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ワークショップの感想

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匿名ユーザー

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12日の土曜日は京都賞を受賞されたS.Levinさんの受賞記念ワークショップに出かけてきました。以下にそのワークショップの感想について(Nさんにメールを)書いたものを一部改変して転載します。

---以下、メールを一部改編して転載---

内容のキーワードは、spatial ecologyとcomplex adaptive systemだったと思います。
「空間スケールが異なると違うものが見えてきますよ」というspatial ecologyについては全く異論がないし、他の講演者の話の内容もこの点を扱ったものが多かったです。
一方でcomplex adaptive systemは何を言いたいのか僕にはいまいち分かりませんでした。生態系などのシステムをそういう枠組みで捉えることが出来るというのは「そうかもね」とは思いましたが、そう考えることで何が得られるのか分かりませんでした。
新しいconseptでも受け入れられてしまえば新鮮さは急速に失われてしまいますが、その前段階(あるいはその候補の段階)ではあまり大事にされないということなのかもしれません。
いずれにしても、新たなconseptual frameworkがありがたがられる時期というのはほとんどないということで、そういうものを提示するという仕事は難しいことですね。

 他の講演者は、重定さん、センターの山村さん、国環研の山中さん、東工大の中丸さんで、基本的にはspatial ecologyの話でした。
僕としてはIBMで仕事をされている山中さんの講演を聴いたことがなかったので、期待していました。モデルの予測と現実の生き物とのすりあわせの方法などは(うまくいってないみたいですが)参考になったと思います。

意外に面白かったのは山村さんのモデルの話でした。複雑適応系の話として、捕食者(ミジンコ)と餌(藻類1種または2種)の話をしていました。
これが「複雑系」かどうかはともかく、ジェネラリスト捕食者がスイッチングをして、餌が対ジェネラリスト捕食者の防御をすると、系が安定化するという話は普段考えていたとおりだったので「モデルでもやっぱりそうなるんだな」というのと「同じようなことをみんな考えているものだ」逆に言えば「この程度の発想でもモデルにすれば仕事になるんだ」という感想でした。

 中丸さんの話は初めて聞きました。レヴィンさんの最近のお弟子さんで、社会科学の人らしいです。
毒を産生して他の株の邪魔をする大腸菌株と、人間社会における嫌がらせ行為や罰則行為には論理的なアナロジーがあり、それぞれをモデルで解析しましたというような内容でした。
論理的なアナロジーについてはなるほどねと思いましたし、そこに空間構造を組み込んで考えることが大事だということは納得できましたが、モデルの解析については疑問を持ちました。微妙な修飾で結果が質的に変わっているので、どこか落とし穴がありそうで、いまいち信用できない気がしました。
司会者の巖佐さんの質問「人間を対象にしたモデルの場合、何を利得とするのかが問題では?」というのが鍵に思えました。


カテゴリ: [研究] - &trackback() - 2005年11月14日 09:01:35
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