事実です。そのため、米国の崩壊はただの杞憂で済むとは考えられません。恐らく、半世紀後の米国は1981年公開の映画「マッドマックス2」のような状態になるのではないでしょうか。これがアメリカ合衆国が自慢して来た民主主義の末路です。  これから先に、数多くの歴史家の筆によって米国の崩壊が考察され、多種多様に記述される事が予想されます。その内容は、おおむね想像がつきます。このアメリカ合衆国の崩壊の歴史的意義とは、近代主義の瓦解として結論づける事ができます。簡潔にまとめれば、歴史的に見ればアメリカ建国とフランス革命は双子の関係にあると言う事です。1789年フランス革命によって、世襲の帝政が否定され、近代が始まったと言えます。一方で、米国は新興国ですので、世代間で相続すべき歴史と伝統が元からなく、世襲の帝政も貴族制も持たない国でした。したがって、米国は自由平等を建国理念として掲げ、個人主義、私有財産制、国民国家といった近代主義に基づく人造国家として建国されました。すなわち、アメリカ合衆国は市民革命の申し子であり、近代主義の権化であると言えます。したがって、この米国が無惨に崩壊する事は、それすなわち近代の終焉を意味するのです。  極めて巨視的な観点から見れば、アメリカ合衆国の崩壊は世界史における近代の終焉であると定義できます。これは日本における近代主義への再評価にもつながる事が考えられます。日本における近代の始まりとは、1853年のペリー提督率いる黒舟の来航です。これにより、尊王攘夷論に基づく倒幕運動に火がつき、明治維新が起こりました。ちなみに、近年の研究では明治維新の中心メンバーが欧米のフリーメイソンと何らかの関与があった事が指摘されています。この明治維新以後、日本は近代国家への道を歩み始める事となりました。そして、米国によって開国を迫られた日本は、明治維新を通じて近代国家へと変貌を遂げ、日露戦争以後は西洋列強に肩を並べるまでに至りました。この近代国家への歩みは、全てペリー提督の来航による明治維新から始まったものです。したがって、日本における近代主義の見直しにあたって、明治維新の再評価が進められる事が予想されます。この明治維新は、非常に広義で解釈すれば、市民革命に近いものです。なぜなら、明治維新とは日本における近代主義の始まりに他ならないからです。確かに一般市民は参加していませんが、体制転覆で近代国家へ変貌を遂げる明治維新の内容は、市民革命のそれとよく似ています。一方で、これから先の時代における思想界の潮流では、米国崩壊に伴って、市民革命への批判の声が噴出する事が予想されます。したがって、私は思想界の潮流を先読みし、現時点で市民革命と明治維新を批判する反革命主義の立場をとります。 *** 中国崩壊  次は中国の崩壊です。2008年現在、北京五輪が終われば内需の冷え込みで中国バブルが破裂するというのはもはや一般常識です。現に、2008年の4月には上海の証券市場が暴落しています。そもそも、中国の経済成長は砂上の楼閣です。なぜなら、地方の役人が出世のために自らの受け持っている地域の経済成長率を水増しして中央に報告しているため、一般に公開されている中国の高成長率は非常に疑わしい数字です。しかし、世界の投資家は高利を求めて、その数字を鵜呑みにし、中国に投資して来ました。そのため、現在の中国経済ではマネーの飽和から物価高が進み、人民の生活は逼迫していています。しかし、一方で中国政府が金融引き締めをやれば株価が下がってしまいます。これは、一般に認識されているほど中国の実体経済が成長して居らず、中国が過大評価された結果、マネー経済だけが一人歩きした結果といえます。いわば実体経済とマネー経済の分裂状態です。この状態で、中国に対する海外からの投資が一気に引く事があれば、中国経済は大きな打撃を被る事になります。1997年のアジア通貨危機も、外資が突然引く事で、東南アジア各国の通貨と証券が暴落した事件でした。その上、現在の中国経済は米国経済への依存度が非常に高い構造になっています。近年、急速にユーロシフトを始めてはいますが、それでも中国の莫大な外貨準備の大半はドル建てで行われています。また、中国の主な輸出先である米国市場が崩壊するため、輸出不振で経済が減速する事も間違いありません。そのため、米国の破産に伴い中国経済が急速に崩壊し始める事は避けられません。これは、米国の経済圏である日本とまったく同じ事情です。  また、米国以上に中国の国内が荒れているのも事実です。例えば、内陸部と沿岸部の格差問題、虐げられた農民の不満、環境問題、莫大な不良債権などなどあげれば切りがありません。既に内陸部では数万人単位ので暴動が多発しています。これは暴動というよりも、戦争と形容する方が適切なほどの規模の暴動です。しかも、地方の軍閥は武器輸出で肥大化し、次第に北京政府の命令を聞かなくなり始めているのも不安要素です。長期的な問題は少子高齢化です。一人っ子政策に加えて、中国では男児が優遇されるため、女児殺しが非常に多いとされています。したがって、これから先は日本以上に急速な少子化により、中国の国家財政が破綻する事は明白です。その時には、中国国内は混乱を極める事でしょう。  それ以外にも、憂慮すべき深刻な問題があります。それは新型の鳥インフルエンザが流行する可能性がある事です。既に、2006年8月には、インドネシア保健省が鳥インフルエンザがヒトに感染して総計で十三人死亡したと報告を提出しています。仮に鳥インフルエンザが変異し、新型インフルエンザとなってヒトに空気感染しはじめれば、最悪の場合ペストの再来であるとさえ言えるほどの被害をもたらしかねません。現在、北京政府は北京五輪の開催を控え、この新型インフルエンザの感染情報を隠蔽している状態です。現在のように国際的な流通網が完成した中で、北京五輪の最中にパンデミック(感染爆発)が起こるような事があれば、もはや一巻の終わりです。こういった疫病の流行は、家畜と生活を共にしている中国南部において特に流行が危惧されています。ちなみに、これは日本では余り知られていない話ですが、あの第一次世界大戦が終結した直接的原因はスペイン風邪の流行であると言われています。スペイン風邪は感染者6億人、死者5000万人の被害を出しました。当時の世界人口は8~12億人であったと言われているため、実に全人口の約半分が感染した事になります。このスペイン風邪の病原体の正体は、近年の調査の結果、鳥インフルエンザウイルスに由来するものであった可能性が高いことが証明されています。  内政における中国の最大のアキレス腱は、チベット問題と法輪功です。まず、中国の歴代王朝は伝統的に宗教を非常に恐れ、宗教を弾圧する傾向にあります。なぜなら、古代から中国では王朝末期に新興宗教に帰依した農民が叛乱を起こし、易姓革命につながった例が多々あったからです。その典型例が、後漢末期の黄巾党の乱です。