バトルROワイアル@Wiki

011

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「…………」
木々の隙間から空を見上げているのは♂ウィザードだった。
ノービスの死を目の当たりにして彼が反射的に思ったこと。
”死にたくない”
次に考えたのは、
”どうやったら死なずに此処を出られるか”。

「殺すか…逃げるか……」
それはとても難しい二択だった。
首輪に恐る恐る触れる。
「………無理だ」
GMの言った言葉が正しければ、この首輪がついている限りこの箱庭から逃げる事はできない。
だが恐らくこの首輪を強引に外そうとすれば……。
思わず想像してしまった結末を首を振って否定した。
兎に角、この首輪は弄らないほうがいい。それがウィザードが最初に下した決断だった。
そうすると選択肢は他の人間を殺すことしかなくなる。
幸いウィザードは火の魔法を得意とする、高INTの持ち主だった。DEXもあるし、申し訳程度にならVITもある。
しかし、フェンクリップもヒールクリップもない。
全て殺す殺戮者になるためにはあまりにも不安があった。


「…………待てよ…」
支給された荷物から古く青い箱を彼は取り出した。
自分の装備品は何もかも取り上げられていた。それは他の参加者も同じだろう。
代わりに与えられるのはこの古く青い箱二つだけ。この中の物で戦うしかない。
一体、この箱の中から自分の望む武器や防具が手に入る人間がどれくらい居るのか。
次に名簿を見た。
そして慎重に考えながら、生き残る可能性の低い者から順に頭の中で消していった。
まずはノービス、アコライト。余程、最強の盾でも出ない限り一瞬で消し炭にできる。
矢と弓がなければ――流石に箱からファルコンは出ないだろう――下手すれば自分より弱いであろうアーチャー、或いはハンター。
魔力では確実に劣るマジシャン。
そして商人。
逆に生き残るのはアサシンやローグ、プリースト、騎士、モンク、ブラックスミス辺り。
…つまり、いざとなれば素手であろうと自分を越える戦闘能力を出せる人間だった。
「何も、全員殺す必要もない…」
そう、生き残りたいのは自分だけではない筈だ。そして必ず一人は血に飢えた殺戮者となる。
自分は黙って見ていればいい。
人数が減るまでじっと耐えればいい。

そして最後に自分がそいつを殺せばいい。


そうと決まればウィザードが次に求めるのは、”安全な隠れ家”だった。
こんな、いくら木が鬱蒼と茂っていて視界が悪い所でも、危険に思えて仕方がなかった。
「…………」
手に持っていた青箱を、彼は躊躇うことなく開けた。
大きいそれからは、
「……これは…聖書?」
プリースト、あるいはセージが使うような何の変哲もないバイブルが出てきた。
ウィザードにとっては無意味でしかない。
小さいそれに期待を込め開けてみる。
「…………」
ウィザードはその小さなアクセサリーを見て、にやりと笑った。


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