国家社会主義の綱領-第二章-第五節

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#contents_line(sep= - ,level=2, page=国家社会主義の綱領-第ニ章-第五節) *第二章 **第五節 財政再建 ***計画経済  ここからは復興の中期段階です。まず、現代のフリードマンに代表される新古典派経済学は、財政破綻時には全く有効なものではありません。なぜなら、市場原理に任せていてはインフレが悪化するだけだからです。国家破産後のインフレの抑制のためには、まずは価格統制を敷いて市場原理を凍結し、統制経済に移行せざるをえません。この統制経済とは、行政が介入して市場経済を法的に規制する事で、市場の歪みを是正するものです。すなわち、旧来の護送船団方式の復活です。また、国富を管理統制して労働者に投下すれば、内需が底堅くなるので、国民経済の安定化が期待できます。  しかし、価格統制を目的とした統制経済だけではまだまだ不十分です。財政破綻で通貨が紙切れになれば、流通システムが一度完全に麻痺してしまいます。その後には、第三次産業に従事してきたホワイトカラー労働者が一挙に職を失う事になるので、失業率が劇的に上昇する事は間違いありません。そのため、国家破産後は、物資と雇用を国家が生産して分配する計画経済を必然的に導入せざるをえなくなります。この計画経済とは統制経済が更に厳格化されたものであり、これが本格的に導入されれば完全な社会主義国家となります。確かに計画経済では、勤労意欲の減退などの問題が起こりるのは百も承知です。そのため、こういった計画経済の問題点を是正するために、優れた能力を発揮した労働者に対して、国家が特別の報酬を与えるといった特例制度を導入するべきです。そもそも、勤労意欲に関する話なのですが、老人の資本家が若者の労働者を苛烈に搾取する現在の日本の資本主義の方が、よほど労働意欲の減退を招くのではないでしょうか。むしろ、働いた利益が労働者に正当に還元され、まともに育児の出来る経済構造を作った方が、若い労働者の勤労意欲が刺激されると私は考えます。  また、長期的にみれば、マルサスが『人口論』で言及した通り、これから先は人口爆発で天然資源が枯渇する事は避けられません。その結果、ゼロ成長経済に対応するため、全体主義的な計画経済を選択せざるを得なくなります。恐らく孫の世代では、限られた資源を節約するために、統制経済の次にはどうしても全世界的に計画経済を導入せざるをえなくなります。どのみち、消費によって経済規模を拡大する米国の水ぶくれ資本主義は数年以内に破綻します。そうなれば、思想的な揺り戻しが起こり、計画経済への拒絶反応も薄れてくる事が予想されます。同時に、この計画経済の目的は、生産を基にする筋肉質な工業国家へと回帰する事にあります。これは消費よりも生産を優先し、職人や大工を保護する政策であると言えます。  そして、次世代の計画経済は、過去にチリで試験的に導入されたサイバーシン計画を改良した電子計画経済と呼べるものになるでしょう。このサイバーシン計画とは、サルバドール・アジェンデ政権期間中のチリで1971年から1973年にかけて行なわれた、実時間のコンピュータ制御による計画経済機構の試みです。これは首都サンティアゴにある中央コンピュータと、チリ各地の工場とをテレックスで接続し、サイバネティックスに基づく制御を行うことを目指したものです。  このように表現すれば、超ハイテクな管理社会の如く大仰に聴こえてしまいます。しかし、この技術は現在の日本においてとっくの昔に実用化され、今では完全に社会に浸透した身近なものです。その日本におけるサイバーシン計画とは、コンビニの販売時点情報管理(略称:POS)です。日本のコンビニでは、バーコードを利用する事で、とうの昔にオンラインの流通管理体制を完成させています。これは技術的にはサイバーシン計画と全く同じものです。こういった流通管理の電子化は、米国のウォルマートにせよ、フランスのカルフールにせよ、小売業であれば世界中どこの企業でも既に完了させている事です。そのため、情報技術を用いた中央集権的な計画経済は、そういった小売業の協力さえあれば、非常に速やかに実現できるのではないでしょうか。したがって、一時期盛んに宣伝されていたユビキタス社会の将来像は、どうやら電子計画経済となりそうです。 ***補足説明 マルクス経済学  デフレ不況と少子化の原因は、労働者への苛烈な搾取と市場原理主義による過当競争にあります。そのため、私は新古典派経済学と市場原理主義を断固として否定します。したがって、私はマルクス経済学と護送船団方式を支持する立場です。なぜなら、若い労働者に富を再分配すれば、消費が活性化して景気がよくなり、税収増が期待できるからです。極めて単純に言えば、若い労働者に十分なカネが回る構造をつくれば、景気がよくなって子供が増えます。小銭を持った若者が子作りに励むのは当たり前の事です。  これからは、マルクス経済学を数学的に計量化して、数式モデルを完成させる試みを、大学が主導になって行っていただければ幸いです。特に、若い労働者への資本の再分配による内需創出と、出生率の上昇について分析し、それを公式化するべきです。この資本の再分配による内需創出理論と出生率上昇理論を主軸に、体系だった経済モデルを完成させるのは十分に可能なはずです。世代間の資本の分布を分析して、それが税収にどういった影響を与えるかを分析するのも大切です。若い労働者への資本の再分配が、経済全体にどういった影響を与えるのか、その相関関係を客観的データを基に分析すべきです。  また、富の再分配によって、一つの系の中で富が循環するのであれば、市場規模を拡大する必要はありません。なぜなら、資本家が利子によって得た不労所得は、富の再分配で労働者に返還されるため、資本家への利払いを続けるために富の総量を増やさなくても済むからです。その結果、無理な通貨の増刷は必要なくなります。つまり、貨幣の増刷は累積債務を拡大するため、通貨の増刷で消費を促すのではなく、富の再分配で内需を振興し、消費を促すべきです。この富の再分配を徹底しているのが、欧州の社会民主主義です。いわば、米国の市場原理主義は搾取的な高利貸しですが、欧州の社会民主主義とは育成的な融資制度です。  この場で断らせて頂きますが、私は富の再分配の経済的合理性を重視して、マルクス経済学を支持しているだけです。つまり、国家社会主義が、経済機構として最も稼働率が高いと判断して選択しているわけです。そのため、イデオロギーとしての共産主義や唯物論などには全く関心はありません。そもそも、原始共産制も市場原理主義も、原理主義である事に変わりはありません。したがって、両方とも教義を忠実に守れば予定調和的に万事がうまく行くという、宗教的な信仰心に似た類の物です。そもそも、イデオロギーの怖さとは、その視野狭窄的な独善性にあります。こういった極右・極左の原理主義は、中庸の徳を著しく欠くため、共に斥けるべきであるというのが私の主張です。  また、日本国民は深く自覚はしていないのですが、日本国内の産業は一部の財閥によって所有されているのです。こういった財閥の一族は一般大衆の目にも触れず、マスコミにも全く姿を表さないのです。しかし、日常生活で一般大衆が上流階級の富豪に出会う事がないだけであり、実際には日本にも桁違いの資産家は居るのです。確かに、富の過剰集中は排除すべきですが、こういった既存の財閥を解体するのは非常に困難な事業です。そのため、むしろ国内の財閥への利益誘導を行い、彼らに中産階級の保護育成を約束して頂く方が遥かに合理的であると考えています。そもそも、中産階級の保護育成が長期的な利殖につながるのは上記の通りです。つまり、私はこのマルクス経済学の枠組みの中において、財閥の存在は一切否定していません。 ***私財限度  マルクス経済学を実施する国家社会主義とは、教条的な原始共産制とは全くの別物です。そのため、私有財産制、複数政党制、言論の自由といった民主主義の原理原則は堅持します。しかし、私有財産権の制限を加え、富の再分配を徹底する点が、米国的な市場原理主義との最大の相違点です。具体的には、累進課税や高率の消費税によって、資本家から労働者へ富の再分配を行うわけです。これは即ち、私有財産限度を設けるという事です。