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ホーム・ドミニオン-ドミニオンの引っ越し前夜-


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「フフフ……ハハハハハハハハ!!!僕は、僕はねぇっ!!!!」

「うるせーぞ、クロトォ!!」
「うざ~い」
「一つ包んでは父のため~二つ包んでは母の………母……か、かあさーーーんっ!!!!」
「アウル!自爆はよせ、自爆は!!!!」
「ステラ…ガムテープ……はるの……すきだから……」

時は師走、師匠も走るとかく何かと忙しいこの季節。六人の子供達は錯乱していた。

「ちょっとぉ!誰よ、あたしの基礎化粧品ポーチ勝手にしまった奴は!!」
「馬鹿っ、フレイ!!何お前…包んだ段ボールあけてんだよっ!!!」
「うるさいわね、あれがないと今日のシャワーの後どうするのよ!!」
「僕は…僕はねぇ…全部詰め込むんだよぉおお!!!」

大人達は彼等の新生活を迎えるにあたって、例のドミニオンの件を上手く誤摩化し、こう告げた。
【君達の自立心を養う訓練を行います、唯戦うだけではこれからの世の中生きて行けませんからネ。】
【これは我々が話し合って決めたことだ、上官命令と受け取ってくれてかまわない。】
【必要なものはこちらで全て揃える。世間知らずなお前等にこの任務ができるかな~?】
【よし、では今から各自私物や用意された家財を荷造りしろっ!まずはそれからだ!】
…と、ちなみに上からムルタ・ジブリール・ネオ・ナタルである。

これに対し子供達の反応は様々で、その任に大旨従ったものとみなされるが、最終的にはこれである。
引っ越しとは新居を思い描いている時が楽しく、その準備は苦痛以外の何物でもない。
ドミニオンから運んできたとされる様々な物はそれこそ山の様に彼等に映った。

「ちょっ、段ボール100個じゃきかないんですけど!!アハハハハ」
「笑うとこじゃないぞ、アウル!戻ってこい!!」
「おい、シャニ。クロトどーした?やけに静かになったな。」
「うざいから詰めといたよ」
「そうか……って!!!!!出せ!お前は二丁目のヤクザか?!!オノゴロに沈める気かよッ!!!」

「ステラ……ガムテープ……はったの…」
「いいから!ステラいいからっ!!!早く出せっつーのォッ!!!」

一方、その隣室ではナタルとネオが子供達同様荷造りをしていた。
主にネオが荷物を段ボールにつめ、ナタルがそれを閉じ内容物の記入を行っていた。

「それにしても、何故私達まで…」
「いやーなんでも引っ越し先には俺達の部屋も用意してあるんだと。」
「その言い方では…私達が同室だと誤解を受けます、言い直して下さい。」
「え」
「早くする!!」

ドアの開く音と共に、夫婦漫才ですか?と笑いながらムルタが部屋に入ってきた。
ナタルは耳を真っ赤にして言い返してきたが、ちっとも怖くないというポーズをして珍しく彼は優位に立った。
そして胸ポケットから小さな見取り図と建物の全貌を映した写真を取り出した。

「こ、これは……」
「なんとも、まぁ……」
「いやぁ、今の僕の財力ではこれぐらいしか買い取れなかったんですよ…我慢してください。」
「コズミックイラにこんな物件がまだ…MSが傍飛んだだけで倒れそうじゃない??」
「大佐、折角ご用意して頂いたのだ。その辺にしておきましょう…」

旧式のアパートは二階建て、薄汚れたブロックがせいぜい家賃3万といったところだろう。
見取り図によれば風呂トイレ付きだからまだ良いが、それでも1Kしかない。

「……でもこのアパート6部屋しかないぜ?部屋割りはどーなのよ。」
「ああ、それはですね…」

ニ階手前(階段より)→オルガ・クロト・シャニ
ニ階中→アウル・ステラ・スティング
ニ階奥→フレイ
一階手前→空き部屋
一階中→ネオ
一階奥→ナタル

「…といった具合に。」
「あ、なんだそりゃあ??1Kに3人だとか、空き部屋とか、俺とナタルは別部屋とか問題が…」
「最後のはまったく問題ではありませんっ!!!」
「まぁ色々あるんですよ、」