したがって、現在の中国では法輪功とチベット仏教に対し苛烈な弾圧が行われています。また、中国政府は豊富な水資源を持つチベットを確保するため、チベットでの民族浄化も行っています。このチベット問題を国際社会が無視するのは、過去にチベットがナチス・ドイツと結びつきがあったからだという説もありますが、真相は分かりません。しかし、仮に中国がチベットを失う事があれば、人口爆発で水不足に喘ぐ中国北部は更に疲弊する事になります。  一方で、現在のCIAは屋台骨の揺らいでいる中国共産党を支援しています。なぜなら、米国のロックフェラー財閥は中国に対して莫大な投資を行って来ているため、中国共産党が倒れてしまえば、貸し付けが焦げ付いてしまうからです。そもそも、70年代におけるニクソンとキッシンジャーの外交を見ても分かる通り、アメリカ合衆国と中国は非常に強い結びつきを持っています。米国は一方で中国に投資して利益をあげながら、一方で沖縄の米軍基地から中国を威嚇する強かな外交を行って来ました。そして、現在の米国は、日中戦争か日中冷戦を演出して、日本に武器を輸出して稼ごうという考えを持っています。そのため、CIAは中国共産党に「お化け役」を演じて貰わねば困るという事情があります。したがって、現在の CIAは日中を離反させつつ、一方で中国共産党を支援するという難しい仕事を実行している状態です。そもそもこういった複雑な工作活動は、大概は失敗に終わるものです。したがって、恐らく中国共産党の力は弱体化し、内陸部まで支配力が及ばなくなり始めるはずです。  この流れを見て、ロシアが中国内陸部の新疆ウイグル自治区における独立運動を支援する可能性があります。なぜなら、経済力と軍事力をつけ始めた中国に対して、ロシアが脅威を感じ始めているからです。もう一つの理由は、中央アジアのロシア軍がイスラーム化している事です。そのため、新疆ウイグル自治区の住民はイスラム教徒ですので、中央アジアのロシア軍が独立を支援するのは、宗教上の観点から見ても妥当な事です。仮に、ウイグルが独立すれば、そこにロシアの傀儡政権が立ち上げられ、中国の内陸部はロシアの間接支配下に置かれる事になります。また、インドは水資源の豊富なチベットの獲得を狙って、ロシアの尻馬に乗るはずです。チベット仏教の指導者であるダライ・ラマ・14世はインドに亡命しているため、インドにとってはチベット解放という宗教的な大義名分が与えられています。したがって、インドによるチベット独立支援は、国際社会を味方につける事が予想されます。仮にチベットが独立すれば、そこにはインドの傀儡政権が樹立される事になります。そうなれば、中国は内陸部と沿岸部で国が分裂し、新疆ウイグル自治区はロシア、チベット自治区はインドによって分割統治される日が来る事になります。そして、経済格差の広がった内陸部と沿岸部で対立が深まり、最悪の場合は内戦が勃発すると私は予測しております。誠に不謹慎な話ですが、中国で内戦が勃発すれば、日本は軍需景気で潤う事が予想されます。これからは、中国沿岸部をロシアの緩衝地帯にするために、日本が武器輸出をする時代が来るかもしれません。 *** 預金封鎖  現時点で GDP の二倍に当たる約一千兆円もの負債を抱える日本は、急速な少子高齢化も相まって近々財政破綻する事が危惧されています。この約一千兆円の負債は、一年間に五兆円づつ返済しても完済には二百年かかる額です。一千兆円の国債に3%の金利がついただけで、利払いは三十兆円です。国の歳入が約四十兆円ですから、歳入の約75%が利払いだけで吹き飛ぶ数字です。仮に現在の状態で長期金利が上昇した場合、国債の利払いだけで国の歳入を超えてしまいます。そこまで財政状態が悪化してしまえば、もう国家予算を組めなくなってしまうでしょう。実は、ゼロ金利政策は、膨大な累積債務に伴う利払いを圧縮する意図もあって、実施されて来たわけです。一方で、よく日本には対外債務がないから大丈夫という経済学者がいますが、それは見え透いた詭弁です。低利で格付けの低い日本国債は、外国人投資家からすれば旨味のない商品なので、売りようがないだけです。  そもそも、国内で国債を消化するというのは、民間銀行が政府の発行する国債を買い取るという事です。実は、日本の市中銀行はどこも公的資金を導入されているため、政府に対して頭があがらず、不履行になるのが確実な日本国債を押し付けられているわけです。これは水面下で、日本国民の銀行預金が国債の補填に回されていると言う事です。そのため、将来は預金封鎖によって預貯金が政府に没収される事は、現時点でほぼ確定しているわけです。加えて、ペイオフ解禁により、日本の銀行が破綻した際の、外貨預金に対する法的保護は一切なくなっています。これは恐らく、キャピタルフライトを防止するための政策です。また藤井厳喜氏の指摘によれば、2004年に新札が発行された事がありましたが、あれは国民のタンス預金を測定するために行われた政策との事です。この藤井厳喜氏は竹中平蔵氏と同じくハーバード大卒で、あまりにも親米的かつタカ派な意見を主張してきたため、最近では信用を失墜してしまった人物です。しかし、彼のアナライズには一理あるのではないしょうか。また、新札発行の前夜には、マスコミを通じて不法滞在の外国人が偽札を発行する事件をやたらに取り上げていました。あれはマスコミを通じて政府が国民を欺くための布石です。すなわち、日本政府は国民の資産を用意周到に囲い込み、国が破産した後には資産を没収し、その後は大増税を行う手はずを既に済ませています。  加えて、日銀と連銀は既に国債買い切りオペレーションを常態的に実施しています。これはケインズ的な量的金融緩和です。実は、これは政府の国債を日銀が刷った貨幣で買い取る行為です。しかし、これは財政法で禁止されている政策で、金融の禁じ手であるとされています。国会で特例法を通して無理に実施しているのですが、やはり好ましい政策ではありません。なぜなら、国の借金を国が肩代わりするため、これはタコが自分で自分の足を食べているようなものだからです。言い換えれば、貨幣の増刷で破産を先延ばしにしているだけです。恐らく、こうも貨幣価値を薄めてしまえば、何らかのショックをきっかけに、いずれハイパーインフレが襲来するでしょう。その際、ヘッジファンドが円の空売りをするはずです。いくら日銀が円の買い支えをしても、ヘッジファンドから一斉に売り浴びせを食らえば、ひとたまりもないでしょう。その結果、超円安で国内の物価が高騰するはずです。  そのため、米国の破産によって、日本経済が連鎖破綻する事が十分考えられます。まず、仮に米国経済が破綻すれば、対米輸出でドルを稼いでいる日本は大きなダメージを被る事になります。また、膨大な米国債が紙切れになるため、日本の銀行が含み損で連鎖倒産する事も考えられます。