また、日本ではそれをさらに改良して、徹底したものにすべきです。例えば、高額の宝飾品等には高い消費税率をかけ、生活必需品に対しては無税にするなど、メリハリのある税制を採用する事が考えられます。加えて、年収は上限で一億円までとし、それ以上の所得は徴税して国庫に返還し、国民に再分配するといった税制が考えられます。これはインドの経済学者のラビ・バトラ氏が現在提唱しておられるプラウト主義という経済機構とほぼ同じものです。政治的には、行政の権限拡大による大きな政府を志向したものです。  同時に、私有財産権の一種である知的財産権のあり方にも変化が出てくるはずです。なぜなら、インターネットの発展は知的財産権の概念を浸蝕する側面があるからです。近年では、iTunes Music Storeによる音楽配信サービスの展開や、Amazon.comなどの通信販売の発展によって大手レコード店で売上が減少傾向にあります。その良い例が、米国における2006年8月20日のタワーレコードの倒産です。しかし、こういったレコードを扱う企業の倒産の根本原因は、やはりファイル共有ソフトが原因であると考えられます。Winnyなどのファイル共有ソフトを用いれば、ネット上からいくらでも映画や音楽などのコンテンツを無料でダウンロードできます。そのため、レコード店が倒産するのも当たり前の事です。そもそも、インターネットとは、本質的に情報の公開と共有に向いたシステムであるため、情報の秘匿や独占が難しいシステムです。したがって、電子上で情報を私有する事は難しいのでないでしょうか。そのため、遅かれ早かれ、知的財産権の概念は瓦解してしまうと私は考えております。例えば、ソースコードを全面公開していてるLinuxは、将来的にはWindowsを駆逐してしまうでしょう。そもそも、Windowsは出荷時に特殊なトロージャン型ウイルスが仕込まれている説があり、米国の国家安全保障局(略称:NSA)からハッキングされる恐れがあるため、安全保障上極めて危険な存在です。したがって、政府内でのオンラインの情報処理は、ソースコードが公開されていて安全が保障されたLinux以外は使用してはなりません。  加えて、近年では石油価格の高騰により、紙メディアの印刷費用が急騰しはじめています。国家破産後には、超円安で紙と石油の値が暴騰するため、更に紙メディアの費用が騰がってしまします。したがって、経済性の観点から情報伝達は電子化され、インターネットを通じて公開せざるを得なくなるでしょう。当然ながら、インターネットを通じて公開された情報すぐに複製されてしまうので、記者を稼業とするのは難しくなってくるはずです。こういった理由から、私有財産限度の流れの中で、知的財産権の制限も将来的には盛り込まれるようになる事でしょう。 ***行政再編  財政再建のために、中央政府の簡略化も求められます。現在の日本の中央政府の行政機構は、無駄が多いという以前に民主的であるとは言い難いです。なぜなら、国会で審議されて通される一般予算より、官僚の裁量で使われる特別予算の方が遥かに大きいからです。具体的には、郵便貯金が財政投融資という形で特殊法人に注ぎ込まれています。しかも、東京の都政を除く日本の財務管理は、全て単式簿記で行われているため、資金の出入りが非常に不透明です。その上、情報公開法が制定されながらも、特殊法人の会計情報が公開されていない等、官僚の利権はもはや聖域と化しています。しかし、財政面での負担を少しでも軽減させるために、こういった官僚の利権は一刻も早く解体すべきです。その上で、電子政府を全面導入して、会計情報を全面公開すべきです。これは説明責任を官僚に課して、腐敗を予防するためです。また、政府の財務会計では、単式簿記をやめて複式簿記を導入すべきです。こういった一連の行政改革で統治機構を簡略化して、稼働効率を高めるべきです。それにより、財政均衡の実現を目指すべきです。こういった緊縮財政は国内でのデフレの原因になりえますが、行政再編で政府の構造的腐敗を是正し、余った予算を別の部門に割り振る試みを始めるべきです。  加えて地方自治の簡略化も求められます。現在の都道府県は、余りにも数が多すぎるため、地方自治は無駄だらけです。これは財政再建の上でも好ましい事ではありません。その上、日本の地方自治体は地元の財源から行政を運営するのではなく、中央から予算を取り付けてくるものです。こういった、形だけの地方自治は余りにも非効率です。そのため、都道府県制に基づく現在の地方自治は撤廃し、道州制を導入すべきです。ここで言う道州制の導入は、地方分権の要素は含まず、あくまで行政機構の簡略化を狙った政策です。しかし、州知事は中央から任命された者が就任する形をとるべきです。これは中央集権型の同州制です。なぜなら、余り地方分権をやりすぎた場合、北海道はロシア、九州は中国に間接侵略されてしまい、国家が分裂してしまう恐れがあるからです。 **第六節 外貨獲得 ***国富売却  次に求められる課題は、外貨獲得です。まず、米国は石油の購入のために外貨が必要なのですが、それを鑑みてみても、十分資源に恵まれた国です。一方で、資源小国の日本は、海外から生活物資を輸入するために、絶対に外貨が必要です。また、ここで指す外貨とは、ユーロとルーブルです。なぜなら、前述の通り次の世界基軸通貨はユーロだからです。また、現在のロシアは、ルーブルを国際的に流通する通貨にする事を目指しています。したがって、ロシア貿易においてルーブルが必要な構造が既に出来上がりつつあります。しばらくの間は自国通貨の円が実質的な紙切れとなるため、価値を持つ通貨はユーロとルーブルだけになります。したがって、日本国内でも一時的にユーロとルーブルが流通する可能性さえも想定しておくべきです。これは大東亜戦争の敗戦後に、日本国内でドル紙幣が高い価値を持った状況と同じです。  財政破綻が起こった場合には、超円安とインフレが起こる事が予想されるため、輸出においては高い国際競争力を得る事が出来ます。その具体的な輸出先は欧州とロシアです。なぜなら、この二つの経済圏は日米が破産した後にも比較的堅調な経済力を維持すると見られているからです。恐らく、日本の商社は全力で国内の在庫処分のために奔走せねばならなくなるでしょう。また、欧州に大量の品を卸す場合、三井物産を経由するのがベストです。なぜなら、三井財閥はロスチャイルド財閥との関係が深いからです。また、ロシアに品を卸す場合は、若狭湾から輸出する事になります。そこからウラジオストクまで品を卸せば、後はシベリア鉄道で欧州まで物資を運搬できます。シベリア鉄道はウラジオストクーモスクワ間までをつなぐ鉄道ですが、モスクワーサンクトペテルブルク間にも鉄道は敷設されています。したがって、ウラジオストクから欧州各国までをつなぐ鉄道網は既に存在しています。  したがって、日本国内の金品、不動産、優良企業の株式などは、全て欧州かロシアに売却して外貨に換えざるを得なくなります。その売却に関する処理だけで恐らく丸数年はかかる事が予想されます。そのために、今後は世界中から会計士や弁護士が来て日本の資産を監査・評価して売却処分するようになります。そもそも、現時点でも日本の優良企業は米国系の外資に半ば買収されているのです。しかし、日米が破綻した後には、米国系の外資は鳴りをひそめるはずです。なぜなら、米国の自国通貨であるドルが劇的に弱体化するからです。転じて、欧州はユーロ高を背景に圧倒的な金融力を得る事が予想されます。そのため、日本の国富を売り払う相手先は、欧州系の外資にならざるを得なくなります。これは国富を担保に融資を募る事と同じ意味です。したがって、前述の多国間協議における最大の要点は、日本で樹立される新政権が、復興資金を調達するために、欧州に金融面での援助を要請せざるを得ないという点にあります。その結果、例えば後述の私有地の国有化案の正体は、国内の土地を安く欧州に売り渡すという事になるでしょう。  また、インターネットが復旧した後には、個人事業主によるネットを通じた仲介業も盛んに行われるはずです。ならなら、国が破産した際には、資産家が現金目当てで自らの所持品を安く手放す事が予想されるからです。例えば、宝飾品、高級腕時計、ゴルフクラブなどの類の高級品です。これらの品は生活必需品ではないため、真っ先に売却されるはずです。