長編小説「みずぴライフ」
- 1 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/02(木)
05:55
- チ、チチ、チ──
朝陽は今日も燦々と街を照らし、雀は朝の到来を囀る。
空は今日も青かった──
「あちィ……」
水科は射し込む朝陽に目を細め、
今まで寝ていたベッドから上半身だけを起こして
大あくびをすると頭をかいた。
「なんだってんだ最近の暑さは……」
目覚めの原因となった最近の猛暑に悪態をつくと
彼はテレビを付け、パンをトースターに放り込む。
テレビからは本日の最高気温は34度です、と
テンションを下げる声が響く。
今年はどうやら異常気象らしく、
6月の頭から30度を超える夏日が続いていた。
焼けたパンを囓りながら水科は窓から空を見やる。
どこまでも高く、どこまでも蒼かった。
「さて、こうしちゃいらんね。支度支度、と」
誰に言うでもなく呟き、風呂場へと消えていった。
「んじゃ行くとすっかね。」
開襟の白いYシャツに濃紺のパンツ。
それが水科の通う裏井田高校の制服だった。
水科はドアを施錠すると大きく伸びをして、
あくびを漏らしながら学校への道を歩き出した。
見上げた空に一陣の風が通り抜ける。
夏は、すぐそこまで来ていた──
- 2 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/02(木)
05:59
- 長編小説「みずぴライフ」はリレー小説です。
導入部分は僕が書きました。
目的などは特になく、高校生の水科やその仲間達を自由に動かして
彼の波瀾万丈な日常を描き出してください。
- 3 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/02(木)
06:08
-
名無しさん先生の作品が読めるのはうらいただけ!!
- 4 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/02(木)
06:08
- 名無しさん先生の次回作にご期待ください。
- 5 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/03(金)
01:55
- 水科の通う裏井田高校は、小高い丘の上にある。
Am8:10、水科は学校へと続くなだらかな傾斜の坂道を登っていた。
「あー。だりい…」
立ち止まり、額の汗を拭うと彼は丘の上にそびえる学舎を見上げ
「なんであんなトコにあんだよウチのガッコ…」
と一人ごちた。その時だった。
「ぐわっ!?」
背後から突然衝撃が水科を襲ったのは。
何事かと振り向いた彼の視線の先には
短い髪を逆立てた、長身の眼鏡男が自転車に乗ったまま眠っていた。
コイツはよくぞまあ眠りながら運転なんて器用な真似を…
水科は呆れとも感心ともつかない感情を抱くと、
とりあえず彼ごと自転車を蹴倒した。
「む…う……ん?あれ?科さん。おはようございます。
…で、なんで俺はここで倒れてるんでしょうか?」
今イチ状況が掴めていない眼鏡男に水科は満面の笑みで
「そりゃな中村、『眠りながらチャリに乗る』とか
朝っぱらからゴキゲンな真似してたおめーが俺様に突っ込んだ結果だよ。」
とりあえず自分が蹴倒した、という事実は伏せて説明をした。
「あー。そうだったんすか。ははは。」
「おうよ。ははは。」
──数分後、坂道を登りきったところに息を切らせて自転車を漕ぐ中村と
その後ろに乗って野次を飛ばす水科の姿があった。
校門の前で水科は中村と別れ、自分の教室へと向かう。
裏井田高校は中庭を中心として南に校門を構え、西に1年生教室のある西館、
東に2年生教室のある東館、北に3年生の北館となっていて、
