バトルROワイアル@Wiki

226B

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226-B.EVIL

「どうしてだ・・・・どうしてこんな結末しかないんだよおおお!!!」

♂アーチャーは全てが終わった地で仲間達の遺骸に次々と駆寄る。

「おい・・・おい!!♀クルセの姉さん!♂ローグのあんちゃんしっかりしろ!」

必死で二人を揺する。しかし二人とも息は無かった。
二人はもう既にどうしようもないくらい事切れていた。

「な、なんでだよ・・・一緒に帰ろうって約束したじゃないか・・・なんで二人だけで
幸せそうに逝っちゃうんだ・・・俺一人でどうしろっていうんだ・・・。」

しかしそう言いながら♂アーチャーはうつぶせの♂ローグの遺体の手を
差し出されているような体勢の♀クルセの手に重ねた。
既に日が落ちかけている。

「ちくしょ・・・幸せになれよあほ・・・・。」

さらに♀セージに♂アーチャーは消沈した様子で歩み寄る。

「姉さんの囮が無かったら確かに勝てなかったよ・・・でも自分の命と引き換えに
しちゃったら意味ないじゃん・・・アンタほどの頭のキレル奴ならもっと他の方法も
思いついていたはずだろ・・・・俺を生かすために無茶しやがって・・・。」

しかしその自己犠牲の果てに辿り着いたのはかつての♀WIZのような穏やかな笑顔。
もし冷たい賢さと暖かい賢さを分ける境界線があるとしたら、それは今わの際に
人のために自分の命を捨てる策を取れる賢さを言うのではないだろうか。
そして♀セージは自分のために人の命を捨てる策ではなく♂アーチャーのために
自分の命を捨てる策を取ったのだ。

「ちくしょ・・・・」

涙を袖でゴシゴシ拭いた。
続いて♂アーチャーは深遠の騎士子に歩みよった。

「あんたは最後まで騎士だったよ・・・姉さん。なぜなら・・・」

秋菜の拳により貫かれていた深遠の騎士子の手に傍らに血まみれで
落ちていたツヴァイハンダーを握らせた。

「あんたの騎士道折れなかったぜ。」

ツヴァイハンダー。かつてのゲフェニア魔王の持ち物。絶対に折れない大剣。
そして復讐半ばで♂BSに彼は殺されてしまったが意志はこの剣に託された。
そして、この大剣は己の主の復讐を果たしたのだった・・・。

「二人分の意志だもんな・・・そりゃあ強いよな・・・。」

アーチャーの手に持つにはあまりに重たかったそれには苦笑いするしかなかった。
二人分の意志は重さをも持ちうるモノなのかもしれない。

「さて、どうするか・・・・。」

途方に暮れる♂アーチャー。その時、ガラガラという音がした。

「♀セージさん・・・・? う!?お前は!」

そこに居たのはうずくまりながらもなんとか生きている状態のGM秋菜であった。
既に満身創痍で腹にはでっかい穴が空いておりそこからは内臓さえ飛び出していた。

「フ・・・大した・・・モノね。人間の意志というのは・・・。」

死を覚悟したのだろうか本来のしゃべり方に戻っていた。

「ば、馬鹿な、まだ死んでいなかったというのか!?」

思わず騎士子のツヴァイハンダーを手に取る♂アーチャー。
しかしあまりの重さゆえに地面に刃先を引きずるという不恰好な体勢であった。

「ハ・・・ハハ、そんな剣を・・・お子様が扱えるはずない・・・でしょ。」

嘲笑を浮かべる秋菜。
大地は痛々しいぐらい血の華を咲かせている。

「う、うるさい!絶対にお前だけは殺す!」

しかし、それを聞いた秋菜は奇妙な嬉しいのか悲しいのかもしくは
両方入り混じった表現しがたい表情を顔に浮かべた。

「まあ、待ち・・・な・・さい。私はどうせもうすぐ・・・死ぬ。
わざわざ・・・そんな無・・・・駄な手間をかけることもないでしょ。
さらに言・・・えば、あんたを殺・・・す気もないわよ。
あんた一人殺した所で私の運命が変・・・わるわけでもないしね。
今更めん・・ゲホゲホ・・・どくさいわよ・・・。」

血の咳を吐き出す秋菜。
確かにあれだけの攻撃を受けて死なない方がおかしいのだ。
最後の数滴の力を振り絞っているだけかもしれない。
だが、とにかく油断なく身構える♂アーチャー。
そしてそれを見て益々おかしいのか先ほどの表情を強くした秋菜。

「まあ、酔狂に私の・・・過去でも・・・語ってあげましょう。」

そう言うと苦笑をトッピングに、優しさを隠し味に秘めた諦観の表情を浮かべて
秋菜は全てを語った。GM♂の事、自分が第一回バトルROワイアルの優勝者であった事、
そして今までやってきた事を。

