都心回帰

としんかいき



郊外化によって減少した都心部の居住人口が回復する現象。
東京をはじめ、大阪、福岡、札幌、広島、仙台などの地方都市圏でも見られる。

背景

戦後の日本では地価の急騰や生活様式の変化に伴って、都心部から郊外へ人口は流出していった。
しかし、通勤時間の増大への不満、土地神話が崩壊し土地保有にこだわらなくなったこと、都心の大気汚染などの公害が緩和されてきたこと、から改めて都市居住のメリットが浮上した。

バブル崩壊以降の地価下落、企業の遊休地放出などにより、都心部の比較的手ごろな分譲マンションの大量供給が1990年代後半から本格化しており、「都心で集合住宅に一生住み続ける」という選択肢をもたらした。

都心居住のメリット

勤務場所から近く、しかも劇場や美術館など文化・娯楽にも容易に接することができる。
高齢になったあとも、都心周辺なら買い物が比較的便利で車がなくともたいていの場所に行け、健康面でも都心の大病院などで優れたサービスが受けられる。
都心に隣接する下町には今でも地域コミュニティが残り、育児や災害の際に役に立つ。
都心に最高級住宅地がある都市(特に東京)では、都心に住めば最高級の衣食住や教育のサービスが受けられる上に、そこに住むだけでステイタスとなる。

これからの都心

郊外への拡散一方であった従来の市街地の流れが一変した。
市街地は郊外に適地を求めて薄く広く広がるというパターンから、中心部に向けて、密度を徐々に増して、長い目でみるとコンパクトなつくりの市街地になりつつある。

このような流れは、公共施設の整備や既存施設の有効活用などまちづくりの効率性の向上と郊外の雑木林、山林などの自然的環境の維持保全につながり、都市環境の形成としては極めて好ましい。
また、移動に伴うエネルギーは少なくなり、自転車や徒歩による移動が増加する。
自家用車の代わりに、自転車を利用することは、利用者に対して金銭面、時間面、健康面等のメリットを、地域にも交通渋滞の緩和、騒音・排気ガスなどの公害の軽減などのメリットを、さらには地球環境問題にもメリットがある。
欧米などでも5キロ程度の自転車通勤は大いに奨励されており、通勤における自家用車の利用(特に地方都市)や混雑した電車通勤(大都市圏)から、自転車による健康的な通勤に転換して行くことができる。

さらに人が集まるので公共交通の効率性も高くなることになる。

自家用車の利用からの転換が進むと考えたいが、郊外型の自動車依存型社会を、その便利さゆえにそのまま持ち込む可能性がある。
クルマ社会に頼り切った郊外型の生活から、果たして脱却できるかが課題である。



関連項目

最終更新:2007年10月15日 16:36