それらを販売する手段として、 eBay などに代表されるインターネットの競売サイトでの競売が活用されるはずです。なぜなら、わざわざ品を持って現地にまで飛ぶ手間を省けるからです。つまり、国が破産した後には指輪を売って小麦を買う構図が出来あがるのです。そのため、恐らく国内にある金目な品は、ほぼ全て海外に格安で売り叩かれてしまう事になるでしょう。 ***珪素産業  次の課題は、輸出産業の振興です。現在の日米は自国の通貨高を背景に、自由貿易でモノを買い過ぎて来たため、産業が空洞化してしまいました。これは市場原理主義の枠組みの下で、通貨を増刷して消費を刺激する金融政策を続けすぎた結果です。しかし、長期的に安定した外貨獲得を続けるためには、加工貿易で工業製品を輸出せねばなりません。そのため、国家社会主義の政治においては、贅肉をそぎ落とした筋肉質な工業国家に祖国を戻す事を目標とします。これは、金融資本主義から、産業革命的な工業を基本とする産業国家への回帰を指します。  したがって、物流を政府の管理下におき、鉱工業の振興に物資を割り振る傾斜生産方式の採用するべきです。加えて、富の再分配による中産階級の育成と同じように、保護貿易のよる製造業の育成を行うべきです。また、その保護貿易に加えて、積極的な行政指導も行い、企業間の技術提携を促進させるべきです。なぜなら、世界的に経済競争が激化する時代の中で、日本の企業だけが国内で内輪揉めしているわけにはいかないからです。また、近年の日本の大手企業は丸投げ、中抜きといった中間搾取をやる悪癖が染み付いてしまっていると言われています。これは野口悠紀雄氏の指摘ですが、大手企業の下に中小企業が下請として存在し、上から仕事を与えてもらうという形態は、1940年に施行された国家総動員体制の名残です。実質的な生産活動に従事している中小企業が、大手による搾取で疲弊しているのでは、国家の長期的な展望にも支障をきたしてしまいます。そのため、中小の下請企業を法律で手厚く保護すべきです。  この流れの中で、工業製品の開発において、国内での独自規格の採用を即刻やめるべきです。例えば、携帯電話もテレビも独自規格を採用しているので、そのままの形で海外に輸出しても海外では使用できません。なぜ、加工貿易で外貨を稼いでいる技術立国が、自国内だけでしか通用しない独自規格を採用するのか全く理解に苦しみます。そもそも、世界市場よりも遥かに狭い日本市場を優先するとは、本末転倒もいい所ではないしょうか。こういった、国内市場を優先する不可解極まりない行為は止めて、世界市場に対して適応していかねばなりません。  その上で、輸出産業の内容も見直さねばなりません。従来の重厚長大型産業はインドや中国などの新興勢力に対して、人件費の面で圧倒的な不利に立たされてしまっています。その上、資源枯渇で原材料の値が既に高騰し始めています。したがって、重厚長大型産業から将来的には撤退する事を視野に入れて動かねばなりません。具体的には、自動車、鉄鋼、石油精錬、航空機などの産業です。つまり、金属で出来た乗り物を石油で動かす時代は、遅かれ早かれ終わってしまうのです。これも資源枯渇に関わる話なのですが、希少金属の産出国が非常に偏っているのも問題です。例えば、タングステンやインジウムは中国が主な産出地です。仮に、何らかの原因で対中関係が悪化する事があれば、希少金属の禁輸処置が行われる可能性も否定できません。こういった希少金属はハイテク産業を維持する上で必要不可欠ですので、平時から戦略備蓄をし、しかも徹底的なリサイクルに努めねばなりません。ちなみに、日本国内でのこういった重化学工業は、三菱重工が最大手です。なぜなら、大東亜戦争において、三菱重工が零戦や戦艦武蔵などの兵器製造を受注して来た経緯があるからです。現在でも、三菱重工が90式戦車に代表される自衛隊の装備を製造しているのです。しかし、これからは資源枯渇という不可抗力によって、重化学工業の斜陽化は避けられない運命にあります。  また、資源枯渇のみならず、環境問題の観点からみても、重化学工業の斜陽化は避けられません。例えば、カドミウムがイタイイタイ病、メチル水銀が水俣病といった公害の原因になったのは有名な話です。こういった重金属は凄まじい毒性を持った物が多く、その中でも原子力サイクル事業で出てくる劣化ウランやプルトニウムの毒性は最悪の部類のものです。加えて、石油化学は環境汚染が激しい上、合成樹脂などから溶け出す高濃度の環境ホルモンは生物の新陳代謝に甚大な悪影響を及ぼします。それだけではなく、今後は石油文明そのものが確実に限界に達し始めます。石油の枯渇はもちろんなのですが、それ以前に石油文明そのものが環境汚染によって急激に老朽化しはじめています。例えば、石油から造られたアスファルトや、酸性雨に弱いコンクリートは劣化が急速に進み始めています。例えば、ニューヨークの国連ビルは老朽化が進んで取り壊しが検討され始めているほどです。そもそも、コンクリートを急速に劣化させているこの酸性雨の原因は、石油を燃焼した際に出る排出ガスに含まれている窒素酸化物です。石油文明は汚染が余りにも激しいため、今世紀中に継続が不可能になるでしょう。  これは私の推測なのですが、これまでの石油文明は早晩終わりを告げた後には、それからは「珪素文明」なるものが始まると見ています。これは煉瓦と陶器の文明を高度にしたものです。この珪素文明を築く産業を、珪素産業とこの場で名付けさせて頂きます。現在でも既に、ケイ素から合成された合成繊維は、軽くて丈夫なのでスポーツ用品や航空機の材料につかわれています。例えば、従来の航空機の機体素材には、アルミニウム、銅、マグネシウムなどの合金であるジュラルミンが主に用いられて来ましたが、既に金属の価格が高騰し初めているので、炭化ケイ素が航空機をつくる上での代替素材となりはじめています。新型旅客機ボーイング787ドリームライナーでは、アルミより軽いとされる炭素繊維が機体の50%に用いられており、機体の軽量化により従来の航空機よりも燃費を20%向上させる事に成功しています。ここで触れられている炭素繊維とは、主に炭化ケイ素の事です。このセラミックスの一種である炭化ケイ素(シリコンカーバイド)は、化学的にはダイヤモンドとシリコンの中間に位置する物質で、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れます。これは主に研磨材、耐火物、発熱体などに使われています。また、半導体でもあることから、電子素子の素材にもなります。これは非常に優れた性質を持つ物質であるため、公汎な分野の工業製品の原料となりえます。こういったセラミックスやシリコンはケイ素から成るものなので、これらの品の原料は、SiO2からなる珪石や石英です。簡単に言えば砂の事です。金属資源は将来的に枯渇しますが、こういったケイ素であれば豊富にあるので、将来性があると言えます。また、セラミックスは陶器の一種なので、人体の側への影響が小さく、医療用の人工骨として使用されているほどです。  総合的に見れば、珪素産業を中心に据えた輸出産業を振興すれば、工業によって生計を立て続ける事は十二分に可能であると言えるでしょう。また、珪素産業は知識集約型で高い付加価値をもつ軽薄短小工業と直結しています。こういった軽薄短小工業の代表例とは、情報技術産業、セラミックス等の新素材、環境関連商品、遺伝子技術、ナノテクノジー等です。この産業によって生み出される製品であるセラミックス、太陽電池、コンピュータ、ナノマシン等の原料は、全てシリコンです。現在、日本はこの全ての分野で世界最高水準の地位に立っています。そのため、日本の産業界の未来は決して暗いものではなく、むしろ十分に希望に満ちた明るいものであると結論づけられます。 **第七節 失業対策 ***雇用分配  これまで失業対策と言えば、公共事業による雇用創出が行われて来ました。しかし、私は失業対策のためにはワークシェアリングと呼ばれる労働政策を導入するべきだと主張します。これは労働時間を短縮して、給与を減らす代わりになるべく多くの人に雇用を与える政策です。これは欧州では70年代から実践されてきた政策であり、既に実績も残されています。実例を上げれば、フランスでは労働時間は週35時間までと厳しく規制されています。