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ホーム・ドミニオン-仕事探すならフロムAA-


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引っ越し翌日、ドミニオン荘ニ階の手前一室は死んだ様に静かだった。
ファントム・ペイン3人組は学校案内とかで朝早くからいなかったし、フレイも懐かしい街を堪能していた。
では残りの3人も出かけたのか、というとそうではない。
彼等は段ボールの間に挟まる様にして各々の趣味に没頭していた。絵的には連なった「めざし」の様である。

「………なんかさぁ」
「なんだよ、クロト」
「……こういうの、さ、ニートっていうのかなぁってふと思っただけ。」

「「「……」」」

戦闘はない、が、薬はある。その安息が彼等から元々希薄だった活力を奪った。
枕元のペットボトルを手にとり、その水を飲んだ後オルガがのそりと身を起した。
けれどそれ以上は段ボールと他二人に阻まれ動くことができない。

「職、探しに行くか。このまま段ボールの一部にはなりたくねぇし…」
「ですね。仕送りだけじゃ、とてもゲーム買ったりしてる余裕ないし。」
「……うざいけど、ipod…欲しいし。」
「(そのためにはまずパソコンがなきゃいけないことに気付いてねぇな…コイツ)」

クロトが勝手台に無造作に置いてある綺麗なファイルを脚で器用に取った。
ムルタが彼等のために、と言っていた例の職安のパンフレットのようだ。
律儀に3セット入っているので、皆身体を起こしそれに眼をやる。

「えーと……なにこれ、『フロムAA』?」
「就職情報誌じゃん、何が案内だよ……こっから探せってことぉ?」
「いや、なんか中身は違うな。簡素な就職データと地図だ。」
「なになに…『我が社は路頭に迷う子羊を見捨てたりはしません』…胡散臭い宗教かよ。」
「ま、しゃあない。着替えて行ってみるか!」

着替えるのめんどくさいとごねるシャニとクロトに、オルガはムルタが送ってきたスーツを無理矢理着させた。
自分も一番サイズの大きいそれに袖を通すと、どこか背筋がしゃんとする感じが悪くないと彼は思う。
シャニは満更でもないがホストまがいの胡散臭さで、クロトに至っては少々七五三というイメージが拭えない。
彼等はもう成人しているというのに。かく言うオルガもお世辞にも似合っているとは言い難った。

地図には最寄り駅より徒歩五分とあったが、彼等は猶に三十分は歩き通しだった。
慣れないスーツはその軽さにも関わらず防寒性に優れていたため寒くはなかったのが救いだ。
それでも慣れぬ街をだらだらと歩いているのは彼等にとって苦痛だった。

「オイコラァ!!!駅から五分は実は十五分♪、の法則はどうしたぁあ!!!」
「もう三十分は歩いてるぜ……迷子うざ~い」
「うっせーよ、お前等!この馬鹿地図、縮小しすぎでわけがわかんねぇんだよ!!」

「あの…失礼ですけど、どうかしましたか?」

手にした地図を破り捨てんばかりの勢いで握りしめていたら、後ろから茶髪の青年に声をかけられた。
見た目は幼く感じるがその風格が、どこか同年代くらいなのだろうという空気を出していた。
3人は少し身構えて、それから多少きつい目つきでオルガが口をきき出した。

「何だよ、お前。見りゃわかんだろ、道に迷ってんだよ!」
「(あ、街頭漫才じゃないんだ…)あ、そうでしたか…良かったら教えましょうか?僕この辺多少詳しいので。」
「マジで!やったね、僕達もう探すのも面倒になってきてさぁ!」
「待てよ、クロト。おっさん前言ってた…怪しい奴にはついて行くな、って…」

シャニがキッと茶髪の青年を睨むと、困ったなと彼は呟いて胸ポケットを漁りだした。
中から小さいメモリースティックのようなものを取り出すと暗証番号を打ち込む。
ピピっという電子音と共に3人の前にはがきサイズくらいのホログラムがあらわれた。
そこには、「フロムAA(株)特別審査係員 キラ=ヤマト」とあった。

