炎術剣士まなみ第十六話~第十八話


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新人ながら、他のボクサーを圧倒する不知火竜選手はヘルスター帝国の新たな
ナイトメア怪人・ティラノファイターであった。怪人は試合優勝後に正体を
表し、裕奈を誘き寄せる。裕奈は立ち向かうも手も足も出ず敗北。
裕奈は、その様子を全国中継されたうえに人々の信頼も失ってしまう…。

炎術剣士まなみ 第十六話「正義の灯よ再び!必殺作戦」


ティラノファイターに敗北した裕奈は失意のまま、喫茶レイラに帰ってきた。
まもなく雪絵が飛び出してくる。彼女もテレビ中継を見ていたようだ。
大波にほとんどしがみついた状態で乗り込んでいた裕奈は到着すると同時にその場に
倒れこんでしまう。
「ゆ…きえ…さ、ん…」
「裕奈、しっかりして!まなみ、裕奈を早くバックルームに!」
「はい!裕奈、もうちょっと頑張って…」
傷ついた剣士をバックルームに運び、まなみと雪絵は彼女の手当てをする。
怪人の鋭い牙で噛まれた右腕は痛々しく、今もなお、血が流れており、裕奈は
苦痛の表情を浮かべる。散々やられた身体中が悲鳴を上げている。
「雪絵さん、私達が出来るのはここまでです。あとは剣士の自己回復能力と
裕奈に残った力を信じましょう。上手く行けば明日にはだいぶ回復してるはずです」
「分かったわ…裕奈、今日は大変だったろ…ゆっくりお休み…」
ベッドに横たわる裕奈にふとんを被せて部屋から出て行く雪絵とまなみ。
そして空は黒く染まり、たまに車の走る音が聞こえるほどになる頃。
裕奈は明るい空間、青空が広がっている場所にいた。そこで裕奈は
一人遊びまわっていた。しかしそれは突如として現れた黒雲が消し去ってしまう。
さらに黒雲は合体し、形を表していく。それはティラノファイターの姿へ変わっていく。
「水無瀬裕奈!お前の命は俺がもらった!キシャァァァァ!!」
「うああぁぁぁぁっ!!」
驚き、勢いよく頭を上げる…気がつくとレイラのバックルームのベッドの上にいた。
「夢か…」
ふと身体を見ると、まだ痛みが引いたわけではないが出血は止まっており、眠りに
着く前より体力も回復していた。剣士の自己回復能力の凄さを裕奈は改めて実感する。
しかし、その目には涙が浮かんでいた。素晴らしい力を手にしても怪人に
手も足も出なかった。しかも人々に散々罵られ、なんとも不甲斐無くて、惨めで、
悔しくて。怪人の姿を思い出すと、震えが止まらなくなる。再び戦ったら今度こそ
殺されるかもしれない、あの圧倒的な強さの前に自分は無力だ。そう感じてしまっている。
「ううっ…あたし、まなみちゃんみたいにはなれないのかな…」
裕奈は涙を流しながら、再び眠りに着いた。
翌朝のニュースはもっぱら裕奈がティラノファイターに完敗したことが
取り上げられていた。批評家たちが勝てない正義の味方は不要だと勝手なことを
述べる。インターネットの掲示板でも裕奈の批判スレッドが多く立っており
ニュースの批評家達と同じような意見の者もいれば、頭ごなしに存在否定する者、
中傷する者と、裕奈の味方になるものはほとんどいなかった。
「こいつら…普段は、まなみや裕奈に頼り切りの癖に…こういう時は声が大きくなる…」
テレビや、ネットの二人に対する意見を見聞きして、雪絵は怒りがこみ上げてくる。
とにかく、二人には出来る限り、これらは見せないようにしようと雪絵は思った。

