政治的党派性とマクロ経済政策Ⅱ


ヒッブスの党派性理論
政党政治のイデオロギー側面を重視し、資本主義イデオロギーにおけるマクロ経済政策の戦後パターンと、左派政権/右派政権の実績を検討した。ヒッブスによれば政党は自らの中核的支持者に好まれるような政策を選択するため、
経済政策が政権交代と関連した政治的要素を持つ。

①政府は、金融・財政政策的な操作によって、インフレ率と失業率に影響を与える。
②インフレ率と失業率の違いが国民所得の分配に階級と関連した重要な影響を与える。
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政府が自らの中核的支持階級の客観的経済利益と主観的選好に、おおむね対応したマクロ経済政策を追求すると検証

◇経済目標に関する諸政党の選好を
 伝統的左派・右派スペクトラム(範囲)に沿って序列化
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  西欧と北米各国のインフレと失業の集積データを政権との関連に於いて分析

■その結果

左派政権--------高インフレであって「低失業」を重視
中道・右派政権---高失業率であっても「低インフレ」を重視

ex. アメリカとイギリスの時系列分析
   共和党と民主党、保守党と労働党

◎ヒッブスの分析結果
 ---低中所得層の主観的選好→「低失業・高インフレ政策」で充足
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               左派政権の国家で多く観察できる。
 ---高所得層の利益・選好→→「高失業・低インフレ政策」で充足
                  ↓
               中道および右派政権の国家で多く観察できる。

しかしインフレと失業率の多国間分析においては、長期的政策形成における左派の歴史的役割の検討と制度的調整の検討の双方が重要。

ヒッブスの古典的党派性理論:政権党の違いからマクロ経済政策の違いを予測
●左派政権
ケインズ主義的マクロ経済戦略、低失業率、所得平準化 指向
○右派政権
インフレ対策と均衡予算による民間企業への安定的な経済枠組み提供

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 党派性理論の政治的分配的な基礎枠組みは、1970年代半ばの合理的期待論の出現によって修正を迫られる。
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政府の経済政策の有効性を問う議論も出現した。新しい枠組みとして合理的期待論が登場。選挙によって予期しなかった政権が誕生し、新政権が人々の期待とは逆の政策を実施することによって、予期せぬ出来事が重なる。
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インフレ・サプライズ:予測されざる政策こそが生産や雇用といった実質経済を動かす。
最終更新:2005年12月10日 02:28