「僕、職業安定所に所属しているんです。今もお店とかの下調べをしていて…」
「フロムAAって、まさしく僕達が行こうとしてたとこじゃん!」
「え…じゃあ貴方達…ですか?ムルタ=アズラエルさんの手紙にあった3人って…」
「ああ、おっさんは俺達の……なんだ?」
「さぁ、薬くれるひと。」
「いい様にこき使ってくれちゃう人、じゃないの?」
「(なんなんだろう…この人達)じゃ、まぁ…とりあえず会社に行きましょうか。社長も待ってましたよ。」

それから五分もかからないで「フロムAA(株)」についた一同は眼をまるくした。

「はぁ??これが会社????」
「これって……アークエンジェル…じゃん」
「おいおい、本当にここでいいのかよ?!俺達を騙す気か??」
「アハハ、そんなことしませんよ。でもちょっと、お灸を据えられるかもしれませんね…遅くなったから。」

ドミニオン同型艦、アークエンジェルは海に面した今は使われていない基地の中にひっそりとあった。
戦争がなくなってめぼしい兵器は放棄されたときくが、それでも威圧感のある艦だ。
かつての怨敵ともあって、どことなく3人は身構えていた。

「……本当言うと、貴方達のことは知ってました。昔手こずらされましたからね。」
「そうかよ、こっちは死にものぐるいだったっつーのに。」
「僕達も、ですよ。オルガさん。」
「名前……って、おっさんが手配済み、だったな。」

キラは憂う様な笑みを3人に寄越して、もう今は敵じゃないですと告げた。
それを聞いても直ぐに肩の力を抜くことはできないが、幾分かは楽になった。
艦内はドミニオンとほぼ一緒なので特にキラが指示する事もなく四人はメインブリッジへ向かっていた。

「しがない職安ですけど、結構人来たりするんですよ。ここは。」
「最強のコーディネーターさんが他人の仕事の斡旋かよ、つまらなくねぇか?」
「……貴方の言いたいことも、わかります。けれど僕はこの仕事好きですよ。」

皮肉ったつもりが爽やかに翻されてしまった。これにはオルガも身を引き締める。
バツの悪い思いをして、彼には珍しく、素直に言葉を訂正し謝った。
後ろで二人のやり取りを見ていたシャニとクロトもこれをみて驚く。

「さ、着きましたよ。後は中で社長と話してみて下さい、僕は外回り残ってるんで。」
「あ、あのよ……その、ありがとな。」
「感・謝!!」
「怪しい奴とか言って…悪かったよ」

今度はキラが眼をまるくして驚いた。
昔の彼等(といっても戦闘時にしか相見えなかったが)からはとてもこんなしおらしい姿、想像つかなかった。
けれどそれを彼は笑顔で受け止めて、またね、と言った。

それはオルガ達が初めて受け取った、他人からの再開の意思で、3人はそれが少し誇らしかった。

「あ~ら、いらっしゃい!さ、かけてかけて。寒い所ご苦労様です、今お茶煎れるわね。」

メインブリッジは多少、というか結構改造が施されていて客室としては十分な機能を備えていた。
明るく美しい女性がハキハキと3人を席に促す。大人の女性のパワーに押されながらもそれに従った。
奥の給湯室らしき場所から、紅茶の砂糖とミルクは何個~?と声をかけられる。
ここでもやはり年長者のオルガが先頭に立って、一つずつお願いしますと多少上擦った声で返した。

「ええと、左からオルガ=サブナックさん、クロト=ブエルさん、シャニ=アンドラスさんでOK?」
「O・K!!」
「馬鹿クロトっ、あ、それで合ってます。続けて下さい。」
「フフ、いいのよ。ここでは肩の力抜いて、ね?じゃないと仕事見つからないわよ~」
「あ、ハイ…すいません」

「(……オルガ年増&巨乳好きだったんだ、えろーい)」
「年増じゃないわよ~?シャニくん?バリアントくらいたい??」
「!!!!!」

読心術を心得ているのか、目の前の女性の眼は真剣(とかいてマジと読ませるくらい)だったので素直に謝った。
余談だが、シャニは密かに彼女のことを「師匠」と呼ぶことにした。

