もしも3馬鹿常夏トリオが種死に出てたら 格納庫

Dominions Phase3b

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匿名ユーザー

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<Phase3b-01>

「ええと、次は・・・。」
「・・・まだ、行くのか?」
フレイの言葉に、わずかに疲れがにじむ声でスティングが答えた。

「うん。ステラの服、もうちょっと選んであげたいし。だって、勿体無いじゃない?
 こんなに可愛いのに着たきりスズメなんて。」
そうフレイはステラの頭に手を乗せながら言い、ステラは嬉しそうな表情を浮かべる。

「・・・綺麗な服・・・好き。」
「うんうん。やっぱり、お洒落は女の子の楽しみだもんね!」
「ふーん、別に服なんて着れりゃいいと思うけどねー。つーか、スティングがそろそろキツそうだぜ?」
「・・・そう思うなら、一つぐらい持ってくれや、アウル。」
「ええー?な~んで、この僕が持たないといけないわけぇ?」
「・・・聞いた俺が馬鹿だったよ。」
そう、ため息混じりに言うと、スティングは紙袋と箱を抱えなおした。

アズラエルに退社してよいといわれた後、5人(シャニは残った)とフレイは
久々に町に繰り出していた。 見知らぬ町、土地へ行き艦内で過ごすのは慣れっことはいえ、やはり馴染みの町に帰ってくるとホッとする。
オルガとクロトはさっさと小説の新刊と新発売のゲームを買いに行き、
スティングはあれよあれよという間に、フレイとステラの 荷物持ちとなり、
買いたい物の無いアウルも同行し、今の状況ができあがったというわけである。
天気は晴れ、涼しい風は心地よく頬をなでていく、そんな午後であった。

と──次の店に向かう途中、アウルはストバス用のコートを見つけ、足を止めた。
おあつらえ向きに誰かが置いていったボールまであるではないか。
少し退屈そうだったその顔が、みるみる明るくなる。

「スティング!バスケしねえ?」
コートに走りこみボールを抱え、アウルは弾んだ声でスティングに声をかけた。

「バスケってお前・・・。」
まったく、こいつは・・・という思いを言外に滲ませ、スティングは答える。
アウルのバスケ好きはファントムベイン時代からで、度々付き合わされたものだ。

「今は買い物の途中だぞ。」
「いやだから、ちょっと休憩してさぁ。なあ、やろうぜ?ここにボールもあっからさあ!」
「休憩にバスケってどんな休憩だ、そりゃ・・・。」
そう言ってスティングは行こうとするが、アウルは諦めきれないらしく、矛先を変え,
今度はステラに声をかける。

「なあ、ステラ、お前バスケやんねえ?こっちこいよ!」
「バス・・・ケ?」
「ああ!教えてやっからさ!」
そういえば、スティングとアウルがたまに、何かああいう丸い籠がついたものがある所で
ボールを使って遊んでいたことをステラは思い出す。
なんのかんのと言い合っていたが、二人は楽しそうだった。

「・・・やる。」
「おいおい、ステラ。・・・いいのか、フレイ?」
頷くステラに驚き、スティングはフレイに尋ねる。

「いいかもね。アウルとステラがやってる間少し休むのも。ちょっとスティングには、
無理させちゃったし。」
そうスティングに答えるフレイの服を、ステラが引っ張った。

「何?ステラ。」
「・・・フレイも・・・。」
「ええ?けど、私あんまり体を動かすのは・・・」
「・・フレイも・・・いっしょがいい。」
「困ったなあ。」
確かに、今日はスカートではないから多少動くのは平気だ。
しかし、それより強化人間である彼等と一緒に運動なんかして大丈夫なのだろうか?
そうフレイは思うのだが・・・。

「いっしょ・・・いや・・・?」
そんな風にステラにお願いされては、もうこれはやるしかないではないか!
やれやれとため息を突きつつ上着を脱いでスティングにわたし、
フレイもコートに入っていく。
それを見ながらスティングは持っていたものをコートの隅のベンチに置き、
金網にもたれかかって観戦モードに入った。