「フフ・・これでも昔は貴方達と同・・・じ一介の人間で冒険・・ゲホゲホ・・者だったのよ?
信じられる?(笑)」

♂アーチャーは同情の念を顔に一瞬浮かべた。しかしすぐさま激昂して叫んだ。

「ふざけんな!!!なんで被害者だったあんたがこんなゲームを企画すんだよ!
俺たちの辛さ、悲しみ、苦しみ、憎悪、絶望、その全てをあんたは味わったこと
あるんだろ!そうやってGMになったんだったらなんで二度とこんなゲームが
行われないよう努力しねーんだよ!なんで率先してこんなゲームをしたんだよ!」

秋菜は哀れみの表情を浮かべた。それは自分に対しても♂アーチャーに対しても
通用する表情であったのだろうか・・・・・。

「そうね・・・私は貴方ほど・・ゲホ・・・強くなれなか・・ゲホ・・・ったか・・・らかもし
れないわね・・・ゲホゲホゲホ・・・。」

苦笑する秋菜。しかしやがてフッと思いついたように自己分析を始めた。

「・・・・・・・・・・・・いえ、違うわ。確かに・・・強くなった。負の感情だけね。
信じられる?私を・・・愛していた彼(♂GM)が私・・をあん・なゲーム・・に放り込むなんて?
そして、・・あの頃のか弱・・・い私を手篭めにしよ・・うとしたご・・立派な騎士様や
背後から私を・・・刺そうと・・したあこぎな商人様。
そうして・・・・ありとあらゆる負の感情を受・・・け、心の自己制御シ・・・ステムが働いたのかもね。
つまり、私は自らの正常を保つために・・・・ゲホゲホゲホゲホ・・・。」

数拍の溜めを置いて秋菜は言った。

「狂ったのよ。」

普段なら二律背反するその言葉に疑問を持つ♂アーチャーであっただろうが
このゲームに参加した後だとその言葉の真の意味も分かるような気がした。
彼女は自分みたいに良い仲間に巡り合えなかったのであろう。
全てがか弱い彼女を傷つけようとし嬲ろうとし殺そうとしたのであろう。
さらに愛していた♂GMにも裏切られたのだ。
そしてその中で優勝したのだ。自分みたいに正の感情を味わったことなど
一度たりともないであろう。
全てに裏切られた彼女は生き残るために性質がエビルになったのだ。

「私は生き残るため・・・に体を売ったわ。せっ・・・かく最初は彼(♂GM)に捧げようと
思ったのにね(笑)・・・そして私は・・・強い者に従い、最後・・・にそのご立派な騎士様の
のどを・・ダガーで掻っ切っ・・・て優勝したのよ。」

うつむきながら話していた彼女はそこで言葉を区切ると顔をゆっくり上げた。
落日が赤くその凛とした表情を照らし出した。
彼女は泣いていた。しかし凛とした表情を歪めずただ、涙が頬を伝うだけであった。
♂アーチャーは美しいと心の底から思った。

きっと性質が大変動する前はアラームたんや♀プリみたいな
純真な性質であったのだろう。
だが悲しいかな純真すぎたのだ。
それゆえ深く深く闇に染まってしまった。
強すぎる白は簡単に闇に染まってしまうのだ。
反動形成はどちらか極端な性質に現れやすい。
女神はその時、悪魔になったのだ。

「そして私・・・はその後、このゲー・・・ムを続けたわ。だって私・・・一人じゃ不公平じゃない?
もっと多くの人にも・・・私の絶望を味合わせたか・・・ったのよ。ああ、彼(♂GM)は私が
帰ってきた後、何も言わ・・・なかったわ。それとも言えなか・・・ったのかしら?フフ
私は彼を・・コキ使ったわ。ライバルを・・・蹴落とすため。このゲームをうま・・・く開催するため。
夜の相手にも・・・使ったわね。アハハ。でもあいつ・・ときたらベッドの上で
[秋菜、もうこんなことはやめるんだ。お願いだ。やめてくれ・・・]って言うばっかり
なの・・・よ。あんたが私をこんなにし・・・たのに・・・ねぇ(笑)」

既にもう夕日が落ちようとしていた。

世界の中心を駆け抜ける風が
消える間際の最も赤い光に照らされた
秋菜の髪をたなびかせる。

「そうね・・・でもね。でもね。・・ゲホゲホゲホ・・あいつが・・・貴方たちに殺され・・・
たと聞いた時は・・・ほんーーーーっとに悲しかったわ。う・・ゴフ・・・ゲホゲホゲホゲホ・・・。」

そう言うと秋菜は盛大に血咳をばら撒いた後、淀み無くその言葉を・・・紡ぎ出した・・・。

「居無くなってから気が付いた。ああ、あの人こそ
本当に私は好きだったとね、フフ もう遅いけどね。」

秋菜のその涙が愛する者に注がれば良かったのに・・と♂アーチャーはその時、思った・・・・。


<GM秋菜:瀕死  生き残り1名:♂アーチャー>


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