バトルROワイアル@Wiki

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139 殺せっ [第2回放送前]


この島に来て、はじめての夜が明けた。
気になったことといえばどこからか梟の鳴く声が聞こえたくらいで、
それ以外はバトルROワイアルの名にふさわしくない、本当に平和な夜だった。
けれどローブの中に隠し持ったスティレット、刀身を浸食した赤黒い色が俺に現実を、
この島における絶対不可侵なルールを俺に教えてくれる。

スティレットを右手に握り締めたまま、獲物を狙う蛇のようにゆっくりと視線を左隣りに流す。
疲れ果てているのであろう、貪るように眠り込んでいる俺と同職の女がひとり。

つるんと長くのびたまつげが閉じきった目蓋に、けして起こさぬようにと自己主張しているように見える。
お世辞にも色気があるとは言えない体つき、
短くまとまった薄い褐色の髪がこの魔導師の少女にまるで年端もいかぬ少年のような印象を与えている。

しかし、彼女はおそらく異端学派の魔導師である。

魔力感受性を飛躍的に増幅させ暗視能力すらも持たせるという異端学派の象徴、
真理の目隠しをなんの躊躇もなく俺に渡してきたことからそのことはうかがい知れた。
真理の目隠しを身に着けるということがなにを意味するか、魔導師で知らないものなどいない。
それほどに異端学派は魔導師の間では忌み嫌われる存在なのだ。

おそらく彼女がこの殺戮ゲームに参加させられたのも異端学派だということが知られたためであろう。
どうにもこの少女には警戒心というものが欠如しているように思えた。
現に今も彼女はこうしてほとんど素性を知らない俺を前にして無防備な肢体をさらしている。

こんなやつと一緒に行動したところで足手まといになるだけじゃないのか?

心の中のもうひとりの俺が俺に疑問を投げかける。
確かに俺は仲間を欲していた。この境遇から抜け出すための仲間を。
だが目の前の少女が仲間として足りえるのかどうか、それは大きな疑問であった。

「無力・・・。俺もこいつも、なんて無力なんだ・・・」

抗えようのないほどの圧倒的な現実という暴力、殺し合いという世界が俺の心を押し潰していく。

「ぐぐっ・・・」

目頭を涙で滲ませながら、俺はほんの少しの間その場にうずくまった。
湧きあがってくるのはGMジョーカーへの怒りと悔しさ。

『あなた方の首に嵌めてある首輪は、逆らったり、無理矢理外したり、
 島から逃げ出したりすると爆発する仕掛けになっておりますので気をつけてくださいねぇ♪ 』

とどのつまり、あいつはいつでも俺たちを殺せるってことじゃねえか・・・
なんだよそれ・・・
俺たちがなにをしようと、どれだけ抵抗しようと、どれだけ殺そうと・・・
ごくろうさまでしたって・・・

なんか・・・なんか・・・あくどいっていうか・・・調子良すぎる・・・・

「なんだよ・・・このBR法ってやつは・・・!!」

───絶望

そう、そこにあるのはまさに絶望。バトルROワイアルという絶望。
この島に送り出された瞬間から、決して生きては帰れぬ絶望の世界。

   ざわ…


          ざわ…

「殺さなければ・・・殺される・・・それだけがこの島の現実、そして唯一の希望」

もう一度自分の目ですやすやと寝息をたてながら眠っている彼女を確認する。
断崖絶壁の縁で眠る赤子のように無力な魔導師の少女。

殺せっ。殺さなければいつかこっちが殺される。だから殺せっ。

視線をスティレットの刃に戻す。
赤黒い刃が俺を狂気へと駆り立てていくのが麻薬のように心地良い。

殺せ、その無力な少女を。
殺せ、その現実を知らぬ少女を。
殺せ、その少女の仮面を被った殺人鬼を。

殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ。

自分が自分でなくなる感覚に、視界が白で覆いつくされていく。
まるで誰かにあやつられているような、不思議な感覚。

スティレットを少女の首元へ近づけ、最後にもう一度だけ少女の顔を覗き込む。
今から殺されるだなんて夢にも思っていないであろうしあわせそうな少女の顔。
こんな島でこんな境遇に置かれているのにありえないほどのしあわせそうな寝顔。

けど・・・

殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ。

けど・・・俺は・・・

そして俺はスティレットを握った右手を振り上げ、思い切り振り下ろした。

「殺さないっ・・・!」

突き貫いたのは自分の左手。
俺は左手の甲にスティレットを突き刺したことで狂気から逃れようとあがく。

「殺さないっ・・・!!」

殺さなければ・・・殺される・・・・・・けど‥‥‥‥‥‥殺さないっ‥‥‥!
殺さない‥‥‥‥
殺さない‥‥‥‥
殺さないんだっ‥‥!
殺さないっ‥‥‥!

「俺は・・・殺さないっ・・・!」

俺の出した声に驚いたのか、飛び起きた♀マジシャンが俺の左手を見て悲鳴をあげる。
無理もない。なぜなら俺の左手からは血が噴水のようにあふれだしているからだ。

「なんで?! なんでそんな怪我してるわけっ!?
 わわわっ、ボク、マジシャンだから治療なんて無理だからね。
 どうしよう、近くに誰か治療できそうな人いるかな」

言うが早いか飛び起きた少女は寝癖もそのままに駆け出す。

「お、おい・・・この島で誰かに会うってことが分かってるのか!?・・・」

けれど俺の声はもはや少女には届かない。まったく、なんていう早さだろう。
そういえば最初にぶつかってきたときも、とんでもない早さだったか。
あわてて俺は彼女のあとを追った。
左手に走る痛みを忘れてしまったかのように俺は、彼女に追いつくことだけを考えて走った。


<♂マジ>
現在位置…C-6から走る
所持品…ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個 青箱1個 スティレット
備考…JOB50 ♀マジと一緒にいる 殺さないことを決意 左手をスティレットで貫き出血中


<♀マジ>
現在位置:C-6から走る
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。♂マジと一緒にいる
   ♂マジを治療できる人を探す。 薄い褐色の髪(ボブっぽいショート)



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