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227B

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匿名ユーザー

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227-B.自由への招待

地平線に溶け始めた太陽、ヴァルキリーレルムを照らす黄金色の光が薄れていく。

再び夜が来る。
何度目の夜なのかはもう忘れてしまった。
ただ、分かっているのは明日の太陽は見られそうにないってことだ。

目の前にいるのは憎き仇であるGM"秋菜"───

『オレはこいつらと生きて帰る・・・』

あのときの誓い、果たされなかった誓い。

弱々しく咳き込む秋菜、体は自らが吐き出した血で黒く染まり、顔色はただただ蒼白。
目の焦点はどこにもあっておらず、口からこぼれる声はもはや小さ過ぎて何を言ってるのかも分からない。

───彼女ですらゲームの犠牲者だったのだ

「オレは、どうしたらいい。
 教えてくれ、♀セージ、教えてくれ───♀アルケミスト」

立っていられない、座り込む気力も無い。
♂アーチャーはがくりと地面に両膝を着き、うなだれた。


『   です    が    ら          さい』


かすかな声が♂アーチャーの耳に届く。
秋菜でも♀セージでもない、聞き覚えの無い声。


『お願い     声    たら      を   さい』


声は何かを必死に伝えようとする。
それでも、返事をするものは誰もいない。

どさり

おそらく秋菜の体が地面に崩れ落ちたのであろう。
♂アーチャーは僅かに視線を上げ、彼女の方を見やると、呆けたような顔で再び下を向く。

もう、どうでもいい。

ぐるぐると頭の中をその言葉が繰り返される。
心は本当に空っぽで、それでも立ち上がらなければならないとすれば、それはなんて残酷なんだろう。
♂アーチャーはそんなことを思った。

誰かも分からぬ声による訴えは尚も続いていた。
誰が、なんのために、浮かぶ疑問に♂アーチャーは少しだけ微笑う。
こんな状態ですら、そんなどうでもいいことを気にしてしまう自分がおかしかった。

仲間が死に、仇も死に、全てが終わったこんな状態ですらくだらない声を気にする自分がたまらなく滑稽に思えた。

───うる、さい

耳障りな声に♂アーチャーは自分の耳を両手で塞いだ。
それでも聞こえてくる声に♂アーチャーは苛立つ。

───うるさい

♂アーチャーは両耳の鼓膜を両手の人差し指でそれぞれ突き破った。
だらりと耳からこぼれ落ちた黒い血が床に点描を作り、
脳を直接傷つけられたかのような痛みが♂アーチャーを襲う。

けれど、痛みよりもなによりも、あの声が聞こえなくなったことが彼には嬉しかった。
そして、その狂喜(よろこび)という感情が彼の中の何かを弾けさせた。

♂アーチャーの目が床に転がる何かを探してさまよう。
まるで悪魔に憑かれてしまったかのようなおぞましい眼球の動き。

全身が一度ビクンと揺れ、そして、口元がニィィと笑う。
どうやら見つけたらしい。興奮を抑えきれないのか、肩で息をする。

───そうだ、間違いない、これでオレは救われる

♂アーチャーの両手が巨大な何かを掴み、その何かをずるりと持ち上げる。

心に迷いは無い。
もはや痛みも恐怖も無い。

彼は自分の両手をゆっくりと首元に引き戻す。

黄昏の太陽光によって浮かび上がる♂アーチャーのシルエット。
それは死んだはずのゲフェニアの魔王、ドッペルゲンガーと瓜二つ。

そう、♂アーチャーの両手に握られていたのは魔王の剣、ツヴァイハンダー。

そして、彼は自らの首にツヴァイハンダーをあてると、勢い良く両手を横にずらした。

<GM秋菜 死亡 現在位置/ヴァルキリーレルム 所持品/バルムン>
<♂アーチャー 死亡?  現在位置/ヴァルキリーレルム 所持品/ツヴァイハンダー、白ハーブ1個 備考:首輪無し>
<残り1名>


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