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2-116

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116.払暁の茜[日の出前後]


初夏とは言え朝方の平原は少々冷え込む。
丈の低い草に覆われた平地で夜を明かしたのは、必ずしも最良の選択とは言えなかったかも知れない。
ダンサーは踊り子用の薄いマントを体に巻き付けた。

散在する木立に寄らなかった理由は簡単だ。
彼女達の中には忍びの技に長けた者が居ない。
ダンサーにはアーチャー時代に鍛えた野山の勘があるが、その後を街で暮らしすぎた。
悪意のある相手が寄って来た場合、お互いに身を隠しやすい木立の中ではどちらが先に気付くかわからない。
そしてそういう相手は平地より誰かが隠れていそうな木立から調べるだろう。
つまり木立の中はかえって危険かも知れない。
夜中ならば平原でもじっとしている限り見つけにくい。特に少しでも窪地になっている場所なら。
逆にこちらは動く物にさえ気をつけていればいいのだから、確実に先に見つけられる。

そしてその効果は確かにあった。
白々と明けつつある東の空を背景に、近寄ってくる集団を見つけたのだ。




また女だ。
♀アルケミストはヒステリーの1つも起こしたくなってきた。
危険なローグを避けるため、淫徒プリを説得して日が昇る前に西へ向かった。これはいい。
突然草原から身を起こした三人組には驚いたが、彼らに敵意は無いようだ。少なくとも不意打ちをしない程度には。これも素晴らしい。
しかし、その編成は彼女が願っていた物とほとんど逆方向だった。
BSにダンサー…そして最後の1人はあれでもスパノビなのだろう。
ごっつい男が1人に、豊満な肉体を強調した女が2人。
見たところダンサーは弓を持っていないようだし、スパノビも体格からして短剣型だろう。
つまり遠距離攻撃力は無し。
これでは何かの呪いかとも思いたくなる。
だが、今は弓を持っていなくても後衛職を逃す手はないし…すでに♂BSは鼻の下を伸ばしていた。
仲間にする気満々なのがありありと分かる。
まったくこいつは。女に甘すぎるのも考え物だ。
腹は立つが、ここは一旦合流して大所帯になるに任せた方がいいだろう。
その上で不要になったなら仲違いを起こさせれば済む。
そこまでをほとんど瞬時に計算した彼女はおそるおそる――を装った口調で――話しかけた。
「皆さんはこのゲームに乗ってない、と考えていいですか?」

ざん

また女だ!
淫徒プリもまた、大声を上げて走り回りたくなるのをこらえていた。
もちろん理由は♀アルケミストとは正反対である。
ちなみに彼の脳内辞書では女と書いてふとももと読む。
できればもう少しバラエティーに富んでいると楽しかったのだが、いずれも劣らぬむちむちっぷり。
是非とも水浴びをご一緒したいところである。
いやいや、今はそんな妄想にひたっている場合ではない。
まずはそれを実現するために、何としても彼女たちと合流しなくては。
彼は両手を軽く広げて前へ進み出た。
「見ての通り私達に戦う意思はありません。と言うか、ちゃんと戦えるのは♂BSさん1人なのですけど。できればご一緒しませんか?」

ざん、  ざん

女の子…ねえ?
ダンサーは首を傾げた。
三人連れならまず殺し合いには乗っていないでしょう、と声を掛ける提案をしたのは自分だったのだが、何かが引っかかる。
ちょっとは長く女をやってきた勘だ。
敵意や害意ではないのだが…なんだろう。何か隠しているような、底意のような物を感じる。
本当に一緒に行動して大丈夫かしら。
彼女は慎重に相手の様子を窺った。

ざん、ざん、ざん

BSかあ。
♀BSもまた腕組みし、首を傾げていた。
それによって強調された胸の谷間に視線を感じ、♂BSを睨み付ける。
実のところ視線は二つあったのだが、淫徒プリのそれには気付かなかった。
ダンサーの言葉は正解だったみたいだけど、なあんかこいつあたいとかぶるし、視線も気になる。
…けど支援プリさんが居れば♂スパノビの負担も軽くなるし、この三人なら斧や鈍器使えるからARやOTも入って悪くないんだよねえ。
そこまで考え、彼女はあることが気になった。
「えっと、一応確認したいんだけどさ。彼、武器持ってないみたいだけど…万一の場合本当に戦えるのかい?」

ざんざんざんざんざんざん

「ぼ、ぼず…?」
「ん、なんだい?ちょっと待って」
四人の女性達がお互いに自分の関心事に気を取られ、♂BSもにわかハーレム状態に心を奪われていたため、それに気付いたのは♂スパノビただ一人だった。
しかも彼は愚直に♀BSの会話が終わるのを待ってしまった。
「ああ…。そういやまだもらった箱開けてなかったな」
「だめじゃん」
指摘された♂BSが箱を開けようとし、五人の目がその手元へ集中する。
こうして致命的な、あまりにも致命的な数秒が消費された。

ざんっ!

