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環境リスク管理で有名な中西準子氏のHPは大変情報量が豊富で楽しい。
そのメインコンテンツ「雑感」に、アメリカ産牛肉を輸入することで変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)のリスクがあるのかを計算している箇所がある。
ちょっと前の内容で2004年5月に書かれたものであるが、もっと有名になってもいいだろうと思う。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak261_265.html

内容は各人に読んでいただくとして、この中に年40万頭検査した場合のリスク計算があるが、私はその内容に疑問を持った。
というのも、それだけ検査していれば推定BSE感染率の信頼区間は狭まるはずだが、その効果が考慮されていないように思える。

そこで中西氏の計算にならって計算してみた。なお、ここで「BSE牛の数」と書いてあるものは、正確にはプリオン量のBSE感染牛の頭数換算値である。

アメリカで1頭のBSE牛が見つかるまでに検査された牛は57,000頭だという。つまり、感染率は1/57,000と見積もられる。
この数字をもとに、年間57,000頭、570,000頭、5,700,000頭検査して、それぞれ1頭、10頭、100頭のBSE牛が見つかったとしよう。
このとき、アメリカで1年に生産される4,000万頭の牛のうちBSEに感染している牛の数は97.5%の確率で、それぞれ3,910頭、1,291頭、854頭より少ないと推定される。
見つかるBSE牛の割合は同じでも、その意味が違ってきていることに注意。たくさん検査するというのはこういうことだ。
日本にはアメリカで生産される牛の1/40が輸入されるので、日本に輸入されるBSE牛は 98頭、32頭、21頭となる。

また、当然危険部位の除去は行われるので、プリオン量はこれよりさらに小さくなる。
危険部位除去を行うことで99%, 95%, 90%のプリオンが除去される場合と、危険部位除去を行わない=除去プリオンが0%の場合を考えると、食肉と一緒に流通すると予想されるプリオン量は97.5%の確率で下記表よりも少なくなることが予測される。

除去率99% 除去率95% 除去率90% 除去無し
5.7万頭検査 0.98 4.9 9.8 98
57万頭検査 0.32 1.6 3.2 32
570万頭検査 0.21 1.1 2.1 21

中西氏の雑感で引用されている情報では、vCJD患者の発生を100年に1人以下に抑えるには、年間のプリオン流入を10頭分以下に抑える必要があるらしい。
この数字と上の表を見比べると、かなりいい加減な危険部位除去でも(5%や10%残っていても)、'' 全頭検査じゃなくても '' 57万頭以上検査していれば基準は満たされることになる。5%以下の残存率を保証できるなら、6万頭弱の検査頭数でも十分と言うことだ。
もう一つ重要なのは、これは日本に輸出される牛に限った話ではないことである。このように十分にリスクを抑えて、しかも経済的な負担が少ないことはとても重大な意味がある。全頭検査要求は「金なら出す。だから、我が国には絶対的な安心(実は根拠のない安心感に過ぎない)をよこせ。」というものだ。逆に言うと「貧乏人はBSEで逝ってヨシ」だ。これは恥ずかしい論理じゃないだろうか?

なお、この計算をするためのRのコードは以下の通り。

upl1<-binom.test(1, 57000, conf.level=0.95)$conf.int[2]
upl2<-binom.test(10, 570000, conf.level=0.95)$conf.int[2]
upl3<-binom.test(100, 5700000, conf.level=0.95)$conf.int[2]
upl<-c(upl1,upl2,upl3)
BinA<-40000000*upl
BinJ<-BinA/40
jokyo.seido<-c(0.01, 0.05, 0.1, 1)
res<-matrix(BinJ,ncol=1)%*%matrix(jokyo.seido,ncol=4)
res



カテゴリ: [環境] - &trackback- 2005年11月22日 18:14:08
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