西館の更に西に校庭がある。
2年の水科は東館へ、1年の中村は校門脇にある自転車置き場を経由して
西館へと向かった。
東館の3階、2-B。そこが水科の教室だった。
教室に入り、自分の席に鞄を置く。
と、前の席の男がニヤニヤしながら
「おはようみずぴー。ところでさ、これみてよこれ!!傑作でしょ?」
と言いながら携帯の液晶を水科の方へ向けた。
「おやおや。またブスの写真かよ。今日も趣味悪いなぁ健ちゃん。」
「だってさぁ、ほら。これ!コイツの目の離れ方とか芸術レベルじゃん!?」
健ちゃんこと森健太郎はどうやら朝に携帯のカメラで撮った
少し顔の造形が不自由な女の子の写真がツボにはまったようで、
朝っぱらからハイテンションに笑い転げていた。
その様子を生暖かい視線で水科が見ていると、予鈴が鳴った。
「あーあ。せっかくテンパってたのにここまでかよ。」
教室の後ろから不満気な声が上がる。
いつも不健康そうに目の下にクマを作っている声の主に水科は歩み寄り、
「ったく、よくまあ毎日毎日麻雀やってて飽きねーな高瀬」
と声をかける。
「ほっとけよ。おもしれーんだよ麻雀。」
と言いつつ高瀬は牌をかたしていく。
「だからって早朝から登校してやりますかね普通?」
とオーバーに肩をすくめて自分の席へと帰って行くと机に突っ伏し、
「おい健ちゃん。俺今から寝るから昼になったら起こしてくんね?」
と言って、1分も経たぬ間に高いびきをかき始めた。
健太郎はずっと携帯の液晶を覗いてはゲラゲラと笑っていた。
- 6 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/03(金)
04:09
- チャイムの音に、水科は目を覚ました。
同時に鞄を持ち、席を立つクラスメート達。
水科は健太郎に
「今日は午前授業だっけか」
と尋ねた。健太郎は何言ってんだコイツ?といった顔で
黒板の上の時計を指差す。
時計の短針は15と16の中間を指していた。
「なあ健ちゃん?俺、昼に起こしてくれって言わなかったっけ?」
笑顔をヒクつかせて水科が健太郎に問う。
健太郎は鼻糞をほじりながら答える。
「ん?あー。朝はちょっと興奮してたからな。そんなこと頼まれてたんだ。
悪りー悪りー。…イテッ!クソッ!ちょっとほじりすぎたか……」
『んなことどーでもいいよ』的な雰囲気が身体中から滲み出るような返答だった。
思わず水科は健太郎の後頭部をはたき、
叩かれた勢いで健太郎の指は彼自身の鼻の中へと深く潜行していった。
「クソッ!今日もドブ日にしちまったぜ!!いや、待て。まだ間に合う。
俺はこのアフタースクールで今日という日を充実させてみせる!!」
力強い台詞と裏腹に大あくびを漏らしながら水科はダルそうに教室を出る。
教室には机に突っ伏し、鼻から血をどくどく垂れ流す健太郎だけが残された。
「あははー。待てー。犬っころー。」
目が虚ろなのが気になるところだが、彼はなんだか楽しそうだった。
靴を履き替え、校門を潜り水科は考える。
(さて、この後どうしたもんか。ゲーセンでヒマ潰しもなんだしなぁ…)
そんな時、後ろから不意に声がかかる。
「おーい。科ー。」
振り向くと、腹の黒そうな笑顔を浮かべた後輩が歩いていた。
「おう。サトシじゃねーか。それに中村も。何やってんだお前ら?」
「俺らよりさ、お前これからヒマ?」
質問には答えず、サトシが続ける。
「…その笑顔、なんか企んでやがんな?聞かせろよ。」
「流石こういう事には鋭いな兄者。
実はよ、今から俺らさ、隣の女子校のプール覗きに行くんだよね。
科もヒマだったらどうよ?」
会話から外れていた中村が呟く。
「俺は特に行きたい訳じゃないんですが…」
「ふーん。やるじゃない?グッドアイディーアマイブラザー。