その頃、裕奈はまなみの家に向かっていた。傷は完治したわけではないが、それでも
既にだいぶ良くなり、体力はほぼ全快。どうしてもまなみと話したい。そんな気分なのだ。
まなみの家に到着すると、悠美が出迎えた。
「あら、裕奈ちゃん。昨日は大変だったわね…今日はどうしたの?」
「おはようございます、悠美さん。あのね、まなみちゃんに会いたくなって」
「まなみちゅんなら部屋にいるわ。どうぞ、上がって」
「それじゃあ、お邪魔します」
家に上がり、早足でまなみの部屋に行き、大きな音を立てながら入る。
「裕奈、ノックぐらいはしなさいね」
とくに慌てる様子もないまなみ。そんな彼女に暗い表情を見せる裕奈。
「まなみちゃん…あたしどうしたらいいのかな…あの怪人には真っ向からじゃ
勝てないし、みんなも、もうあたしのこと必要としてなさそうだし…」
「裕奈…」
まなみは言葉が出ない。そんなことないよと言うべきか、頑張れなんて無責任に
言えやしない。
「あたしはまなみちゃんみたいにはなれない…強くてかっこいいよくて
みんなに慕われてるまなみちゃんみたいには…」
「あのね、裕奈。私もヘルスターの怪人に負けたことはあるよ」
「えっ!本当!?」
「うん。キジバズーカって怪人に、手も足も出なかったことがあるわ。それで
すっかり自信を無くしちゃって…でも、守るべき者っていうのを改めて認識したら
腐ってた自分が恥ずかしくて…特訓して怪人を倒すことが出来たの」
「まなみちゃんでも負けることがあるんだ…」
「これからだって、いつ強力な怪人に敗北するかは分からない。でもそれでも
命がある限り、私は戦うよ。私はお母さん、雪絵さん、明日香さん、そして裕奈…
みんなを守って、そして世界の平和だって守る」
強い眼差しのまなみを見て、裕奈の表情にも明るさが戻ってくる。
「あたしも…みんなみんな全部守りたい!でも、あの怪人の攻撃をどうやって
対処したら…一撃もらったらおしまいだし…」
「裕奈、攻撃を防げなくても避わせばいいのよ。そして相手の武器を潰すことね」
「避ける…武器を潰す…!そうか、それならあたしでも勝てる!」
裕奈は飛び出し、怪人を捜しに行く。

その頃、ティラノファイターは有明で破壊活動を行っていた。裕奈を倒し、
怖いもの無しの気になり、残酷に人を傷つけ、非道に街を破壊しつくす。
「今日、ここに来てしまった自分の命運を呪え!」
「へ、ヘルスター帝国の怪人が有明を破壊しつくしています!ああっ!!」
命知らずなテレビのリポーターが街を中継している。そのことに怪人が気づくや
炎を吹きかけてくる。しかし、その炎は水流で消え去っていく。
「街をぶっ壊してみんなを傷つけるティラノファイター!
水術剣士の水無瀬裕奈が叩きのめしちゃうんだから!」
変身済みの裕奈が、リポーターを守った。彼女を見た怪人は嘲笑を浮かべる。
「裕奈ぁ、昨日負けたばかりだというのにもう再戦か?怯えて隠れていればいいものを。
まあいい。お前の人生の終わりが早くなっただけだ」
「そうはいかないわ、水流波!!」
裕奈の両手から、辺り一面に水が降りかかる。しかし、ティラノファイターには
命中しない。
「なんだそれは?当たったところで痛くもかゆくもないがな。死ねぇ!!」
怪人が裕奈に向かって突撃してくるが、素早く避わし背後に回る。
「ウロチョロしおって。くらえぇぇぇ!!」
怪人の鋭い爪が裕奈の胸を貫いた!…が、裕奈は溶けて水へと形を変える。
「なに!?」
「残念、ハズレ~!本物はどれでしょうか?」
すると、水流波でばら撒かれた水が裕奈の姿を形どっていく。本物と偽物が入り混じる。
まさに裕奈流の分身の術といったところか。
「ええい!こんなもの!」
ティラノファイターが連続で攻撃を繰り出すが、どれも水へと変わるばかりで
すぐに分身が現れてしまう。一人の裕奈が村雨長光を手に尻尾へ振りかざす。
「…甘いわ!」
斬りかかった裕奈に攻撃する。―――が、それもまた水へと変わり、隙ができた
怪人の口に水弾が飛んでくる。
「水撃ストォォォォム!!」
唐突に口の中で爆発が起きた怪人はのたうち回り、自慢の牙も粉砕されてしまう。
裕奈は続けて尻尾も斬り離す。
「ぐああぁぁぁ!!ぐおぉぉ…!!」
さすがのティラノファイターもこれには堪らず悲痛の叫び声をあげる。
「あたしだって力だけの戦士じゃないってこと!みんなを傷つけた天罰を受けなさい!」
分身達が本物の裕奈の刀へ吸収されていき、空高く跳びあがる。
「水迅大破斬!!!」
「こ、これが…こいつの…がああぁぁぁ!!」
大爆発を起こし、木っ端微塵に吹き飛ぶ。裕奈は周りにいた人々に笑顔を見せた。

