バトルROワイアル@Wiki 2-020


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020.白馬の騎士


俺の親父はプロンテラ、いや王国全体でも少しは名の売れた鍛冶師だった。
親父の武具を求める連中は絶えなかったし、弟子にしてくれと押しかけてくる若い鍛冶師も
大勢いた。俺もそんな親父を誇りに思っていた。
だが……隣国との間で始まった戦争がすべてを変えた。
当然戦争にあたって大量の武具を必要とした王国の連中は、親父も含め城下の鍛冶師を
すべて召集すると言い出した。親父はそれにただ一人反抗したのだ。
「オレの作る武具は、お上の都合でバカバカしい殺し合いするためにあるんじゃねえ」と言って。
親父が反逆罪で捕らえられ、処刑されるまでそう長くはかからなかった。
残された俺たちは国を密かに脱出し、隣国であるシュバルツバルト王国に逃げ込んだ。
親父に仕込まれた鍛治の腕は捨てた。権力者どもには戦いの力に利用されるだけだと
思い知ったからだ。その代わり、手先の技術は別な方向にも役立った。
俺は錬金術師組合に入り、そこで頭角を現し、評価を受けるようになった。

そして今、俺はこのイカレたゲームの渦中にいる。
親父が殺されて以降、この国はますます狂っていった。その狂気の一つの極地がこのゲームだ。
各ギルドや団体に所属する者からランダムに選ばれるという建前だが、そんなことはもう
誰も信じちゃいない。何らかの作為が働いているのは明らかだった。
つまり、国の方針に反抗的な者、非協力的な者、あるいはその旗印になりそうな者を送り込み、
効率的な処刑と効果的な見せしめをやってのける合理的なシステムというわけだ。
シュバルツバルト王国の影響下にあるはずの錬金術師組合にも、何故か
その影響は及んでいた。商人ギルドが手を回しているのか、国同士の取引なのか、
そんな事情は知りたいとも思わない。だが、亡命者であり、親父に似て何かと上層部に
反抗的な俺は、スケープゴートとしてはうってつけだったのだろう。
(まあ、今さら理由なんてどうだっていい)
いっとき回想に浸っていた意識を、現実に戻す。
(当面の問題は、目の前の状況をどうするかってことだ)
覗き込んだ崖の下には砂浜が広がっていて、そこに二つの人影が対峙していた。
一人は男、一人は女。男はなにやら刃物を持っており、女は肩口を押さえている。
どうやら男のほうが女を追い詰めているらしい。
(芝居なんかだったら騎士様参上ってシーンなんだがな……)
幸い崖の下からは岩などの陰になって見えにくく、こちらに気づかれている様子もない。
男のほうもさほど体格は良くなさそうだし、頭上から奇襲すれば何とかなるかもしれない。
幸い下は砂浜だから、そう怪我もしないで済むだろう。
だが男が魔術師だったら? 不意を突ければいいが、修練を積んだ魔術師ならば
俺の動きより早く必殺の魔法を繰り出してくるかもしれない。
それにこんな状況では女の方だってまともとは限らない。ほいほい助けて、後ろからぐさり、
なんてことになったら目も当てられない。
(さて、どうする?)
女を助けに入るべきか、このまま立ち去るべきか。逡巡した一瞬、男が動いた。
繰り出された短剣を女も細身の剣で受けるが、防戦一方になっている。というより、
女の動きには戦意が感じられないのだ。と、数度の剣戟のうち、女がバランスを崩した。
くそ、砂に足を取られたんだ! すかさず男の短剣が無防備になった腹を狙う。
それを見たとき、俺の身体はすでに動いていた。
「ああっ、くそ! やっぱり放っておけねぇよ!」
俺は一気に岩陰から飛び出し、崖下へと跳躍した。

♂ウィザードは嬉しくて仕方がなかった。
なにせ、歩き始めていくらもしないうちに最初のモルモットを見つけたのだから。
なかなか肉付きの良い、長い黒髪の女だ。申し分ない素材といえるだろう。
岩陰に潜み、気配を殺して待ち受ける。女は周囲を警戒しつつ近づいてくるが、
こちらには気づいていないようだった。呪文の詠唱を開始する。
素材を必要以上に傷つけないよう、微妙に威力を調整して。
魔法が完成し、氷の矢が女に降り注ぐ!
「なっ……あ、ぐっ!」
悲鳴を聞くと同時に、岩陰から飛び出し、女に向かう。女は肩口と足から血を流していた。
とっさにかわそうとしたものの、避け切れなかったらしい。不意打ちに戸惑う女に向けて
一気に距離をつめると、コンバットナイフを振りかざす。
だが、確実に急所を捉えたと思った一撃は、横合いからの衝撃で弾かれていた。
「むぅっ」
飛び退って追撃に備える。だが同時に女のほうも距離を取っていた。
右手には細身の剣――レイピアを握っている。どうやら剣の心得があるらしい。
とすると剣士か騎士か、あるいはクルセイダーか。
(おやおや……これは少々分が悪いかもしれませんね)
願ってもない環境に置かれたことで、自分も少々浮かれていたようだ。
もっと確実に獲物を捕らえるような罠を張っておくべきだった。だが彼の予想に反し、
女は身を翻して逃げ始めた。
(罠ですか? いや……)
女の逃げ方は誘うようなものではない。背後から魔法で狙い撃ちすら出来そうだ。
(ふふ……しかしそれでは面白くありませんね)
サディスティックな笑みを浮かべ、魔術師の男は女を追い始めた。

