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2-093

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093 遭遇【定時放送直前】


「この辺りは……平原のどの辺りだろうか………」
右手に見える丘、振り返るとうっすらと見える木々そして正面に広がる草原…。
人を探して森から平原へ黙々と歩いてきた♂マジであったが、
歩き疲れたのか、背の低い草の生える草原にごろりと横になり日の沈み紅く染まる空を眺めていた。
「人に出会うことがこれほど難しいとは……最初に集められた人数を見たときは結構な人の数が居たと思うのだが……」
足が棒になるほど島を歩いたが、結局人に出会うことはできないまま…♂マジは一人孤独であった。
一陣の風が彼の頬を撫で、そして草の葉を揺らし彼の周りを通り過ぎていく。
その様子はまるでここが殺し合いのゲームの会場なんてことを忘れさせるくらい、平和なもので。
思わず現実から目を背けたくなるような日常が、♂マジの前にはあったのである。


だが。
♂マジはローブの中に仕舞っていた、血は既に乾き…所々赤く錆びているスティレットを取り出し空に掲げる。
鉄臭い匂いが♂マジの鼻を刺激し…神経を覚醒させていく。
誰かがこのスティレットの持ち主に襲われて、命を落としたのかもしれない。
あるいは逆にこのスティレットの持ち主は返り討ちにあって、命を落としたのかもしれない。
このスティレットは♂マジに命を賭けた戦闘があったことをその刀身を以て生々しく伝えていた。
そして……彼はこの命を賭けたゲームで、助け合うということを望んでいた。
それは偽善なのかもしれない。
人を殺したくないから、殺すことなんてできないから手を取り合う。
そんなことが可能なのか。相手が自分と同じことを考えている確証などどこにもないというのに。
そして自分は、できるのか?相手をただ信じることなど。
信じて、信じたその先にあるモノまで……自分は信じ抜くことが、できるのか?
「俺は……俺はっ………ぐぐっ…………」
一人で考える時間が長すぎたため……彼はわからなくなってしまったのである。
それが、人を信じるということをわからなくなってしまったことが悔しくて彼は頬を濡らした。
「悔しいっ……俺は何故…どうしてっ……信じなくては……手を取り合うことなんてできないのにっ……!!」
彼は右手の袖で目元を塞ぐことで、流れる涙をなんとか抑えていた。
それが…彼にとって悲しいミスとなった。
今もし立ち上がって辺りを見回したら、
こちらの気配に感づき離れていった誰かに気付くことができたかもしれなかった。
結果はどうあれ、あれほど♂マジが望んでいた人に出会うという願いが成就されるチャンスだったのである。


結局♂マジはその気配に気付くことなく、ひとしきり、落ち着くまで涙を抑えていた。
ようやく落涙の止まった瞳が映したのは満面の星空であった。
スティレットを地面に置いてぼんやりと彼は…これからどうするかを考えることにした。
これからはあまり目の利かない夜間での行動となる。
参加者の中に含まれる暗殺者や狩猟者といったような闇でのスペシャリストに対して
自分は余りにも無力であり、このような隠れる場所の無い平原でそういった者達に遭遇した場合、
…彼らがもしゲームに乗り気だった場合間違いなく殺られるだろう。
そうするとこの平原よりは先程の森に戻った方がいくらか安全だろうか?
それとも下手に動かず気配を殺してここでじっとしていた方が安全か…?
「どっちだ……どちらがより安全で確実………うっ!?」

    ざわ…

         ざわ…

突然♂マジは立ち上がり慌てた様子で辺りを見回し始め、そしてある一点で…♂マジは何かに気付き凝視する。
「何か………来るっ…!?」
何かが猛スピードでこちらに近づいてきている。
夜のせいで目は利かないが♂マジはその 何か に対して警戒態勢をとる。
「もし……敵だとするなら…ゲームに乗った奴だとしたら……俺はやれるのか……?くそっ…!」
狼狽している間にも小さな点は段々と大きくなっていき、人であることが目視できるまでこちらに接近していた。
どうするっ……!どうするっ……!どうするっ……!
♂マジの手が、膝が震えだす。
怖い。冗談じゃない。死にたくない。だったら、だったら落ち着け!対処しろ!
「落ち着けっ……落ち着けっ……ファイアウォールで足を止めてフロストダイバー……
 そしてライトニングボルトで終わるっ……ただそれだけっ……落ち着けっ……!」
相手が地の蹴る音が少しずつ大きくなり影も近づいていく。自分の鼓動も段々と早まっていく…!
やれるっ…!落ち着けばなんてことはないっ……!
「落ち着けっ……落ち着けっ……落ち着けっ……落ちtうごっ!」
「うわあっ!」
決まったっ……!鳩尾だっ……これは痛いっ……急所っ……!
悲鳴を上げながらゴロゴロと転がる♂マジ。どうやら頭突きがモロに急所に入ったようだった。


「だ、大丈夫?顔色悪いよ?」
「元々こういう顔だっ……!」
そんなに怒らなくても、と黒い目隠しをした彼女…♀マジは呟いてしょんぼりと下を向く。
何はともあれ、♂マジはようやく人に出会うことができた。
そして何より…人を殺さずに済んだのである。
そのことに♂マジは心から安堵していた。
まだお互いのことを信用しきっているわけではない……と、思う。
仲間というわけでもない。ただ少し間の抜けた先程の出来事が緊張感を取り除いて今の空気があるだけ。
この命を賭けたゲームで簡単に人を信用することを相手に求めるものではないということはわかっている。
「それでも俺は……もう一度っ……!」
「?」
「いや、なんでもない…それよりお前のほうこそどうしたんだ……?
 あの慌てっぷりは何かあったんだろ……?」
その言葉を聞いて思い出したかのように♀マジの顔が蒼白になる。随分恐い目にあったのだろうか。
小さな体の、小さな膝を小さな腕で抱えて……彼女はカタカタと震えていた。
先程までの和やかな空気が一気に冷えていくように♂マジは感じた。
「落ち着いたら……話してくれ。それまで待っててやるから……」
しばらく間をおいてから、♀マジはコクリと頷く。
その様子を確認してから♂マジは辺りの警戒する。
♀マジが逃げてきた、ということは彼女が逃げていたものがこの場所にくるという可能性はそう低くない。
今怯えた♀マジを守る事ができるのは自分しかいないのである。

まだ仲間と決まったわけでもない。向こうが信頼してくれているわけでもない。
少し間の抜けた出会い方をして、それで何となく一緒にいるだけなのかもしれない。
それでも♂マジは自分がようやく出会った人間だったから。
彼は彼女を守る盾となることを決意したのである。


<♂マジ>
現在位置…C-6
所持品…ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個 青箱1個 スティレット
備考…JOB50 ♀マジと一緒にいる

<♀マジ>
現在位置:C-6
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。♂マジと一緒にいる


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