172.ヒューマンエラー [2日目午後・雨~夕方]
「先程、♀アコライトの件で少々おかしな点が報告されているのですが。」
部下のGMの報告に、顔をしかめるGM森。
彼は自室で日課の筋トレに励んでいる所だった。
彼は自室で日課の筋トレに励んでいる所だった。
「今、俺は勤務時間外だぞ。後にできんのか。」
「ですがもしかしたら…異常事態かもしれません。至急GMジョーカーに報告して頂きたいのですが…」
「ですがもしかしたら…異常事態かもしれません。至急GMジョーカーに報告して頂きたいのですが…」
はぁとため息をつくと両手にもったダンベルを下ろし、アゴで示して報告を促す。
「何か問題でもあったのか?」
「問題…かどうかは判りませんが。
まず現状報告ですが、♀アコライトの首輪の反応は通常通り。
彼女の発言もライフパターンも問題無く記録できています。
また彼女が所持していた地図はD-8地点から移動していない所を見ると、おそらく地図を携帯していない様です。
それに関してはD-8地点で♂クルセイダーとの交戦記録も残っており、支給品一式を置いてその場から逃走した…と推測されます」
「問題…かどうかは判りませんが。
まず現状報告ですが、♀アコライトの首輪の反応は通常通り。
彼女の発言もライフパターンも問題無く記録できています。
また彼女が所持していた地図はD-8地点から移動していない所を見ると、おそらく地図を携帯していない様です。
それに関してはD-8地点で♂クルセイダーとの交戦記録も残っており、支給品一式を置いてその場から逃走した…と推測されます」
そこで一旦区切って、部下が眉をひそめて小声で続ける。
「そしてここからが問題なのですが…。
♀マジシャンとの会話ログからですが、不可解な発言がいくつか出ています。
禁止区域から♀アコライトが移動してきた、という会話がなされているのです。」
♀マジシャンとの会話ログからですが、不可解な発言がいくつか出ています。
禁止区域から♀アコライトが移動してきた、という会話がなされているのです。」
なんだ、と心底つまらなそうな表情になり部下に返答するGM森。
「そいつらが勘違いしているだけなんじゃないか?現に首輪の方は問題無さそうじゃないか。」
「ですが万が一という事もあります。至急調査した方が良いと思うのですが…」
「ですが万が一という事もあります。至急調査した方が良いと思うのですが…」
食い下がってくる部下に、面倒そうにひらひらと手を振って追い返す。
あまり些事に拘らないGM森の脳中では、単なる勘違いと結論着けてこの件は片付けたのだろう。
さっさと会話を終わらせようとしているのが見え見えな返事を返す。
あまり些事に拘らないGM森の脳中では、単なる勘違いと結論着けてこの件は片付けたのだろう。
さっさと会話を終わらせようとしているのが見え見えな返事を返す。
「判った判った。上には報告しておくから下がっていいぞ。」
「お願いしますよ…本当に。
それではBR管理運営規則に従って、要監視対象者に該当する♀アコライトの監視をBAN権限のあるGMに移行します。
発見者の直属の上司が担当として事態に対応する…という事で、GM森に引継ぎとなります。後は宜しくお願いします」
「お願いしますよ…本当に。
それではBR管理運営規則に従って、要監視対象者に該当する♀アコライトの監視をBAN権限のあるGMに移行します。
発見者の直属の上司が担当として事態に対応する…という事で、GM森に引継ぎとなります。後は宜しくお願いします」
報告書をGM森に手渡すが、彼はそれに一別しただけで机の上に放り出した。
部下にしてみれば、その行動も想定の範囲内。
後の責任はこのプロテイン漬けの上司にお任せして、自分は自分の仕事に戻るだけである。
彼はため息を一つついて「報告はしましたからね」と念を押して退出する。
部下にしてみれば、その行動も想定の範囲内。
後の責任はこのプロテイン漬けの上司にお任せして、自分は自分の仕事に戻るだけである。
彼はため息を一つついて「報告はしましたからね」と念を押して退出する。
