unknown@wiki 脳科学

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目の重要性
      ヒトの顔情報処理においては,目が特に重要な役割を果たしている.目,鼻,口の
      うち,目を隠した顔写真は認識の成績が有意に下がる.

こんにちは。
変な質問だなんて、とんでもありませんよ。現代の認知科学の最先端に迫るような興味深い問題だと思います。ですが、あまりにも最先端なものですから、ご質問の一部は現在でも未解決問題となっています。従いまして、これは回答ではなく、参考のアドバイスということになりますので、予めご了承下さい。
(たいへん長いので、暇なときにお読み下さい)

まず、我々が「目、目、鼻、口という符丁」でそれを顔と判断できるのは、脳がそれを判断するために、視覚から得られた情報を「目、目、鼻、口」という「単純な符丁」に変換して使っているからです。これを、情報の「記号化」といいます。
我々が何か見たとき、目からはたいへん膨大な情報が送られてきます。その視覚情報は、視覚処理中枢を通ることによって段階的に処理され、色や形、傾きといった単純なパーツに分類されます。脳は、そのように処理されたパーツと、その配置パターンによって、それが何であるかを判断します。
顔の場合、簡単なパーターン配置からそれをまず顔と判断し、それから少し時間を掛けて情報を整理し(0.05秒くらいだそうです)、どんな顔、誰の顔といった判断が下されます。錯覚や見間違いが起こるのはそのときではないでしょうか。情報が整理されれば「幽霊の正体見たり枯れススキ」ということになるのだと思います。
ですから、脳は与えられた特定のパターンからそれを顔と判断するわけですから、質問者さんの仰る通り、「目、目、鼻、口」で顔を判断することと、「頭、手、手、足、足」で身体を判断することは、原理的には全く同じということになります。

ところが、原理的には全く同じことではあるのですが、最近になり、サルを使った実験で、脳の中に「顔ニューロン」なるものが発見されてしまいました。「顔ニューロン」とは、大脳皮質でひとつのコラム状になった神経細胞集団で、「目、目、鼻、口」といった、顔のパーツやパターンが入力されたときにだけ反応するというものです。
このように、ひとかたまりの細胞集団が脳の中で特定の機能を受け持つことを「機能局在」といい、コラムがその機能を果たすために、特定の入力パターンにしか反応しないことを、ニューロンの「選択的反応特性」といいます。
その他に、手のパターンに反応する「手ニューロン」なんてのも見付かっているそうです。エテ公にできて人間様にできないことはない、というわけでもないのですが、サルにあるのならばヒトにもあるだろうと考えても、ほとんど問題はありません。

目や耳などの感覚器官が集めた情報は、ほとんどが処理中枢の選択的反応特性によって処理されています。
視覚から得られた情報は、一次視覚野、二次視覚野などに送られることによって段階的に処理されてゆくのですが、そのときに、それぞれの領野にあるコラムの反応特性が働き、視覚情報は篩いに掛けられます。
視覚野のコラムは、色、形、傾きの角度、運動方向など、その反応特性がむちゃくちゃ細かく分かれています。それぞれのコラムは自分の受け持ちの特徴や形状にしか反応しませんので、コラムが反応したということは、視覚情報の中にその図形があったということです。顔の情報は、このようにして「丸い目」「縦長の鼻」「横長の口」といったパーツに分類されるわけです。
ここでは情報の部分部分しか扱っていませんが、やがてそれらはより高次の中枢に一括して集められます。そして、「丸い」「赤い」「へたが付いている」などといった信号が集まりますと、脳はそれを基に自分の記憶の中から類似するパターンを見付け出し、「それはリンゴだ!」と判断を下します。
ですから、顔のパターンで顔を認知することと、身体のパターンで身体を認知することは、そのメカニズムは全く同じだということになります。ところが、そこに顔ニューロンなんてものが発見されてしまいました。そして、私の知る限り「身体ニューロン」というのは、まだ見付かっていなかったと思います。

手ニューロンなんてのがあるのですから、身体ニューロンならばあっても良さそうなものですよね。ですけど、ここではっきりと言えるいことは、少なくともリンゴに対応する「リンゴ・ニューロン」というのはまだ見付かっていないということです。
つまり、他のものとは違い、どういうわけか顔や手には、それを認知するための専門家がいるわけです。ですから、顔ニューロンがあって身体ニューロンがないということになりますと、顔を認知することと身体を認知することは、メカニズムは同じなんですが、厳密にはそのプロセスが違うということになってしまいます。そして、この違いが認知という脳の作業において、その素早さ・正確さに関わっているのだろうというのは、十分に予測できることですよね。

顔ニューロンがあるのなら、我々の脳は他のものを認識することよりも顔を認識する方が得意だということになります。どうしてそんなものがあるのかというならば、我々ヒトや霊長類のように、高度な社会行動を行なう動物にとって、群の中で他者の顔を認識するのはたいへん重要なことであるからだという説明が付けられます。
メカニズムは同じなのですから、我々が壁の染みや絨毯の模様を見て、そこに人間の身体やリンゴのイメージを想起することは、顔と同様に幾らでもできるわけです。ですが、顔ニューロンは顔のパターンを認知する能力が特化されたものです。もしその中に類似するパターンがあったとするならば、顔ニューロンは他のものより素早くそれを見付け出し、先に反応してしまうということになります。

