■落葉に夢をのせて 赤崎一雄

私たちは、絵は絵の具で描くことが常識になっており、こどもの頃から絵の具を当たり前のように使っています。しかし、私は昭和57年以来、葉彩画と葉画という落葉の絵を発表しつづけてきました。当然人々は「なぜ絵に落葉なのか」と訝かりましたが、それなりの理由とルーツがあったのです。

美術は、まず絵の具に個性をゆだねます。そのため、水彩、油彩、水墨、岩絵の具などに袂を分けるようになりました。私も以前、水彩絵の具を使いよく写生にでかけておりました。時折、”この青色は人が造った色。俺の青色ではない。自分流の絵の具はないものか”と思案した時もありましたが、画家を目指すわけでもなかったので、いつの間にか、日々の生活の中にかき消されていきました。

昭和55年晩秋。私は熊本のある山里で模様入りの落葉を手にしていました。後にこの出会いが私の人生を変えるとは夢にも思わず、その時は落葉を掻き集めて持ち帰ったのでした。家で落葉との格闘がはじまりました。「何かに使えないものかなぁ」。価値の無いものに価値を付ける発想の難しさ。2年が過ぎ3年目にさしかかったある日、”ふっ”と水彩時代の記憶がよぎりました。「絵に使えるかも!」。すでに赤、黄、緑、白、黒、茶色などの色彩をもった落葉が、手元に揃っていたのです。

昭和57年第一作目の作品が公募展に入賞。昭和59年以降、各公募展で入選入賞をくり返しながら葉彩画の啓蒙に励みました。ついに、私の絵の具に巡り合いました。いままで高をくくっていた落葉に驚くばかりの色彩と、数多くの図形が凝縮されていたのには驚かされました。そればかりではありません。IT時代の今、求められるのはやはり人間の発想。そのユニークな発想のヒントも落葉の中に隠されていることを知ったのです。

こうして、落葉は”絵”という付加価値を得て全国へ翔ばたくようになりました。工房に”ゆめの実”を冠せたのはたしか平成5年。拾い集めた落葉にほのかな夢をのせて、ほそぼそと商いの実も結ぼうとする頃でした。それから更に13年。ひとつのことを成し遂げようと、挑戦の毎日です。

今後もますます落葉と向き合い、そして語り合いながら、創造の世界を繰り広げてまいりたいと思っています。

★★★ 葉彩画とは ★★★
"葉彩画"とは、1982年に弊社社長赤崎一雄が、世界で初めて世に送り出した、葉っぱを絵の具の替わりに用いる絵画技法です。
油彩や水彩とは違い、豊富な色がある訳ではありませんが、絵の具では表現できない、落ちつきや温かみのある色彩が出せます。
葉彩画の見本

初期の頃は絵画展に入選はしても、絵の具で表現していない為、異端視されていましたが、1986年パリで行われたサロンド・パリ展(選考:ジョルジュ・シェシャール氏 後援:外務省・東京都・国際交流基金)にて大賞を受賞し、その作品をみたヨーロッパの人達から驚嘆の声を頂きました。この頃から国内でも、植物コラージュの枠をこえ、洋画として認められるようになってきました。

葉彩画で使用する素材は、落葉が中心です。野山で落葉拾いし(お弁当を持っていくと楽しいですよ。)、それを古新聞に挟んで三年以上保存したものを使用します。中には20年以上経過したものもあります。これを、エンピツでデッサンしたキャンパスの上に、ちぎり絵・切り絵・貼り絵の技法を応用して貼りこんでいきますが、同種の葉っぱでも1枚1枚、色・柄・葉脈が違うので、何千もの葉っぱの中からイメージに合う葉っぱを選び出していきます。

はたで見ていると、気の遠くなるような作業です。が、本人曰く、「葉っぱは楽しさや夢が詰まった宝箱だから苦にならない」のだそうです。葉彩画がデッサンのディテールを忠実に表現する為、葉っぱの原形を留めません。

一方、葉画は葉っぱの形を生かし作画する技法なので葉っぱの原形を留めています。技法は異なっても"葉彩画・葉画"共に、野山から絵の具を探し、それを貼り作品にしていく”自然の恵みと供にあるアート”といえます。


★★★ 葉画とは ★★★
植物の葉形には、私達が日常見慣れているものに、よく似ているものがあります。
その形を元に連想し、一枚の葉を変化させたり、数枚の葉を組み合わせたりして、のりづけして描く絵のことです。

※葉っぱに着色は致しません。落葉の色をそのまま生かして描いております。