ふぅ、と悩まし気な溜息を一度ついてムルタは荷造られた段ボールのによりかかった。
彼曰く、一部屋3人なのは自立心と協調性とを同時に養わせるため(特にオルガ達を指す)
フレイが一人部屋なのは年頃の娘であることとお嬢様体質を改善させるため
ムルタとジブリールは資金繰りをするため一緒には住めない、ということ。

「で、空き部屋は?なんなわけ?」
「……………聞かない方がいいと思いますよ…」
「ちょ、理事!やめてくださいそういう……出る…みたいな口ぶりはっっ!!!」
「……………僕にはとても…昔あそこで……やっぱ無理」
「答えろぉおお!!!」

錯乱しだしたナタルを上手く交わし、ムルタはドアの方へ逃げて行った。
これから資金繰りのために又出かけなくてはならないのだ。
ドアの所まできて、彼は小さく微笑んでから彼女達の方へ向き直した。

「すみませんねぇ、彼等の学校等の資金も含めたら曰く付きのアパートくらいしか手に入らなかったんですよ。」
「い、曰くつき…!!」
「て、学校?あいつら学校に行かせてやれるの??」
「ええ、貴方達にも就職先いくつか探しておきましたヨ。後は任せます。では!」

ドミニオンで養った不屈の精神で、ムルタは苦境にもめげなかった。
その証拠に、去り際のあの頬の色といったらない。自然と残された二人に活力が沸き出す。

「ん、肩の力抜いていきますかっ!」
「それは困ります、大佐。それ以上抜かれては。」
「きっついなー、ま…のんびりとやろうや。アイツ等だって、ずっとそうしてやりたかったんだ。」
「ええ、でも私は違います。力は抜きません、やり方を少し、変えるだけですから。」

笑い合う大人二人を覗き見ながら、うごめく影3つ。

「ふーん、何かいい感じだね、あの二人。」
「チェ、こっちも荷造りかよ。手伝わせようと思ったのに!」
「無理言うなクロト、又自立心が~とか言われるのが仕舞いだ。」

チェッ、ともう一度舌打をして赤毛の少年クロトは頭の後ろで手を組んだ。
メロンソーダを片手に同じ様な髪色のシャニはだるーいと言った。
そんな二人を金髪のオルガが煩わしそうに見て、3人は揃って大きく息を吐いた。

「でもさ、何でいきなりこんなことになったんだろ?」
「確かに、戦わなくていいなんて言われてもな。まぁ薬はくれるらしいし、楽でいいけど。」
「それ。しかも抗体とか月一で投入したり、なんか本格的に治療してくれるらしいよ。」
「ま、言いたかねぇが……今更、だよな。」

だね、とクロトが相槌をうって、オルガは又溜息をついた。
黙りこくっていたシャニはう~ん?と頭を捻って、やがてポンと手を叩いた。

「ねぇ、ドミニオン、壊れちゃったんじゃない?」

気怠そうな表情と声で発された言葉に、二人はげらげらと笑った。
心底呆れたような、そんな笑いだった。

「ヴァ~カ!!撃・滅されたならともかく、攻撃すら当たってねーじゃねーか!」
「仮にそうだったとして、あのおっさん達がそれを放っておくかよ?」
「僕達の治療なんてそっちのけで直すよ、きっとね!」

そうか、とこれにはシャニも納得した様子でこっくりと頷いた。
彼は密かにドミニオン一・洞察力に優れている男であったが、それが戦闘以外に認められたことはなかった。
もっとも彼は少し感情表現が乏しく、物事への関心がこれといってなかった。

そんな彼が「俺達よりもドミニオンのが大事だもんな」と呟いたことは、他の二人を多少なりとも傷つけた。
あくまでシャニはクロトとオルガの言葉をくり返しただけだったのだけれど。

一方休憩所にて、フレイは硬貨を入れた自販機の前で飲み物をどれにするか悩んでいた。
悩んでいるのはそんなちっぽけなことだけではなかったが、極力考えない様にしていた。
この艦に残るとずっと昔に決めたときから、そんな癖が彼女にはついていたのだ。

(なんなの…いきなり、課外訓練だなんて。胡散臭すぎるわよ)