また、現時点でウォール街の株の値動きと兜町の株の値動きはほぼ連動しているため、米国が破産すれば日本で株価の暴落が起こる事もまず間違いないです。そのため、世界経済における原油価格の暴落が、日米の連鎖倒産にまで発展する事は間違いありません。そして、預金封鎖で国民の預貯金は没収され、現在流通している紙幣と国債は恐らく全て紙切れになるでしょう。  こういった経済的な混乱を見据えて、富裕層は既に資産疎開を水面下で進めていると言われています。金融ビッグバンで金融の自由化が完了したのであればなおさらです。例えば、アルゼンチンが財政破綻した際にも、富裕層は資産をドルに換えて難を逃れています。仮に、私がちょっとした資産家であれば、世界最高の信用度を誇る日本の旅券を用いて、欧州で口座を開設し、資産をユーロ化して疎開させています。それか、外資系の投資信託に分散投資して高利を追求しています。また、日本から資本が逃げる原因は、何も預金封鎖の不安ばかりではなく、高すぎる相続税や、ゼロ金利にも原因があります。現に、日本国内の資産家は相続税を嫌ってオセアニアや香港に資産を移す例が多いわけです。  もちろん、一度政府が債務を踏み倒す事があれば、その後の信用回復は非常に困難になります。特に、少子高齢化で経済成長を望めない日本は、通貨と国債の国際的な信用を回復するのは実質的に不可能となるでしょう。すなわち、この信用崩壊は日本における資本主義経済の実質的な終わりを意味する事になります。また、2008年現在の時点で、その破産の時期がいつになるかを正確に把握するのは難しいです。しかし、明確な根拠に基づく推測ではないのですが、私は2010〜2014年までの間になると見ています。また、日米の破産の前夜には、恐らく金融業界から内部情報が漏洩するため、流通業界では生活物資の買い占めが行われるはずです。そういった動きが見られた場合は、すぐにでも破産すると覚悟すべきです。この日本の財政破綻そのものはかなり前から予測されていた事です。例えば、1990年5月初版発行の澤田洋太郎著『日本滅亡論』では、日米の経済破綻と欧州の主導権獲得までが予測されています。この著作はほとんど脚光を浴びていないのですが、隠れた名著です。  しかし、日本社会において財は政破綻に対する危機感が未だに深まらない不思議な状態が続いています。これは現在の管理通貨制度に原因があります。現在の通貨は政府への信用から通貨価値が成立しているものであるため、政府への信用失墜は即、通貨価値の暴落へ直結してしまいます。したがって、現在の日米両政府は、情報統制を敷いて非現実な楽観論を宣伝し、自国民を欺く事で何とかして貨幣価値を守っている状態です。そのため、経団連や政府高官などが、著名な経済学者に対して真実を漏らさぬよう釘を刺している事が考えられます。同時に、正確な負債総額を政治家が国民に伝えないのは、自らの政治責任を国民の側から厳しく問われてしまうからです。仮に、マスコミを通じて真実が広く世間に知れ渡ってしまえば、信用不安で株価が暴落する上、政治家への責任追及の声が上る事になるでしょう。しかし、マスコミはあくまで真実を報道しようとはしません。なぜなら、民放では視聴率を獲得する事が最優先だからです。あまり暗い話題を放送しても視聴率が上がらないため、真実に関する報道は自粛しているのでしょう。したがって、在野の経済学者の主張や絶版になった古い書籍の方が、信頼できる情報源となりうるわけです。この論文であえて古い書籍を参考文献にしているのではそのためです。 #include(国家社会主義の綱領-第一章-第三節) #include(国家社会主義の綱領-第一章-第四節)
#contents_line(sep= - ,level=2) #contents_line(sep= - ,level=2, page=国家社会主義の綱領-第一章-第三節) #contents_line(sep= - ,level=2, page=国家社会主義の綱領-第一章-第四節) * 第一章 日米中の市場原理主義崩壊 ** はじめに  冷戦終結後に米国は唯一の超大国として君臨し、一時は全世界を一極支配すると言われるに至った事もありました。確かにクリントン政権下では、米国は空前の好景気に沸き立ち、財政も一時的には黒字化したほどです。しかし、米国の資本主義とはそれほど盤石なものでしょうか。今では米国経済の崩壊は当然の事として論じられるようになりました。2007年11月に米国の会計検査院が米国政府の財政破綻宣言を行った事からも、それは裏付けられます。そして、米国が破産する原因は、世界の基軸通貨であるドルの信用崩壊にあります。それ故、この論文の第一章では、私はドルの信用崩壊による日米の連鎖破綻と、米国の市場原理主義そのものの限界について論じさせて頂きます。第二章では、国家社会主義による包括的な復興計画について触れます。ちなみに、第一章は陳腐な内容なので、読み飛ばして頂いて結構です。肝心なのは第二章での、復興の綱領です。 ** 第一節 米国一極支配 *** 勝者の傲慢  冷戦終結後の米国は一時は全世界を一局支配するに至り、特にクリントン政権下では繁栄の極みにありました。そして、勢いに物を言わせ、グローバル化の名の下で他国に経済体制の自由化・民営化を強引に求めて来ました。これは自国のイデオロギーを他国へ押し付ける行為であるとも言えます。しかし、貿易と金融という観点から見た場合、このグローバル化に誤謬があるのは明らかです。  ここから、ドルの基軸通貨としての特権性について論じた、1990年11月初版発行の大前研一氏著『ボーダーレス・ワールド』からの内容を要約させて頂きます。貿易の観点から言うと、グローバル経済の中心に位置しているのは当然、資本主義の親玉である米国です。そのためグローバル経済の中では、ドルが基軸通貨です。そのため、米国は貿易の決済に外貨準備など最初から必要ありません。例えば、シカゴの自動車を買うのも、中国の粉ミルクを買うのも、決済はドル建てです。そうである以上、これは事実上国内取引と同じです。そのため、実質的には米国には対外貿易などはないと言えます。つまり米国はドルを刷るだけで、世界から欲しいものが買えるわけです。確かに、米国が旺盛な消費で世界経済を牽引する役割を果たしていると言えます。しかし、これは非常にアンフェアな仕組みであるのは間違いありません。また、自由貿易の名の下、発展途上国で安い人件費を用いて品を作り、それを先進国に対して高値で売るのが多国籍企業の手法です。その結果として、発展途上国では劣悪な労働条件による搾取が横行し、先進国では産業の空洞化による失業率の上昇が引き起こされてしまうわけです。これで儲かるのは多国籍企業だけです。また、グローバル経済とはヒト・モノ・カネの流れが世界的に活発化する事です。  そして、グローバル経済における金融制度とはフリー・フェア・グローバルを三原則とした金融ビッグバンです。