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2-026

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026 BR黙示録マジ


ざざーん。ざざーん。
大きな波が断崖絶壁の岩に当たっては砕け、無数の泡となって消えてゆく。
その様子を上から寝そべりながらぼんやりと眺めていた男が一人。
「ここから飛び降りたら、空をも飛べるかもしらん……」
そんなことを呟いて寝返ると、海の青から今度は空の青が男の視界を埋め尽くした。
「下も青けりゃ上も青、そして俺の顔も見事に真っ青ってか!
 …あーちくしょう!なんだってこんなことになっちまったっていうんだよー!」
駄々っ子のように足をバタバタさせながらこの男…♂マジは一人で騒いでいた。
「大体よー、1年もWIZにもセージにもならずにふらふらしてた奴が
 いきなりマジシャンギルドに呼ばれるってことにおかしいって思わなかったのかよー!
 今まで出向いたことなんて一度もなかった癖になんで今更いっちまったんだよ俺のバカ!」
一頻り騒いだ後に♂マジはまた寝返って、先ほどのように岩に当たっては消えてゆく波を眺めていた。

……ゲフェンの街にカプラの空間転送サービスを使って降り立った時、薄々嫌な感じに気付いてはいたんだ。
普段から静かなこの街だけど、その時はまるで人が全て消えてしまったかのように気配を感じなかったことに。
1年前俺をマジシャンに転職させてくれたおねーさんが蒼白な顔をして俺を待っていたことに。
そして何より…おねーさんの後ろから現れた白い格好をしたこいつが……この嫌な感じを生み出していることに。
全身の毛が逆立ち、『こいつはヤバイ!』ということを本能が知らせていたが俺は動くことが出来なかった。
本能よりも、頭脳が……思考が全て諦めることを選択していたんだ。こいつには敵わない、と。

「で、こうなっちまったわけだ……どうすりゃいいんだよ、人殺しなんてモヤシの俺には出来ねえよぉ…
 とほほ、ほんとにここから飛び降りちまおうかなぁ…」
と、途方に暮れていた♂マジは支給品の青箱を思い出し寝そべったまま袋を漁り一つだけ青箱を取り出した。
小さな箱は思ったより重量感がある。♂マジはむっくりと起き上がり、やがて蓋に手をかけた。
「これで勝負は、俺の運命は決まる…南無三!」
そして♂マジは、箱を……運命のトビラを開いたのである。

「なんだこれ?サイコロ…?」
箱の中には3つのサイコロ、いやサイコロと呼んでいいものなのか怪しいものが入っていた。
骨を削って出来たような粗い立方体。だが、それよりも遥かに目を引くまるで血のような一面一面に彫られた……
「1しかない…どの面も1しかないサイコロ……?」
♂マジがその3つのサイコロを右手に持ち、ぐっと握り締めた瞬間。

♂マジに電流走るっ………!

    ざわ…

           ざわ…

「ああっ……!そうだ…俺は何を考えていたんだっ……!」
♂マジは目を見開いて、おもむろに立ち上がり考え込むようなポーズで崖の上をうろうろ歩き始め考える。
「何が空を飛べるかもしらんだ……そんなことが人間にできるはずがない……!
 そんなことをしても死ぬだけっ……無駄死に……無意味っ………!
 考えろ、考えるんだ……俺は今何をするべきなのかを………!」
そして♂マジが崖の上をぐるぐる回ってしばらくした時のことであった。
「よし……よし……現状の整理はこんなところか…。
 このゲームに生き残るには、二つ……参加者をけり落として最後の一人になるまで生き残ること。
 そしてもう一つは、このゲームの元凶……あの道化師を倒し、この島から脱出すること。
 どちらも可能性は限りなく0に近いが、このゲームを生き残る為には必ずどちらかを選ばなければならない………!
 生き残るんだ……生きて、生きて戻るんだっ………!!ぐっ…ぐぐっ……」
♂マジの目からぼろぼろと涙が流れては落ちてゆく。
「俺はやはり人を殺すことなんて、憎んでもいない人を殺すことなんてできない……。
 だったら俺がすることは一つしかない………仲間を、生き残る仲間を探すっ……!探すんだっ……!」
涙をこすり♂マジは袋を担いで島の奥のほうへと歩き出した。
右手のピンゾロサイコロをしっかりと握り締め、まだ見ぬ仲間を求め彷徨うのであった。

<♂マジ>
現在位置-断崖絶壁の海岸付近(A-6)
所持品-青箱(未開封)、ピンゾロサイコロ3つ
外見特徴-長髪 顔色が悪い
備考-JOB50 仲間を求めている


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