また、ドイツ人の一年間の平均労働時間は1450時間で、これは平均すれば週休三日制に近い数字です。転じて日本では、かたや一方に過労死する人間が居ながら、かたや一方に失業者が居るのです。この日本の労働事情は、極めて歪であると言わざるを得ません。そのため、ワークシェアリングを導入する事で、限られた雇用を分散して、失業率の低減を試みるべきです。また、労働時間が短縮されれば、余暇における消費活動が活性化され、内需が創出されるという利点もあります。  また、労働政策の重視する事には別の理由もあります。なぜなら、先進国では金融政策が全く通用しない時代に入っているからです。例えば、ゼロ金利政策やケインズ的な財政支出は全て効果が現れなくなっています。専門的に言い換えれば、質的金融緩和も量的金融緩和も既に限界に達しているのです。そもそも、経済成長が終わった時代に、金利や貨幣の総量を操作する政策をやっても、効果がないのは当たり前の事です。むしろ、ケインズ経済学に基づく財政支出は、財政破綻後には悪性インフレの原因になるため全面禁止にすべきです。特に欧州の政治では労働政策への重点が高いのはそのためです。つまり、今後は労働政策で経済を調整するしか道が残されていないため、ワークシェアリングによって失業リスクの分散を試みるべきです。  そのワークシェアリングための最初の政策は、労働基準法の遵守を徹底させる事です。したがって、欧州に倣って雇用確保ための規制強化を、日本でも包括的に執り行う必要があります。特に、人材派遣会社は明らかに中間搾取をしており、これは労働基準法に触れるため、漸進的に締め付けを強化する必要があります。既に許認可が下された人材派遣会社は仕方が無いにせよ、これ以上の同種の企業の新設に対しては、行政は絶対に許認可を下ろしてはなりません。そして、次の政策は正規雇用と非正規雇用の時間あたりの賃金を平等にするものです。これはオランダで1982年にワッセナー合意が締結されてから、本格的に始められた政策であり、今の欧州では既に常識化しています。  そして、全国規模でワークシェアリングを徹底的に実施するには、更に強権的な政策が必要です。それは富の再分配ならぬ、雇用の再分配と呼べる政策です。つまり、時短による雇用分散を通じて、完全雇用を図るのです。そのためには、基幹産業の再国有化を実施した後に、専売公社による管理の一元化が必要です。この産業の再国有化は、現在のロシアのプーチン政権で実施され、成功を収めた政策です。具体的には、JR、JT、NTT、郵便貯金を再国有化します。その後、雇用を細分化した後に、なるべく多くの労働者に再分配するのです。もちろん、労働者一人当たりの賃金は減ってしまうのですが、国民全体での失業リスクを分散できる利点があります。国営企業の目的とは、公共性の高い事業の実施や生産性の安定だけではなく、雇用を再分配する事にもあります。この政策を実現するためには、極めて綿密なスケジュール管理が必要となります。そのため、労働者のスケジュール管理に情報技術を徹底活用し、無駄のない管理技術を開発せねばなりません。しかしながら、日本の優秀なシステムエンジニアであれば、こういった管理技術の開発も難なく出来ると私は見込んでいます。  また、このワークシェアリングとほぼ同じ効果が期待できるのが、過剰な自動化に対する法的規制です。これは機械によって奪われた雇用を労働者に再分配する政策です。現在の日米では、高すぎる人件費を削るために、あらゆる物が徹底的に自動化されています。例えば身近なところでは、自動ドア、AT車、自動掃除機、自動洗濯機、自動食器洗い機、自動販売機、回転寿司、電動パチンコなどがあげられます。こういった自動化への規制をかければ、機械によって奪われた雇用を労働者に再分配する事ができるのです。もちろん、人件費がかさむことは避けられませんが、雇用を創出できる利点は大きいです。そのため、ここでも漸進的に自動化への規制をかける事業を推進すべきです。  そもそも、これら過剰なまでに自動化された社会は、果たして人間にとって本当に有益なのでしょうか。人々の雇用を機械が奪ってしまうという以前に、ここまで徹底的に自動化が進んでしまった場合、人間の側の自活能力が削がれてしまう事が問題です。つまり、過剰な自動化によって便利すぎるものに囲まれ、人間の側の能力がどんどん退化してしまうのです。特に、日本国内での自動販売機の多さは異常です。加えて、酒や煙草の自動販売機が、青少年の育成にも悪影響を及ぼしてしまうのは言うまでもありません。そのため、多少不便な状態を保つことで、人々の自活能力を守るべきです。 ***公共事業  国家破産によって、第三次産業に従事するホワイトカラー労働者はほぼ全て失業し、膨大な数の失業者が出る事が予想されます。恐らく、町中は失業者に溢れ、貧困から犯罪は急増するはずです。したがって、雇用創出のために大規模な公共事業を実施せねばなりません。同時に、公共事業とは国民全体で共有できる共通目標を設定するという事でもあります。そのためには、よく練り込まれた建設計画を構築せねばなりません。そして、これから国家総動員で巨大な公共事業を行う場合には、土地収用がどうしても必要となります。実は、欧州流の社会民主主義の導入とは、これまでの土地私有に基づく日本流の資本主義を終わらせるという事です。そのため、私有地の国有化こそが、国家社会主義での最大のキーポイントです。そして、土地を国家の公有物にした後には、期限付きで個人に占有させる法制度を完成させるべきです。そして、期限付き占有権の売買は市場で自由に執り行うようにするのです。そうすれば、土地私有制度の制度的な利点も噛み合わせる事が出来るのです。では、私有地の国有化を進めるには具体的にはどうすればいいのでしょうか。  また、公共事業をやる上での開発用地に関してですが、日本国内でも太平洋側は限界まで開発され尽くしています。したがって、今後はこれまで半ば遺棄されてきた日本海側の過疎地を開発する手段が考えられます。現在、日本海側は過疎地を通り越して廃墟と化しているため、土地の権利者の数は減っています。したがって、日本海側の過疎地を収用する政策が、最も現実性が高い案でしょう。また、一方で、太平洋側の過密都市での私有地の収用は実質的に不可能です。なぜなら、太平洋側の都市部においては、私有地が細分化しすぎているため、権利関係が複雑になりすぎています。確かに、前述の通り日本では税制や金融などの政治的な理由から、地価が高値に設定されてきました。そのため、国が破産した際には土地の評価額が劇的に暴落しますので、これを逆手にとって土地収用法を通じて私有地を国有化する事を目指す手もあります。  しかし、私有地というのは、元来世襲によって相続されるものであり、本来はなかなか国有化できる代物ではありません。そのため、この政策における実践の現場は、率直に申し上げるとかなり悲惨な状態になる事が、容易に予想されます。なぜなら、日本のサラリーマンは三十年ローンで築いたマイホームがタダ同然になり、その上それを政府に収用されてしまうからです。正に踏んだり蹴ったりです。さすがにこういった政策を実施するとなると、反対は避けられないでしょう。したがって、こういった地域の再開発は実質的に不可能なので、そのまま放置するしか無いでしょう。  仮に国内での開発が限界に達すれば、海外に公共事業の場を求めるべきです。特に、国連を通じて発展途上国おける開発支援を行う場合、国連の大義が立ちますので、話を順調に進める事が出来るはずです。それか、以下で紹介する東亜環状鉄道の開発に参加する事で、ユーラシア大陸に公共事業の場を求めるべきです。これは国際情勢が安定化して、多国間で経済協力を結ぶ体制が完成している事が大前提となるので、現時点では不可能な案です。しかし、米国崩壊後においては、地域紛争が沈静化に向かう事が期待できるため、こういった案も現実味を帯びて来るでしょう。しかし、現地住民を雇用して、現地のモノを消費したのでは、日本の国民経済が振興されません。そのため、海外での公共事業には日本人の労働者を団体で派遣し、彼らが消費するモノは商社が日本から送る形にするべきです。そうする事で、現地経済に日本の商社を絡ませる事が出来るので、それを橋頭堡に海外市場を開拓する事も期待できます。 #comment_num2(,size=40,vsize=10,below,disableurl,nodate)