「ぼず、あぶねえっ!」
「ちょっと何…」
♀BSを♂スパノビが押し倒す。その分厚い背中越しに一同は見た。
高々と跳躍した人影と、手にした長い竿状の武器を。
誰が反応するよりも早く、人影は空中で得物を振り切った。
その先端に赤々と燃える火球が生まれ、ごぅ、と音を立てて飛来する。
まだ薄暗い中、♂BSの箱から出る物を見ようとして集まっていたことが災いした。
火球は彼らのど真ん中ではじけ、六人すべてを巻き込んだ。

「きゃっ」
「あっちいいぃっ」
炎の熱、それ自体の威力はさほどでもなかった。
全員いくらかの火傷を負ったに過ぎない。
しかし夜闇の次第に明け行くこの時間、目は必死に光に慣れようとしている。
爆炎を直視した視界は刹那の間白く焼き付いた。

たっ

着地音。
そして

「マグナムブレイク!!」

気合い一声。
地に突き立てられた槍の穂先を中心に、同心円を描いて衝撃波が走る。
噴き上がる土砂と共に6人は四方へはじき飛ばされた。


    なんて僕はついていないんだろう。
    木立の下で夜を明かし、話し声が聞こえた気がしたから♀セージさんかと思えばまたこれだ。
    化け物が6体。
    普通なら危ない数だけど、うまくまとめて吹き飛ばせた。
    あは、思ったより簡単だ。
    『数が多いときは範囲攻撃で散らし、弱った奴から確実に仕留めろ』でしたね。
    頑張りますマスター。みててください。


爆光を直視してしまった目をしばたかせつつも、♀BSは反撃のために立ち上がろうとする。
どんっ
「っぐう」
衝撃があり、うめき声が上がった。
♀BSではない。彼女に抱きつきしっかりと覆い被さった♂スパノビの声。
その巨体が邪魔になって♀BSはうまく立ち上がれない。
「ちょっと、放しな」
強く押しのけると巨体はぐらりと横倒しになった。
間髪を入れず、燃えさかる槍を手にした♂剣士が迫る。
突き込まれる穂先を、彼女は反射的に上げた右手で受けた。
がぎんっと鈍い音。
こんな場合にも武器を放していなかったのは修練の賜物だろう。
冷や汗をかきつつ♀BSは改めて斧を構え直す。
だが、一撃を防がれた♂剣士は槍を引いて目標を変えた。
♀BSは背を向けた襲撃者より先に♂スパノビの容態を気にする。
「大丈夫かい!?プリさん!こいつにヒールを!」


    倒れた2匹からと思ったけど、片方はひどく手応えが硬かった。
    これに手間取ると危ないよね。他のからやろう。
    1匹は下がった。1匹は向かってくる。もう2匹は立ってるけど動きが鈍い。
    あ、片方背を向けた。
    やっぱりあれからだよね。


襲撃者と目が合ってしまった♀アルケミストが身を翻す。
彼女は製薬ケミ、最前線に立つのは向いていない。
衝撃の余韻にふらつく足で必死に逃げる彼女を♂剣士が追いかける。
「助けて!」
思わず彼女は叫んでいた。
「速度減少! レックスディヴィーナ!!」
呼応するように2つの弱体化魔法が素早く唱えられる。
淫徒プリは全員に支援魔法を掛けている余裕はないと見て取っていた。
敵は剣士一体。倒すにしても逃げるにしても、最も的確で辛辣な判断のはずだった。
なのに期待したような効果がない。
「うそ、効かない!?」
だが、ほんの一瞬襲撃者の速度が落ちた隙に、かろうじて♂BSが♀ケミの前に割って入った。

