バトルROワイアル@Wiki 042


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042.ローグ



 俺は海に沈んでいく間、何故か先ほど出会った少女の事を考えていた。
 話は少し前に遡る。

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 ・

 ・

 ……旨い。実に旨い。
 プカプカと、数日振りの煙草を暢気にふかして俺はご満悦だった。
 ユピテルで起こした種火を見つめながら、『主よ…今、我は何処にいるのだ?』とか言って子バフォが膝を抱えてるが気にしない。

 ん?何故、山羊鍋を食べてないかって?
 理由は単純。

「とりあえず、マッチ代わりになると判ったからである、まる」

「わ、我は…マッチ代わりか」
 鍋よりはマシだろうが。と、思ったが、青白く光っている鎌を見て、口にはしないでおいた。
 腐ってもバフォメットの息子だ。録に装備も無い今の状態で変に争っても無意味どころが損なだけである。

 まぁ…実を言うと、この山羊が膝を抱えているのにはもう一つ訳がある。
 こいつは、元々変なアルケミのペットだったらしく、そいつの事を心配しているらしい。
 何でも、俺達みたいな連中と一緒で、ふと気づいたら俺が目の前にいたそうな。
 あの女、『サカリ』のついた犬もびっくりの節操の無さだ。人様のペットにまで手を出すとは。
 …と、言っても勿論俺の知った事じゃないが。

「マッチ代わりに使えればそれでいいのである、まる」

「…怒るぞ」

「そりゃすまんかった」
 何となく、子バフォがマッチの先っぽみたく赤くなってきた気がして俺は、肩をすくめた。
 そして口から鼻から、煙草の紫煙を盛大に吐き出して反省の意を示してみる。
 我ながら、ユーモアとウィットに溢れた謝罪だ。

「……」
 ひゅぱっ、と目の前を閃光が掠めた。
 …今のは、俺が後ろに飛んでなければ確実に鼻を横に切っていた様な気がする。

「冗談だって。ほんと」
 ひょいと両腕を上げる。馬鹿は止めて、今度こそ降参のポーズだ。

「…ならば、良い」
 しかし、いきなり斬り付けてくるほど怒ってた割には、それを見るなり、子バフォは鎌を収める。
 単純かつマトモな奴である。どんな主人かは知らないが、さっきの心配ぶりを見る限り…さぞかし苦労しているのだろう。
 子バフォが。

「ところで…主はどうして此処に居座ったまま動かないのか?
我は、出来ることならば主を探しに行きたい。
我が此処に来てしまったのだ。主もまた、同じ災難を被っていてもおかしくないと思うのだ」

「まぁ、そりゃその通りだがな」

 一呼吸置いて、俺は子バフォに言う。

「なんにせよ今は、まだ早いだろ。行くならお前が見つかりにくい夜行った方がいい。
俺は、お前が支給品だと知ってるが…他の奴はそいつを知らない訳だし」

「……」

 俺の言葉に、子バフォは押し黙る。

「見た目通りの馬鹿では無い…か」

「失礼な。俺ゃ見た目通りのクレバー悪漢だぜぃ」

「それは無い、と答えておこう。ローグ殿」
 即答しやがった。なかなか言いやがる、こいつ。

 再度山羊鍋を夕食の候補に検討しようとして…
 俺は、その音を聞いた。

 火種のぱちり、と弾ける音じゃない。森の中一杯に敷き詰められている、枯れ葉の絨毯を踏む音だ。
 距離は、まだまだ遠い。近づいてくる奴が居る。

「……ローグ殿」

 言われるまでも無い。
 腰からツルギを抜くと、木の葉や、枝で偽装を施しておいた毛布(シーフの類が常備している迷彩布の代わりである)に身を包む。
 そして、子バフォもついでに毛布の中に引っ張り込んでから木陰に身を潜め、慎重に気配を殺す。
 そのまま相手が背を向けるのを待って、背後から不意打ちをするという寸法。
 俗にバックスタッブとか呼ばれる技法だ。

 足音は、どんどんと近づいてくる。
 …どうでもいいが、ひでぇノロマだった。
 俺は、苛々しながらそいつを待つ。

「…ひっく…ふぇぇぇぇ…」

 …おい。聞こえてきた泣き声に、思わず握り締めていたツルギを、一瞬取り落としそうになる。
 隠れていた俺の前を今しも通り過ぎていったのは、街中を歩けばその辺に居るだろうガキ以外の何者でもなかったからだ。
 俺のと似たような鞄を提げていて、揃いの糞忌々しい首輪もきっちりつけている。
 ただ、随分と、歩き通しだったらしく、金髪にはクモの巣やら、木の葉やらが幾つもくっついていたし、
着ている白で薄手のサマードレスの裾は、跳ねた泥で汚れてしまっていた。

 まぁ参加者には間違いないだろう…ひ弱で殺りやすそうだし、手っ取り早く殺して、鞄をもらっておこうか。
 俺が、そんなことを考えていた時の事だ。

「…アラーム殿?」
 子バフォの野朗が、そんな事を言ったかと思うと、偽装の中から這いずり出て、そいつの方に向っていきやがった。
 …山羊鍋決定だこのクソ!!

 しかし、意外なことにそいつは寸詰まりの山羊の声を聞いて、立ち止まる。

「…子バフォ…さん?」

「うむ」

「どうして…ここに?」

「お主と同じだ」

 …こいつら、知り合いか?妙に親しげに話してやがるが。
 まぁ、こいつらというよりは、子バフォの主ってのが友達か何かだったんだろうが。

「一人…ですか?」

「いや、もう一人。そこにローグ殿が…」
 言って、俺の方…あいつ等からは単なる茂みにしか見えないだろうが…を指す。
 …の馬鹿野朗が。いい加減、腹が立ってきたので、気配を消したままごそごそと移動する。
 もういい。真後ろから、バックスタブで二人ともバッサリ切り捨ててやろう。

「…何をやっておる?」

 …が、俺のその目論見は儚くも、何の迷いも無く移動する俺に指を向け続けている子バフォによって粉砕された。
 そういや、悪魔種族は隠形を見破るんだったっけか。畜生め。
 一方、アラームとか呼ばれたガキは、俺を探しているらしく、寸詰まりの指が指している方をきょろきょろと見ている。

 …見つけられる訳ねぇだろ。そりゃ、悪魔と虫だけの特権だ。出来ないこたぁ、するもんじゃない。

 尚も、俺は匍匐前進の要領で、一人と一匹の周りをぐるぐる回る。
 しかし、子バフォの指は腹が立つぐらい正確に俺を指しており…ガキも、ずっと俺の方を見ている。
 10週ほどしたところで、先に根をあげたのは俺の方だった。

 気配を殺すのを止めて、毛布を被ったまま立ち上がる。

「わひゃぁっ!!」

 そして…立ち上がった俺の姿を見るなり、ガキは悲鳴を上げて子バフォに抱きつきやがった。
 …失礼な奴だ。



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