東浩紀、『動物化するポストモダン:オタクから見た日本社会』、東京:講談社、2001.

東浩紀、『動物化するポストモダン:オタクから見た日本社会』、東京:講談社、2001.




<著者>
(本の裏表紙より)
東浩紀
本人サイトwikipediaでの紹介

一九七一年生まれ。東京大学大学院総合研究科修了。批評家。専攻は哲学および表象文化論。著書に『存在論的、郵便的』―新潮社、第二一回サントリー学芸賞受賞―『郵便的不安たち』、『不過視なものの世界』―ともに朝日新聞社―などがある。


<内容>
(「BOOK」データベースより)
オタクたちの消費行動の変化が社会に与える大きな影響とは?気鋭の批評家が鋭く論じる画期的な現代日本文化論。


<目次>
第1章―オタクたちの疑似日本
1―オタク系文化とは何か
2―オタクたちの疑似日本

第2章―データベース的動物
1―オタクとポストモダン
2―物語消費
3―大きな非物語
4―萌え要素
5―データベース消費
6―シミュラークルとデータベース
7―スノビズムと虚構の時代
8―解離的な人間
9―動物の時代

第3章―超平面性と多重人格
1―超平面性と過視性
2―多重人格


<書評>
 『デ・ジ・キャラット』、『Air』など個々の作品を取り上げ分析しているので、それだけでもおたくの人にとって楽しめる内容であることは間違いない。また、インターネットのようなテータベース構造が現代人の心性に与える影響について論じられているので現代社会に興味がある人にとっても読む価値はあるだろう。

 第一章でコミック、アニメ等を中心とする文化をオタク系文化と曖昧に呼び、そこでは擬似的な(例えばハイテクと江戸時代の町並みが共存しているというような)日本文化が見られると指摘する。しかし残念なことにその分析はほとんどなされていない。

 第二章からおたくはポストモダン的であるとの主張が始まる。具体的には同人誌などの二次創作を見てもらえればわかるようにオリジナルとコピーとの区別が失われ、大きな物語よりもキャラクターの設定などが重視されることがその特徴である。この線でキャラクターのイラストを交えて「触角のような髪型」、「猫耳」、「メイド服」などを「萌え要素」と命名したことは画期的である。俗に「ギャルゲー」と呼ばれるノベルゲームは、同一の物語内で複数のキャラクターを攻略することが前提とされているので、解離的、さらに動物的であるとしている。この観点はおたくに限らず現代的な現象を論じる際に一つの理解をもたらしてくれるだろう。

 第三章では少し視点を変え、ウェブページのような見えるものとその背後にあるHTMLや0-1の記号のような見えないものとが並列している状態は超平面的(スーパーフラット)と呼ぶにふさわしいとして、村上隆の作品もここに位置付けて評価している。

 一冊の本でおたくを中心にすえてポストモダンと関連付けて論じたのは、私の知る限りでは本書が最初である。


<他の書評>

  • 吉岡洋、「書評 東浩紀『動物化するポストモダン--オタクから見た日本社会』」、『美術フォーラム21』、6、2002、p.181-183.
  • 高原英理、「東浩紀「動物化するポストモダン」--主体の位置の確かな計測 (味読・愛読 文學界図書室)」、『文學界』、56、2、2002、p.298-300.
  • スガ秀美、「BOOK STREET 今月の新書 東浩紀『動物化するポストモダン』講談社現代新書 「オタク系文化」の精緻な分析」、『Voice』、2002.2、p.214-215.
  • 永江朗、「文春図書館 東浩紀『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』講談社現代新書 気鋭の批評家による現代日本文化状況論」、『週刊文春』、2002.1.17、p.146.
  • 張競、『毎日新聞』、2002.1.27.
  • 大澤真幸、『読売新聞』、2002.1.27.
  • Amazon.co.jp
  • セブンアンドワイ
  • オンライン書店ビーケーワン
最終更新:2005年12月04日 17:19
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