東京バベル

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280 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/28(木) 23:30:32 0 彼らが気がつくと、暗い通路の中にいた。 目の前には巨大な生物の白骨。何気なく触れた壁面のフリップに刻まれていた、その場所の名前は「第2東京タワー」、通称『東京バベル』 10年前に封鎖された巨大な建造物。 男はテロリストに近い『先鋭的』な右翼団体の幹部。重度の心臓病を患っている。残された薬は2回分。それ以上の発作が起きれば命の保証はない。 少年はその右翼団体に属する。 組織のために命を捨てる覚悟をして、自爆テロに望む寸前だった。気がついたらバベルの中にいた。 若者は『国立災害研究所』の研究員。彼がバベル内部に飛ばされたのは、「3日後にマグニチュード8レベルの巨大地震が関東を襲う」というデータを観測した、その瞬間だった。 彼らは出口を探して、巨大建造物「東京バベル」の中をさまよい歩く。 281 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/28(木) 23:38:56 0 男と少年はさまよい歩く中で見た。「先鋭的」だった故に滅びていった数々の怪物達の骸を。 若者はあせっていた。観測データを持っているのは、おそらく自分一人なのだ。 一刻も早く脱出して地震を知らせなければ、甚大な被害がもたらされることが予想された。 どちらが出口か分からない通路を歩き続け、彼らはバベルのコア「第1東京タワー」に到達した。 出口とは反対方向だった。 282 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/28(木) 23:48:13 0 無数の生物的なツタ(触手ともいえるような)に絡め取られている第1東京タワー。 その内部、元展望室に少女がいた。 彼女はヘソの緒を通じて地球とつながっていた。 彼女の腹部から伸びる管は、第1東京タワー、第2東京タワーを結ぶ電子的なネットワークと、その建築の基礎部分を通じて地表にも繋がっている。 彼女はそこから地球の動きを感じていた。過去の経験を顧みることで、自然現象の予知に似たことも出来るようになっていた。 彼らがバベル内部に飛ばされた原因を、彼女は「ブルカニロ機関の暴走だろう」と言った。 283 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/29(金) 00:10:25 0 少女はブルカニロ機関があるブロックへの道順を教えてくれた。機関を使えば一瞬のうちに外に出られることが予想された。 少年は少女を外の世界に連れ出そうとした。が、それはかなわなかった。 少女はバベルと運命を共にすることを決めていた。彼女は翌日訪れるであろう大震災も予知していた。それによってバベルが崩壊するであろう事も。 ブルカニロ機関は、防衛省の研究機関が開発した、超音波による洗脳装置のようなモノだった。 操縦者の脳波を増幅して、第2東京タワーの強力な電波発信装置で放出することで敵兵の戦意を消失させることなどが可能になるはずだった。 試験中にバベル封鎖に繋がるテロ事件が発生。爆風の煽りを受け、操縦者の宮沢博士と接続したまま完全閉鎖状態に移行し、そのまま破棄された。 彼らは遂にブルカニロ機関へとたどり着いた。 重い扉を開いた先、爽やかな春の風、清潔な白いベッドの上に宮沢博士が横たわっていた。 284 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/29(金) 00:21:20 0 宮沢博士は語った。 翌日の大震災で、バベルが崩壊すること。 その崩壊時に、ブルカニロ機関が「暴走する」であろうこと。 それによって地球上の全生物の脳が改造される可能性があること。 バベル内部に導けるのは周波数の問題上、「バベルに近い状況」にあった者だけだったこと。 3人のうち、1人が残って、機関を破壊して欲しい、と望んでいること 「ブルカニロ機関を破壊してくれ」そう言って、夢は覚めた。 彼らが見たのは、灰色の壁と、機械と、博士の骸だった。 285 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/29(金) 00:26:55 0 男が残ることを志願した。 少年も残ると言った。 若者も残ると言った。不衛生なバベル内で、傷口から感染症にかかっていた。 結局、男だけが残った。 バベルは滅びの象徴。明日になればバベルは崩壊する。滅びの象徴は消え去り、新しい時代が始まる。 286 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/29(金) 00:30:58 0 少年は見上げていた。じっと見つめていた。巨大な建造物が、バベルが崩れてゆくのを。 巨大なバベルが遮っていた日差しが降りそそいだ。 まぶしいな、と少年は思った。 完 287 名前:学生さんは名前がない sage 投稿日:2008/02/29(金) 00:32:30 0 昔書いた東京バベルの話もよろしければ ttp://bbs2.oebit.jp/edaigakusei/bbsnote.cgi?fc=page&page=2

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