「のび太君が社会人になったようです 3日目」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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103 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:11:18
気がつくと僕は、病院のベッドの上にいた。
僕が目を開けると同時に、パパとママが歓喜の声をあげる。
よかった、僕は生きている。
まだ脇腹に痛みは残るし体に力も入らないが、間違いなく生きている。
思えば社会人になってから、両親と会ったのは初めてかもしれない。
年末年始も盆休みも、接待やら学会やらで帰る事が出来なかったから。
半日両親とのんびりした時間を過ごした後、僕はナースコールを押し、やってきたナースに告げた。
「出来杉先生を呼んできてくれ。」
106 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:17:11
出来「野比君、調子はどうだい」
のび「まだ痛むけどこの通り、生きているよ。」
出来「本当に君を死なせなくてよかった。ほんというとかなり難しい手術だったんだ。」
のび「出来杉くん・・・・・・本当にありがとう。」
出来「僕は自分の使命を全うしたまでさ。しかし、本当に医者になってよかった。
大切な友人の命を救う事が出来たんだから、こんなに嬉しい事はないよ。」
のび「出来杉くん・・・」
出来「野比くん、また完治したら一緒に飲みにいこう。楽しみにしているよ。」
のび「ああ!!」
出来「そして2次会はもちろん・・・・・・ぐへへへへへへたまりまへんなぁ!!
むひょひょひょひょひょひょひょ!!!!!!」
のび「・・・・・・」
出来「風俗!!セックス!!風俗!!セックス!!」
だめだこいつ、早くなんとかしないと。
108 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:21:07
出来「なぁ野比君・・・・おちついて聞いてくれるか?」
のび「なんだい?」
出来「君の病室にはテレビがないからきっとまだ知らないと思うんだが…落ち着いて聞いてほしい。」
のび「どうしたっていうんだよ?」
出来「しずかちゃんが・・・・・・・・死んだんだ。」
116 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:30:30
「20XX年6月11日深夜、都内の歓楽街で女性と男性を指したとして、源○○容疑者(61)が逮捕された。
被害者は容疑者の娘である風俗店勤務、源静香(25)と製薬会社勤務、野比のび太(25)。
源容疑者は静香さんの勤務する風俗店の前で待ち伏せし、持っていた刺身包丁で腹部を刺した後、
近くのタクシー乗り場でタクシー待ちをする野比さんを刺した模様。
源容疑者は「汚れた娘と、口の軽い不届き者を始末してやった。後悔はしていない。」と供述している。
被害者の二人は共に都内の病院に搬送され、野比さんは命に別状はないが、しずかさんは今朝未明亡くなった。」
はっきり覚えてはいないが、出来杉に連れられて行った医局のテレビで、
だいたいこんな内容のニュースを聞いた。
意識が遠のいていく感覚がした。
119 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:35:09
その後の僕は色んな取材を受けた。
しずかちゃんとの関係や過去の事など。マスコミ共は面白がって根掘り葉掘り聞いては脚色して報道する。
ただ、そんな事はどうでもいい。マスゴミ共が何を騒ぎ立てようが、僕は何も感じなかった。
最愛の人を失ったショックが、僕の感覚を麻痺させていった。
126 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:44:11
~30年後~
ジャイ「いいこと思いついた。今日の特売品はジャンボフランクにしよう。」
のび「えええ~またかい兄貴!週に三回はソーセージセールをやっているじゃないか!」
ジャイ「今日のソーセージは一味違うんだ!見てくれ、こいつをどうおもう?」
のび「すごく・・・おおきいです。」
ジャイ「そうだろう!これは完売間違いなしだ!!」
55歳になった僕は、大型スーパーマーケットに成長した剛田商店の専務として働いている。
30歳でジャイ子と結婚した僕は、40歳で会社を退職し、家業を手伝う事にした。
今ではたくさんの子供に恵まれ、毎日を幸せに過ごしている。
20代の時は毎日が悲しくて地獄のようだったが、悲しみは時と共に薄れていくという事を身をもって実感した。
128 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:47:56
しかし、時折こんな事が頭をよぎる。
「ドラえもんが僕に見せた未来は一体何だったのだろう。」
しずかちゃんのいる未来。環境保護庁で働く未来。そしてドラえもんのいる未来。
ドラえもんとはそもそも、幼い事に見た幻だったのかもしれない。
そんな事すら考えた。
133 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 01:54:47
タイムマシンや不思議な道具なんて開発される気配すらない。
やはりドラえもんとの日々は僕の妄想だった。僕の考えはそう固まっていた。
そんな中、ある日の新聞でこんな見出しが目に入った。
「SONYが人口知能の開発に成功。ロボット工学に革命」
138 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 02:02:34
5年後、僕は60歳になった。もう立派なじいさんだ。
SONYの快挙によって、各メーカーはこぞって知能を持ったロボットの開発に着手。
完成させては発売を開始した。
僕も事あるごとに新作ロボットをチェックする中で、東芝のカタログに「猫型ロボット、近日発売予定!」という文字をみつけた。
僕は即座に予約をした。価格は僕がMR時代から貯めた全財産を持ってして買えるギリギリの価格。
それでも僕は迷わず購入を決意した。
ジャイ子は泣きながら僕にデンプシーロールをくらわせたし、子供は呆れて口もきいてくれなくなった。
しかし僕は後悔していない。
143 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 02:09:48
猫型ロボットの発売直前。
長女に子供が生まれた。小さい頃の僕にそっくりな男の子だ。
何の打ち合わせもしていないが、長女は孫に「セワシ」と名前をつけた。
セワシよ、ロボットの購入に全財産を使ってしまった僕は、君にお年玉をあげられないかもしれない。
あげれるとしたら多分50円くらいだ。ただ、そのロボットはきっと君にとって欠かせない存在になるだろう。
君が大きくなったら、きっと色んな不思議な道具やタイムマシンが発明されていると思う。
どうかその猫型のロボットを、過去へと送ってやってくれないか。
きっとそこには、馬鹿で怠け者でどうしうようもない少年がいる。
そいつはそのロボットによってまともな人間へと成長する。
そして、ひょっとするとそのロボットが過去を変える事によって、一人の女性が死ななくてすむかもしれない。
158 :1 ◆Lrb7aHG4Ls :2008/06/12(木) 02:18:06
過去をかえたところで、きっと僕のいるこの世界は変わらない。
ただもう一つの未来ができるというだけ。それはなんとなくわかる。
だって、今僕がいるこの時代はドラえもんに見せてもらったものとは大きく変わっているのだから。
でも、もうひとつ別の未来ができるとしたら、しずかちゃんが幸せで過ごしている未来がいい。
別に僕と結婚しなくてもいい。
ただお父さんを凶行に駆り立てるような事もなく、彼女が笑って過ごせるような未来がいいなぁ。
そんな事を考えていると、東芝から電話がかかってきた。
東「お客様、まことに申し訳ないのですが、注文されていたネコ型ロボットの納期が遅れてしまいます。」
のび「何故ですか?」
東「倉庫に置いているとネズミが耳をかじってしまったらしくて・・・耳が欠品してしまったんですよ。色も黄色から青に変色してしまって。」
のび「ふふふ・・・」
東「どうされましたか?」
のび「僕は耳のないデザインの方が好きだし、色も青が好みです。そうかそのまま売っていただけませんか。」
~のび太君が社会人になったようです~ 完