この金融ビッグバンとは、本当にフェアなものでしょうか。実は、米国は連邦準備銀行がドルを刷って、それに金利をつけて米国系の金融機関に貸し付ける事ができます。つまり米国は通貨の発行権を持っているため、自国の金融力を無限に水増しできるという事です。そのためグローバル経済では、米国が圧倒的な金融力を持つようになります。その結果、圧倒的な金融力を誇る米国資本が他国の経済を支配する構造が生まれてしまいます。いわゆる、金融ビッグバンが引き起こすウィンブルドン効果というものです。現実に、日本の優良企業の株式は、その約半分が外資によって買い取られ、もはや大株主は日本人ではない状況です。つまり金融の自由化で儲かるのは米国系の金融機関だけです。この結果を見れば、グローバル化とは米国の帝国主義であると言わざるを得ないでしょう。  つまり、米国はドルが基軸通貨であるため、好きなだけドルを刷って、膨大な赤字を垂れ流す事ができると言えます。そのため、連銀はドルを過剰に増刷する事でバブルを演出し、冷戦終結後の米国は好景気を享受して来ました。具体的には、クリントン政権下では証券市場を舞台にITバブルが演出され、ブッシュ政権下ではサブプライムローンを大々的に始めて不動産バブルを演出しました。しかし、2007年の夏に不動産バブルが弾けた結果、米国の金融機関はサブプライムローンの貸し付けが一挙に焦げ付き始めました。また、米国の会計検査院のレポートによれば、米国は全世界から53兆ドルもの負債を抱えていますが、これを償還するのは物理的に不可能であり、米国経済の破綻は現時点で確定しているとの事です。その米国の財政状態を見て、全世界でドル離れが加速し、現在ではドルの信用崩壊が間近に迫っています。すなわち、既にドルの基軸通貨としての地位は著しく揺らぎ、もはや崩壊寸前の状態です。そのため、ドル安ユーロ高が進み、ちかぢか多国間協議でドル切り下げが行われるという噂も巷で流れているほどです。 ** 第二節 世界経済破局 *** 原油値暴落  このドルを中心とした歪なグローバル経済は、そう長く続きそうもありません。そもそも通貨を過剰に刷り続ければ、貨幣価値が下がるのは必然的な帰結です。しかし、ドルの価値は通貨の法則に反して、高く保たれてきました。なぜなら、米国は石油の売買をドル建てにさせる事で、ドルの需要をつくって通貨価値を維持して来たからです。実は、あのイラク戦争は中東の石油利権を掌握する事で、ドルの通貨価値を維持するための米国の戦略でした。しかし、現在ではイランに代表される湾岸諸国が、ドル離れを始めています。既に、湾岸諸国はユーロと円で石油を売り始めています。この湾岸諸国のドル離れの根本原因は二つあります。一つは、パレスチナ問題で米国がイスラエルに肩入れして来すぎた事と、もう一つは欧州連合によるユーロ導入です。仮に、このドル離れが更に進んで中東の産油国がドル建てで石油を売らなくなれば、ドルの暴落は必至です。そして、ドルの信用崩壊で相対的にユーロ等の他の通貨の地位が高まれば、米国の経済的な覇権は一挙に失墜します。  この流れを受けて、2008年の現在、米国はドルの需要を高めるために石油価格をつり上げています。そのため、石油価格は1バレル100ドルを超える水準にまで高騰してしまっています。それに加えて、ドル離れした資金がユーロと原油に注ぎ込まれているため、原油高に拍車がかかっています。しかし、現在の需給関係から見た石油の適正価格は、1バレル30〜35ドルです。そのため、100ドル超える現在の石油価格は、完全にバブル化しています。  仮に石油バブルが破裂すれば、値上がりを期待して注ぎ込まれた投機資金が全て焦げ付いてしまうため、世界のマネー経済は大損害を被る事になります。恐らく、世界のマネー経済は実質的に崩壊してしまうでしょう。これは、1929年の世界大恐慌とは全く別の事件です。なぜなら、世界大恐慌とはあくまで株価の暴落で始まった大不況ですが、今回のドル崩壊は米国の通貨制度そのものの全面的な破局を意味するからです。そのため、原油バブル破裂後には、ドル崩壊によってハイパーインフレが米国経済を襲う事が考えられます。  その結果、米国を中心としたグローバル経済が近々決定的な破局を迎える事は確実です。特に、米国の経済圏である日中は、連鎖破綻を免れません。近年の日中は対米輸出でドルを稼ぎ、稼いだドルを米国債購入という形で米国に還流し、ドル体制を支えて来ました。そして、ドル崩壊で米国の購買力がなくなれば、日中は対米輸出で稼ぐ事が出来なくなります。また、これまで購入して来た膨大な米国債が全て紙屑となるため、その含み損で日中の金融機関が連鎖的に破綻するのは避けられません。  しかし、その一方で中東産油国は主にユーロ建てで石油を売り始めるため、ユーロは実体経済において通貨価値を維持する事が期待できます。なぜなら、石油を購入する際にユーロが必要な構造ができあがるからです。加えて、最近ではロシアが欧州連合に加盟する事が内定したという噂もあります。既に、実体経済におけてロシア人はユーロでタンス預金を行っているため、ロシア経済はユーロ圏と水面下で融合し始めています。仮にロシアの欧州連合への加盟が事実であれば、資源と軍事の面で欧州連合が強化されるため、ユーロが基軸通貨の地位を得る事が確定します。  こう申し上げますと、「米国は世界最強の軍事力があるから、ドル崩壊などはありえない!」と反論する方が必ず現れます。確かに、米国がイラン攻撃を敢行して、中東の石油利権を武力で掌握する事があれば、ドル崩壊は免れる事でしょう。しかし、イラン攻撃によってイランの石油を手に入れようにも、イランの側はホルムズ海峡の海上封鎖という最終手段があります。仮にこの手段を実施されれば、イラクの米軍が孤立化する上、紅海を通じた石油輸送が出来なくなります。そのため、イラク駐留の米軍を孤立化させないためには、米国の側はトルコの米軍基地を使用せねばなりません。それを見て、2008年の3月にチェイニー副大統領がトルコに訪問しています。しかし、トルコは欧州連合への加盟を望み、近年では隣国のギリシアと和解しはじめています。その一方で、トルコは反米化の傾向が見られるため、トルコの米軍基地を使用する計画は頓挫する可能性が高いです。その上、現在の米軍はアフガンとイラクへ部隊を展開しているため、イラン攻撃までやれば三方面作戦をやる事になります。これは兵站などを鑑みてみた場合、非常に無理のある作戦です。  したがって、米軍上層部は純軍事的な観点から、イラン攻撃が無理であると判断しています。そのため、最近ではイラン攻撃を求めるホワイトハウスと米軍との間に意見の対立がみられます。現に、ブッシュ政権との確執が原因で、米中央軍のウィリアム・ファロン司令官(海軍大将)は2008年の3月に辞任しました。加えて米軍のみならず、CIAもホワイトハウスから離反しはじめています。