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2-052

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052 美女と野獣


私は生き延びる。まだやりたいことがいっぱいあるのだから。
そのためには誰かの命を奪ってでも生き延びる。
何故なら私には帰りを待ってくれる子供達が居るのだ。
私が稼がなければあの子らは飢え死にしてしまう。
亭主は私を孕ませた後、遁走した。
あんなに愛し合っていた二人なのにいざ子供ができると現実は厳しかった。

だから、先程の♂騎士と♀プリは失くした何かを見ているような感じですごく懐かしかった。
「って、ナに感傷に浸ってんだか・・・・・・」

非情になれ!そう自分に言い聞かせる。
「私は人を殺せる・・・・・・私は人を殺せる・・・・・・私は・・・・・・」

延々と口に出し、自分の感情を押し込める。
「進むも戻るも修羅の道。ならば私は進もう・・・・・・」

ロープを掴む手に力が入った。
ガバっと開けたもう一つの青箱からは装飾用ひまわりが。

「こんなもの・・・・・・」

投げ捨てようかと思ったが何故かできなかった・・・・・・。
私も昔はこのひまわりのように日を浴びて生きていたのにな・・・・・・。
今は夜の闇に紛れて娼婦としてお金を稼ぐ日々・・・・・・。
故郷を偲ばせる初夏の空。
もうすぐ夕暮れ前になるというところであろうか。
しかし、まだまだ空は青い。

「できれば相手はマーダーがいいな。私の良心が痛まないから・・・・・・」


「ぼ、ぼず!」
♂スパノビが切羽詰った声で悲鳴をあげる。
「ん~ん~?なんだい?眠れないじゃないか」
心地良い木々の香りが倉庫の中まで忍び込んで睡眠を誘う。
外はまだ夕暮れ前だろうか。
昼過ぎにここに辿り着いてから休んだから
そう判断すると4時間ぐらい経過したのであろうか。
「お、おで、お、おしっこいきたい!」
・・・・・・。
「甘えるな!一人で行きな!」
甘やかしてはいけない。
「は、はい、ぼず!」


♂スパノビは股間を抑えながらヨタヨタとガニマタで一生懸命走った。
そして所定の場所に辿り着くと
「ふ、ふ~はあああ~」
安堵の表情と共に木に向かって用を足す。
木々が青々と根付いている。その匂いが好きで♂スパノビはふがふがとそれを吸い込んだ。

♂スパノビは辺りを見回した。何らかの気配を感じたからだ。
すると彼は民家の前にすごい形相でこちらを睨んでいる女の人を見つけた。
なんで睨んでいるんだろうと思ったがきっとはしたない姿を見せているからであろう
という理由に思いあたり、あたふたとチャックを閉めるとその女の人に声をかけた。

「や、やあ!お、おではいいやつ!な、なかよくしよ!」
そう叫ぶとその女の人はニコッと笑った。
あ、きれいな人だなと思った。
木漏れ日に照らされた彼女は神秘的であり、
また魅力的であった。
しかし彼女の笑いはどこかしら怖かった。
彼女はどんどん近づいてくる。
なんだか分からないがとても恐ろしくなった。
「お、おでいいやつ!お、おでいいやつ!」
そう叫んだ。しかし、なお彼女は近づいてくる。
面前に近づいた時、怖さで思わず尻餅をついた。

メキッ!!!!!

「ひっ!」
一瞬前まで顔のあった場所にムチが届く。
それは勢い余って木の幹に当たり、痕を深々と残した。

こんなので殴られたら死んじゃう!?

「わ~!わ~!」
頭を抱え、無意識に防御姿勢を取りながら♂スパノビはドタドタと小屋に駆け戻った。


「遅い!アタイの子分は一人で用も足せないのかい!?」
しょうがない少し様子を見てきてやるか。
そうアタイが思った時。

「ひ、ひ~!ぼずだ、だずげでぇ!」
と泣きながら♂スパノビが頭を抱え小屋に飛び込んできた。
そして一瞬遅れて叫び声がした。

「待ちなさい!ぶっころしてやるわ!」
!?チッ、マーダーに見つかったか。
そう悟りアタイは得物を手に取る。
よし、食事をして休息を取ったことで幾分か血は戻った。
腕の痛みはまだあるが。戦える!
アタイは頭を抱え蹲る♂スパノビを跳びこえ表に跳び出す。

「弱い者虐めはそこまでにしな!アタイが相手になるよ!」
そう言うと相手を睨みつけた。

相手はどうやら♀ダンサーのようだ。
背後で♂スパノビがひょっこりドアから顔を出して
不安気にこちらを覗いているのが見えた。
アタイは大丈夫だ!というサインに親指を立て、さらにウィンクをして安心させる。

「貴方たちがマーダーで良かったわ。これであたしも心置き無くあんたらを殺せる」
そう叫ぶとそいつはムチのようなものを放ってきた。
!?こいつ勘違いしてる?!
民家の死体を見たのであろう。
間一髪でムチのようなものを避けるとどうにか説得できないか思案した。

「ま、待ちな!その話なら説明するからこんな馬鹿なことやめなよ!」

「うるさい!問答無用!」

またもや鋭い一撃をギリギリでかわす。

チッ!力ずくでもいいからなんとか戦っておさえつけて分からせるしかない。
そう悟るとアタイはそいつと対峙した。


あの男が、あの民家にいる兵士達を殺したに違いない。
なんたってあの男は見るからに犯罪者級の顔をしている。
ほお紅なんてつけているが私は騙されないぞ。
この女だって見るからに脳まで筋肉だし、恐ろしい殺人鬼に違いない。
そう思い目の前の女を黙らせる方法を思案する。
相手は得物を持っていてリーチは長いが私ほどではない。
だが接近戦ではあの恐ろしい筋肉の生み出すパワーで負けてしまうだろう。

ならば搦め手でいくのみ!