#contents_line(sep= - ,level=2, page=国家社会主義の綱領-第二章-第五節) *第二章 **第五節 財政再建 ***計画経済  ここからは復興の中期段階です。まず、現代のフリードマンに代表される新古典派経済学は、財政破綻時には全く有効なものではありません。なぜなら、市場原理に任せていてはインフレが悪化するだけだからです。国家破産後のインフレの抑制のためには、まずは価格統制を敷いて市場原理を凍結し、統制経済に移行せざるをえません。この統制経済とは、行政が介入して市場経済を法的に規制する事で、市場の歪みを是正するものです。すなわち、旧来の護送船団方式の復活です。また、国富を管理統制して労働者に投下すれば、内需が底堅くなるので、国民経済の安定化が期待できます。  しかし、価格統制を目的とした統制経済だけではまだまだ不十分です。財政破綻で通貨が紙切れになれば、流通システムが一度完全に麻痺してしまいます。その後には、第三次産業に従事してきたホワイトカラー労働者が一挙に職を失う事になるので、失業率が劇的に上昇する事は間違いありません。そのため、国家破産後は、物資と雇用を国家が生産して分配する計画経済を必然的に導入せざるをえなくなります。この計画経済とは統制経済が更に厳格化されたものであり、これが本格的に導入されれば完全な社会主義国家となります。確かに計画経済では、勤労意欲の減退などの問題が起こりるのは百も承知です。そのため、こういった計画経済の問題点を是正するために、優れた能力を発揮した労働者に対して、国家が特別の報酬を与えるといった特例制度を導入するべきです。そもそも、勤労意欲に関する話なのですが、老人の資本家が若者の労働者を苛烈に搾取する現在の日本の資本主義の方が、よほど労働意欲の減退を招くのではないでしょうか。むしろ、働いた利益が労働者に正当に還元され、まともに育児の出来る経済構造を作った方が、若い労働者の勤労意欲が刺激されると私は考えます。  また、長期的にみれば、マルサスが『人口論』で言及した通り、これから先は人口爆発で天然資源が枯渇する事は避けられません。その結果、ゼロ成長経済に対応するため、全体主義的な計画経済を選択せざるを得なくなります。恐らく孫の世代では、限られた資源を節約するために、統制経済の次にはどうしても全世界的に計画経済を導入せざるをえなくなります。どのみち、消費によって経済規模を拡大する米国の水ぶくれ資本主義は数年以内に破綻します。そうなれば、思想的な揺り戻しが起こり、計画経済への拒絶反応も薄れてくる事が予想されます。同時に、この計画経済の目的は、生産を基にする筋肉質な工業国家へと回帰する事にあります。これは消費よりも生産を優先し、職人や大工を保護する政策であると言えます。  そして、次世代の計画経済は、過去にチリで試験的に導入されたサイバーシン計画を改良した電子計画経済と呼べるものになるでしょう。このサイバーシン計画とは、サルバドール・アジェンデ政権期間中のチリで1971年から1973年にかけて行なわれた、実時間のコンピュータ制御による計画経済機構の試みです。これは首都サンティアゴにある中央コンピュータと、チリ各地の工場とをテレックスで接続し、サイバネティックスに基づく制御を行うことを目指したものです。  このように表現すれば、超ハイテクな管理社会の如く大仰に聴こえてしまいます。しかし、この技術は現在の日本においてとっくの昔に実用化され、今では完全に社会に浸透した身近なものです。その日本におけるサイバーシン計画とは、コンビニの販売時点情報管理(略称:POS)です。日本のコンビニでは、バーコードを利用する事で、とうの昔にオンラインの流通管理体制を完成させています。これは技術的にはサイバーシン計画と全く同じものです。こういった流通管理の電子化は、米国のウォルマートにせよ、フランスのカルフールにせよ、小売業であれば世界中どこの企業でも既に完了させている事です。そのため、情報技術を用いた中央集権的な計画経済は、そういった小売業の協力さえあれば、非常に速やかに実現できるのではないでしょうか。したがって、一時期盛んに宣伝されていたユビキタス社会の将来像は、どうやら電子計画経済となりそうです。 ***補足説明 マルクス経済学  デフレ不況と少子化の原因は、労働者への苛烈な搾取と市場原理主義による過当競争にあります。そのため、私は新古典派経済学と市場原理主義を断固として否定します。したがって、私はマルクス経済学と護送船団方式を支持する立場です。なぜなら、若い労働者に富を再分配すれば、消費が活性化して景気がよくなり、税収増が期待できるからです。極めて単純に言えば、若い労働者に十分なカネが回る構造をつくれば、景気がよくなって子供が増えます。小銭を持った若者が子作りに励むのは当たり前の事です。  これからは、マルクス経済学を数学的に計量化して、数式モデルを完成させる試みを、大学が主導になって行っていただければ幸いです。特に、若い労働者への資本の再分配による内需創出と、出生率の上昇について分析し、それを公式化するべきです。この資本の再分配による内需創出理論と出生率上昇理論を主軸に、体系だった経済モデルを完成させるのは十分に可能なはずです。世代間の資本の分布を分析して、それが税収にどういった影響を与えるかを分析するのも大切です。若い労働者への資本の再分配が、経済全体にどういった影響を与えるのか、その相関関係を客観的データを基に分析すべきです。  また、富の再分配によって、一つの系の中で富が循環するのであれば、市場規模を拡大する必要はありません。なぜなら、資本家が利子によって得た不労所得は、富の再分配で労働者に返還されるため、資本家への利払いを続けるために富の総量を増やさなくても済むからです。その結果、無理な通貨の増刷は必要なくなります。つまり、貨幣の増刷は累積債務を拡大するため、通貨の増刷で消費を促すのではなく、富の再分配で内需を振興し、消費を促すべきです。この富の再分配を徹底しているのが、欧州の社会民主主義です。いわば、米国の市場原理主義は搾取的な高利貸しですが、欧州の社会民主主義とは育成的な融資制度です。  この場で断らせて頂きますが、私は富の再分配の経済的合理性を重視して、マルクス経済学を支持しているだけです。つまり、国家社会主義が、経済機構として最も稼働率が高いと判断して選択しているわけです。そのため、イデオロギーとしての共産主義や唯物論などには全く関心はありません。そもそも、原始共産制も市場原理主義も、原理主義である事に変わりはありません。したがって、両方とも教義を忠実に守れば予定調和的に万事がうまく行くという、宗教的な信仰心に似た類の物です。そもそも、イデオロギーの怖さとは、その視野狭窄的な独善性にあります。こういった極右・極左の原理主義は、中庸の徳を著しく欠くため、共に斥けるべきであるというのが私の主張です。  また、日本国民は深く自覚はしていないのですが、日本国内の産業は一部の財閥によって所有されているのです。こういった財閥の一族は一般大衆の目にも触れず、マスコミにも全く姿を表さないのです。しかし、日常生活で一般大衆が上流階級の富豪に出会う事がないだけであり、実際には日本にも桁違いの資産家は居るのです。確かに、富の過剰集中は排除すべきですが、こういった既存の財閥を解体するのは非常に困難な事業です。そのため、むしろ国内の財閥への利益誘導を行い、彼らに中産階級の保護育成を約束して頂く方が遥かに合理的であると考えています。そもそも、中産階級の保護育成が長期的な利殖につながるのは上記の通りです。つまり、私はこのマルクス経済学の枠組みの中において、財閥の存在は一切否定していません。 ***私財限度  マルクス経済学を実施する国家社会主義とは、教条的な原始共産制とは全くの別物です。そのため、私有財産制、複数政党制、言論の自由といった民主主義の原理原則は堅持します。しかし、私有財産権の制限を加え、富の再分配を徹底する点が、米国的な市場原理主義との最大の相違点です。具体的には、累進課税や高率の消費税によって、資本家から労働者へ富の再分配を行うわけです。これは即ち、私有財産限度を設けるという事です。また、日本ではそれをさらに改良して、徹底したものにすべきです。