彼は青箱から出たばかりの短剣を握り、♀ケミに向かって振り上げられた槍の下へ飛び込んだ。
振り下ろされる刃を受けることは考えず、まっすぐ一歩を踏み込む。
短剣で大槍を受け止めるのは無理なのだ。
ならば攻撃を届かせるためにも、ダメージ承知で間合いの内側に入らなくてはいけない。
がつん
長槍は♂BSの肩を強く打った。が、当たったのは柄である。刃ではない。
彼は痛みをこらえ、さらに踏み込んで槍を振るう間を殺しつつ短剣を突き出した。
槍に力が込もり、肩を押し返されてその反撃は空を切る。
だが、♂剣士に間合いを取り直す暇はなかった。
♂BSの空いた左手が槍を掴み、強引に体を引き寄せて短剣をねじ込む。
しかし同時に
「バッシュ!」
♂剣士も右手を放し、♂BSのこめかみへ強打を放っていた。

脳震盪を起こし、動きの止まってしまった♂BSを炎の刃が貫く。
一拍置いて、その肉体が松明のように燃え上がった。
駆け寄ろうとしていたダンサーは歯がみする。
MBを受けた瞬間、彼女は爆圧に逆らわず大きく飛んで距離を取っていたのだ。
結果、♂スパノビを守るにも、そして♂BSをフォローするにも間に合わなかった。
子供達と同様に♂スパノビも守る。そう誓ったのに、身に染みついたとっさの判断は自分の身を守る方向へ働いてしまった。
後悔と焦燥に灼かれ、彼女は間合い一杯で鞭を振った。


    あはは、うふふ。
    やられちゃった。痛いなあ。
    でも2匹倒したし、残ったのは弱そうなのばっかり。
    なんとかなるよね。
    あれ?
    槍が動かないや。
    …なんか化け物の触手が絡んでるよ。
    やんなっちゃうな。
    気持ち悪いし、仕方ないか。


ぎりぎりの間合いで振ったがために、ダンサーの鞭は♂剣士の体には届かなかった。
代わりに♂BSから引き抜かれた槍に絡まり、動きを封じる。
強く鞭を引き、彼女は叫んだ。
「♀BS、今よ!」
ダンサーにとっても♂スパノビの容態は気になるところだったが、目前の敵を倒さないことには手当もできない。
叱咤の声に♀BSがのろのろと反応した。
「早く!」
ダンサーはちらっとその様子に目をやる。
と、突然鞭から手応えが消失した。
綱引き状態だった鞭がいきなりゆるみ、後ろ向きに倒れ込みそうになる。
驚く彼女に向かって燃える刃先が飛来した。
「くっ」
♂剣士が槍を放したのだと気付くより早く、彼女は身をよじり、のけぞって必死にかわす。
そむけた顔のすぐ上を炎の槍が通り過ぎた。
かすかな安堵と共にそれを見送り、仰向けに倒れる。
その小さな隙に
とす
冷たく硬いものが突き立てられた。


<♀BS>
位置:F-6(まばらな木立のある草原地帯)
所持品:ツーハンドアックス
外見:むちむち 、カートはない
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷
備考:ボス、筋肉娘

<♂スパノビ>
位置:F-6
所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり
外見:巨漢、超強面だが頭が悪い
状態:瀕死

<ダンサー>
位置:F-6
所持品:ロープ、カード帖
外見:美女
状態:瀕死
備考:子持ち、母性本能大

<淫徒プリ>
位置:F-6
所持品:女装用変身セット一式 青箱
外見:女性プリーストの姿 美人
状態:軽度の火傷
備考:策略家 Int>Dexの支援型

<♀ケミ>
位置:F-6
所持品:S2グラディウス、青箱
外見:絶世の美女
状態:軽度の火傷
備考:策略家 製薬ステ

<♂BS>
位置:F-6
所持品:青箱、?短剣
外見:
状態:死亡
備考:戦闘型BS。ガサツ。むっつりスケベ。楽天家

<♂剣士>
位置:F-6
所持品:s4ナイフ、ヘルファイア、熱血鉢巻(木刀はセージの死体近くに放置)
外見:ノビデフォ髪 (csm:4g022?)
状態:
備考:JOB45 両手剣剣士 不器用 剣士学校では落ちこぼれだった。
   ヘルファイアによる人格破壊(人間がオバケに見える)

<残り35名>

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