もしも3馬鹿常夏トリオが種死に出てたら 格納庫

Dominions Phase10 -Past-

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「地球軍第82独立機動軍所属、ナタル・バジルール少佐であります。」
直立不動で敬礼しながら、ナタルは目の前の男の珍妙な格好をいぶかしむ様子を表に出さないように必死であった。

「地球軍第81独立機動軍ネオ・ロアノークだ。よろしく。」
 その男は・・・。仮面をつけていた。怪しいという言葉がこれほど似合う格好もないであろう。
こんな珍妙な格好、どう考えても軍に属するものの格好ではない。
(我々同様、軍の規格から外れている隊だろうと、思ってはいたのだが・・・)
だが、まさかここまでとは。

「しっかしまあ、あんな艦を任されてる少佐だっていうから、どんなゴリラかと思ってたら
 こりゃまた、美人さんじゃあないの! 次の日曜、暇だったら飲みに行かない? お近づきの印ってことでさ。」
「からかうのは、止めていただけませんか。大佐。」
「本気なんだけどなぁ。」
「・・・用がないのでしたら、失礼させていただきます。着艦したばかりで、色々と立て込んでおりますので。」
「ああ、そいつは失礼。どうぞ、ご自由に。」

 その飄々とした物言いと立ち振る舞い、非常にあの男に似ている。
(・・・気のせいだな)
 いくらなんでも、あの男が地球軍にいるはずがない。ナタルは再度敬礼するとブリッジを後にした。

 その頃フレイは、夕食をとるべくガーティ・ルーの食堂にいた。どうせ、これから行き来するのだから
何が美味しいのか、まずいのかを見極めておくのも悪くはない。
(美味しいわね・・・。)
 ちなみに、ドミニオンのメニューは不味くはないが、決して美味くはないというのがクルー達の評価である。
多少丸くなったとはいえ、質実剛健が信条のナタル。
あんまり美味くないからコックを変えてくれ、などと陳情しても怒鳴り声が飛んでくるのは目に見えている。
そんなこんなで、あまり豊かとはいえない食生活を送っていたフレイにはなかなか嬉しいことであった。
だが、これではドミニオンのクルーはみんな、雪崩をうってガーティ・ルーへと向かうだろう。
食券をいかに確保するか、フレイはしばし考えを巡らせた。

 その時、隣に座る気配があり、フレイはそちらに視線を送った。
ふんわりした金髪、すみれ色のぼうっとした目をした子が、一心に夕食を食べている。
可愛い子である。歳は自分より2つか3つ下だろうか? 軍服をかなり着崩してきて着ている。
ドミニオンでこんな格好をしたら、叱責されているだろう。なんというか、この艦はどうも色々規格外の人間が多い。
まあ、さっきチラリと見えた艦長があれでは、しょうがないと言えるが・・・。

 一心に食べていた隣の女の子は、デザートのプリンにかかっている。一口食べると、しばし手を止めた。
次の一口は、すごくちょっとだけとって口に運ぶ。次はまたちょっとだけ・・・。
小さな子供がなくならないように、大事にケーキをちょっとずつ食べるのを連想させるその光景に
フレイはついつい、笑みが浮かびそうになる。この幼い顔をした金髪の子がやると、とても愛嬌があって・・・すごく可愛い。
だが、何事にも終わりはある。プリンはなくなってしまい、その子はちょっと悲しそうにカラになったお皿をみつめている。

「あの・・・良かったら、これどう?」
 つい、そう言って自分の分のプリンを差し出してしまってから、フレイはどっと汗をかく。
 初対面の女の子には、あんまり言うべきではなかったかもしれない・・・。

「・・・だれ?」
 女の子はそういって、ボウッとした目でこっちを見てくる。
 ただ不思議そうな思いだけが、その目と口調にこもっていた。
「フレイよ。フレイ・アルスター。」
「フレイ・・・。」
 そういって、女の子は小首を軽くかしげる仕草をした後、差し出されたプリンに目を落とす。

「・・・どうして?これ・・・きらい?」
「うう~ん。嫌いじゃないんだけど・・・なんとなく、あげたくなっちゃって。あなた、美味しそうに食べてたし。」
「・・・ステラ・・・これ・・・好き。初めて・・・食べた。」
「(プリンが始めて? こんなに美味しいプリンは初めて、てことかな・・・)」
「・・・ありがとう。」
 そう言って、女の子はニコリと笑う。

 などと、フレイがまた悶々としていると、半分取り分けられプリンが自分の手前に戻ってくる。
 少し驚いて、見ると女の子がニコニコしながらフレイを見ている。
「これ・・・おいしい・・・。だから、フレイも・・・。」
「じゃあ、私も食べようかな。実を言うと結構未練あったよのね。(い・・・いけないわ。
 この子を見てるとなんかヤバイ方向にいってしまいそう・・・)」
そう言って、フレイもプリンを口に運ぶ。二人は顔を見あわせて、少し笑いあった。

(いっけない!・・・)
ひょいと時計を見ると、けっこう時間がたっていた。やることはまだある。ドミニオンに戻らないと。
別れを告げて、行こうとするフレイにステラが声をかけた。

「・・・ステラ。」
「え?」
「ステラ・・・名前・・・ステラ。」
「分かった。あなたステラね?」

そうフレイが言うと、ステラはこくりと頷いた。まだ名残惜しそうにこちらを見ているステラに
フレイは軽く手を振る。するとステラも振り替えしてきた。その行動に、知らず知らずの内に笑みがもれる。

それにしても、とフレイは思う。どうしてあんな子が軍艦に? いや待て・・・。「ステラ」?
確かナタルが、言っていた中にその名前がなかったか? まさか、とフレイは首をふる。
あの子が、オルガ達と同じ強化人間だなんて、そんなはずはない。だって、そんなの・・・酷すぎる。
あんな子を・・・。

しかし、フレイは次の日、その答えを知ることとなった。これ以上ないほど、強烈な形で・・・。

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