例えば、高額の宝飾品等には高い消費税率をかけ、生活必需品に対しては無税にするなど、メリハリのある税制を採用する事が考えられます。加えて、年収は上限で一億円までとし、それ以上の所得は徴税して国庫に返還し、国民に再分配するといった税制が考えられます。これはインドの経済学者のラビ・バトラ氏が現在提唱しておられるプラウト主義という経済機構とほぼ同じものです。政治的には、行政の権限拡大による大きな政府を志向したものです。  同時に、私有財産権の一種である知的財産権のあり方にも変化が出てくるはずです。なぜなら、インターネットの発展は知的財産権の概念を浸蝕する側面があるからです。近年では、iTunes Music Storeによる音楽配信サービスの展開や、Amazon.comなどの通信販売の発展によって大手レコード店で売上が減少傾向にあります。その良い例が、米国における2006年8月20日のタワーレコードの倒産です。しかし、こういったレコードを扱う企業の倒産の根本原因は、やはりファイル共有ソフトが原因であると考えられます。Winnyなどのファイル共有ソフトを用いれば、ネット上からいくらでも映画や音楽などのコンテンツを無料でダウンロードできます。そのため、レコード店が倒産するのも当たり前の事です。そもそも、インターネットとは、本質的に情報の公開と共有に向いたシステムであるため、情報の秘匿や独占が難しいシステムです。したがって、電子上で情報を私有する事は難しいのでないでしょうか。そのため、遅かれ早かれ、知的財産権の概念は瓦解してしまうと私は考えております。例えば、ソースコードを全面公開していてるLinuxは、将来的にはWindowsを駆逐してしまうでしょう。そもそも、Windowsは出荷時に特殊なトロージャン型ウイルスが仕込まれている説があり、米国の国家安全保障局(略称:NSA)からハッキングされる恐れがあるため、安全保障上極めて危険な存在です。したがって、政府内でのオンラインの情報処理は、ソースコードが公開されていて安全が保障されたLinux以外は使用してはなりません。  加えて、近年では石油価格の高騰により、紙メディアの印刷費用が急騰しはじめています。国家破産後には、超円安で紙と石油の値が暴騰するため、更に紙メディアの費用が騰がってしまします。したがって、経済性の観点から情報伝達は電子化され、インターネットを通じて公開せざるを得なくなるでしょう。当然ながら、インターネットを通じて公開された情報すぐに複製されてしまうので、記者を稼業とするのは難しくなってくるはずです。こういった理由から、私有財産限度の流れの中で、知的財産権の制限も将来的には盛り込まれるようになる事でしょう。 ***行政再編  財政再建のために、中央政府の簡略化も求められます。現在の日本の中央政府の行政機構は、無駄が多いという以前に民主的であるとは言い難いです。なぜなら、国会で審議されて通される一般予算より、官僚の裁量で使われる特別予算の方が遥かに大きいからです。具体的には、郵便貯金が財政投融資という形で特殊法人に注ぎ込まれています。しかも、東京の都政を除く日本の財務管理は、全て単式簿記で行われているため、資金の出入りが非常に不透明です。その上、情報公開法が制定されながらも、特殊法人の会計情報が公開されていない等、官僚の利権はもはや聖域と化しています。しかし、財政面での負担を少しでも軽減させるために、こういった官僚の利権は一刻も早く解体すべきです。その上で、電子政府を全面導入して、会計情報を全面公開すべきです。これは説明責任を官僚に課して、腐敗を予防するためです。また、政府の財務会計では、単式簿記をやめて複式簿記を導入すべきです。こういった一連の行政改革で統治機構を簡略化して、稼働効率を高めるべきです。それにより、財政均衡の実現を目指すべきです。こういった緊縮財政は国内でのデフレの原因になりえますが、行政再編で政府の構造的腐敗を是正し、余った予算を別の部門に割り振る試みを始めるべきです。  加えて地方自治の簡略化も求められます。現在の都道府県は、余りにも数が多すぎるため、地方自治は無駄だらけです。これは財政再建の上でも好ましい事ではありません。その上、日本の地方自治体は地元の財源から行政を運営するのではなく、中央から予算を取り付けてくるものです。こういった、形だけの地方自治は余りにも非効率です。そのため、都道府県制に基づく現在の地方自治は撤廃し、道州制を導入すべきです。ここで言う道州制の導入は、地方分権の要素は含まず、あくまで行政機構の簡略化を狙った政策です。しかし、州知事は中央から任命された者が就任する形をとるべきです。これは中央集権型の同州制です。なぜなら、余り地方分権をやりすぎた場合、北海道はロシア、九州は中国に間接侵略されてしまい、国家が分裂してしまう恐れがあるからです。 **第六節 外貨獲得 ***国富売却  次に求められる課題は、外貨獲得です。まず、米国は石油の購入のために外貨が必要なのですが、それを鑑みてみても、十分資源に恵まれた国です。一方で、資源小国の日本は、海外から生活物資を輸入するために、絶対に外貨が必要です。また、ここで指す外貨とは、ユーロとルーブルです。なぜなら、前述の通り次の世界基軸通貨はユーロだからです。また、現在のロシアは、ルーブルを国際的に流通する通貨にする事を目指しています。したがって、ロシア貿易においてルーブルが必要な構造が既に出来上がりつつあります。しばらくの間は自国通貨の円が実質的な紙切れとなるため、価値を持つ通貨はユーロとルーブルだけになります。したがって、日本国内でも一時的にユーロとルーブルが流通する可能性さえも想定しておくべきです。これは大東亜戦争の敗戦後に、日本国内でドル紙幣が高い価値を持った状況と同じです。  財政破綻が起こった場合には、超円安とインフレが起こる事が予想されるため、輸出においては高い国際競争力を得る事が出来ます。その具体的な輸出先は欧州とロシアです。なぜなら、この二つの経済圏は日米が破産した後にも比較的堅調な経済力を維持すると見られているからです。恐らく、日本の商社は全力で国内の在庫処分のために奔走せねばならなくなるでしょう。また、欧州に大量の品を卸す場合、三井物産を経由するのがベストです。なぜなら、三井財閥はロスチャイルド財閥との関係が深いからです。また、ロシアに品を卸す場合は、若狭湾から輸出する事になります。そこからウラジオストクまで品を卸せば、後はシベリア鉄道で欧州まで物資を運搬できます。シベリア鉄道はウラジオストクーモスクワ間までをつなぐ鉄道ですが、モスクワーサンクトペテルブルク間にも鉄道は敷設されています。したがって、ウラジオストクから欧州各国までをつなぐ鉄道網は既に存在しています。  したがって、日本国内の金品、不動産、優良企業の株式などは、全て欧州かロシアに売却して外貨に換えざるを得なくなります。その売却に関する処理だけで恐らく丸数年はかかる事が予想されます。そのために、今後は世界中から会計士や弁護士が来て日本の資産を監査・評価して売却処分するようになります。そもそも、現時点でも日本の優良企業は米国系の外資に半ば買収されているのです。しかし、日米が破綻した後には、米国系の外資は鳴りをひそめるはずです。なぜなら、米国の自国通貨であるドルが劇的に弱体化するからです。転じて、欧州はユーロ高を背景に圧倒的な金融力を得る事が予想されます。そのため、日本の国富を売り払う相手先は、欧州系の外資にならざるを得なくなります。これは国富を担保に融資を募る事と同じ意味です。したがって、前述の多国間協議における最大の要点は、日本で樹立される新政権が、復興資金を調達するために、欧州に金融面での援助を要請せざるを得ないという点にあります。その結果、例えば後述の私有地の国有化案の正体は、国内の土地を安く欧州に売り渡すという事になるでしょう。  また、インターネットが復旧した後には、個人事業主によるネットを通じた仲介業も盛んに行われるはずです。ならなら、国が破産した際には、資産家が現金目当てで自らの所持品を安く手放す事が予想されるからです。例えば、宝飾品、高級腕時計、ゴルフクラブなどの類の高級品です。これらの品は生活必需品ではないため、真っ先に売却されるはずです。それらを販売する手段として、 eBay などに代表されるインターネットの競売サイトでの競売が活用されるはずです。