中島梓、『コミュニケーション不全症候群』、東京:筑摩書房、1991.

中島梓、『コミュニケーション不全症候群』、東京:筑摩書房、1991.




<著者>
中島梓
1953年生まれ。早稲田大学文学部卒業。『文学の輪郭』でデビュー。中島梓名での著書に、物語論である『わが心のフラッシュマン』(筑摩書房)はじめ『ベストセラーの構造』『マンガ青春記』など。また、栗本薫名で『グイン・サーガ』シリーズ、『魔界水滸伝』シリーズなどのヒロイックファンタジー、『ぼくらの時代』『ぼく・らの気持』などの推理小説等、著書多数。
(本の紹介より)



<内容>
ますます過密化と選別化がすすむ現代、もはや「一戸建」の自我の場所はない。それでも生きていかなければならないとしたら?ダイエット・おタク・少女たちの少年愛趣味―すべての症状は私の中にもあると自認する著者が、その底にある時代の心性を読みとく、渾身の書下し評論。私の居場所はどこにあるの?
(「BOOK」データベースより)


<目次>
コミュニケーション不全症候群
おタクについて
ダイエット症候群
病気の時代
僕の夢は少年を…
美少年なんか怖くない
最後の人間
コミュニケーション不全症候群のための処方箋


<書評>
 今から10年以上も前に書かれた本にもかかわらず、2005年の現在でも色褪せていない。時代の嗅覚に優れているのはさすがは小説家といったところだろうか。状況描写を読ませるのがうまく、それだけにコミュニケーション不全症候群が蔓延している現代の状況が悲観的に見えてくる。

 「おタク」、「ダイエット症候群」、「JUNE小説(少年同士の関係を描いた小説)愛好者」をコミュニケーション不全症候群という概念で貫徹して論じた点が最大の特徴である。具体的な事例だけでなく、都市の過密化といった社会的な視点、自我の境界といった精神分析的な視点をも取り入れているので学術的に引用されることもよくある。

「おタク」は男性に対してだけ用いられる、というのも男は「おタク」になって社会の規範から降りることができるからであるとされる。肥満体型で近眼であるなどと紋切り型の記述をする一方、まともな人間なら「おタク」になるしかないなどと共感を示している箇所もある。その辺りに筆者の本音がうかがえるのではないだろうか。

 「ダイエット症候群」、「JUNE小説」の議論のほうがより筆者の体験に近く、生々しささえ感じられる。

 繰り返しになるが、1991年の段階でここまで分析していることは驚きである。


<他の書評>
  • 岩崎呉夫、「プレジデント・ライブラリー 今月のホット・テーマ 跋扈する理解不可能な異性人 いまどきの「若者」を斬る ※『コミュニケーション不全症候群』他」、『プレジデント』、1992.1、p.161-163.
  • 中島梓、「GENDAI LIBRARY 著者インタビュー 中島梓「コミュニケーション不全症候群」 なぜ若者世代で“対人知覚障害”が一般化するかを分析 ※筑摩書房」、『週刊現代』、1991.10.19、p.125.
  • Amazon.co.jp
  • セブンアンドワイ
  • オンライン書店ビーケーワン
最終更新:2005年12月04日 17:32
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