「フレイはルール知ってんの?」
「まあね。体育でやったし。」
「知ってんならいいや。おお~し!2人まとめてかかってこいよ!」
「・・・どう・・するの?」
「まずは、あのアウルのボールを奪うのよ。」
「・・うばう。・・・了解!」

その言葉とともに、ステラの目が細められ・・・。
次の瞬間アウルが目にしたものは凄まじい速度で迫ってくるステラの拳だった。
ヒュゴッという、音ともに繰り出される拳をアウルはかろうじてかわし、大慌てで叫ぶ。

「うわっ!ステラ!よせ!パンチはなし、なしだって!」
「ステラ!殴っちゃ駄目よ。」
フレイも声をかけ、ステラの目がまたもとのぼうっとしたものに戻る。

「なぐる・・・駄目?」
「あったりまえじゃんか!ボールだよ、ボールだけにしか触っちゃ駄目なんだよ!」
「そう・・・なの?」
「そうだよ。頼むぜもう。」
「(拳が全然見えなかった・・・。やっぱりステラもスゴイわね)」

<Phase3b-02>

しかし当たり前といえば当たり前だが、ステラとフレイはアウルに遊ばれるばかりで
ボールに触れもしない。

「コッチ、コッチ~!」
などといいながら、アウルは二人を何度も余裕たっぷりにひょいひょいかわし、
シュートを決めた。

「あなたね!少しは手加減しなさいよ!」
そんなフレイの抗議を聞いているのかいないのか、アウルは楽しそうにしながら
ヒョイッとステラにボールを投げ渡す。

「今度は、そっちが攻める番!まあ僕をぬけるもんなら抜いてみなってね!」
そういわれて、ステラはぎこちない手つきでドリブルを始めるが・・・。
「いっただき~。」
という言葉とともに、あっさりとアウルにボールをとられてしまう。

「ステラの・・・ボール・・・とられた・・・。」
「ちょっ・・・ステラ、そんな悲しそうな顔しないで、ね?・・・アウル!アンタはぁ!」
何やらいきなり泣きそうになるステラを慌てて慰めながらフレイは怒鳴る。

「え~。だってバスケってこういうゲームじゃん。」
「そ、そうだけど。もう怒った!ステラ!いっちょあいつ、ギャフンと言わしてやりましょ!」
「うん!」
──5分後、流石といえば流石なことに、ステラはウルの動きにある程度ついていけるようになっていたが、 両者の技術差は如何ともしがたく、フレイは激しい運動で息が切れ、
すでにフラフラであった。

「も・・・もう駄目。」
「おいおいフレイ、もうダウン?」
「し・・・仕方ないでしょ・・・。」
「ステラ、フレイ、ちょっとかわれ!」
フレイがふらふらなのを見かねたのか、スティングがコートの中に入ってきた。

「おっ!な~んか、真打登場って感じジャン。」
「何言ってんだ。」
そして二人は腰を落とし、ゲームが始まった。

<Phase3b-03>

「ふ~う・・・。」
フレイは、大きく息をつくとベンチに座り込んだ。汗ビッショリである。
だが不愉快さはそれほどなく すずしい風がふいていくのが心地よく感じられた。
ついムキになってしまったが、結構楽しかった。
そういえばスポーツなんかしたのどれだけぶりだっけ?とフレイは思う。

「フレイ・・・」
そういって、横に座ったステラが心配そうにこっちを見てくる。
いけない、とフレイは笑顔をつくる。
ステラは、人の疲労等のマイナスの様子に敏感だ。
まあ5馬鹿に関してはそれほどではないが・・・。
多分、彼等5人が殺してもしなないような奴等だと思っているからだろうけど。

「大丈夫よ。」
そういって、ステラの頭をなでると、ステラはホッとしたような顔になり、
いつものように目を閉じて心地良さそうな顔をする。
本当にいい子だと思う。
それにしても・・・。あの黒髪の少年がステラを返してくれなかったとしたら?
社長が6人との生活で変わらず、ステラが計画通りデストロイにのせられていたら?
一度ステラを失ったと思った時のことを思い出すと、
そして本来ステラ達が辿るはずだった運命を考え出すと・・・本当に怖くなる。
今ここにステラがいる事の幸せを、フレイはしばし噛み締めた。