よし、そうと決まれば善は急げだ!行こうぜ。約束の場所へ!」
「オーケー!俺達の勝利は約束されてるぜ!!待ってろよ俺の那波!!」
異常なテンションの2人には中村の呟きは届いていなかった。
「俺は別に…」
- 7 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/03(金)
05:05
-
中村の自転車に無理矢理3人乗りをして桃源郷を目指す勇者達が下校中の青年の横を通る。
「ん?ちょっと待った。おーい。かっちゃーん!」
自転車を止め、水科は下校中の男に声をかける。
手鏡で髪をいじりながら下校していた、
はだけた胸元にネックレスが光る長身の男は声に気付き、目線を水科へと向ける。
「水科に…中村とサトシか…」
落ち着いた声音だった。そしてそれとは対照的な水科の声が響く。
「まーた鏡見てんのかよ。それよりさ、カツヤ。
俺ら今からプール見学行くんだけど、どう?」
「へへへ…那波の水着……」
この2人の様子から、カツヤは『プール見学』の内容を想像したんだろう。
「全くお前らは…」
と溜息をつく。
「なんだ。行かねーのか?まぁいいや。んじゃな!チャオ!」
「那波…那波…へへへ……」
そういって走り出そうとする水科達を慌てることなくカツヤは呼び止めた。
「まあ待てって。誰も行かないとは行ってない。」
気取り屋で気障ったらしいが、この辺りが憎めない奴だった。
「那波…可愛いよ…」
約一名はテンションがオーバーヒートして想像の彼方へ行ったきり帰ってこなかった。
「さて、こっちこっち」
女子校裏手に着き、正気を取り戻したサトシの先導で水科達は潜入を開始した。
「しかし、お前よくこんな計画建てたね…」
半ば呆れ顔でカツヤはサトシに語りかける。
今、彼らは校舎と壁の間の雑草が生い茂る細い隙間を歩いていた。
女子校裏手のフェンスの一部が草木に絡め取られて見えなくなっているところを
前もってサトシがペンチで切断しており、そこから進入、
そのまま校舎の裏を辿れば更衣室横のスペースに出ることが出来るらしい。
こういう時のサトシの行動力、計画性には恐ろしい物がある。
サトシはカツヤの語りかけに、口の端をつり上げ
「俺に不可能は無い。…っと。見えてきたぜ。桃源郷の光が。」
と答え、プールを囲う塀の上に顔を出した。
「那波那波…っと…いたいた!へへへ…那波の水着…へへへ…」
既にあちら側の世界へお行きになられてしまった今回の英雄を尻目に
カツヤと水科も塀から顔を出す。
「ヒョゥ!こりゃぁ絶景だぜ!!」
「ふーん。これは…なかなかどうして…」
似たような事を2人で口走る。
中村はエロ猿3匹を哀れむような目で見ていたが、
やがて遠慮がちに3人に並んで塀から顔を出した。
「にしても、俺はやっぱ断然あの子だな。」
そう言って、ニヤけ顔の水科が指差したのは
背の低い勝ち気そうな目をしたポニーテールの娘だった。
胸も身長同様少し不自由な感じだった。
「相変わらずの趣味だな。なんというかお前らしいよ。」
「うるせーな。んじゃカツヤ、お前どの娘が良いんだよ?」
そう言われ、自信満々のカツヤが指差した先には、
お嬢様的なおっとり感を醸し出す栗色の柔らかそうな髪の娘が
プールサイドに腰掛けていた。
彼女はプ-ルに入らないのだろうか、パーカーを羽織っていた。
ついでに胸がでかかった。
「本当に馬鹿だなお前達は。一体ここで那波以外の何を見るというのか?」
そう言ったサトシの視線の先には、絹のように艶やかな黒髪が
白い肌に非常に似合う大人しそうな娘が友人と何やら談笑していた。
そして彼らは、やれ自分の選んだ娘が一番だと言って聞かず、
次第にヒートアップしていった。
その間に、彼らを放置してプールを見ていた中村は一人出口へと走って行ったが