そして、部下が部屋から出ていく頃には、GM森の脳裏からは先程の報告はすっぱりと忘れられていたのである。
◇◇◇
「ほ~ぉ、ふんどしヘソ出し年中無休な露出過剰マジ子のクセに人の格好に文句言っちゃう訳?」
♀アコライトが剣呑な響きを含んだ声で聞き返す。
「同性相手とは言え、人前で下着姿になっちゃうようなエセ清純派気取りの人がボクの格好にケチ付けないでよねっ!」
がおーと吠えそうな勢いで♀マジシャンが言い返す。
…事の顛末はこうである。
夕刻に突然降り出した雨に、頭から爪先までびしょびしょになった2人。
♀アコライトは元々海に投げ込まれた所為もあって、一歩歩くたびにぴちゃぺちゃ水滴を垂らす程ずぶ濡れになってしまった。
夕刻に突然降り出した雨に、頭から爪先までびしょびしょになった2人。
♀アコライトは元々海に投げ込まれた所為もあって、一歩歩くたびにぴちゃぺちゃ水滴を垂らす程ずぶ濡れになってしまった。
一旦、雨宿りできる場所を探そうと言う事で、どうにか雨を避けられるだけの大木を見つけだし、その根元に腰を下ろす。
途中で山小屋らしき物もあったのだが、残念ながら火災でもあったのだろう。黒こげに崩れ落ちた納屋では雨を凌げず、ロクに観察する暇もなく森へと逆戻りさせられたのだ。
と、♀アコライトは大聖堂支給のローブを脱ぎだして、あれよあれよという間に動き安さ重視と思われる飾り気のないスポーツ用下着だけの格好になったのだ。
本人にしてみればさっさと水気を絞り出したいと思っての行動であったが。
途中で山小屋らしき物もあったのだが、残念ながら火災でもあったのだろう。黒こげに崩れ落ちた納屋では雨を凌げず、ロクに観察する暇もなく森へと逆戻りさせられたのだ。
と、♀アコライトは大聖堂支給のローブを脱ぎだして、あれよあれよという間に動き安さ重視と思われる飾り気のないスポーツ用下着だけの格好になったのだ。
本人にしてみればさっさと水気を絞り出したいと思っての行動であったが。
面食らった♀マジシャンが「もうちょっと恥じらいを云々」と説教すると、♀アコライトがじー…と♀マジシャンの上から下までを観察し、ふんどし発言に至ったのである。
「まぁあなたみたいなささやか~~~ぁな胸じゃあ人前に晒せないのも判るけどね」
嘲笑を含めた視線は♀マジシャンの胸元に向けられている。
ばばっと胸を両腕で隠すその行動を見て、ふっ…と勝ち誇った嘆息を漏らす。
ばばっと胸を両腕で隠すその行動を見て、ふっ…と勝ち誇った嘆息を漏らす。
「君みたいに無駄なお肉だらけの人が良く人前で肌を晒せるじゃないか」
♀マジシャンの視線はお腹の辺りに向けられている。
かちーんと頭に血を上らせる♀アコライトを見る視線が、「図星か」と雄弁に語っていた。
かちーんと頭に血を上らせる♀アコライトを見る視線が、「図星か」と雄弁に語っていた。
『ふふふふふふ』
期せずに揃った不気味な笑いに、子デザートウルフがビクッと身をすくめたように見えた。
「自分の事ボクボク言ってるけど。実は男の子だったとしたらその可哀想な胸も納得よねー」
「可哀想とかゆーな!そっちこそ地図も読めないINT1の殴りアコのクセに、その体型じゃ素早く動くのも無理そうじゃないか」
「可哀想とかゆーな!そっちこそ地図も読めないINT1の殴りアコのクセに、その体型じゃ素早く動くのも無理そうじゃないか」
『ふふ…ふふふふふふふふふ』
子デザートウルフがビクビクッと身をすくめて、荷物の影に隠れたのは正解かもしれない。
「これは豊満な肉体って言うんだよ。っても一生ロリ担当なあなたには縁の無い話でしょうけど」
「それって太ってる人が自称『ちょっとぽっちゃり系』って言うのと一緒で、聞いてて痛々しいよね」
「育ち盛りはこれくらい平均だってゆーの!自分のナイナイづくしな体を標準だと勘違いしないでよね」
「こっちだってこれから成長するんだい!ボクがないすばでぃになる頃には、君は色んな所がたるんでるんじゃないのー?」
「それって太ってる人が自称『ちょっとぽっちゃり系』って言うのと一緒で、聞いてて痛々しいよね」
「育ち盛りはこれくらい平均だってゆーの!自分のナイナイづくしな体を標準だと勘違いしないでよね」