なぜなら、わざわざ品を持って現地にまで飛ぶ手間を省けるからです。つまり、国が破産した後には指輪を売って小麦を買う構図が出来あがるのです。そのため、恐らく国内にある金目な品は、ほぼ全て海外に格安で売り叩かれてしまう事になるでしょう。 ***珪素産業  次の課題は、輸出産業の振興です。現在の日米は自国の通貨高を背景に、自由貿易でモノを買い過ぎて来たため、産業が空洞化してしまいました。これは市場原理主義の枠組みの下で、通貨を増刷して消費を刺激する金融政策を続けすぎた結果です。しかし、長期的に安定した外貨獲得を続けるためには、加工貿易で工業製品を輸出せねばなりません。そのため、国家社会主義の政治においては、贅肉をそぎ落とした筋肉質な工業国家に祖国を戻す事を目標とします。これは、金融資本主義から、産業革命的な工業を基本とする産業国家への回帰を指します。  したがって、物流を政府の管理下におき、鉱工業の振興に物資を割り振る傾斜生産方式の採用するべきです。加えて、富の再分配による中産階級の育成と同じように、保護貿易のよる製造業の育成を行うべきです。また、その保護貿易に加えて、積極的な行政指導も行い、企業間の技術提携を促進させるべきです。なぜなら、世界的に経済競争が激化する時代の中で、日本の企業だけが国内で内輪揉めしているわけにはいかないからです。また、近年の日本の大手企業は丸投げ、中抜きといった中間搾取をやる悪癖が染み付いてしまっていると言われています。これは野口悠紀雄氏の指摘ですが、大手企業の下に中小企業が下請として存在し、上から仕事を与えてもらうという形態は、1940年に施行された国家総動員体制の名残です。実質的な生産活動に従事している中小企業が、大手による搾取で疲弊しているのでは、国家の長期的な展望にも支障をきたしてしまいます。そのため、中小の下請企業を法律で手厚く保護すべきです。  この流れの中で、工業製品の開発において、国内での独自規格の採用を即刻やめるべきです。例えば、携帯電話もテレビも独自規格を採用しているので、そのままの形で海外に輸出しても海外では使用できません。なぜ、加工貿易で外貨を稼いでいる技術立国が、自国内だけでしか通用しない独自規格を採用するのか全く理解に苦しみます。そもそも、世界市場よりも遥かに狭い日本市場を優先するとは、本末転倒もいい所ではないしょうか。こういった、国内市場を優先する不可解極まりない行為は止めて、世界市場に対して適応していかねばなりません。  その上で、輸出産業の内容も見直さねばなりません。従来の重厚長大型産業はインドや中国などの新興勢力に対して、人件費の面で圧倒的な不利に立たされてしまっています。その上、資源枯渇で原材料の値が既に高騰し始めています。したがって、重厚長大型産業から将来的には撤退する事を視野に入れて動かねばなりません。具体的には、自動車、鉄鋼、石油精錬、航空機などの産業です。つまり、金属で出来た乗り物を石油で動かす時代は、遅かれ早かれ終わってしまうのです。これも資源枯渇に関わる話なのですが、希少金属の産出国が非常に偏っているのも問題です。例えば、タングステンやインジウムは中国が主な産出地です。仮に、何らかの原因で対中関係が悪化する事があれば、希少金属の禁輸処置が行われる可能性も否定できません。こういった希少金属はハイテク産業を維持する上で必要不可欠ですので、平時から戦略備蓄をし、しかも徹底的なリサイクルに努めねばなりません。ちなみに、日本国内でのこういった重化学工業は、三菱重工が最大手です。なぜなら、大東亜戦争において、三菱重工が零戦や戦艦武蔵などの兵器製造を受注して来た経緯があるからです。現在でも、三菱重工が90式戦車に代表される自衛隊の装備を製造しているのです。しかし、これからは資源枯渇という不可抗力によって、重化学工業の斜陽化は避けられない運命にあります。  また、資源枯渇のみならず、環境問題の観点からみても、重化学工業の斜陽化は避けられません。例えば、カドミウムがイタイイタイ病、メチル水銀が水俣病といった公害の原因になったのは有名な話です。こういった重金属は凄まじい毒性を持った物が多く、その中でも原子力サイクル事業で出てくる劣化ウランやプルトニウムの毒性は最悪の部類のものです。加えて、石油化学は環境汚染が激しい上、合成樹脂などから溶け出す高濃度の環境ホルモンは生物の新陳代謝に甚大な悪影響を及ぼします。それだけではなく、今後は石油文明そのものが確実に限界に達し始めます。石油の枯渇はもちろんなのですが、それ以前に石油文明そのものが環境汚染によって急激に老朽化しはじめています。例えば、石油から造られたアスファルトや、酸性雨に弱いコンクリートは劣化が急速に進み始めています。例えば、ニューヨークの国連ビルは老朽化が進んで取り壊しが検討され始めているほどです。そもそも、コンクリートを急速に劣化させているこの酸性雨の原因は、石油を燃焼した際に出る排出ガスに含まれている窒素酸化物です。石油文明は汚染が余りにも激しいため、今世紀中に継続が不可能になるでしょう。  これは私の推測なのですが、これまでの石油文明は早晩終わりを告げた後には、それからは「珪素文明」なるものが始まると見ています。これは煉瓦と陶器の文明を高度にしたものです。この珪素文明を築く産業を、珪素産業とこの場で名付けさせて頂きます。現在でも既に、ケイ素から合成された合成繊維は、軽くて丈夫なのでスポーツ用品や航空機の材料につかわれています。例えば、従来の航空機の機体素材には、アルミニウム、銅、マグネシウムなどの合金であるジュラルミンが主に用いられて来ましたが、既に金属の価格が高騰し初めているので、炭化ケイ素が航空機をつくる上での代替素材となりはじめています。新型旅客機ボーイング787ドリームライナーでは、アルミより軽いとされる炭素繊維が機体の50%に用いられており、機体の軽量化により従来の航空機よりも燃費を20%向上させる事に成功しています。ここで触れられている炭素繊維とは、主に炭化ケイ素の事です。このセラミックスの一種である炭化ケイ素(シリコンカーバイド)は、化学的にはダイヤモンドとシリコンの中間に位置する物質で、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れます。これは主に研磨材、耐火物、発熱体などに使われています。また、半導体でもあることから、電子素子の素材にもなります。これは非常に優れた性質を持つ物質であるため、公汎な分野の工業製品の原料となりえます。こういったセラミックスやシリコンはケイ素から成るものなので、これらの品の原料は、SiO2からなる珪石や石英です。簡単に言えば砂の事です。金属資源は将来的に枯渇しますが、こういったケイ素であれば豊富にあるので、将来性があると言えます。また、セラミックスは陶器の一種なので、人体の側への影響が小さく、医療用の人工骨として使用されているほどです。  総合的に見れば、珪素産業を中心に据えた輸出産業を振興すれば、工業によって生計を立て続ける事は十二分に可能であると言えるでしょう。また、珪素産業は知識集約型で高い付加価値をもつ軽薄短小工業と直結しています。こういった軽薄短小工業の代表例とは、情報技術産業、セラミックス等の新素材、環境関連商品、遺伝子技術、ナノテクノジー等です。この産業によって生み出される製品であるセラミックス、太陽電池、コンピュータ、ナノマシン等の原料は、全てシリコンです。現在、日本はこの全ての分野で世界最高水準の地位に立っています。そのため、日本の産業界の未来は決して暗いものではなく、むしろ十分に希望に満ちた明るいものであると結論づけられます。 **第七節 失業対策 ***雇用分配  これまで失業対策と言えば、公共事業による雇用創出が行われて来ました。しかし、私は失業対策のためにはワークシェアリングと呼ばれる労働政策を導入するべきだと主張します。これは労働時間を短縮して、給与を減らす代わりになるべく多くの人に雇用を与える政策です。これは欧州では70年代から実践されてきた政策であり、既に実績も残されています。実例を上げれば、フランスでは労働時間は週35時間までと厳しく規制されています。また、ドイツ人の一年間の平均労働時間は1450時間で、これは平均すれば週休三日制に近い数字です。転じて日本では、かたや一方に過労死する人間が居ながら、かたや一方に失業者が居るのです。