現に、2007年の12月に公表されたCIAなど米情報機関がまとめた国家情報評価では、イランが2003年以降核兵器開発計画を停止しているとの判定を下しました。これは CIAが、イランが核武装の意志はないと公式に認めたという事です。このように、現在の米国では、ホワイトハウス、米軍、CIAが分裂状態にあります。これは、ソ連末期における共産党、ソ連軍、KGBの分裂状態によく似ています。これは崩壊寸前の国家にみられる末期症状です。少なくとも、国家の中枢が分裂し、混乱している状態では、統合的な軍事作戦が実行できるとは到底考えられません。恐らく、イラン攻撃によるドル防衛は事実上不可能です。 *** 米国崩壊  ドルの信用崩壊による米国の没落は、ただの経済問題で済むとは考えられません。恐らく米国は武装した市民の内乱によって、ソ連の如く崩壊すると私は見ています。その理由と事態の経過について、これから説明させて頂きます。まずは現在の米国社会の実態について順を追って説明します。現在の米国は弱肉強食の市場原理が支配する国ですので、相互扶助や協力といった考えが非常に軽視される傾向にあります。こういった米国的な弱肉強食の競争社会においては、個人間の競争に敗れる事は社会からの脱落を意味します。すなわち、米国社会は全てのリスクを個人が背負う仕組みになっているため、仮に自分の側の非を認めた時点で、あらゆる責任を一手に背負わされてしまいます。そのため、米国市民は個人が異常なほどに自己の正当性を主張し、責任を擦り付け合う傾向があります。そのため、米国社会は常軌を逸した訴訟社会になってしまうのです。それらの社会背景から、個人にストレスがかかりすぎるために、現在の米国民は非常に情緒不安定です。そのため、米国民は統計的に見て、多重人格障害、境界性人格障害、自己愛性人格障害、摂食障害などの精神疾患を患っている例が非常に多いと言われています。それらの精神的苦痛から逃れるため、現在の米国内では麻薬の蔓延が深刻化しています。  また、精神的な不安感とアイデンティティ喪失によって、近年の米国市民はキリスト教原理主義へと走る傾向があります。日本では余り知られていませんが、米国は中東に負けないほどの宗教国家です。現に、米国民の80%はアンケートで「自分は宗教的である」と答えているという統計データもあります。これは小咄なのですが、ハリウッド映画などでは何か驚いた時に米国人が「Oh my god!」や「Jesus Christ!(ジーザスクライスト!)」と叫ぶシーンがよく登場しますが、欧州の人々は一般的にそのような発言はしません。これは米国人の宗教性が端的に表された逸話です。加えて、米国においては宗教の商業化も急速に進んでいます。近年の全米各地で、2000人以上の信者を抱えるメガチャーチと呼ばれる巨大な規模の教会が、2007年の統計で1500団体以上現れてきています。1回の礼拝に数千人から1万人の人びとが参加するものもあり、中でもレークウッド教会(テキサス州)は信者数4万人を数えています。信者の多くは大都市郊外に住む30〜40代の中間層で、寄付などで年収100億円に上るものもあります。このメガチャーチの最大の特徴は、マーケティングを行い、信者が欲しているものを提供する点です。したがって、信者の間違いを指摘し責めたてるような、昔ながらの説教ではなく、分かり易く前向きな説教が行われます。このメガチャーチの信者は「宗教保守」といわれ、共和党支持が多い言われています。宗教保守は中絶と同性愛に反対の立場の市民で、米国の全人口の少なくとも25%にのぼると推定されています。当然、メガチャーチは巨大な集票力を持つため、大統領候補は、その力を無視するわけにはいかなくなります。現在のブッシュ政権の最大の支持基盤は、このメガチャーチと宗教保守です。しかし、現在の米国では、プロテスタントの価値観が余りにも行き過ぎ、聖書原理主義の観点から地球が平らであると主張する一派まで登場しています。このように、近年の米国社会は、余りにもキリスト教原理主義的な性格が強まって来ています。中世ヨーロッパでの魔女狩りや異端審問を見ても明らかですが、一神教的な宗教を原理主義的に盲信し始めると、社会全体がどんどん不寛容なものとなって来ます。したがって、現在の米国社会は自由な国ではなく、非常に原理主義的で不寛容な宗教国家となりつつあります。  それに加えて、米国は歴史の無い人造国家であり、民族的な共同体がない事も大きな懸念材料です。すなわち、国家全体で共有できる単一の民族意識が存在しないため、白人・黒人・ヒスパニックに代表される異なった人種同士で非常に仲が悪いです。その上、もはや数の上で少数派となりつつあるWASPは、未だに有色人種への差別意識を非常に根強く持っています。米国社会での貧富の格差の拡大や、貧困の問題の背後には、人種差別が常に付きまとっています。建国当初から、米国の貧困層を構成して来たのは、往々にして黒人やヒスパニックといった人々です。彼らに対する人種差別が背後にあるので、貧困層への福祉が削られるのです。現に、サブプライムローンの焦げ付き問題においては、最初から焦げ付く事を承知した上で、黒人やヒスパニックと言った低所得者層に融資を行ってきた事が問題視されています。したがって、現在の米国社会は多様な人種が平和共存する社会などではなく、人種差別の不満と貧困による絶望が渦巻く殺伐とした社会と化しているのです。そのため、緊急時にはこの不満と絶望が爆発し、人種差別が人種間の闘争に発展しかねません。人種差別の不満が爆発した例として、1992年にはロス暴動があげられます。平時であってもこういった事件が起こっているのです。特に、ハリケーンカトリーナがニューオリンズを襲来した際には、自動車を持っていない低所得者層(主に黒人やヒスパニック)が被災地に置き去りにされた例さえもありました。  こういった不安要素が米国内にあります。その上で、ドル崩壊で米国が破産した場合にはどうなるのでしょうか。まず、米国の破産でドルが紙切れになれば、米国は従来の如く世界から品を輸入して、贅沢三昧の消費も出来なくなります。もちろん、ハイパーインフレによって米国経済は大パニックに陥り、消費者は値が騰がる前に品を買い占めようとするためスーパーでは陳列棚から品が無くなります。しかし、恐らくそれどころの事態では到底済まされません。何よりも恐ろしいのは、米国内で石油価格が暴騰する事です。これをきっかけにして、米国内にある矛盾が一挙に噴出する事が考えられます。まず、破産後の米国は、輸出産業が壊滅状態ですので、石油を買う外貨(主にユーロ)を稼げません。したがって、米国は国内油田しか石油の供給源が無くなるため、米国内での石油価格の急騰は避けられません。しかも米国内の油田は十年以内に全て枯渇すると言われています。加えて、米国は自動車社会であるため、ガソリンが手に入らなければ、自らの勤め先への通勤が出来ません。