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2-044

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044 王子様はじめました


「ほら、見てください王子様! このナイフ!
 きっと神様があたしたちの出会いを祝福してくださってるんだわ!」
青箱から手に入れた一振りのナイフを手に、幸せそうにニコニコと笑っている♀アーチャー。
♂ハンターにとって最大の不幸といえるかもしれない彼女との出会い。
それを果たしたばかりの彼のテンションは地を這っていた。

(何かと思えばプリンセスナイフ…あの子がはしゃぐわけだ。
 しかしねぇ、神様なんてものがいるんなら、こんな戦いに参加させられることなんてなかったと思うよ…)
プリーストに聞かれたら小一時間説教されそうなことを考えながら、♂ハンターは♀アーチャーに苦笑いを返した。

「幸せそうでいいねぇ君は」
「はい♪ 運命の王子様に出会えたんですもん。それにあたし、幸福の国のお姫様ですから」
(……嫌味も通じない…か)
俺の頭の中もお花畑になれば、幸せに生きていけるんだろうか。
一瞬そんな投げやりな考えが頭をよぎり、慌てて♂ハンターはそれを振り払った。

(せめてターコがいてくれれば、ちょっとは心が休まるのに)
彼はいわゆる『鷹匠』といわれるハンターではなく、弓の扱いに重点を置いて修練を積んできていた。
そのせいか相棒である鷹は機嫌のいい時しか飛んではくれなかったが、それでも彼は相棒を可愛がっていたし、信頼していた。
幸せな未来は見えず、頼る人間もいない。
それどころか頼られているこの状況の中、彼は相棒の存在の大きさに改めて気づかされていた。

可愛い娘に頼られるのは悪い気はしない。というより大歓迎だ。
それがもっと普通の状況で、もっと普通の娘だったなら。そう思わずにはいられなかった。
♀アーチャーは外見は申し分なく、むしろ♂ハンターの好みど真ん中だったが、中身が問題なのは言うまでもない。
(もう過ぎたことはしょうがない…か。王子様を気取るのもオツなもんかもな……)
――いつものようにポジティブに。前向きに考えよう。
♂ハンターは無理矢理気分を奮い立たせた。ヤケになった、とも言うが。

「まぁ、とりあえずだ。これからのことを考えよう」
「これからのこと…だなんて、王子様ったらっ」
「……いや、そういうことじゃなくて。俺も君も殺し合いをする気はない。
 そうなると、それ以外でここから脱出する方法を考えなきゃいけないだろ」

(とは言ってもさっぱり浮かばないんだけど)
船で脱出する、などという正攻法はおそらく通じないだろう。
島から逃げ出すと爆発する、と言われた首輪の問題もあるが、それ以上の不安要素がある。
それはGMジョーカーと名乗る男の存在だ。
陰険そうな(とは♂ハンターの見解だが)あの男がみすみす逃がしてくれるとは思えなかった。
彼を倒せばこの地獄から開放されるのかもしれないが、まともに戦おうとしても敵わないだろう。
♂ハンターの脳裏には、返り討ちにされて重傷を負った♀モンクの姿がちらついていた。

(……いや、敵はピエロ野郎に留まらない、か……)
言ってしまえば敵は王国だ。万が一ジョーカーを倒せたとして、その先は?
国というあまりに大きすぎる組織。反逆した者がどのような末路を辿るのか…それは彼の想像の及ぶところではなかった。
(だめだ、弱気になっちゃ。このまま何にもせずに死ぬのも、奴らの思惑通りに殺し合うのもごめんだ。
 最後まで、全力で抵抗してやるんだ…狂った奴らに。そのためには……)

「やっぱりさ、もっと仲間を集めるしかないと思うんだ。戦力のこともあるし、頭の切れる仲間も欲しい。
 俺、野生の勘みたいなのはよく働くんだけど…頭のほうはあんまよくないし。
 ……君は『王子様と二人きりがいいです!』なんて言うかもしれないけど、それどころじゃないから」
「え!? どうしてわかったんですか」
「うん…大体君の性格が読めてきたから」
慣れというものは恐ろしい。♂ハンターは電波娘の扱い方を少しずつ心得てきたようだった。

「さて、そうと決まれば…ここでじっとしててもしょうがない。
 殺る気になってる奴と出会わないことを祈って、出発しようか」
「はい♪」
「……あ」
椅子代わりにしていた切り株から立ち上がった♂ハンターは、♀アーチャーの持つアーバレストに目をやった。
ノービス時代を除けば弓一本でやってきた彼だ。ナイフ一本ではこの先心細い。
「あのさ…悪いんだけど、その弓俺にくれないかな。弓を使えたほうが君を守りやすいと思うし」
♀アーチャーが持っていても宝の持ち腐れだ、とは言えない。
「あ、はい……」
アーバレストを♂ハンターに渡したとたん、彼女は安堵の表情を浮かべた。
まるで嫌なものを手放すことができた、といわんばかりの。
(どうしたんだ? 一体)
彼女らしくないその表情に、♂ハンターは首をかしげた。

その時だった。
「……!」
♂ハンターの表情が強張る。渡されたばかりの弓に矢をつがえ、周囲を見渡す。
彼の鋭い感覚は、近づいてくる人間の気配を確かに感じ取っていた。
「ど、どうしたんですか?」
「誰か来る…!」
「ええっ!?」
怯えの色を顔に出す♀アーチャーに、大丈夫だ、と目配せする。
震える姿は普通の少女だ。なんとか安心させてやりたかった。

(……殺しにかかってくる奴じゃなければいいんだけど)
みすみす殺される気はないとはいえ、無駄な戦いは避けたかった。
自分の腕は人を殺めるために磨いてきたわけではないのだ。
殺さなければ殺され、強い者だけが生き残る――ある意味自然界の掟、弱肉強食。
そんな中で甘い考えだとはわかっている。だが、それでも。
彼は願わざるにはいられなかった。できるならば自分と同じ考えを持つ人物であってほしい、と。

「希望に沿う相手なら万々歳なんだが…そううまくいくかな」
「だ、大丈夫ですよ王子様! あたしたちは、幸運の女神様に見守られてるんですから…!」
どこかおかしいが、♀アーチャーなりの励ましなのだろう。
いつも彼女の言動に引いていた♂ハンターだったが、少しだけそんな彼女が愛おしく思えた。
「だといいけどね…まだ相手がどんな奴かわからない。俺の傍から離れないでくれよ」
「は、はい、王子様!」
彼の言葉に♀アーチャーが頬を赤く染める。
自然と『王子様』なセリフを吐いていることに彼は気づいているのだろうか。


<♂ハンター>
外見:マジデフォ金髪 顔に気苦労が滲み出ている
性格:お人よしで苦労性 意思は強い
備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ
所持品:アーバレスト(♀アーチャーから譲り受ける)大量の矢 ナイフ

<♀アーチャー>
外見:アチャデフォピンク(公式どおり) 見かけは可愛い
性格:思い込みが激しく電波気味
備考:弓の扱いがど下手(弓が嫌い?) 妄想癖あり ♂ハンターを慕う
所持品:プリンセスナイフ

<♂ハンターPT 現在地:どこかの森 行動方針:仲間を探す 現在何者かの気配に警戒中>


<残り45名>


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