「いくぞ!ゴリラ女っ!」

「な、なんだってぇ!ムキィー!ブチクラワスゾ!この野郎!!!」

よし、挑発に乗ってくれた。

私は逃げた。そして予想通りゴリラ女が追いかけて来る。

「馬鹿め!」

私は急に止まり、そして勢いづいているゴリラ女の足にロープを放つ。

「キャッ!」

チェック!つんのめって倒れたゴリラ女の首にすぐさま引き戻したロープをかけ
体ごと乗っかる。

「グググググッグ・・・・・・」

チェックメイト!
逆マウントポジションで私はこいつの上に騎乗態勢になっておりロープは
深く首に食い込んでいる。


「ぬぐぐぐぐぐうぐぐうううがあああ」
♀BSはその瞬間、腕からの激痛におそわれながらも
これしかないと非常識な行動に賭けた。
ボスは子分を守る!

「え?」
なんとそいつは私の体重をものともしないで
両手で地面を思いっきり突き、腕立て伏せのように少し空間を開けると
両手両足を使い獣のように私を乗せ突進した。
ゴリラ女騎乗修練なんてのがあったら良かったのに!?
そして・・・・・・目の前には木があり・・・・・・。

「嘘でしょおおおおおお!?」

どこーん。

私は気を失った。


「う、う~ん・・・・・・はっ!?ば、ばけもの!」

私はとびあがる。そして目の前に超強面の♂スパノビが居るのを見て再び失神しそうになった。

「ちょいと!」

こつんと拳骨で頭を叩かれた。
あまりの痛さに思わず涙目になる。

「こいつはあんたのためにヒールしてくれてたんだぞ。その言い方はないでしょうが」

見ると♂スパノビは手で顔をおさえながらポロポロ泣いていた。

「お、おで、わるいやつじゃないのに、み、みんなおれのこといじめる・・・・・・」

思わずその本当に悲しそうな顔を見るとまだ幼い次男を思いだした。

「ご、ごめんなさい」

私は思わずよしよしと♂スパノビの頭を撫でた。

「まあ、私らが人殺しじゃないのは分かってもらえたと思うけどねぇ」

確かに気を失っている間にいつでも殺せたのに私を助けてくれた。
マーダーではないようだ。

「まあ、良かったらアタイ達と一緒に動かないか?あんた強そうだし、アタイも腕が痛くて本来の力出せそうにないからさ」

それでさきほどの怪力を出したのだから全快したら
一体どれほどの力を出せるのかと思わず仰天した。

「こいつを守ってやりたいんだ」

どうやら私はマーダーにはなり切れないようだ。
そしてこの♂スパノビに母性本能を思い出させられた。
私はもうマーダーにはなれない。

まあ・・・・・・こんな結果も悪くはないか・・・・・・。

誰にも聞こえない小声で呟く。
そして次は大声で宣言するように言った。

「分かったわ。♂スパノビを一緒に守りましょう。それと♂ローグがこの辺りに潜んでいる。
そいつはものすごくやり手だから早くここを脱出しましょう」

私もさっきの木にぶつけられた時に背中を痛めた。
このままじゃ♂ローグには到底敵わない。


私達は一路、南に向かった。

「ほら、これつけてみなさい」

そう言って私は装飾用ひまわりを♂スパノビにつけた。

「あははは、お前は愛されてるねぇ」

と言う♀BSはポンポン♂スパノビの頭を軽く叩いた。

やっと私のヒマワリを再び見つけることができた・・・・・・。

「お、おで、うれしい!!お、おで、おはなになりたかったんだ!」

その言葉に私と♀BSは心の底から大爆笑した。

<♀BS>
現在位置 F-3からF-6へ向かう途中
所持品:ツーハンドアックス(♂スパノビの箱から)
外見特徴:ボス、筋肉娘、カートはない。むちむち。
状態:負傷箇所に痛みが残る。 貧血は解消。

<♂スパノビ>
現在位置 F-3からF-6へ向かう途中
所持品:スティレット(♀BSのもの)、ガード、ほお紅(♀BSのもの)、装飾用ひまわり(♀ダンサーから)
外見特徴:巨漢。超強面だが頭が悪い。カートあり。
状態:ヒールを使用したことにより少々顔色が悪い。

<♀ダンサー>
現在位置F-3からF-6へ向かう途中
所持品:ロープ、カード帖
外見的特徴:美女、子持ち、母性本能大
状態:木にぶつけられた衝撃で少し背中が痛い。


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