その上、米国の企業は労働者を簡単に解雇してしまうため、ガソリンが手に入らなくて通勤に支障が出れば、そのまま解雇されて収入源を断たれてしまうのです。そのため、米国の市民同士で生活をかけて必死でガソリンを取り合う事が予想されます。しかも、その争いに拍車をかけるのが、米国社会の異常なほどの競争主義です。教育段階で競争に勝利する事が善であると教えられて来た米国市民は、緊急時にはとにかく他者を押しのける事しか考えない事が想定されます。  そして、事態を更に悪化させるのが、米国社会における銃器の蔓延です。米国では個人の自衛のために、銃器保持が法律で全面的に容認されているのは、周知の通りです。そのため、米国全土で約二億丁の銃器が出回っていると推定されています。確かに、スイスでも国防の義務のために各家庭に自動小銃を備える事を義務づけられてはいます。しかし、これは国家という共同体の防衛のためであり、あくまで個人の自衛のためではありません。転じて、米国では自衛と称して個人間で撃ち合いをする事が、平時においても日常茶飯事です。そのため、ドル紙幣が紙切れになった場合には、ガソリンの取り合いから、銃器で武装した米国市民が撃ち合いをし始める事が想定されます。それどころか、銃器で武装したギャングがガソリンスタンドを襲撃する事件が起こる可能性さえも、否定は出来ません。この武装した市民が個人間で殺し合いをする惨状は、ホッブスが仮定した「万人の万人による闘争」という自然状態に他なりません。どうやら、ロックとルソーの仮説は虚構に過ぎなかったようです。  しかも、現在の米国は他国からの支援がまるで期待できません。なぜなら、米国は民主主義と正義の名の元で、全世界に対して再三の武力介入を行って来たからです。特に、イラク戦争は国連を完全に無視して強行した戦争であり、現在進行形で全世界からの非難を浴びています。米国が破産した際には、そのまま世界から見捨てられてしまうのは間違いありません。そのため、八方塞がりに陥った米国は、最悪な場合は没落どころか国家解体の危機にまで発展してもおかしくありません。万一の話ですが、州政府は連邦政府からの独立を宣言し、第二次南北戦争が勃発する可能性もあります。そこまで行かなくとも、事態の完全な収束には数年かかるでしょう。その頃には、米国経済は壊滅的な打撃を受け、米国からは資産家・知識人・研究者などが主に欧州に移住するか、亡命しているはずです。  この米国崩壊の原因は、アメリカ合衆国の建国理念に、協力と相続の思想が全くない事にあります。そもそも、米国はインディアンを虐殺した土地の上に築いた人造国家です。そのため、米国は民族的な共同体と、相続すべき歴史と伝統を、最初から持っていないのです。すなわち、ソ連と同じく米国も実験国家です。したがって、米国もソ連を同じ道をたどる事となりそうです。2008年現在で、米国社会の完全な崩壊を予言している人は、そう多くはいないはずです。しかし、あの国の内情が信じがたいほどに荒廃しているのは客観的事実です。そのため、米国の崩壊はただの杞憂で済むとは考えられません。恐らく、半世紀後の米国は1981年公開の映画「マッドマックス2」のような状態になるのではないでしょうか。これがアメリカ合衆国が自慢して来た民主主義の末路です。  これから先に、数多くの歴史家の筆によって米国の崩壊が考察され、多種多様に記述される事が予想されます。その内容は、おおむね想像がつきます。このアメリカ合衆国の崩壊の歴史的意義とは、近代主義の瓦解として結論づける事ができます。簡潔にまとめれば、歴史的に見ればアメリカ建国とフランス革命は双子の関係にあると言う事です。1789年フランス革命によって、世襲の帝政が否定され、近代が始まったと言えます。一方で、米国は新興国ですので、世代間で相続すべき歴史と伝統が元からなく、世襲の帝政も貴族制も持たない国でした。したがって、米国は自由平等を建国理念として掲げ、個人主義、私有財産制、国民国家といった近代主義に基づく人造国家として建国されました。すなわち、アメリカ合衆国は市民革命の申し子であり、近代主義の権化であると言えます。したがって、この米国が無惨に崩壊する事は、それすなわち近代の終焉を意味するのです。  極めて巨視的な観点から見れば、アメリカ合衆国の崩壊は世界史における近代の終焉であると定義できます。これは日本における近代主義への再評価にもつながる事が考えられます。日本における近代の始まりとは、1853年のペリー提督率いる黒舟の来航です。これにより、尊王攘夷論に基づく倒幕運動に火がつき、明治維新が起こりました。ちなみに、近年の研究では明治維新の中心メンバーが欧米のフリーメイソンと何らかの関与があった事が指摘されています。この明治維新以後、日本は近代国家への道を歩み始める事となりました。そして、米国によって開国を迫られた日本は、明治維新を通じて近代国家へと変貌を遂げ、日露戦争以後は西洋列強に肩を並べるまでに至りました。この近代国家への歩みは、全てペリー提督の来航による明治維新から始まったものです。したがって、日本における近代主義の見直しにあたって、明治維新の再評価が進められる事が予想されます。この明治維新は、非常に広義で解釈すれば、市民革命に近いものです。なぜなら、明治維新とは日本における近代主義の始まりに他ならないからです。確かに一般市民は参加していませんが、体制転覆で近代国家へ変貌を遂げる明治維新の内容は、市民革命のそれとよく似ています。一方で、これから先の時代における思想界の潮流では、米国崩壊に伴って、市民革命への批判の声が噴出する事が予想されます。したがって、私は思想界の潮流を先読みし、現時点で市民革命と明治維新を批判する反革命主義の立場をとります。 *** 中国崩壊  次は中国の崩壊です。2008年現在、北京五輪が終われば内需の冷え込みで中国バブルが破裂するというのはもはや一般常識です。現に、2008年の4月には上海の証券市場が暴落しています。そもそも、中国の経済成長は砂上の楼閣です。なぜなら、地方の役人が出世のために自らの受け持っている地域の経済成長率を水増しして中央に報告しているため、一般に公開されている中国の高成長率は非常に疑わしい数字です。しかし、世界の投資家は高利を求めて、その数字を鵜呑みにし、中国に投資して来ました。そのため、現在の中国経済ではマネーの飽和から物価高が進み、人民の生活は逼迫していています。しかし、一方で中国政府が金融引き締めをやれば株価が下がってしまいます。これは、一般に認識されているほど中国の実体経済が成長して居らず、中国が過大評価された結果、マネー経済だけが一人歩きした結果といえます。いわば実体経済とマネー経済の分裂状態です。この状態で、中国に対する海外からの投資が一気に引く事があれば、中国経済は大きな打撃を被る事になります。