<Phase3b-04>

「通すかっ」
「ってこっちだよ~ん。」
「やらせるか!」
「あま~い。も~らいっと。・・・これで8点差だねぇ。」
「くっそ・・・」
「スティング結構やるようになったじゃん。僕にはまだまだ、及ばないけど。」
「たった8点リードしたぐらいで何言ってやがる!勝負はこれからだ!」

どうも、スティングもアウルにはかなわないとみえる。
にしても、アウルに手加減しろと言ってしまったが 大分手加減してくれていたようだ。
フレイ達とやっていた時とはまったく違う、すごいスピードとジャンプの高さである。
「スティング・・・アウル・・・たのしそう・・・。」
そんなことを考えていると、そうステラが呟くのが聞こえた。

「ちょっとー!スティング、アウル・・・ステラが入れてって!」
「オッケー。また二人まとめて相手してやるよ。」
「ああそうかい。ステラ、お前は右だ。ぐうの音もでないほど点差つけてやろうぜ。」
「・・・フレイ・・・は?」
「ごめん!ちょっと疲れちゃった。ここで応援してるから。」
「・・・わかった・・・。フレイの分もがんばる・・・。」
「ステラー、早くしろー。このお馬鹿ー。」
「馬鹿はないだろうが、アウル!」
「うえ~い!!」
「頑張ってー、私の応援が二人を守るわ!!」
「おっ。サンキュー。フレイ!」
「ステラも・・・がんばる!」
「なんだよ、俺って悪役なわけえ!?」
「アウル・・・アク・・・」
「だぁ──もう!どっからでもかかってこいってねえ!!」
その3人のやり取りに、フレイは声を立てて笑った。

<Phase3b-05>

「まずいわ・・・早く車とってオルガ達を迎えに行ってあげないと。」
太陽が沈み始め始める頃、フレイ達は、車を止めた場所へと急いでいた。

「ごめんね、ステラ。服買う時間なくなっちゃった。」
「ううん・・・いい。とっても・・・たのしかったから。・・・フレイは?」
「うん!私も楽しかった。体動かすのっていいわよね。」
「面白かったよな。けどさぁ、ご~めんねぇ、結局僕の一人勝ちでさぁ!」
「ちょっと待て!最後のゲームは単に時間切れだっただけだ。」
「スティ~ング。負け惜しみってんじゃね?そういうの。」
「まあまあ。またリマッチすればいいじゃない。その気になればいつでもできるわよ、
バスケなんて。」

そう何の気なしにフレイは言う。
だが、その言葉にアウルとスティングは一瞬驚いたような顔をし、
その後、嬉しそうな、そして何かをかみ締めるような表情を浮かべた。

「そう──だな。いつでも、できる・・・な。」
スティングがそう、一語一語かみ締めるように言う。

「できるんだよなぁ。やろうと思えば──何でも。」
アウルがいつもの、どことなく皮肉っぽい声音を消し言う。

その言葉に込められたものの重さにフレイは今更ながらに思い知る。
彼らがずっと、廃棄という名の死に常に晒されてきたことを。
自由をずっと奪われ続け、常に誰かに何かを強制され続けてきたことを。

明日を自由に決めることが出来ない。明日が来るかどうか分からない。
そんな日々をずっと彼等は生きてきたのだ。
思わずフレイは涙ぐんでしまう。
そんな、三人に気付いたのかどうか、ステラが元気よく言った。

「ステラ、やりたい!フレイとスティングとアウルと・・・今度はオルガも、クロトも、
シャニも・・・みんなで!!」
その言葉に、フレイはステラに見えないようにそっと涙をぬぐい笑顔で言う。

「うん!やろうか!みんなで。」
「やりたいよなぁ。いっそ明日やっちゃう?」
「おいおい、アウル、焦るなよ。いつだってできるさ、やろうと思えばな。──いつでも。」

そう、いつだってできるのだ。何も彼等を縛るものはないのだから。
彼等は、奪われていた明日を────取り戻したのだから。

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