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Another story

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番外編 Another story ―


「絶対に許せないっ」
♀ノビは怒りをからだ全体から滲ませながら叫ぶ。
目の前の♂ノビが友達の宝物のネコのぬいぐるみを引き裂いたから。
じゃれついてただけなんだろうけど。
しかしこれはやり過ぎだろうと怒りは止まらない。
友達は引き裂かれたぬいぐるみを抱きしめて泣きじゃくっている。
♂ノビは困ったように肩を竦め、周りをキョロキョロと見渡している。

「あ、おーい、助けてくれよ。なんか生意気なのがいるんだよ」

♂ノビが助かったといった感じで見つけた仲間に声をかける。
それをきっかけにわらわらと人数が増えていく。
その絶対不利な状況でも♀ノビはひるまずに抗議する。
むしろ逆に闘争心が溢れだしたのかもしれない。

―子供のイザコザはだんだんとエスカレートしていった。
ついに我慢できなくなった♀ノビが感情に任せて拳を振るう。

「あはは、なんだそれ、こいつ弱すぎだぜ?w」

それをきっかけに♂ノビの仲間達が♀ノビを押さえつけようと動き出す。
それでも、それでも♀ノビは必死に戦った。多勢に無勢だというのに。
振るう拳はなかなか当たらず、当たったとしても与えたダメージは皆無に近い。
やがてバカらしくなったのか♂ノビ達は興醒めしたように帰っていった。
残ったのはボロボロの♀ノビと、まだ泣きじゃくることしかできない友達。

「ごめんねあたしのせいでごめんねありがとうごめんね」

「あいつらが許せなかっただけだよ、ああでも悔しいな…」

♀ノビも泣いていた。友達とは涙の理由はぜんぜん違うものだけど。
そして数分の時が流れて。
友達は落ち着いたのか泣き声はもう聞こえなくなっていた。

「…ネコのぬいぐるみ、綺麗に直ったらあげる」

そのぬいぐるみは大事なものだ宝物だとコトあるごとにいっていたものだ。
そんな大事なものはいらないと♀ノビは拒否する。
それに自分はあの憎たらしい♂ノビに反撃という反撃もできなかったんだしと思う。
ああ悔しい、体力では適わない。どうすればよかったんだとまた悔し涙が落ちる。

「それじゃああたしがウイザードになって魔法で守ってあげるねっ
 そうしたらこの黒猫のぬいぐるみもらってくれてねっ」

どうやら必死で♀ノビを慰めようとしているみたいだ。
♀ノビはこれじゃ立場が逆だとまた違う意味の涙が落ちる。


―そんな遠い昔の話。
こんな忘れていた記憶が突然沸いてくるとはな。
そうだここからだったあいつとの腐れ縁は。
これが走馬灯というやつなのかもしれないな。
しかし何故だかネガティブな感情は生まれない。
むしろこれは。

今度は声には出さないがハッキリと感じている。
そう、私は―

「皆と一緒に、戦っている」



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