1997年のアジア通貨危機も、外資が突然引く事で、東南アジア各国の通貨と証券が暴落した事件でした。その上、現在の中国経済は米国経済への依存度が非常に高い構造になっています。近年、急速にユーロシフトを始めてはいますが、それでも中国の莫大な外貨準備の大半はドル建てで行われています。また、中国の主な輸出先である米国市場が崩壊するため、輸出不振で経済が減速する事も間違いありません。そのため、米国の破産に伴い中国経済が急速に崩壊し始める事は避けられません。これは、米国の経済圏である日本とまったく同じ事情です。  また、米国以上に中国の国内が荒れているのも事実です。例えば、内陸部と沿岸部の格差問題、虐げられた農民の不満、環境問題、莫大な不良債権などなどあげれば切りがありません。既に内陸部では数万人単位ので暴動が多発しています。これは暴動というよりも、戦争と形容する方が適切なほどの規模の暴動です。しかも、地方の軍閥は武器輸出で肥大化し、次第に北京政府の命令を聞かなくなり始めているのも不安要素です。長期的な問題は少子高齢化です。一人っ子政策に加えて、中国では男児が優遇されるため、女児殺しが非常に多いとされています。したがって、これから先は日本以上に急速な少子化により、中国の国家財政が破綻する事は明白です。その時には、中国国内は混乱を極める事でしょう。  それ以外にも、憂慮すべき深刻な問題があります。それは新型の鳥インフルエンザが流行する可能性がある事です。既に、2006年8月には、インドネシア保健省が鳥インフルエンザがヒトに感染して総計で十三人死亡したと報告を提出しています。仮に鳥インフルエンザが変異し、新型インフルエンザとなってヒトに空気感染しはじめれば、最悪の場合ペストの再来であるとさえ言えるほどの被害をもたらしかねません。現在、北京政府は北京五輪の開催を控え、この新型インフルエンザの感染情報を隠蔽している状態です。現在のように国際的な流通網が完成した中で、北京五輪の最中にパンデミック(感染爆発)が起こるような事があれば、もはや一巻の終わりです。こういった疫病の流行は、家畜と生活を共にしている中国南部において特に流行が危惧されています。ちなみに、これは日本では余り知られていない話ですが、あの第一次世界大戦が終結した直接的原因はスペイン風邪の流行であると言われています。スペイン風邪は感染者6億人、死者5000万人の被害を出しました。当時の世界人口は8~12億人であったと言われているため、実に全人口の約半分が感染した事になります。このスペイン風邪の病原体の正体は、近年の調査の結果、鳥インフルエンザウイルスに由来するものであった可能性が高いことが証明されています。  内政における中国の最大のアキレス腱は、チベット問題と法輪功です。まず、中国の歴代王朝は伝統的に宗教を非常に恐れ、宗教を弾圧する傾向にあります。なぜなら、古代から中国では王朝末期に新興宗教に帰依した農民が叛乱を起こし、易姓革命につながった例が多々あったからです。その典型例が、後漢末期の黄巾党の乱です。したがって、現在の中国では法輪功とチベット仏教に対し苛烈な弾圧が行われています。また、中国政府は豊富な水資源を持つチベットを確保するため、チベットでの民族浄化も行っています。このチベット問題を国際社会が無視するのは、過去にチベットがナチス・ドイツと結びつきがあったからだという説もありますが、真相は分かりません。しかし、仮に中国がチベットを失う事があれば、人口爆発で水不足に喘ぐ中国北部は更に疲弊する事になります。  一方で、現在のCIAは屋台骨の揺らいでいる中国共産党を支援しています。なぜなら、米国のロックフェラー財閥は中国に対して莫大な投資を行って来ているため、中国共産党が倒れてしまえば、貸し付けが焦げ付いてしまうからです。そもそも、70年代におけるニクソンとキッシンジャーの外交を見ても分かる通り、アメリカ合衆国と中国は非常に強い結びつきを持っています。米国は一方で中国に投資して利益をあげながら、一方で沖縄の米軍基地から中国を威嚇する強かな外交を行って来ました。そして、現在の米国は、日中戦争か日中冷戦を演出して、日本に武器を輸出して稼ごうという考えを持っています。そのため、CIAは中国共産党に「お化け役」を演じて貰わねば困るという事情があります。したがって、現在の CIAは日中を離反させつつ、一方で中国共産党を支援するという難しい仕事を実行している状態です。そもそもこういった複雑な工作活動は、大概は失敗に終わるものです。したがって、恐らく中国共産党の力は弱体化し、内陸部まで支配力が及ばなくなり始めるはずです。  この流れを見て、ロシアが中国内陸部の新疆ウイグル自治区における独立運動を支援する可能性があります。なぜなら、経済力と軍事力をつけ始めた中国に対して、ロシアが脅威を感じ始めているからです。もう一つの理由は、中央アジアのロシア軍がイスラーム化している事です。そのため、新疆ウイグル自治区の住民はイスラム教徒ですので、中央アジアのロシア軍が独立を支援するのは、宗教上の観点から見ても妥当な事です。仮に、ウイグルが独立すれば、そこにロシアの傀儡政権が立ち上げられ、中国の内陸部はロシアの間接支配下に置かれる事になります。また、インドは水資源の豊富なチベットの獲得を狙って、ロシアの尻馬に乗るはずです。チベット仏教の指導者であるダライ・ラマ・14世はインドに亡命しているため、インドにとってはチベット解放という宗教的な大義名分が与えられています。したがって、インドによるチベット独立支援は、国際社会を味方につける事が予想されます。仮にチベットが独立すれば、そこにはインドの傀儡政権が樹立される事になります。そうなれば、中国は内陸部と沿岸部で国が分裂し、新疆ウイグル自治区はロシア、チベット自治区はインドによって分割統治される日が来る事になります。そして、経済格差の広がった内陸部と沿岸部で対立が深まり、最悪の場合は内戦が勃発すると私は予測しております。誠に不謹慎な話ですが、中国で内戦が勃発すれば、日本は軍需景気で潤う事が予想されます。これからは、中国沿岸部をロシアの緩衝地帯にするために、日本が武器輸出をする時代が来るかもしれません。 *** 預金封鎖  現時点で GDP の二倍に当たる約一千兆円もの負債を抱える日本は、急速な少子高齢化も相まって近々財政破綻する事が危惧されています。この約一千兆円の負債は、一年間に五兆円づつ返済しても完済には二百年かかる額です。一千兆円の国債に3%の金利がついただけで、利払いは三十兆円です。国の歳入が約四十兆円ですから、歳入の約75%が利払いだけで吹き飛ぶ数字です。仮に現在の状態で長期金利が上昇した場合、国債の利払いだけで国の歳入を超えてしまいます。そこまで財政状態が悪化してしまえば、もう国家予算を組めなくなってしまうでしょう。実は、ゼロ金利政策は、膨大な累積債務に伴う利払いを圧縮する意図もあって、実施されて来たわけです。