「はぁ……はぁっ」
息が切れる。左肩と左足に負った傷がじくじくと鈍痛を伝えてくる。
相手は魔術師と思い、簡単に引き離せると思った自分が浅はかだった。逃げているつもりで、
巧みに誘導されていたらしい。袋小路のようになった一角に、彼女は追い詰められていた。
魔術師の男は短剣を構え、じりじりと近づいてくる。
「ふふ……光栄に思いなさい。あなたがこの島で最初の、私のモルモットです」
「も、モルモット!? 何ですか、それは……」
この男は狂っている、と彼女は直感した。この死のゲームに従うから殺す、というのではない。
自らの意志で、邪悪な目的を持って、ためらいなく他者を殺す。この男はそういう人種だ。
ぎり、とレイピアを握る手に力がこもる。男はじりじりと近づいてくる。
間合いをはかろうと、ほんの少し重心をずらした瞬間――魔術師は一気に距離をつめてきた。
ギィィン!と金属のぶつかる鋭い音。修練を積んだ身体は、不利な体勢を強いられつつも
殺意の刃を防いでいた。だが男は立て続けに攻撃を繰り出してくる。
魔術師とは思えないほどの技巧で急所を狙ってくるのだ。受け損じれば致命傷は免れない。
冷たい汗が背筋に流れるが、それでも身体は動き、斬撃を受け、さばく。
だが、ついに破綻が訪れる。ず、と足元の砂が崩れた。
(しまっ――)
魔術師が微かに笑みを浮かべるのがわかる。そして無防備な腹部に向けて突き出される刃。
その刃が異様な形状をしているのも、彼女には何故かはっきりと見えた。
(これまでかっ……)
だがその瞬間
「……けねえよっ!」
大声と共に、風が吹き抜けた。どすん、という鈍い音。
「うぐっ……!」
脇腹に熱さが走る。続いて痛み。だが、これは……致命傷ではない。何が起こった!?
顔を上げてみると、魔術師とは違う人影が立っていた。人影は一瞬よろめいたが、
しっかと立ち直ると、こう言ってのけたのだった。
「白馬の騎士様、参上だぜ……!」

「い、痛ぇぇ~~~。下が砂とはいえ、ちと無茶しすぎたわ」
「まったく、男のくせに情けない声を出さないで下さい。大丈夫、少し筋を痛めているだけです」
……結局、何だかんだで人を助けずにいられないのも親父譲りらしかった。
俺は崖下の男めがけて飛び降りざま、タックルをかましてやったのだ。さすがに効いたらしく、
男は派手に吹っ飛んだ。もっとも、俺も衝撃でふらふらになってしまったが。
男が反撃に出ず、そのまま逃げ去ってくれたのは正直ありがたかった。
そして、俺と彼女はひとまず傷の治療をしているというわけだ。
俺の大声で男の注意が逸れたせいもあって、彼女の急所に突き刺さるはずだった切っ先は、
脇腹をかすめただけで済んだ。だがそれでも決して軽い傷ではない。渡された支給品の中に
医療キットのようなものは入っていなかった(まあこのゲームの目的から言えば当然か)ので、
赤ポーションで洗い、服の端を裂いて作った包帯を巻いただけの応急処置だ。
傷口からはまだじくじくと血が滲んでいた。
「なあ……本当に大丈夫か?」
「痛みはしますが、毒などが仕込まれていたわけではなかったようですし、動くのに
それほど支障はありません。見かけよりは丈夫なんですよ、私」
「もっといいポーションか、せめてハーブでもあれば……俺がもう少し何とかしてやれるんだがなぁ」
「無いもののことを言っても始まりません。それよりも、これからのことを考えましょう」
「これから、か……」
そうだ。一瞬忘れていたが、そういえば俺たちは忌むべき死のゲームのために
集められたのであり、ここは殺し合いの舞台なのだった。
彼女がくすり、と笑って言った。
「それにしても、白馬の騎士はないでしょう」
「ああ……アルケミストだしな、俺」
「騎士の詐称は重罪ですよ?」
「いや、突っ込むところそこかよ!?」

<♂アルケミ 持ち物:青箱2(未開封) 髪型:未設定 半製造型>
<♀クルセ 持ち物:レイピア、青箱1(未開封) 髪型:黒ロング 献身Vitバランス型
 ※左肩と左足に軽傷、右脇腹に負傷>
<♂ウィズ 持ち物:コンバットナイフ 片目眼鏡 ※「研究」のため他の人間は殺す>
  • 北海岸にて遭遇、戦闘→ウィズは逃走
  • ♂アルケミと♀クルセ、傷の治療中。


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