「こっちだってこれから成長するんだい!ボクがないすばでぃになる頃には、君は色んな所がたるんでるんじゃないのー?」
一拍空けて。
「貧乳」
「デブ」
「デブ」
『ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ』
嫌な含み笑いをしながらお互いすっくと立ち上がる。
左、左、右と風切り音をあげる見事なコンビネーションブロウを虚空に放ち、構えを取る♀アコライト。
一方、両手を腰の高さで構える♀マジシャン。その両手の平からパチパチと電光がほとばしる。
左、左、右と風切り音をあげる見事なコンビネーションブロウを虚空に放ち、構えを取る♀アコライト。
一方、両手を腰の高さで構える♀マジシャン。その両手の平からパチパチと電光がほとばしる。
♀アコライトの殺気が彼女の背後にデリーターを浮かび上がらせ、しぎゃー!と唸りをあげて牙を剥く。
相対する♀マジシャンの背にはエドガが浮かび上がり、がおー!と吠えながら威嚇する。
龍虎相まみえる。両者の間の張りつめた空気に耐えきれず、子犬が脱兎のごとく逃げ出した。
相対する♀マジシャンの背にはエドガが浮かび上がり、がおー!と吠えながら威嚇する。
龍虎相まみえる。両者の間の張りつめた空気に耐えきれず、子犬が脱兎のごとく逃げ出した。
「神と子と大聖堂の名の下に…粛正してやるぅ!」
「ふははは、返り討ちにしてくれるわー!」
「ふははは、返り討ちにしてくれるわー!」
お互いのアイデンティティーを賭けた戦いの幕が切って落とされるのであった。
…戦闘の内容はここでは明記するのを避けるとしよう。
雨が上がるまで聞くに堪えない罵詈雑言と拳と電光が飛び交った結果、双方疲れ果てて引き分けだったという。
雨が上がるまで聞くに堪えない罵詈雑言と拳と電光が飛び交った結果、双方疲れ果てて引き分けだったという。
自らの首輪の変調がこのゲームの根幹を揺るがしかねない事に、♀アコライトを含む2人と1匹はまだ気付いていないのだった。
<GM森>
容姿:筋肉質の逆毛
口調:熱血っぽい口調
性格:短気、金に汚い性格
備考:GM橘に騙されて、知らずに計画の片棒を担がされている
容姿:筋肉質の逆毛
口調:熱血っぽい口調
性格:短気、金に汚い性格
備考:GM橘に騙されて、知らずに計画の片棒を担がされている
<♀アコライト&子犬>
現在位置:C-7
容姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:荷物袋・地図等含めすべて崖の上(D-8)
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 自分の首輪が危険区域で爆発しないことを知る(首輪が壊れていると思っている) ♀マジとともにD-8へ。
状態:疲労気味
現在位置:C-7
容姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:荷物袋・地図等含めすべて崖の上(D-8)
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 自分の首輪が危険区域で爆発しないことを知る(首輪が壊れていると思っている) ♀マジとともにD-8へ。
状態:疲労気味
<♀マジ>
現在位置:C-7
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。♀アコとともにD-8へ。
♂マジを治療できる人を探すことはすっかり忘れている。褐色の髪(ボブっぽいショート)
備考:疲労気味
現在位置:C-7
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。♀アコとともにD-8へ。
♂マジを治療できる人を探すことはすっかり忘れている。褐色の髪(ボブっぽいショート)
備考:疲労気味
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