一方で、よく日本には対外債務がないから大丈夫という経済学者がいますが、それは見え透いた詭弁です。低利で格付けの低い日本国債は、外国人投資家からすれば旨味のない商品なので、売りようがないだけです。  そもそも、国内で国債を消化するというのは、民間銀行が政府の発行する国債を買い取るという事です。実は、日本の市中銀行はどこも公的資金を導入されているため、政府に対して頭があがらず、不履行になるのが確実な日本国債を押し付けられているわけです。これは水面下で、日本国民の銀行預金が国債の補填に回されていると言う事です。そのため、将来は預金封鎖によって預貯金が政府に没収される事は、現時点でほぼ確定しているわけです。加えて、ペイオフ解禁により、日本の銀行が破綻した際の、外貨預金に対する法的保護は一切なくなっています。これは恐らく、キャピタルフライトを防止するための政策です。また藤井厳喜氏の指摘によれば、2004年に新札が発行された事がありましたが、あれは国民のタンス預金を測定するために行われた政策との事です。この藤井厳喜氏は竹中平蔵氏と同じくハーバード大卒で、あまりにも親米的かつタカ派な意見を主張してきたため、最近では信用を失墜してしまった人物です。しかし、彼のアナライズには一理あるのではないしょうか。また、新札発行の前夜には、マスコミを通じて不法滞在の外国人が偽札を発行する事件をやたらに取り上げていました。あれはマスコミを通じて政府が国民を欺くための布石です。すなわち、日本政府は国民の資産を用意周到に囲い込み、国が破産した後には資産を没収し、その後は大増税を行う手はずを既に済ませています。  加えて、日銀と連銀は既に国債買い切りオペレーションを常態的に実施しています。これはケインズ的な量的金融緩和です。実は、これは政府の国債を日銀が刷った貨幣で買い取る行為です。しかし、これは財政法で禁止されている政策で、金融の禁じ手であるとされています。国会で特例法を通して無理に実施しているのですが、やはり好ましい政策ではありません。なぜなら、国の借金を国が肩代わりするため、これはタコが自分で自分の足を食べているようなものだからです。言い換えれば、貨幣の増刷で破産を先延ばしにしているだけです。恐らく、こうも貨幣価値を薄めてしまえば、何らかのショックをきっかけに、いずれハイパーインフレが襲来するでしょう。その際、ヘッジファンドが円の空売りをするはずです。いくら日銀が円の買い支えをしても、ヘッジファンドから一斉に売り浴びせを食らえば、ひとたまりもないでしょう。その結果、超円安で国内の物価が高騰するはずです。  そのため、米国の破産によって、日本経済が連鎖破綻する事が十分考えられます。まず、仮に米国経済が破綻すれば、対米輸出でドルを稼いでいる日本は大きなダメージを被る事になります。また、膨大な米国債が紙切れになるため、日本の銀行が含み損で連鎖倒産する事も考えられます。また、現時点でウォール街の株の値動きと兜町の株の値動きはほぼ連動しているため、米国が破産すれば日本で株価の暴落が起こる事もまず間違いないです。そのため、世界経済における原油価格の暴落が、日米の連鎖倒産にまで発展する事は間違いありません。そして、預金封鎖で国民の預貯金は没収され、現在流通している紙幣と国債は恐らく全て紙切れになるでしょう。  こういった経済的な混乱を見据えて、富裕層は既に資産疎開を水面下で進めていると言われています。金融ビッグバンで金融の自由化が完了したのであればなおさらです。例えば、アルゼンチンが財政破綻した際にも、富裕層は資産をドルに換えて難を逃れています。仮に、私がちょっとした資産家であれば、世界最高の信用度を誇る日本の旅券を用いて、欧州で口座を開設し、資産をユーロ化して疎開させています。それか、外資系の投資信託に分散投資して高利を追求しています。また、日本から資本が逃げる原因は、何も預金封鎖の不安ばかりではなく、高すぎる相続税や、ゼロ金利にも原因があります。現に、日本国内の資産家は相続税を嫌ってオセアニアや香港に資産を移す例が多いわけです。  もちろん、一度政府が債務を踏み倒す事があれば、その後の信用回復は非常に困難になります。特に、少子高齢化で経済成長を望めない日本は、通貨と国債の国際的な信用を回復するのは実質的に不可能となるでしょう。すなわち、この信用崩壊は日本における資本主義経済の実質的な終わりを意味する事になります。また、2008年現在の時点で、その破産の時期がいつになるかを正確に把握するのは難しいです。しかし、明確な根拠に基づく推測ではないのですが、私は2010〜2014年までの間になると見ています。また、日米の破産の前夜には、恐らく金融業界から内部情報が漏洩するため、流通業界では生活物資の買い占めが行われるはずです。そういった動きが見られた場合は、すぐにでも破産すると覚悟すべきです。この日本の財政破綻そのものはかなり前から予測されていた事です。例えば、1990年5月初版発行の澤田洋太郎著『日本滅亡論』では、日米の経済破綻と欧州の主導権獲得までが予測されています。この著作はほとんど脚光を浴びていないのですが、隠れた名著です。  しかし、日本社会において財は政破綻に対する危機感が未だに深まらない不思議な状態が続いています。これは現在の管理通貨制度に原因があります。現在の通貨は政府への信用から通貨価値が成立しているものであるため、政府への信用失墜は即、通貨価値の暴落へ直結してしまいます。したがって、現在の日米両政府は、情報統制を敷いて非現実な楽観論を宣伝し、自国民を欺く事で何とかして貨幣価値を守っている状態です。そのため、経団連や政府高官などが、著名な経済学者に対して真実を漏らさぬよう釘を刺している事が考えられます。同時に、正確な負債総額を政治家が国民に伝えないのは、自らの政治責任を国民の側から厳しく問われてしまうからです。仮に、マスコミを通じて真実が広く世間に知れ渡ってしまえば、信用不安で株価が暴落する上、政治家への責任追及の声が上る事になるでしょう。しかし、マスコミはあくまで真実を報道しようとはしません。なぜなら、民放では視聴率を獲得する事が最優先だからです。あまり暗い話題を放送しても視聴率が上がらないため、真実に関する報道は自粛しているのでしょう。したがって、在野の経済学者の主張や絶版になった古い書籍の方が、信頼できる情報源となりうるわけです。この論文であえて古い書籍を参考文献にしているのではそのためです。 #comment_num2(,size=40,vsize=10,below,disableurl,nodate) #include(国家社会主義の綱領-第一章-第三節) #include(国家社会主義の綱領-第一章-第四節)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。