「あ、言い忘れてた、私はマリュー=ラミアスです。ここの社長です、一応ね。」
「じゃあ、ラミアス社長。早速ですが俺達の職のことで…」
「マリューでいいわ、オルガくん。で、仕事よね?ちょっと待ってね~」

マリュ―はよいしょ、と分厚いファイルを3種類引き出しから取り出し一つ一つ3人の前に置いた。
各ファイルは3人の髪の色と何故か共通していたのは、きっと彼女の細かな配慮あってのことだろう。
そしてまずはオルガの前にある黄色いファイルを開いた。

「アズラエルさんから手紙を頂いたのが…そうね、もう一週間くらいになるかしら?
それから貴方達個人のデータなんかを拝見させて頂いて私達が集めた就職先よ。どう、多いでしょ?
まぁ…先に言っておくケド、楽な仕事なんてないわ。どれもやりごたえのある仕事よ。
貴方達を自立させたいって、依頼だったから腕に依りをかけて探したの。クロトくんもシャニくんも開いてみて?」

クロトとシャニも一緒にパラパラとファイルを捲れば事細かな情報が記載されたデータが目に入った。
これを一週間で集めたのなら相当な苦労だっただろう、先ほどのキラの顔が脳裏に浮かんだ。

「これ!って仕事を一つやり通すのも仕事だし、色々試してやってみることも仕事よ。
ただ責任だけはこれから貴方達について回るってことだけは忘れちゃダメよ?
店長が気に食わないとか三日くらいで見切りをつけたりとか、そういうのは感心しないわね。
でも我慢することは決してないの、不当なことには断固毅然とした姿勢をとるべきよ!
このピンクのマーカーで囲ってある各契約内容をよく読んで、条件を把握しておいてね。」

「あ、あの…」
「何?クロトくん、質問かしら?」
「時・給、ってなんですか…」
「あら…そうね、ごめんなさい。説明するわね?これは一時間の労働に対するお給金のことを指すのよ。」

へ~、と感心するクロトを見てマリュ―はゆっくりと眼を細めた。
この子達は今までこんな簡単なことも教わってこなかったのだ、と切ない胸の軋みを感じた。
それと同時に母性本能が沸き上がってくるのを彼女は感じていた。

「ようし、良いこと思いついたわ!貴方達、しばらく此処にいらっしゃい。」
「え?どういうことですか?」
「働く前にはね、下準備ってものが必要なのよ。それは単純に衣類等の準備だったり、心の準備だったり…」
「でも…俺達自立しろって、言われてきたんだぜ。」
「自立っていうのもね、そのための準備っているのよ。それには一人じゃできないことだってあるわ。」

引っ越し、全部一人で出来たの?というマリューの優しい意地悪に3人は顔を見合わせた。
自立というのは誰かの支えがあって、その中で成長していくことだと彼女は彼等に説いた。
それを3人は珍しく真剣に聞き入り、諸々の話が終わる頃には出された紅茶が冷め切っていた。

マリュ―が用意した大きな紙袋に先ほどのファイルを詰めて、3人は冷えた紅茶を一気に飲み干した。
煎れ直すと彼女は言ったが、もう帰らなきゃと遠慮して彼等はぺこりと頭を下げた。
彼女はキラと知り合ったばかりの頃をふと思い出していた。

「じゃあ、明日もいらっしゃいね。他の応援も呼んで、就職前の勉強会よ!」
「はい、宜しくお願いします。マリューさん。」
「僕、ファイルちゃんと読・破しておきます。」
「俺は……写真だけでも見とく、きます…」
「(くきます?フフ)ええ、約束ね?それじゃあ。」

もう外は大きな陽が落ち、橙の夕焼けが綺麗に街を照らしていた。
3人は同じ紙袋を手にしながら、今日出会った二人のことを各々思い返していた。
そして彼等がかつて怨敵だったことなんて、本当にどうでもいいことのように感じ直していた。


「…………おい、巨乳好き」
「………それは俺のことか、シャニ」
「ついでに言えば年増s…」

【てぇーーーーーーーーーーーー!!!!!!】

「「??!!!!!!」」
「ファイルが弁・慶にぶつかって激・痛!!!!」

「「…お前かよっ!!!!」」


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