翌日。人々は昨日とは打って変わって、裕奈のことを褒め称えるニュースが流された。
裕奈のことを不要とまで言っていた評論家たちも頑張ってくださいなどと抜かしている。
そんな人々のあっさりとした心変わりを見聞きした雪絵はまた怒りを覚える。
「勝手すぎるな、みんなして。自分の発言には責任持てよ…」
思わず、ハァっと溜息を吐く。裕奈はというと、そんなニュースは気にせず
これからもまなみと同じように戦うとしか言わなかった。
そして今日も自宅警備員を続けるのであった。

「解説お姉さんです!今日はまなみちゃんと裕奈ちゃんの能力の違い!
二人の基本的な能力は変わらないけど、属性がまなみちゃんは火、裕奈ちゃんは水と
これが一つの大きな違いね。他にも、まなみちゃんは一つ一つの技にバリエーションが
あって、いろんな局面で対応可能。一方の裕奈ちゃんはというと思いつきで技を
作ることが多いの。でも代わりにものすごいパワーの持ち主で変身している状態なら
大型トラックだって投げ飛ばしちゃう。
このことから技のまなみに力の裕奈と…あれ?どこかで聞いた気がするわね…。
前回に引き続き登場したティラノファイターは裕奈ちゃん以上の力の持ち主!
それで前回は裕奈ちゃんを倒したけど、分身を利用した裕奈ちゃんに敗れました!」
次回予告「突如として、まなみは危険な異次元空間へと迷い込んでしまう。
それはヘルスター帝国の新たな罠。異次元空間の主であるディメンソルガーを
倒さなければ、まなみは永久に異次元空間を彷徨い続けるのだ。
次回『黒き空間!天国と地獄』お楽しみに」


ティラノファイターに敗北し、すっかり自信を失ってしまった裕奈。
そんな彼女にまなみは自分も敗北し、一度は挫折を味わったことを話す。
まなみに勇気づけられた裕奈は新しい水術を身に付け勝利するのだった。

炎術剣士まなみ 第十七話『黒き空間!天国と地獄』


外は快晴。まなみと裕奈は近所の子供達と河川敷で遊んでいた。
石投げがどこまで飛ばせるか、水を掛け合ったりしている。今時、こんな遊びに
付き合う人間はあまりいないのではないだろうか。まなみや裕奈は遊んでくれるお姉さん、
というより、保護者やお母さん的存在なのかもしれない。
「さあ、みんな。そろそろお昼ごはんにしましょうか」
「やったぁ!まなみちゃんの作ったお弁当~♪」
「裕奈、あんたが最初に喜んでどうする…ちゃんと全員分あるから。それじゃあ、
配るから回していって」
まなみの作った弁当はふりかけご飯に唐揚げ、スパゲッティにサラダ、底には玉ねぎも
敷いてあった。いたってシンプルだが、冷凍食品は使っていない、全て手作りのものだ。
「美味そう!さすがまなみお姉ちゃん!」
「うふふ、ありがとう。それじゃ、食べましょうか。いただきます」
全員、元気よく「いただきます!」と言うや、弁当に手を出し始める。ただ黙々と
食べる者や、談笑しながら食べる者と、それぞれ様子は違うが、全員、おいしそうに
食べている。そこに突然、まなみは「あっ」と声を上げる。
「ごめん、飲み物忘れてきちゃった。今から買ってくるね。順番に希望を言って」
全員分の、飲みたいものをメモしてまなみは自販機を探す。が、どこにも
見当たらないので、仕方なくコンビニまで足を伸ばすことにした。