ということで、これが回答ですと言ってしまえば私も楽で良いのですが、実は現在、認知科学ではこの辺りが議論の真っ最中であり、残念ながら未解決なんです。
視覚中枢のコラムの反応は、個々の色や形状といった単純なものですが、それに比べると、顔ニューロンは複数のパーツとその配置といった、たいへん複雑な反応特性を持っています。このような複雑な組織が進化の過程でわざわざ獲得されたということは、顔の認知が我々のような社会行動を行なう動物にとって極めて重要な機能であることを裏付けるものです。
空に浮かぶ雲を見上げ、その影や形に人間の顔をイメージした経験は多くのひとが持っていると思います。ですが、幾ら見慣れているからといって、雲を見て会社の書類をい思い出すひとはあまりいませんよね。顔ニューロンの存在は、このような心理現象の物理的な証拠にもなります。
ところが、顔ニューロンは実際に発見されており、上記のような既知の様々な事実と一致することは間違いないのですが、如何なるわけか「顔ニューロンがあるのに、どうして身体ニューロンやリンゴ・ニューロンはないのか」という議論に決着が付いていないんです。

顔ニューロンがあって、他のニューロンがないというのであるのならば、顔の認知は他よりも特化された機能であるという考え方が成立します。ですが、発見されているのは顔ニューロンだけではありません。手ニューロンはほぼ同時期(少し先)に発見されたそうです。更にサルですが、他人の特定の動作に対して反応する「ミラー・ニューロン」など、これ以上複雑な反応特性はないであろうと思われるほどの特殊なニューロンも発見されていますし、この先、どんな変り種が見付かるかは予測が付きません。
ということになりますと、顔の認知は特別な機能であるという認識に対し、奇しくも質問者さんがご指摘なさる、身体の認知も構造的には全く同じものでなければならないのではないかという考えが対立してしまうというわけなんです。

このように、我々の認知に関わる脳の構造的な解釈にはまだ問題が残されています。問題は他にもたくさんあるんでしょうね。ですけど、心理学の立場からのご意見も寄せられていますが、やはり、我々にとって顔の認知というのが特別なものであるという考えは圧倒的に有利に思えますよね。
我々が空の雲を見て、そこに顔のパターンがあったならば、恐らく顔ニューロンはそれに反応しています。その機能は、進化の過程で何らかの理由があって獲得されたものです。そして更に、我々は神様からもらったその機能を使い、この社会に生まれたそのときから、他人の顔を認識するという重要な学習に大変たくさん時間を費やしてきたのではないでしょうか。

ミラー・ニューロンは他者の行動に反応するニューロンですから、ある意味では身体ニューロンなのかも知れませんね。加えて、形状だけでなく、動きに対しても反応するというのですから、それは顔ニューロンなんかよりも遥かに高度な反応特性を持っているということになります。どうしてこんな器用な脳細胞があるんでしょうか。これ以上詳しくは述べませんが、このようなことが、脳の機能局在はいったい何処まで細分化するのかといった論議を呼んでしまいます。
ですが、我々は他人の行動からその心理を理解します。ミラー・ニューロンによって他人の行動を認知できるということは、その行動の向こうにある他人の心の動きを推測できるということですね。従って、顔ニューロンとミラー・ニューロンの共通点は、やはり、それが群で生活をする動物の社会行動に重要な役割を果たしているということになります。面白いですね。

グロスはその後、プリンストン大学に移り、側頭葉の研究を続けた。グロスの研究室にやってきたもう一人のチャーリ(チャールス・ブルース)は、側頭葉の中央を前後方向に走る長い溝(上側頭溝)から「顔」を見たときに反応するニューロンを記録した。図3は、彼らが1981年に発表した論文の図の一部である。サルの顔やヒトの顔の絵によく反応し、目のない顔や模式的な顔の絵では反応は弱まる。手や顔の絵の中の要素をバラバラにした絵にはほとんど反応しない。ブルースはその後、アメリカ国立衛生研究所を経てエール大学に移り、「顔ニューロン」の研究をやめてしまった。
 ブルースから少し遅れて、イギリス、オックスフォード大学のエドモンド・ロールズの研究室にいたデイビット・ペレットも、ブルース達と同じ上側頭溝から「顔ニューロン」を記録した。ペレットはその後、スコットランドのセント・アンドリュース大学へ移ったが、ロールズとペレットは、それぞれ独立に、現在も「顔ニューロン」の研究を続けている。
 1986年以来、私は数回に渡って、ペレットと上側頭溝のニューロン活動について討論した。彼によれば、顔に反応するニューロンのほかに、紙を引き裂いたときにのみ活動するニューロンや、毛皮を手でなぜたときにのみ活動するニューロン、人が部屋の中を決まった方向に歩いたときにのみ活動するニューロンなど、様々な奇妙なニューロンが上側頭溝から記録できるという。