3バカはそれに気付く事はなかった。
口論していた3バカ達がようやく折り合いを付け視線をプールに戻す。
塀のすぐ向こうでこちらを見ていた女子達と目があった。
あれだけヒートアップして騒げば見つからないわけがなかった。
冷静だった中村だけは気付かれた事を察知して逃げおおせたのだ。
「よっ」
笑顔で女子の一人が声をかける。
硬直した3バカの背中を滝のような汗が流れる。
「裏井田校の森です!!」
「高瀬です!!」
「塩澤です!!」
「あっ!!コラ!!」
3人が3人とも全く同時に他人の名前を出し、全く同時に出口へと駆け
─出そうとして、壁の隙間の狭さに阻まれ、めでたくお縄となった。
- 8 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/03(金)
05:41
-
確保された3バカは、プールサイドに引っ張り上げられていた。
「覗きなんて真似して…ホンットに最悪ねアンタら」
勝ち気そうな少女─に見える外見だが実は水泳部の顧問教師だった女性が
呆れた目で3人を見下ろす。
「そうそう。全くだ。けしからん。」
満面の笑みを浮かべて水科が相づちを打つ。
「お前もだよ!!」
幼女体型の教師が声を張り上げる。
「怒ってるのもかーわいいねー」
水科は全っ然聞いちゃいなかった。
他の2人はというと、
カツヤはプールサイドから心配そうにこちらを伺っているおっとり娘と
目が合うたびに笑顔で手を振っていた。
サトシは「あー。那波が行っちゃうー…」と
更衣室へ向かう通称那波の少女の背中を悲しそうに見送っていた。
女教師は軽い目眩を覚え、
「あー。もういいわ。
アンタ達んトコの教師に連絡入れて引き取ってもらうから。
ペットの躾はちゃんとしてくださいってキツく言わなきゃ…」
そのセリフを聞いた瞬間、水科以外の2人は真顔に戻り
「それは困る。」
と綺麗にハモり、立ち上がった。
今までとの雰囲気の違いに気圧された女教師は思わず後ずさる。
「な、何よ!どうする気!!?」
2人は威圧感を崩さずに
「逃げる。」
と簡潔に答え、散開して別々の方向に猛スピードで消えて行った。
その際もお気に入りの娘の前を通り、手を振ったりすることは忘れなかった。
その様子に唖然とする女子一同を余所に、水科も渋々立ち上がる。
「いやー。俺はホントはもっと先生とお話したかったんだけどねー。
あの筋肉ダルマ達に通報は困るし、残念だけど帰るねー。」
そういって飄々と出口に歩いて行った。
あまりの奇天烈な展開に思わずフリーズしていた女教師はハッと我に返るが
既にその時には3バカの姿は誰一人として見つからなかった。
「てめー一人で逃げやがって中村ー!」
「しょうがないっすよ!あの場合は仲間を捨てて逃げるのが鉄則っす!
イテッ!蹴らないでくださいよ!!」
「那波可愛かったな…へへへ…」
「やっぱり俺の選んだ娘が一番可愛かったな。」
散開して逃げた後に再び合流した彼らは、やがてそれぞれの家へ向かうために
再び別れていく。一人になり、真っ暗な家の鍵を開けると
水科は電気も付けずにベッドに倒れ込んだ。
青春の日は駆け足で今日も去っていく。
- 9 名前: え
投稿日: 2004/09/03(金) 07:37
- ゴクリ・・・
- 10 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/03(金)
09:00
- ネ申..._〆(゚▽゚*)
でも時計の文字に15や16はないけどね。
- 11 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/03(金)
20:07
-
イイヨーイイヨー・・・って、うらいたはいつから文学板になったんでしょうか?