―――ヘルスター帝国の本拠地、ヘルキャッスルでは新たなナイトメア怪人が
誕生していた。空間を自由自在に操る怪人・ディメンソルガーである。
「ディメンソルガーよ…我らはこれまで何度も新堂まなみによって地球征服の
作戦を妨害されてきた。以前、我らがまなみに対抗して力を与えた水無瀬裕奈も洗脳を
解除し、今ではまなみの仲間となっている。奴らを貴様が始末するのだ…!」
「はっ!必ずや、皇帝ラデス様に吉報をお持ちいたします。まずは新堂まなみを
始末しましょう。その後、ゆっくりと水無瀬裕奈の首を貰い受けます」
「お前に与えた能力、空間を捻じ曲げ空間内の者に地獄を与え、見せることが出来る
ダークディメンションでまなみと裕奈を殺し、首を持ち帰って参れ…!」
紫色の煙に包まれ、ディメンソルガーは姿を消し、人間界へと移動する。

その頃、まなみはコンビニに到着し全員分の飲み物とおかしを買っていた。
飲み物はスポーツドリンクを頼んだ子供が多いなか、まなみはメロンソーダを買う。
おかしもチョコレート付けの見た目からして甘そうなスナック。どうも甘党らしい。
「さて、こんなもんでいいかな…」
レジへ運び、会計を済ませる。そんな様子を空から窺っている怪人・ディメンソルガー。
「ふっ、まなみよ、そのコンビニの出入り口を出た瞬間、貴様の命は終わったも同然だ」
コンビニの出入り口を出るとき、ディメンソルガーの仕掛けた罠が発動する。
そんなこと知る由も無いまなみはゆっくりと店から出て行く。
するとまなみの目の前で眩い光が発生し、まなみの目を眩ませる。
「うっ!!い、いったいなに!?」
その光が止み、視界もはっきりしてくると目の前の光景に驚愕する。
先ほどまでの河川敷近くのコンビニから打って変わって風景は辺り一面の砂漠である。
「こんな、芸当をするのは…ヘルスター帝国しかないわね…それにしても…」
暑い。涼しげな場所から一気に真っ昼間の砂漠に移動したのだ。さすがに堪える。
立ち止まってもしょうがないのは分かっている。当ても無くまなみは砂漠を進んでいく。
しかし、どれだけ進もうと何も見当たらない。それでも進んでいこうとする。
そのとき、危険な予感を感じ、まなみは身を伏せた。先ほどまでまなみの頭が
あった位置に銃弾が飛んできた。飛んできた方角を見ると見たことの無い怪人の姿が。
「くっ…何者!?」
「今のを避けるとはさすがだな、新堂まなみ。俺はヘルスター帝国のナイトメア怪人、
ディメンソルガー様だ!」
「あなたね、私をこんな空間に引きずりこんだのは!」
「そうだ、俺は空間を操ることが出来る。それで貴様に生きながら地獄を見せてやろうと
思ってな。俺の見せる地獄の空間で一人のたうち回って死ぬがいい!」
ディメンソルガーが飛び去ると同時に再び、強烈な光とともに場所が変わる。

今度はどんな光景なのか、何が来てもいいように構えを取る…が、先ほどとは
違って、今度は日本の都会ど真ん中のような場所である。通行人もいる。
その光景に一瞬ホッとするが、すぐに気を引き締める。敵の仕組んだ罠なら
この空間にもなにか…。まなみが、辺りを警戒していると通行人たちがまなみに
ゆっくりと近づいてくる。すると、通行人の爪が化け物の如く伸び、まなみを斬りつける。
「あうっ!くっ、この人たち…いや、人じゃない!」
斬りつける者たちは全員、無言のまま、虚ろな目でまなみに襲い掛かる。
完全に取り囲まれる前に、まなみは押しのけ、その場から逃げ出す。

まなみが現実世界から消えて既に一時間が経過していた。いつまで経ってもまなみが
帰ってこないので、裕奈と子供たちは手分けしてまなみを捜していた。
「お姉ちゃ~ん!!」
「どこにいるんだよぉ~!…駄目だ、見つからない…あっ、裕奈姉ちゃん!」
「コンビニにもいなかった…携帯も繋がらないし…たぶん、ヘルスターの奴らに…!」
「まなみ姉ちゃん、どうなっちゃったの?」
「分からない、だけど、まなみちゃんのことだからきっと大丈夫だよ。
だからあたしたちはまなみちゃんが無事に帰ってくることを祈ろう、ね?」
子供達に優しく声を掛ける裕奈。しかし、彼女も心の底ではまなみの身が心配で
どうしようもなかった。どこにいるか分からず、手を貸すことも出来ない。
大事な相棒のことを考えると胸が張り裂けそうである。だから、強く祈った。
まなみがちゃんと無事に帰ってくるように。

