089.主よ、憐れみたまえ
(♂剣士か。戦闘力は期待できないだろうが、同じ姿である事を利用すれば、
奴を動揺させ、隙をつく事ができるかもしれないな…。)
奴を動揺させ、隙をつく事ができるかもしれないな…。)
ドッペルゲンガーはそのような事を考えながら、♂剣士に近づき、語りかけた。
「…私はドッペルゲンガー、君と争うつもりは無い。
私の目的はこの戦いを終わらせる事だ。だから私と一緒に…」
私の目的はこの戦いを終わらせる事だ。だから私と一緒に…」
「…ものか…」
ドッペルゲンガーの話の途中で♂剣士は震えながら何か小さな声で言う。
「なんだ?」
「もう…騙されるものか!!」
「!」
刹那、ドッペルゲンガーがいた所をバスタードソードが通る。
彼の長い年月で澄まされた勘がなければ確実に致命傷を負っていたはずだった。
「貴方も僕を見捨てて、残されて絶望する僕を嘲笑うつもりなのでしょう…?」
震える手で剣を持つ♂剣士の目には狂気と怯えがあった。
「…話が通じないようだな…残念だ。」
怯え、狂い、隙だらけの今の♂剣士なら、今の自分でも余裕で倒せるだろう。
♂剣士の力が借りられないのは残念だが、他にも協力者はいるはずだ。
そう思ったドッペルゲンガーはツヴァイハンダーを構え、次の斬撃に備えた。
「…はあああっ!!」
一直線で、隙だらけの斬撃がドッペルゲンガーを襲う。
彼はそれを横に避け、そして彼の首めがけてツヴァイハンダーを振り落とした。
完全なるドッペルゲンガーの勝ち。
…のはずだった。
「なんだと…?」
彼と♂剣士の間には薄い壁が存在した。その名はキリエ…エレイソン。
「くっ…!」
片方の姿が見えない上にプリーストと剣士の二人が相手では勝ち目がない。
ドッペルゲンガーは♂剣士がいきなりの支援に驚いている間に、森の影に繋いでおいた馬に乗り、西へ去っていった。
ドッペルゲンガーは♂剣士がいきなりの支援に驚いている間に、森の影に繋いでおいた馬に乗り、西へ去っていった。
「さっきまでどこにいたのですか心配しましたよ」
憐れな♂アサシンは森から戻ってきた♀プリーストに本当に心配そうに尋ねた。
「あ…少し祈っていたのです。」
♀プリの言葉には少し動揺が混じっていたが、♂アサはその事を気にもかけない。
「まだ皆が助かる事を祈られているのですか」
「ええ…」
「私は貴方に近づく者があれば全て斬りますここでは死こそが救いなのです」
「でも…」
「大丈夫です私がいる限り貴女は絶対に誰にも殺させませんから」
「…」
「ではここから人がいそうなプロンテラへ行きましょうか」
「…ええ。」
彼らは東へ向かっていた足を北に向けた。
彼らは東へ向かっていた足を北に向けた。
「主よ…我々を憐れみ、そして救いたまえ…」
♀プリは♂アサにも聞こえないぐらいの声でそう、囁いた。
♂剣士は一人残され、立ち尽くしていた。そして、何かに誘われるのかのように首都、プロンテラへと向かう。狂気と怯えをその目に宿したまま。
<ドッペルゲンガー 状況変わらず。西へ。現在地点 蛇の森砂漠>
<♂剣士 人間不信に。 プロンテラへ向かう。現在地点 さすらいの森>
<♂アサシン 状況変わらず。プロンテラへ向かう。現在地点 チュンリム湖>
<♀プリ 状況変わらず。プロンテラへ向かう。現在地点 チュンリム湖>
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