バトルROワイアル@Wiki

2-168

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匿名ユーザー

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168.託す者


雨音がパタパタと耳朶を打つ。

雨を避ける為にダンボール箱を被りながら移動する悪ケミをちらりと見やり、忍者は苦笑する。
まるでダンボール箱から足が生えているようだ、と。

「雨宿り出来る場所を探した方がいいんじゃないかい?それじゃあとっさの時に動くのも難しいよ?」

その言葉にダンボール箱ならぬ悪ケミは足を止め箱の中で何やらごそごそとすると、にゅっと1枚の紙片を突き出す。

『時間が無いの。出来るだけ早くモンクを探さなきゃでしょ。夜になる前に何とかしないと何時遅われるか判らないし』
『♀モンクは1日目で居なくなっちゃったから♂モンクを見つけないと。首輪が外せる事が判れば、みんな殺し合う必要が内って判ってくれるはず』

なるほど。誤字は多いが言っている事は至極まっとうだ。
しかし…と忍者は内心続ける。

(指弾の使い手は明らかに殺意があった…どう説得するつもりなんだろうか…)
(もし別のモンクがこのゲームに参加していたとしても、その者がマーダラーじゃないという可能性は五分五分…)
(ならば最悪の場合、力で押さえ込み従わせる必要もある、か…)

「どーしたの?早く行くわよ」

ハッと気がつくと、悪ケミちゃんさまとの距離が開いていた。
仮想対モンクの戦闘をイメージしている内に足を止めていたらしい。

「したぼくのクセに私に先を歩かせないでよねっ」
「ごめんごめん」

小走りに駆け寄ろうとしたその時だった。

シュカッ!

空気を裂く矢羽根音。
反応した…というより早く体が動く。

振り向きざまに背後の空間を薙ぐ。
手刀の一撃が飛び迫る矢を叩き落とす。

研ぎ澄まされた感覚が時間を伸長させ、雨粒の落下が静止した世界で忍者は驚嘆に目を見開く。

目前にある驚異。
目前に現れた死神。
それは飛びかかる毒蛇の様に飛来する。

2本目の矢。

1本目の矢を追い掛ける様に放たれたそれが、自らの体へと吸い込まれていく。

ダブルストレィフィング。
狩人達の考案した殺傷能力の極めて高い死殺技。
1発目を回避・防御した所で2発目が着弾するというフェイントの要素を織り込んだ必殺の一撃。

鈍い音を立てて左胸に突き刺さった矢が、それでも心臓から外れたのは幸運の為せる技か。忍者の体術のレベルが桁違いなのか。
しかし即死では無くも重傷である。
動けなくなるのも時間の問題であろう。

「ちょ…どうしたのよ!」

異変に気付いた悪ケミが慌てて駆け寄ろうとする。

「来るな!」

強い口調で叫ぶ。
びくっと立ちすくむ悪ケミを背に、グラディウスを抜き放ち逆手に構え薄暗い木立を見据える。

居た…。

予想より遠い位置に佇む影。
血よりもなお赤き衣を纏った冥府への案内人。

「ローグか…。いきなり仕掛けて来た所を見ると、どうやらゲームに乗った人間の様だね」

悪ケミに聞こえるようにつぶやく。

うかつだった。
まったく気配を感づけなかったのは雨の所為だけではない。
そう…悪ケミとのやりとりを楽しんでしまっていた自分の油断に他ならなかった。

小さく苦笑する。
何時の間にこんなにも心を許してしまったのだろうか。
暗殺者の道すら捨てた何も無い自分が。
力を求める事に疲れ果て、ただ一人モロクで座していた自分が。

ちらりと悪ケミを横目で見る。

この子はこのゲームに必死になって抵抗しようとしている。
それを成すだけの知恵もある。
ならば私の役目は一つだ。

「行くんだ。ここは私が引き受けるよ」
「な…っ!」
「君はまだ、しなければいけない事があるだろう?」

赤い死神が距離を詰めてくる。
ヒステリックな哄笑が近付いてくる。

「時間がない。それは君のセリフじゃないか。早く行くんだ」
「でも…っ!」

「ひゃはぁっ!2人とも逃がしゃしねぇよ!!」

♂ローグの狂喜に満ちた叫びが届く。
まだ顔も判別出来ない距離だと言うのに、その声はひどくひどく耳障りに聞こえた。

「行けっ!」
「待って!したぼくのクセに格好つけないでよっ!!」

叫ぶと共に♂ローグに向かって走り出す。
距離が残っている間に接近しなければ…少しでもこの子から遠ざけねばならない。
悪ケミの悲鳴とも泣声ともつかない声を後に残して、黒い疾風が出陣した。


ふと彼女の問いを思い出し、一人言葉を紡ぐ。

「君を生かす事で希望を託し繋げよう。なぜなら私は…」

───忍者なのだから


<悪ケミ>
現在位置:I-6(西に向かって移動中)
所持品:グラディウス、バフォ帽、サングラス、黄ハーブティ、支給品一式
外見特徴:ケミデフォ、目の色は赤
思考:脱出する。
備考:首輪に関する推測によりモンクを探す サバイバル、爆弾に特化した頭脳
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<忍者>
現在位置:I-6(西に向かって移動中)
所持品:グラディウス、黄ハーブティ
外見特徴:不明
思考:悪ケミについていく。殺し合いは避けたい
状態:重傷。戦闘開始。

<♂ローグ>
現在位置:I-6
所持品:包丁、クロスボウ、望遠鏡、寄生虫の卵入り保存食×2、馬牌×2、青箱×1
外見:片目に大きな古傷
性格:殺人快楽至上主義
備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す
状態:全身に軽い切り傷。戦闘開始。

<残り29名>



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