空間内を走り回るまなみ。ただ逃げてるだけでは駄目だ、空間を発生させている
ディメンソルガーを倒さなければ…そうしたいのはやまやまだが、怪人の姿を
見つけるどころではない。今も触手がまなみに襲い掛かっており、
なんとか避わしていくが、一本の触手に足を絡め取られてしまう。
「しまった、うあっ!?」
そのまま持ち上げられ、縛り付けられてしまう。さらに触手から電撃が流れ出し
まなみを痛めつけていく。
「くうぅぅっ!う、ああぁぁ…!!」
砂漠や、都市で体力を奪われ、さらにとどめとばかりに電撃を流される。すでに
まなみは肩で呼吸し息も絶え絶えである。先ほど斬られた箇所から血も流れている。
ぐったりとして、目の前もぼやけている。まなみが項垂れると、ディメンソルガーが
現れた。
「どうやら貴様もここまでのようだな。散々、我らに歯向かった罰だ!」
「あ、く…炎心…変幻…!」
声が途切れながらも、炎術剣士の姿へと変身する。しかし、戦う前からまなみの
コンディションは最悪だ。ダメージが溜まっており、触手に絡まれたまま動くことが
出来ない。暁一文字も抜くことが出来ない。
「いい格好だな、まなみ。変身しても抵抗できぬ気分はどうだ?そのままじわじわと
嬲り殺してやる。隼も呼べない、水無瀬裕奈もいない、絶望的状況だなぁ」
「くっ…私は、絶対に負けない…!」
「そんな口を聞けるのも今のうちだけだ!死ねぇい!」
触手がさらに強くまなみを締め上げていく。それだけでも激痛が走りだす。
さらにディメンソルガーは別の空間から剣を取り出し、まなみを斬りつけていく。
「うわあああぁぁぁっ!!」
二つの激しい攻めにまなみは裏返った悲鳴を上げる。目には涙が浮かびだした。
「くぅっ…はあ、はあ…」
「さすがの貴様も限界のようだな。では死んでもらおうか!」
身動き出来ず、抵抗不能状態なまなみにゆっくりと剣が振り下ろされようとしている。
「もはや、ここまで…裕奈、あとはお願いね…」
覚悟して目を瞑る。その時、突然水の激流がまなみとディメンソルガーの周囲に
発生し、まなみを守り、ディメンソルガーを吹き飛ばした。
「ぐあぁぁぁ…!な、なんだ!?」
「この水は…裕奈の…!」
この場にはいないはずの裕奈の水術。それはまなみが無事に帰ってきてほしいという
裕奈の祈りが、発生させたものである。
「裕奈、私は必ず帰るから、待ってて…!」
体力がすでに尽きたはずのまなみの身体の奥底から力が蘇りだす。
「火炎大津波!!」
まなみを中心に周囲が炎に飲み込まれ、触手は全て焼き払われた。その余波を
ディメンソルガーも浴びて、体が燃えだす。
「ぐおぉっ!うああぁぁ!!」
「とああぁぁぁ!!火炎大破斬!!」
流れるように暁一文字を抜き、一気に一刀両断する。ディメンソルガーは脳天から
真っ二つに裂け、大爆発を起こして消滅した。同時にまなみを苦しめた地獄の空間も
消え去り、現実世界へとようやく帰ってこれた。

河川敷で裕奈と子供達がまなみを捜し、疲れ果てて休んでいた。そこに足音が
近づいてくる。裕奈が振り返るとまなみの姿があった。
「まなみちゃん!」
「お姉ちゃん!心配したんだよ!」
「ごめんね、みんな…あうっ…!」
みんなの元に辿り着いた瞬間、まなみはその場に倒れこんでしまう。みんな一斉に
まなみに駆け寄り、心配な声を上げる。その場で裕奈が救急車を呼び出しまなみは病院へ
運ばれていった…。
翌日、まなみが入院している病室へと向かう裕奈と子供達。
「まなみちゃん、みんなと来たよ。調子はどう?」
「うん、先生は傷は塞がってるから疲れただけだって言ってた。私はもう平気なんだけど
念のため、しばらく休みなって明日香さんや雪絵さんに言われてね」
「みんなまなみちゃんが好きだから、つい心配になっちゃうんだよ。
あたしだってそうだもん」
「ふふ、ありがとう…」
持ってきたカサブランカを飾り、まなみはみんなに心から感謝し、微笑んだ。
もし、心配してくれる人がいなかったら、今頃ここにはいなかっただろうから。
窓から穏やかで、涼しげな風が吹き込み、カサブランカの花を揺らした。

