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163.強き想い


彼女は森の中を走っていた。時々、木の根に足を取られるが、なんとかバランスを保ち、
木々の間を走り抜けていく。彼女にはどうしても急がねばならない理由があった。


「歩きながらでいい、よく聞け。」
彼女は一瞬歩みを止めたが、すぐに歩き出した。そして、男の次の言葉を待つ。

「俺たちの後をつけている奴がいる。・・・、後ろは向くな、気づいていない振りをしろ。」
後ろを見てしまいそうな彼女を、男が鋭い口調で釘を刺す。

「奴の狙いを知る必要がある。あからさまな敵意は無いようだが、一定の距離を保ち続けているのが気に掛かる。俺たちが隙を作るのを待っているのかもしれん。」
「隙?」
男の推測に彼女は問いかける。
「ああ、例えば俺たちが離れ離れになる時や、このゲームに乗っている連中に遭遇したりする
時だな。そういった隙に付け込もうとしている可能性も考えられる。」
男はそう言うと立ち止まった。彼女も釣られて立ち止まる。
「どうかしたのですか?」
彼女が尋ねると、男は彼女の方に向きを変え、少し間をおいてから言った。
「・・・・・奴を捕らえよう。・・・あのクルセイダーを追うためには、不安要素を取り除く必要がある。」
「でも、どうやって捕らえるのですか?それなりに距離を空けて追ってきているのでしょう?」
「ああ、その通りだ。だが、距離を空けているからこそ、奴は俺たちに気づかれているとは、
思っていないだろう。もし気づいていたら、もっと離れるはずだからな。」
「なるほど、たしかにそうかもしれません。となると、追ってきている人に、気が付かれずに
近づく必要がありますね。」
彼女がそういうと、男は満足そうにうなずいた。
「その通りだ。距離を空けているがゆえに安心しているはずだ。そこを狙う。」
「どうやって近づきますか?」
彼女がそう尋ねると、男は前へと向きを変え、おもむろに歩き出す。彼女も弾かれたように後を追う。

「今みたいな立ち止まる会話を4,5回繰り返そう。そして、奴が焦れて注意力が散漫になったら、
俺が姿を隠して近づく。お前はその間、奴の注意を引き付けろ。」
歩きながら男が彼女に指示を出した。だが、彼女は疑問を返す。
「どうやって注意を引きますか?いくら注意力がなくなっても、あなたがいなくなれば、
どうやっても警戒されます。それでは私が何をしたところで、意味はありません。」
「たしかにな。俺が突然姿を消せば、どんな馬鹿でも警戒するだろう。
だが、初めから姿が見えない位置で会話をすれば、多少は誤魔化せる。」
男の提案に、しかし彼女は否定的だ。
「そうでしょうか?いくらなんでも、あなたが見えない位置にいれば、間違いなく警戒される
と思いますが・・・。」
男は「そうだな。」と短く答え、一呼吸してから、さらに続ける。
「初めてでその位置に行けば警戒されるだろう。だが、4回目5回目だったら、どうだろうか。
相手に『またか』と思わせられれば、疑われなくなる可能性は高くなる。」
男はそう言うと、ちらりと彼女を見た。彼女は男から言われたことを反芻し、「そうかもしれ
ませんね。」と答えた。

そうして、彼女たちは1時間近くゆっくり移動し、その間に布石とも言える立ち話を4回行った。
そして、ちょうど男が隠れられるほどの大きな木が現れた。男はゆっくりと木の陰に入る。
数秒気配を探ったが、追跡者は特に警戒していない。うまく騙せそうだ。男は彼女を自分が入った木の陰の隣に立たせると、何かをしゃべっている振りをさせた。そして、男は姿を隠し、
静かに追跡者に近づいていった。

