もしも3馬鹿常夏トリオが種死に出てたら 格納庫

ナタルとアズラエル

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匿名ユーザー

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某国

ブランド物のスーツを着込んだ女が大通りに面したカフェテラスに座って居る
その身に着けた鋭角的なデザインのサングラスせいだろうか「知的」とか「凛々しい」といった表現が似合う
其処へこちらも高そうなスーツを着込んだ男が声をかける
「お待たせしましたかねぇ?」
「いえ、こちらは先ほど来たばかりです」
「そうですか」
そう言うと男は女の向かい側のイスを引くとそちらへ座った
それを見て女が口を開く
「それで、御用は?」
「いえね、どうしてるかな?と思いまして…」
「は?」
「ほら、戦争終わっちゃったじゃないですか、軍人さんも暇でしょう?」
サングラス越しでは解らないが、その言葉に女は微かに眉を顰める
「いえ、戦闘が無くとも通常業務と訓練がありますので」
ほんの僅かだが語気を強めワザワザ「軍隊調」とも言える言葉で相手の発言に答える
これは、彼女の家族、職業が影響したクセでも有り、意図的にそうして目上の相手への反感を伝えるという技術でもある
だが、知ってか知らずか、男はお構いなしに続ける
「そうですか、ところでこちらは面白くない事だらけでしかたないんですよ」
「兵器開発も予算がごっそり削られ、暫くは強調路線とか言って薄汚い「遺伝子操作人間」どもに合わされたりもう、うんざりです」
物騒な事を言う……女はそう思った、一緒に居た期間は決して長くは無いとは言え
ある程度はこの男の事は知っているつもりだったし、頑なな部分はあっても
ここまで自らのエゴを剥き出しにした発言を人前でする所は見た事が無かった、
いや、かって一度だけあった、前々回の大戦の末期に一度だけ……

男の名はブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエル
女の名は連合艦隊所属艦ドミニオンの艦長ナタル・バジルール

「それで?」
「えっ?それで…とは?」
ムルタの言葉にナタルは驚く
「いやだなぁ注文ですよ」
気が付けば二人の隣にウェイターが立って居る
過去の出来事に思考が遊離していたのだろうか、あの凄惨な時代へ
「そうだ……あの物言いはまるであの頃のジブリール氏のようだ……」
心の中で己の疑問への回答を見つけるも、その事実がなにかとても残念で悲しい事の用に思えてしまう
「ああ、もう、同じモノでいいですかね?」
「あっ……はい……」
ムルタがメニューを閉じウェイターに慣れた感じで注文を出すとウェイターは店内へとさがり再びムルタが口を開く
「と、まぁ色々腹の立つ事はあるんですがね……」
ムルタは話を続ける、
ナタルは先ほど心の中に生まれた「残念で悲しい」気持ちがどんどん大きくなっているのを感じていた
「何よりも腹が立つのはあの馬鹿どもですよ……」
ナタルは正直この先の話は聞きたくないと思った
過去の事はあってもドミニオンでの生活はナタルにとって家庭の記憶のように大事なモノになっていたし
軍人の家系に生まれ自分のような頭の固い女が今でも、思い出すと一人で笑ってしまうような楽しいと思えるようなモノになっていたからだしかし
「ジブリール氏は日常へと戻った事で元のブルーコスモスのムルタ・アズラエルに戻ってしまったのだろうか?」
「あの日々はその程度のモノでしかなかったのだろうか…」
そう思うとどうにも居たたまれない気持ちになるのだ
あの時間を除けば今自分の向かい側に座る男とはあの不幸な時代の記憶しかない…それが悲しい

「……まったく連絡一つ寄こさないで何をやっているんだか」
「え……?」
ムルタの声が先ほどまでのいら立ったものから急に柔らかな物になるのを感じた
「あの六人ですよ!」
「連絡ぐらいすれば不自由ないようにしてやるってのに…」
「どうせ、外が珍しくてうろうろしているんでしょうがね」
ナタルは心の中に淀んでいた何かが晴れて行くのを感じた
風が吹いた
春の柔らかな風が頬を撫でて行った

「大体、六人で派手に浪費でもすればあの程度の金なんかすぐ無くなるんですし……なんですか?」
「えっ?」
「失礼じゃないんですか?人の顔見てニヤニヤと笑ったりなんかして」
「あ、いえ、すいませんつい……」
自分でも知らないうちに顔の表情が緩んでいた、
職場では「鉄の女」とまで揶揄される女の滅多に見れない気の緩んだ表情だった
勿論、このような顔を見せるのは彼女自身なにか恥ずかしい事の様に感じている
しかし、「今はまぁいいか」と思う、
ドミニオンではあの6人に引っかき回されてとてもじゃないが今みたいな平静な振る舞いは続けられなかった
そして、それを目の前の男は見てきているのだ、今更恥ずかしいという事もない
あの艦であの時間を共にした者同士ならば

そう思うと、良く見れば目の前で半分照れながら人の心配をしている男の事が無性に可笑しいと感じる
「フフ…」
ついに我慢できなくなり吹きだしてしまった
「な、なんなんですか失礼だろー!!」
「ご、ごめんなさい……文句言いながら心配してるのがなんか可笑しくて……」
「な……っ大体、君はっ……」
「おまたせしました」
ムルタが身を乗り出して反論しようとしたその時、店の奥からウェイターがやってきて先ほど注文したモノを運んできた
「!!!!!!………もう、いいですよ……」
むくれたような態度で席に座り直すムルタ
テーブルには紅茶のポットとカップがウェイターによって二組並べられた
「ここの紅茶は結構おいしいんですよ…その…是非飲んで貰いたくてね」
照れ隠しか、 単に話題を逸らそうとしているのか、
それが本当の目的だったのかは解らないしかし、
いずれにしろナタルにこの男と共に紅茶を飲む事を断る理由はもう無い
「頂きます」
ムルタも落ち着きを取り戻している
「ここのは、飲み方にコツがあるんですよじゃあ、まず暖かいミルクをカップに…ってお茶注いじゃったんですか?」
「え、いけなかったですか!?」
「ああ~もう、ダメダメです…」

再び春の暖かい風が二人の頬を撫でて通りすぎて行った

おわり

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