「解説お姉さんだよ!剣士にはいろいろ能力があるけど、自己回復能力もその一つ!
だから斬りつけられて出血しようが、骨が折れようが、しばらくすると傷は
塞がっていきます。つまり多少の無茶も出来…げふんげふん。
今回登場したナイトメア怪人ディメンソルガーは空間を操る怪人。自分の作り出した
空間に敵を引きずり込んで地獄を見せる恐ろしい怪人よ。まなみちゃんを空間内に
閉じ込めて倒そうとしたわ。でもその場にはいなくても仲間との強い絆がまなみちゃんに
勝利をもたらしたわ。それでは次回も見てね!」
次回予告「海に遊びにきたまなみ達。そこで明日香はその海で起こっている
怪事件を捜査していた。まなみと裕奈も協力し調査していくうちに判明する
ヘルスター帝国の恐ろしき計画。二人の剣士は帝国の基地に潜入する!
次回『列島が海の底に!海中基地を叩け』次回もお楽しみに」


ヘルスター帝国は新たなナイトメア怪人・ディメンソルガーをまなみに差し向け、
彼女を自身の作り出した異次元世界に閉じ込めてしまう。異次元世界に張り巡らされた
罠にまなみは苦しみ、怪人に殺されそうになるも、裕奈の祈りがまなみを救い出し
まなみは最後の力を振り絞ってディメンソルガーを撃破した。

炎術剣士まなみ 第十八話『列島が海の底に!海中基地を叩け』


とある日の深夜。漁船が陸へ戻ろうと進んでいた。その途中、海の底から
光が発生しているのを発見する。
「船長、あれは一体なんでしょうか?」
「わからん、近づいてみよう」
進路をその光へと向ける。発生地点が目の前になったとき、光の底が盛り上がり始めた。
「な、なんだ!?」
「うわぁ…ば、化け物だぁぁぁ!!」
「ぎゃああぁぁぁ!!」
乗組員の断末魔と同時に船は沈んだ。月が不気味なシルエットを表し、それは
再び海の底へと戻っていった。

季節は夏となり、海水浴シーズンである。そんなわけでまなみと裕奈も海へと
向かう。しかしこれから海で大はしゃぎというのにまなみの表情は暗い。
「…はぁ」
「まなみちゃん、さっきから暗いよ。どうしたの?」
「ヘルスター帝国との戦いで、授業抜け出したり試験受けられなかったりしてきたせいで
単位落としちゃったんだ…3単位も」
「さ、3単位ならまだ大丈夫だよ!まだ一年生なんだし、これからいくらでも…」
「この3単位が痛いんだって!計画が崩れていく…」
「ま、まなみちゃぁん…」
生来の優等生気質が単位を落とすことを許さないのかもしれない。やはりヘルスターとの
戦いを言い訳には使えなかったらしい。

海へと到着するや裕奈は適当な海の家へと向かう。まなみも後を追って二人は
着替えだす。年頃ということで、けっこう艶やかな水着を着用する。
「…まなみちゃんずるいよ」
「え?な、なにが」
「なんで同い年なのに、こんなに大きさ違うのかな!?スタイル良すぎるよ!
それに比べて、どうしてあたしはいつまで経っても幼児体型なんだろ…」
「ちょっと、裕奈やめて!みんな見てるから!」
不満を言いながら裕奈はまなみの胸を触っていた。まなみの言葉にハッとなって
赤面し、まなみに小さくごめんと謝った。
「日差しがギンギンですごく海水浴日和だねぇ~」
「そうね、裕奈は先に泳いでて。私、パラソル借りてくるから」
裕奈は子供のように海へと走り出して、泳ぎ始める。まなみはパラソルを借りると
早々に荷物を広げていく。終わるとまなみも裕奈と遊び始める。

