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無いシーンをあたかも~スレ風、本番編


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「何です? ナタルさん、こんな時間に・・・」
 お話があります、そう言って部屋に入ってきたナタルをアズラエルは訝しげに見た。
 常日頃は簡潔にテキパキと用件を話す彼女には珍しいことに、ナタルはなかなか
用件を切り出さない。
 部屋にはしばし、沈黙が満ちた。
「・・・ナタルさん?」
「失礼しました」
 ナタルの問いかけに、ナタルは目を伏せてそう答えた後、決然と顔をあげた。
 その瞳に宿った光にアズラエルは気圧されそうになる。
 それほどナタルの目は強い光を放っていた。
「理事、自分・・・地球軍少佐・ナタル=バジルールは、ステラ・ルーシェ、アウ
ル・ニーダ、スティング・オークレーのブロックワード解除とグリフェプタンの改
良を具申いたします!」
 ナタルの言葉に、アズラエルは顔をしかめた。
「あのですね・・・」
「あの、何でしょうか?」
 アズラエルの口から嘆息がもれた。
「ナタルさん・・・あなた、彼らがどういいう経緯で、超人的な力を手に入れパイ
ロットになったか、ご存知ですよねえ?」
「無論です」
「だったら!」
 アズラエルは声を荒げた。
 少し考えれば分かることではないか?
「ブロックワードも薬も彼らを・・・その」
 何故か、アズラエルはその先を言うのをためらう自分に気づいた。
 艦内で元気にはしゃぎまわる、6人の笑顔が頭をかすめる。
 ――馬鹿な
 アズラエルは愕然とする。
 ――一いつから自分はこんな?
「『生体CPU』には『暴走』した際を想定した『機能停止方法』が必要、という
ことでしょうか?」
 氷のように冷たい響きのナタルの声。
 アズラエルはカッと頭に血が上るのを感じた。
「分かっているなら、わざわざ言う必要はないだろう!」
 昔は平然と使っていた『生体CPU』という言葉。
 その言葉が、今はとてつもなく不愉快だった。
 そして、不愉快だと感じている自分に、アズラエルは更に苛立つ。
「強いやつは・・・強い牙を持つ奴は、ちゃんと閉じこめて おくか、繋いでおくか
しないと危ないんだよ!」
 そうだ、それが当然だ。そうしないと、強い奴らは僕らを脅かす。
 ましてや、彼ら6人は自分達を恨んでいて当然なのだ。
 なのに、何故こんなに自分は・・・

「何を恐れていらっしゃるのですか? 理事」
 その声音のあまりの穏やかさに、アズラエルはハッとしてナタルの顔を見た。
 だが、その内容が頭に浸透するにつれ、次第にアズラエルの顔は朱に染まる。
「僕が・・・恐れているだって!?」
「はい。あなたは、彼ら6人を解き放てば、6人が自分にあの超人的な力で牙を剥
くと思い、それを恐れていらっしゃる。・・・違いますか?」
 激高するアズラエルとは対照的にナタルの表情はどこまでも静かだった。
 図星をつかれ、アズラエルは黙り込む。
 ナタルは、アズラエルをまっすぐ見据えながら続けた。
「アンドラス少尉・・・いえ、シャニ、そしてオルガが何故、昏睡状態でいるか、
理事はご存知だと思います」

 今日のザフト軍の攻撃はすさまじかった。
 エクステンデッド三人とは異なり、オルガ達ブーステッドの三人はローテーショ
ンを組み、薬を補給しに戻らなくてはならない
 だが、クロトを先に戻した際に、一気に攻勢をかけてきた敵を撃退するために、
シャニとオルガは艦に戻ることができなくなってしまったのだ。
 二人が抜ければ一瞬でドミニオンは沈む。それほどの猛攻だった。
 薬が切れた後の、地獄のような禁断症状と戦いながら、それでも二人は戦って
艦を守り抜いた。
 禁断症状の中で過酷な戦闘を行い――一
 敵が引き上げ、艦に戻ると同時に二人は失神した。
 そして、未だに彼らの意識は戻っていない。

「何ゆえ、彼らがあれほど戦えたと思いますか? 理事」
「・・・」
「守りたいと思ったからです。艦を、仲間を。――あなたを」
「ぼ、僕を?」
 アズラエルを驚愕を隠し切れず、素っ頓狂な声を出してしまう。
 まさか・・・
「同じ艦に乗り、ともに戦えば仲間であり、戦友です。戦場で結んだ絆は何より強い。
自分はそう思っております。ましてやあなたは、彼ら6人を人として扱い、一人の
人間として彼らと向き合った数少ない人間です」
 ナタルは何かを押さえつけるように一度言葉を切り、下を向いた。
 だが、もう一度顔を上げたナタルの顔には、抑えられぬ激情の炎があった。
 鬼気迫る、としか形容しようがない表情で、ナタルは口を開く。
「恐れる必要はないのです、理事。いくら強くとも・・・超人的な力を持とうと彼
らは仲間なのです。仲間を・・・戦友を、どうか、信じてくださいませんか?
 あんな縛りがなくとも、彼らはもう我々を、貴方を、裏切ったりしません!
 私達は、それだけの日々を重ねてきたではありませんか!
 あなたにとっては、暇つぶしに、学校ごっこ遊びに付き合っただけかもしれない
店に行くついでに面白半分に連れていっただけかもしれない、雑用をやらせてみただ
けかもしれない・・・。それでも彼らにとっては、『生体CPU』ではなく『人』としてのかけがえのな
い時間だった。私はそう思います。
 その時間を、彼らにあたえたのは、あなただ! 理事」
「で・・・でも」
「恐れるな!!」
 ナタルの雷鳴のごとき大喝が部屋に轟いた。
「強化人間、ではなくオルガ・サブナックをクロト・ブエルをシャニ・アンドラス
をスティング・オークレーをアウル・ニーダをステラ・ルーシェを・・・
戦友を、仲間を、信じろ!! ムルタ・アズラエル!!」
 それは数瞬だったのか、或いは数十分であったのか。
 何れにせよ、二人には永遠にも感じられる時間だった。
 そして、ブルーコスモスの元盟主、ムルタアズラエルは。
 「・・・うん、分かった」
 そう、小さく頷いたのだった。
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