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174 名前:1 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05:10:12
いない歴=年齢の俺。
そんな俺にもまた今年のクリスマスがやってきた。
「受験で忙しいから」「バイトがあるから」
そんな言い訳を今年は使えない。俺はふらりと一人で繁華街へと繰り出した。
ただセンチメンタルな気分になる自分に酔っていた。
誰とも目を合わせず、何の表情も作らず、クリスマスの雰囲気に自分を
溶け込ませようとする。
旗から見れば、溶け込むどころか浮いていただろう。
結局自分に酔ってただけなのだから。
前を向いて歩いてないんだから当然なのだが、ホスト風の男性と肩がぶつかった。
「なにぶつかっとんじゃコラ」
いつもは即座に謝る俺も、今日ばかりは虚勢を張らずにはいられない。
無言で睨みつける。
相手はさらにぶち切れる。
「おまえ喧嘩売ってんのか?こっち来いや」
(クリスマスに喧嘩ってのも面白いな、ははは・・・)
他人事に思ってしまうほど、今日の俺には現実を直視する力が抜け落ちていた。
175 名前:2 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05:11:36
(ニャー・・・)
何の泣き声!?
俺は路地裏で目を覚ました。
どうやらフルボッコにされて今目を覚ましたみたい。
口から血は出るし、全身が痛むけど、そんなことより俺の意識は
目の前の一匹の野良猫に向けられていた。
今にも死にそうなほど衰弱してる。だけど目には強い意志が宿されてるように思えた。
「かわいそうにな・・・」
たまたま持っていたコンビニのパンをあげるが、一向に食べようとしない。
「食べなきゃ死ぬぞ?」
パンを食べもせず、くわえたままこちらをじっと見ている。
意味不明。
ただ、その猫に妙に愛着を持ってしまったのは確かなことだった。
理由はわからない。
不幸な境遇という点で自分をその猫に重ねることができたから?
いや、その猫と俺とは何か根本的に違うように思えた。
176 名前:3 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05:13:35
トボトボと足取り重く帰路に着く。
食卓には普段より豪華なごちそうと、ケーキがあった。
両親と中学生の弟、と俺という4人の食卓。
姉は彼氏とどこかへ出かけてるようだ。
それなりに料理はうまいし、会話も意外と弾んだ。
しかし。「不幸な俺」「彼女にすら恵まれない俺」
悲劇のヒローインぶってる俺には素直に楽しめるはずもない。
勢いにまかせて酒を流しこんいた。
177 名前:4 sage 投稿日:2007/11/28(水) 05:14:10
(ニャー・・・)
何の泣き声!?
酔って寝てしまってから、数時間して目を覚ました。
なんだ、今の泣き声?
どう考えても空耳なのだが、俺は路地裏で会った猫を思い出した。
なぜかもう一度会いたくなって、牛乳と食べ物を持って同じ場所へ向かってみる。
その場所にはさっき会った猫とその子供?みたいな猫が3匹いた。
身を寄せ合って、今にもこごえそうな身を寄せ合っている。
(そういうことか・・・)
「理解」するのに時間はかからなかったし、それと同時に
自分の中に熱い気持ちが湧き出てくるのを感じた。
178 名前:5 投稿日:2007/11/28(水) 05:15:03
(死にかかっているのに目の前のパンを食べないのは子供のため
だったんだね・・・。)
猫と自分との間に感じた根本的な違い。
それは愛する者を持つか持たないかの違い。
異性だろうが家族だろうが関係ない。
俺は傷つくのが怖くて、誰も愛そうとしない。だから愛されもしない。
ただ、「不幸だから」で終わらせてた自分が情けなくなった。
猫は「不運」であっても「不幸」ではなかったのかも。
俺は猫に持ってきたクリスマスプレゼントを残し、その場を立ち去った。
「来年もどうせ彼女なんてできないし」じゃなくて
「来年までに彼女作りたい」
そう思えるようになるのは少し後のことだが、
クリスマスイルミネーションが今までよりも少しまぶしく見えた。