―――ヘルスター帝国の海底アジトではデリック参謀がナイトメア怪人デビルシャークと
その場にいる者に作戦説明を行っていた。
「今回、我々はこのアジトより水爆を製作、それを大量に日本周りの海全域に仕掛け
一斉に爆破させる。そうして日本全土を海の底へ沈めてしまう計画だ。
しかし、このアジトを嗅ぎつけるものは意外と多い。そこでデビルシャーク、
貴様の出番だ。近づいてくるものは容赦なく殺せ!」
「ははっ!水中ならば、そこは俺のテリトリー。どんな奴でも敵うわけがありません」
「万が一、新堂まなみや水無瀬裕奈を発見した時も容赦なく確実にな…」
アジト内ではヘルスター特製水爆が量産されていた。全て量産し終えたあと、
各所に設置され爆破されるのだ。しかし、このことをまだ、まなみも裕奈も知らない…。

その頃、二人はというと散々泳いだので、海の家で昼食を取っていた。まなみが
焼きトウモロコシを食べている横で、顔が隠れるほどの山盛り焼きそばを裕奈は
食べていた。目をキラキラさせながら。
「裕奈、相変わらずよく食べるね…」
「そうかなぁ、これでも抑えた方だと思うんだけどなぁ」
あっさり言うと、モグモグと食べるのを再開する。まなみがまだ半分も
食い終わらないうちに、おかわりを頼んでいた。そんな様子に呆れながらも
ふと外を見ると
「あれ、明日香さん?」
七瀬明日香がいろんな人に何か聞き込みしているようだ。まなみは思わず
明日香のもとに近寄り話しかける。
「明日香さぁ~ん!」
「あら、まなみ。なに海水浴?」
「はい、裕奈と一緒に。明日香さんはどうしたんですか?」
「いや、最近この海の沖で行方不明になる人がいるらしいのよ。他にも船が消息不明に
なっているらしいの。なにか、この海には何かあるんじゃないかと睨んだってわけ」
「じゃあ、私も協力しますよ。ヘルスター帝国の仕業だったりするかもしれないし。
ちょっと裕奈も呼んできますね」
焼きそばも既に三皿目に突入していた裕奈だが、まなみに途中で止められ引っ張られる。
「まだラーメンもかき氷も食べてないのに~!」
「どんだけ腹に詰め込む気よ…ほら、私達も調査するわよ」
不満な表情でしぶしぶ調査することになってしまった裕奈。二人は明日香とともに
海での人々の消息不明事件について聞き込みをする。共通するのは砂浜では
特に事件は無く、海の沖でしか消息不明事件は起きなかったということ。
「やっぱり海に何かあるのか…」
「明日香さん、ボートを出しましょう」
「そうだよ、さっさと片付けて食事の続きしようよぉ」
三人はボートを借りて、沖へと向かうことに。水しぶきをあげ、ボートが発進する。
本来なら遊びで使いたいところだがそうもいかない。しかし
「きゃっほー!気持ちいいなぁ」
「裕奈、遊びに行くんじゃないんだからね」
「分かってるって!明日香さんもっとスピード上げてこうよ!」
「本当にこの子は…」
まなみも明日香もため息を吐く。そうこうしているうちに最も消息を絶った船や人が
多かった地点までやってくる。
「よし、明日香さんはここで待機していてください。私と裕奈で海の底に
行ってきます」
「分かったわ、気をつけてね」
「あれ?でもどうやっていくの?」
「大波なら水中でも動くでしょ。隼は水中じゃ走れないし」
「よし、大波!!」
裕奈の呼ぶ声に呼応して、水平線の彼方から大波で約三秒で駆けつける。
まなみと裕奈は剣士の姿へと変身して大波に二人乗りし、海中へと潜り始める。
しかし海底基地のヘルスター帝国もそのことに気づいていた。