この日本の労働事情は、極めて歪であると言わざるを得ません。そのため、ワークシェアリングを導入する事で、限られた雇用を分散して、失業率の低減を試みるべきです。また、労働時間が短縮されれば、余暇における消費活動が活性化され、内需が創出されるという利点もあります。  また、労働政策の重視する事には別の理由もあります。なぜなら、先進国では金融政策が全く通用しない時代に入っているからです。例えば、ゼロ金利政策やケインズ的な財政支出は全て効果が現れなくなっています。専門的に言い換えれば、質的金融緩和も量的金融緩和も既に限界に達しているのです。そもそも、経済成長が終わった時代に、金利や貨幣の総量を操作する政策をやっても、効果がないのは当たり前の事です。むしろ、ケインズ経済学に基づく財政支出は、財政破綻後には悪性インフレの原因になるため全面禁止にすべきです。特に欧州の政治では労働政策への重点が高いのはそのためです。つまり、今後は労働政策で経済を調整するしか道が残されていないため、ワークシェアリングによって失業リスクの分散を試みるべきです。  そのワークシェアリングための最初の政策は、労働基準法の遵守を徹底させる事です。したがって、欧州に倣って雇用確保ための規制強化を、日本でも包括的に執り行う必要があります。特に、人材派遣会社は明らかに中間搾取をしており、これは労働基準法に触れるため、漸進的に締め付けを強化する必要があります。既に許認可が下された人材派遣会社は仕方が無いにせよ、これ以上の同種の企業の新設に対しては、行政は絶対に許認可を下ろしてはなりません。そして、次の政策は正規雇用と非正規雇用の時間あたりの賃金を平等にするものです。これはオランダで1982年にワッセナー合意が締結されてから、本格的に始められた政策であり、今の欧州では既に常識化しています。  そして、全国規模でワークシェアリングを徹底的に実施するには、更に強権的な政策が必要です。それは富の再分配ならぬ、雇用の再分配と呼べる政策です。つまり、時短による雇用分散を通じて、完全雇用を図るのです。そのためには、基幹産業の再国有化を実施した後に、専売公社による管理の一元化が必要です。この産業の再国有化は、現在のロシアのプーチン政権で実施され、成功を収めた政策です。具体的には、JR、JT、NTT、郵便貯金を再国有化します。その後、雇用を細分化した後に、なるべく多くの労働者に再分配するのです。もちろん、労働者一人当たりの賃金は減ってしまうのですが、国民全体での失業リスクを分散できる利点があります。国営企業の目的とは、公共性の高い事業の実施や生産性の安定だけではなく、雇用を再分配する事にもあります。この政策を実現するためには、極めて綿密なスケジュール管理が必要となります。そのため、労働者のスケジュール管理に情報技術を徹底活用し、無駄のない管理技術を開発せねばなりません。しかしながら、日本の優秀なシステムエンジニアであれば、こういった管理技術の開発も難なく出来ると私は見込んでいます。  また、このワークシェアリングとほぼ同じ効果が期待できるのが、過剰な自動化に対する法的規制です。これは機械によって奪われた雇用を労働者に再分配する政策です。現在の日米では、高すぎる人件費を削るために、あらゆる物が徹底的に自動化されています。例えば身近なところでは、自動ドア、AT車、自動掃除機、自動洗濯機、自動食器洗い機、自動販売機、回転寿司、電動パチンコなどがあげられます。こういった自動化への規制をかければ、機械によって奪われた雇用を労働者に再分配する事ができるのです。もちろん、人件費がかさむことは避けられませんが、雇用を創出できる利点は大きいです。そのため、ここでも漸進的に自動化への規制をかける事業を推進すべきです。  そもそも、これら過剰なまでに自動化された社会は、果たして人間にとって本当に有益なのでしょうか。人々の雇用を機械が奪ってしまうという以前に、ここまで徹底的に自動化が進んでしまった場合、人間の側の自活能力が削がれてしまう事が問題です。つまり、過剰な自動化によって便利すぎるものに囲まれ、人間の側の能力がどんどん退化してしまうのです。特に、日本国内での自動販売機の多さは異常です。加えて、酒や煙草の自動販売機が、青少年の育成にも悪影響を及ぼしてしまうのは言うまでもありません。そのため、多少不便な状態を保つことで、人々の自活能力を守るべきです。 ***公共事業  国家破産によって、第三次産業に従事するホワイトカラー労働者はほぼ全て失業し、膨大な数の失業者が出る事が予想されます。恐らく、町中は失業者に溢れ、貧困から犯罪は急増するはずです。したがって、雇用創出のために大規模な公共事業を実施せねばなりません。同時に、公共事業とは国民全体で共有できる共通目標を設定するという事でもあります。そのためには、よく練り込まれた建設計画を構築せねばなりません。そして、これから国家総動員で巨大な公共事業を行う場合には、土地収用がどうしても必要となります。実は、欧州流の社会民主主義の導入とは、これまでの土地私有に基づく日本流の資本主義を終わらせるという事です。そのため、私有地の国有化こそが、国家社会主義での最大のキーポイントです。そして、土地を国家の公有物にした後には、期限付きで個人に占有させる法制度を完成させるべきです。そして、期限付き占有権の売買は市場で自由に執り行うようにするのです。そうすれば、土地私有制度の制度的な利点も噛み合わせる事が出来るのです。では、私有地の国有化を進めるには具体的にはどうすればいいのでしょうか。  また、公共事業をやる上での開発用地に関してですが、日本国内でも太平洋側は限界まで開発され尽くしています。したがって、今後はこれまで半ば遺棄されてきた日本海側の過疎地を開発する手段が考えられます。現在、日本海側は過疎地を通り越して廃墟と化しているため、土地の権利者の数は減っています。したがって、日本海側の過疎地を収用する政策が、最も現実性が高い案でしょう。また、一方で、太平洋側の過密都市での私有地の収用は実質的に不可能です。なぜなら、太平洋側の都市部においては、私有地が細分化しすぎているため、権利関係が複雑になりすぎています。確かに、前述の通り日本では税制や金融などの政治的な理由から、地価が高値に設定されてきました。そのため、国が破産した際には土地の評価額が劇的に暴落しますので、これを逆手にとって土地収用法を通じて私有地を国有化する事を目指す手もあります。  しかし、私有地というのは、元来世襲によって相続されるものであり、本来はなかなか国有化できる代物ではありません。そのため、この政策における実践の現場は、率直に申し上げるとかなり悲惨な状態になる事が、容易に予想されます。なぜなら、日本のサラリーマンは三十年ローンで築いたマイホームがタダ同然になり、その上それを政府に収用されてしまうからです。正に踏んだり蹴ったりです。さすがにこういった政策を実施するとなると、反対は避けられないでしょう。したがって、こういった地域の再開発は実質的に不可能なので、そのまま放置するしか無いでしょう。  仮に国内での開発が限界に達すれば、海外に公共事業の場を求めるべきです。特に、国連を通じて発展途上国おける開発支援を行う場合、国連の大義が立ちますので、話を順調に進める事が出来るはずです。それか、以下で紹介する東亜環状鉄道の開発に参加する事で、ユーラシア大陸に公共事業の場を求めるべきです。これは国際情勢が安定化して、多国間で経済協力を結ぶ体制が完成している事が大前提となるので、現時点では不可能な案です。しかし、米国崩壊後においては、地域紛争が沈静化に向かう事が期待できるため、こういった案も現実味を帯びて来るでしょう。しかし、現地住民を雇用して、現地のモノを消費したのでは、日本の国民経済が振興されません。そのため、海外での公共事業には日本人の労働者を団体で派遣し、彼らが消費するモノは商社が日本から送る形にするべきです。そうする事で、現地経済に日本の商社を絡ませる事が出来るので、それを橋頭堡に海外市場を開拓する事も期待できます。 #comment_num2(,size=40,vsize=10,below,disableurl,nodate)

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