一分少々経った。追跡者の風貌があきらかになってきた。黒髪で血色の悪そうな肌の色をしている。
魔術師のローブをまとい、左目に片眼鏡をつけている。

(追って来ていたのはウィザードだったか・・・。)
追跡の距離の保ち方は利口だったが、気配をまったく断っていない。知識はあるようだが、
経験は皆無とみていいだろう。男は慎重に近づいていった

あと歩数にして30歩というところで、異変が起きた。ウィザードが落としていた腰を突如上げ、
猛然と走り出したのだ。距離はどんどん離れていき、ウィザードは森から出て行ってしまった。
一度姿を現し、森の切れ目まで一気に近づく。彼女も横目で見ていたのか、異変に気づいて、
森の淵に向かって移動している。
男はウィザードの様子を窺った。ウィザードは森から距離をとると、森の方に向き直り、
コンバットナイフを右手に構えた。それを見た男は考えを改める。

(気付かれたか、それとも、こちらの思惑に勘付いたか?しかし、やはり何か企んでいたようだな。
ウィザードが相手なら、下手に捕らえるより、速やかに排除した方が安全だな。)
男は再び姿を消して、ウィザードの背後に回るべく、森から出て行った。

彼女は森の淵まで移動した。追跡者が立っているのが見える。だが、まだ距離があったため、
淵沿いに近づいていった。追跡者の容貌がある程度分る距離に近づいたとき、追跡者の後ろに
とび蹴りを放っている男が見えた。その直後、追跡者の周りにオレンジ色の輪が出来て、
それがいきなり爆発した。すさまじい音とともに、オレンジ色の火炎があたりを埋め尽くす。
火炎が消えるか消えないか位のところで、新たに人の背丈ほどもある火柱が立ち上がった。
その火柱は男の右足を飲み込むように吹き上がり、瞬く間に消えていった。男の顔が苦痛に歪み、背中から後ろに倒れこむ。そこに追跡者はなにかを叫び、それとほぼ同時に男に飛び掛った。
緑色の何かに包まれた男は、何も出来ずに追跡者に『何か』をされた。追跡者は『何か』をした後、
即座に男から離れ、辺りを見渡す。
そして、男の首から赤い液体が吹き出た。男の周りを赤く染める。男が顔を上げながら、震える腕を彼女に伸ばす。彼女は呆然とそれらを見ていた。何も考えられず、何も信じられず、
何をするべきなのかも分らない。男の腕が震えながらゆっくりと降りていく。それを見て
彼女は思い出した。自分は何をするべきなのかを・・・。

追跡者の顔をしっかりと覚えて、速やかにこの場から逃げ出した。追跡者も彼女を見ていたが、
まだ追ってきている気配はない。この間にすこしでも距離をはなさなければ・・・。

(あの男、許さない。決して・・・。)
彼女の心に広がるすさまじい憎悪。だが、感情に捕らわれているだけではない。
(でも、今の私ではあの男には勝てない。今は退くしかない。だけど、必ず倒す。
力を手に入れ、武器を用意し、時が熟したら、私が私の手であの男を倒す。)

男が以前彼女に言った言葉を思い出す。俺がお前を必ず生かして帰すと、そしてアサシンに
してやると・・。そういってくれた男はもういないが、その言葉は彼女の中で生きている。

(見ていてください、あなたが生き残る価値があると言った私を・・・。あの男を倒し、
生き残って、アサシンとなり、あなたの後を継ぐことで、それを証明して見せます。
だから待っていてください、私がそれを証明するその時まで・・。)

彼女は走り続ける。木々を巧みにかわし、木の根に足を取られつつも、バランスを崩すことなく、
進んでいく。今は逃げることしか出来ない。だが、いつか戦うことができるようになるかもしれない。

彼女は強き想いと、憎悪を胸に、森の中を走っていった。


〈♀ノービス〉
現在地 E-7の森の中
所持品 未開封青箱1つ
スキル しんだふり
外 見 ノビデフォ金髪
備 考 E-7の森の中からどこかへ行くかも。新たな想いを秘める?



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