「あれは…新堂まなみに水無瀬裕奈か!よし、デビルシャーク!奴らを片づけてこい!」
「ははっ!海の藻屑にしてやります!」
大波に二人乗りしているまなみと裕奈は、しばらく進むと海底に明らかに人工的に
作られた建造物を発見する。
「裕奈、あの建物に!」
「よぉ~し!しっかり掴まっててね!…ちょっと待って、何かこっちに向かってくる!」
裕奈がそれに気づくと、大波を左手に大きく動かし、それを避ける。
「さすがだな、裕奈、まなみ…俺はヘルスター帝国のデビルシャーク。貴様らを
倒しにきた。我らの計画を邪魔されたくないのでね」
「何を企んでるか知らないけれど、あなた達の好きなようにはさせないわ!」
「まなみちゃん、大波で先に行って!あたしがこいつの相手を!」
「分かったわ!」
まなみを先に進ませ、自分は怪人と水中戦を行おうとする裕奈。すぐに愛刀・村雨長光を
抜き、デビルシャークへと斬りかかる。それを怪人は自身のヒレで防ぐ。
「先に貴様を殺してくれる!水中は俺のテリトリーだ!」
「生憎だけど、あたしも水中戦なら大得意なんだから!」
再び果敢にデビルシャークと格闘を続ける裕奈。
その頃、まなみは大波と一緒に海底基地へと乗り込んでいた。潜入したことは
すでにばれているので、潜入すると同時に、戦闘員コザーが群れを成して
まなみへと襲いかかるが、大波の突撃とまなみの斬撃で難なく撃退されていく。
基地の奥へと進んでいくと、ガスタンク程では無いが、人よりはずっと大きな球体を
多数発見する。
「これはいったい?」
「帝国特製の水爆だ」
声に驚き、振り向くとそこにはデリック参謀の姿が。そしてお約束的に
聞いてもいないのに、今回の作戦のことを喋りだす。
「その水爆で、大津波を起こし日本全土を海中に沈めてしまうのだ」
「そんなことはさせない!今度こそデリック参謀、お前を斬る!」
「おっと動くな。私の手元にあるスイッチが見えるか?これを押すだけで、そこにある
水爆は日本の周りに飛び出し、一斉に爆発する」
起動スイッチをチラつかせて、まなみを脅す。こうなってしまうと手も足も出ない。
しかし、その状態はすぐに打ち破られる。窓ガラスを突き破り裕奈とデビルシャークが
その場に突入してきたのだ。
「ぐおぉぉぉ!!…ぐっ水無瀬裕奈…貴様ぁ!」
見るとデビルシャークは傷だらけで呻き声をあげている。水中戦は裕奈が制したようだ。
突然のことでデリックも動揺している。その隙をまなみは逃さず、起動スイッチを
炎流波で破壊する。
「し、しまった!」
「裕奈、あとはデビルシャークを!」
「OK!これで終わりにしちゃうんだから」
「「ダブル!!大破斬!!!」」
同時に飛び上り、愛刀に各々のオーラを込め、怪人をX字に斬り捨てた。
断末魔を残さず、デビルシャークは消滅し、デリックも姿を消した。
二人の剣士も大波に乗り込み、海底基地を脱出した。海上まで上がると海底から
水柱が上がった。
ヘルスターの野望を食い止めたまなみと裕奈は、明日香を加えて再び海を楽しむのだが。
「ヘルスター帝国に邪魔されて満足に食べてないよ…おじさん、ラーメン!」
「裕奈、本当によく食べるね…あっ明日香さん」
口の中いっぱいにラーメンを蓄えている裕奈と、まなみの前に水着に着替えた
明日香が現れた。
「お待たせ、二人とも…って裕奈、何するの!?」
「明日香さん…まなみちゃんもすごかったけど、明日香さんはもっと…」
飯を食べるのも忘れて明日香の胸を揉みだす裕奈。
「こら、裕奈!みんな見てるから…!」
まなみの言葉に我を取り戻した裕奈はまた赤面し、明日香に謝るのだった。

「解説お姉さんです。今回登場したデビルシャークは、水中ではものすごいスピードで
動くことができて、鋭い牙と、強烈なサメ肌の持ち主!だけど、水中戦では
裕奈ちゃんの方が圧倒的に強かったみたい。それじゃまた次回!」
次回予告「宇宙人が地球に残していった物。それはまったく新しいエネルギーであった。
それに目を付けたヘルスター帝国が、エネルギーを奪おうと企む。まなみ、裕奈よ
帝国の魔の手からエネルギーを守り抜いてくれ!
次回「宇宙の宝石は正義か悪か!?」お楽しみに」