一言だって事前に相談もしてくれなくて!と、怒りの矛先はレモンティのボタンに向けられた。
紙コップが機械の中で落とされ、しばらくすると温かいレモンティができあがる。
苛々した手先でそれを取れば、案の定、フレイは熱過ぎるそれに文字通り手を焼いた。

(学校を用意するとか、アパートに入れとか、そんな普通の生活)

ふと、サングラスがよく似合う少年や外ハネの髪の少女だとかがフレイの脳裏を過った。
昔のことだ。思い出さない様にして今まで生きてきた。なるべくなら、と。
新しい仲間達との生活が楽しければ楽しい程、あの時ああしていれば…こうしていれば…と彼女は思うのだ。
少女特有の癖だ。これを「もやもやのかたまり」と彼女は密かに名付けていた。

(確か、オーブにあるのよね……新しい家は。)
(……あえるかしら)
(オーブには旧い私の家もある、もう朽ちてしまったかもしれないけれど…)
(……あえる、気がする。すぐじゃなくても……きっと。)
(戦争と言う戦争はもうないのだから、戻ってもいいかもしれないわ。あの温く優しかった生活に。)

どこかで、ステラがフレイを呼ぶ声がした。
ハッとして、幾分か温くなったレモンティを流し込む様に飲んだ。甘くて苦くて、少しだけ泣いた。
飲み干す頃にはもういつものフレイに戻れるだろう、そう自分に言い聞かしながら。

「ステラ、何か用?そんな大きな声で探さなくても私はここにいるわよ。」
「フレイ……ガムテープ…はっちゃだめ?」
「え?そうねぇ…じゃああっちのブランドバック詰めた段ボールにお願いしようかしら。」

はぁい、と嬉しそうな顔のステラを見れば、幸せな気持ちがもやもやを追いやっているのに気付いた。
過去あってこその今・なのよねぇ、との呟きはステラを困惑させたがそれがフレイにはとても愉快だった。

「ちょ、どこ行ったんだよアイツ等ァ!!僕とスティングだけじゃんか真面目にやってんの!!!」
「まぁ、そう言うなアウル。実質やってんのは俺だけだから。」
「ごめんねぇ、今念覚えるのに夢中でさぁ!!」

大量に出てきた漫画本を進んで仕分けだしたアウルに、スティングはこうなることを予測していた。
先ほどから一冊一冊ぱらりと読み返しては「要る、これも要る」と段ボールは着実に増えるばかり。
途中、「ハンター試験に受かるんだよ!」とか「親父にだってぶたれたことないのにぃ!」とか騒々しい。

「ったく、お前は気楽でいいな。毎度毎度。」
「なんだと!このショコラが熱くなかったのを幸いに思え!!」
「うるせーな、ベルばらはいいんだよ!!!」

まぁ、これでも一応荷造りをしているからいいかとスティングは諦めの境地に入った。
問題はステラだ。ガムテープはいいから、と私物の仕分けをさせたら箱に生物を詰めだした。
魚死ぬぞ!とも言えず、「大事な物は手で持って行こうな?」と言ったらすごい量の手荷物が錬成された。
仕方無くフレイの手伝いをさせに出したため、スティングは実質3人分の荷造りをしていた。

「戦ってた方が楽だぜ、これじゃあな。」
「そうかな?いいんじゃない、たまにはこういうのもさぁ。嫌いじゃないよ。」
「………いつまでだろーなぁ」

こういうことしていられるのは、とは続けなかった。
アウルは大人びたスティングの瞳をじっと見てから、わざと戯けた声を出した。

「いいじゃん、いつまでだって。」
「ん?」
「いつまで、のために生きてるんだからさぁ。場所とか何するかなんてコロコロ変わったって。」
「それも……そうか。」

そうだな、とスティングが笑う、その顔は少年だった。アウルはホッと胸を撫で下ろす。
そしていけない!と漫画の続きを読み始めた。日本に帰るんだ!とかなんとか呟きながら。
兄弟そのものの二人は背を合わせながら、穏やかな気持ちで引っ越しの準備を再開した。


「あ、そういえば引っ越し当日っていつだっけ?」
「明日の25日ですが何か?」

「「………終わらねぇよ」」

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