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137

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137.緊張の対峙


「そこの♀騎士、うごくな!」

ぴたっと、♀騎士が歩みを止める。♀騎士は内心舌打ちをした。

「そのまま一切動かずにいろ。まだ手出しはしない。質問がある。」
「質問・・・?」

声から♀ハンタではないと分かってすこし安心する♀騎士。
まあ、もし♀ハンタであったのなら問答無用で攻撃してきているだろう。
声をかけてきた時点で違うというのは分かったが、それならばこれは誰なのか。

「まずは、今までにお前が遭遇したゲームの参加者を答えてもらおう。生死問わず、だ。」
「なぜそんなことを聞く?」
「質問しているのはこっちだ。答えろ。」
「・・・♀ハンタと、♂アコライト。♂アルケミストに深遠の騎士子。・・・そして♂騎士だ・・・。」

深遠の騎士子と聞いて、DOPは思わず後ろに待機させている深遠の騎士の馬を見た。

(意外とお前の主は、まだ近くにいるのかもしれないぞ。)

それと共に、放送を思い出す。

(今この♀騎士が言った中では・・・♂騎士が死んでいるな。)

「・・・それだけか?」
「それだけだ。」

DOPは少し失望した。どうやらヤファとは出会っていないようだ。ということはこの♀騎士はヤファの仇ではない。
そして、答えを信用するならば。♀騎士は五人と出会いながらその中で死んでいるのは一人だけ。
これはどう捕らえるべきか。
♀騎士は負傷しているとこから見ても、戦闘をしたのは間違いないだろう。
全員と戦闘したとは考えにくい。なにより深遠の馬にあれだけの深手を負わせたのが、この騎士とは思えない。
♂アコライトや、♂アルケミストに後れを取る騎士でもないだろう。
と、するとこの♀騎士が戦ったのは♀ハンタか、♂騎士と推測できるが・・・。
この二人のどちらかと、他の三人のいずれかがPTを組んでいれば、どうなるかわからない。

「その五人の内、PTを組んだりしていたものはいるか?」

できうる限り、他の参加者の情報は手に入れておきたい。
全く情報がないよりはるかにマシだからだ。

「いる。♂アコライトと、♂アルケミスト、深遠の騎士子がPTを組んでいるようだった。」
「♀ハンタは?」

この質問を聞いて♀騎士は、ぐっと強くこぶしを握り。抑えきれない激情に体が震えた。

「わたしと戦った。その戦いで行動を共にしていた♂騎士が、死んだ・・・。」

ギリリと歯がなり、怒りで体じゅうがあつくなる。断腸の思いだった。
DOPは、この質問で思った以上の情報を引き出せたことに満足しながらも、考えを巡らせていた。
どうやらこの♀騎士は、このくだらない茶番に乗ったわけではないようだ。
♂騎士と行動を共にしていたという話から推測できる。深遠の騎士子は三人PTを組んでいる。
そしてどうやら、この♀ハンタがゲームに乗っているようだ。
♀騎士の傷をよくみれば、火傷の方がおおい。なるほど、この傷は♀ハンタのトラップなのだろう。
ここまで話を聞いて、DOPは本題にはいった。

「♀騎士よ、私と行動を共にする気はないか?」

いきなりの提案に♀騎士は、一瞬相手の言っていることが分からなかった。
どうやってこの状況を切り抜けようかと必死で考えていたからだ。

「・・・・・どういうつもり?仲間になろうと言っている様に聞こえるけど・・・?」
「そのとおりだ。」
「だったら、まず姿を見せて。一方的にそういわれても、騙そうとしているようにしか思えない。」

ここで初めて♀騎士は、声のする方向に向き直った。
こういう提案をしてくる以上、少なくともこれくらいの動きは見逃すと思ったからだ。

(バカでもないようだな。恐怖に負けてこの提案にあっさり乗ってくるようなら、このまま殺そうと思ったがな。)

DOPは姿を見せることにした。
姿を見せてもこちらは崖上。有利なことにはかわりない。
その場で立ち上がり、♀騎士に姿を見せた。

「私は、ドッペルゲンガー。どうだ?一緒に来る気はないか?」
「ドッペルゲンガー!ゲフェンの魔王!」

♀騎士はびっくりした。ゲフェンの魔王ドッペルゲンガーまでこのゲームに参加していたとは・・・。
そしてその魔王がそんな提案をしてくることにも驚いていた。しかし・・・。

「どうして協力者を求めている?だまし討ちでない証拠は?」
「これをみてもらおう。」

そういってDOPは、この茶番を終わらせるためGMを討ち果たしたいと書いた紙を、♀騎士に投げ落とした。
♀騎士は、またも驚かずにはいられなかった。まさかGMに牙をむくなんて思いつきもしなかった。
もし、この魔王と手を組めれば生存確率もあがるだろうし、なにより仇が討てる可能性がぐっと上がる。

「・・・わたしは♂騎士の仇、♀ハンタを殺すのが一番の目的。その手伝いをしてくれるなら・・・。」
「♀ハンタは、この茶番に乗っているのだな?」
「乗っているね。アイツは許せない!」
「私としても、この茶番に乗っているような人間は邪魔なだけだ。それの排除の協力に異存はない。」
「わかった。ドッペルゲンガー。あなたの提案、飲んだ。」
「よし。それではまず、こちらに登ってきて先ほどの話に出た深遠の騎士子の情報をくれないか?」
「どうして?」
「主を失った、深遠の騎士の愛馬がここにいるのだよ。主の下に戻してやりたいのだ。」
「そういうことか。わかった。そちらに行く。」

上から誰何された時は、しまったと思ったのだが。とりあえずは強力な味方ができた♀騎士は、ほっと一息をついた。
やはり一人でいるのは、精神的に非常に負担だったのだ。この、ゲフェンの魔王がどこまで信用できるかは分からないが。

「GMを討ち果たす」という話を口に出さずに紙に書いたのは、きっとGMの盗聴を恐れてのことなのだろう。

それを見ても、この目的に対しては本気なのは伺えた。その点において信用できそうだ。
そろそろ時刻は夕方にさしかかろうとしていた。


<DOP/所持品:ツヴァイハンダー・深遠の黒馬(深淵の槍持ち)・小青箱>
<♀騎士/所持品:無形剣・コットンシャツ・ブリーフ>
<両者の現在位置:さすらいの森/備考:GM・♀ハンタ打倒に協力体制>

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