- 12 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
00:56
- 良スレage
- 13 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
02:51
- いつも通りに、終業を告げるチャイムが鳴り響く。
いつも通り、授業時間の全てを眠り倒した水科は帰途につく。
寝起きの水科にちょっかいを出した健太郎が
鼻に鉛筆を刺され、勢いよく血を垂れ流しながら
倒れているのも何時も通りの光景だった。
水科は大あくびをしながら坂を下る。
彼の通う裏井田学園は丘の上にあり、
繁華街も、彼の住む住宅街も丘の下にあるため
この長く緩やかな坂道を往復するのが彼の日常なのだ。
「中村は部活だし、サトシはまたなんか企んでて放課後すぐに行方不明。
カツヤは『運命の女性が俺を呼んでいる』とかいって
一目散にどっかいっちまったし……あー暇だ…
青春の1ページを無駄にしたくねえなぁ。」
ぼやきながら住宅街と繁華街への岐路へ着く。
「ゲーセンでも行くか…家に籠もるよかマシだろ…」
そう呟き、水科は繁華街へと向かった。
裏井田市の繁華街は有名私鉄線の駅を中心に東西に伸びている。
繁華街の更に東が住宅街、裏井田高校は繁華街から見て北東に位置していた。
水科は大通りを駅へと抜け、駅前にある大型のゲームセンターに入る。
フロアを上がり、ビデオゲームの並ぶ階に着くと辺りを見回す。
今、アーケードの対戦格闘ゲームで一番人気のゲームのところに目的の人物はいた。
「よお鳥海。塩澤と大田さんも一緒か?」
声をかけられた水科と同じ制服の青年はジロリと水科を睨み付けた。
いや、特に睨んだわけではないのだが
長髪をオールバックに流している上に長身で体格も良く、
加えて鋭い目つきをしているので傍目には睨み付けているように写ってしまうのだ。
水科は気にするでもなく飄々と続ける。
「いやー。どうも今日は暇でよ。
ここにくりゃお前らいんじゃねーかと思ったんだが
お前一人だろ?半分正解半分外れ、ってとこだなこりゃ。」
すると鳥海はアゴで水科の後ろを示しながら口を開く。
「あいつらなら今事情を聴いてる。」
振り向くと、名前は知らないがたまに彼らと一緒にいる別校の奴と塩澤大田は話していた。
水科は鳥海にむき直り
「事情?何の?」
と尋ねる。
「なんでもここ最近、この繁華街で学生を標的にしたひったくりが出てるらしい。
今回はあいつ等が被害に遭ったみたいでな。犯人の特徴やら手口やら、
覚えてる一切を訊いてるわけだ。」
鳥海は答えつつ眉根を寄せる。
彼はその風貌、性格に似合わず意外に面倒見が良い。
その為人望に厚く、このゲームセンターの常連には彼を慕う人間が多く、
同時に今回のように頼られることも珍しくない。
そうこうしてるうちに、鳥海を一回り大きくした体躯に似合わず
穏和な顔つきの青年と、小柄だが、気の強そうな青年が話を終えて戻ってくる。
「おう。ある程度絞れたぜ。
女を泳がせてナンパしてきたバカを人気の無いところでゴン!
ってェ手口と
逆に泳がせた女に逆ナンさせて人気の無いところでゴン!
ってェ手口らしいな。
あいつらは前者に被爆らしい。ったくバカだぜあいつらもよォ」
小柄な青年が悪態混じりに話の内容をまとめ、鳥海に伝える。
「それと、女の子の制服はウチの隣の女子校の物と特徴が同じらしいですな。」
大柄な青年が付け加える。
「よーデコボココンビ。なんか大変らしいなオイ?」
手をひらひらと挙げて水科が彼らに声をかけると、
「お、科じゃねーか。丁度良いから手ェ貸せよ。」
「おや、科さん。ご無沙汰ですな。元気でしたか?」
とそれぞれから返事が返ってきた。
- 14 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
03:32
- 水科は3人に向き直り、
「さて、んでお前等これからどーするつもり?」
と訊ねる。
「決まってんべ!探し出してブッ潰す!誰に上等切ったか教えてやんよ!」
誰も塩澤に上等なんか切っちゃあいない。が、あえて突っ込むのも面倒なので
水科はこれを無視して鳥海に話しかける。
「一応やるなら手伝うけどよ、俺は痛いのも痛めつけんのもご免だぜ?
そうなったら俺は帰る。それでいい?」
「構わない。そんじゃ早速お前外歩き回れ。俺達はお前を尾行する。」
「ゴン!ってなる前に助けてね。頼むよ?」
4人組はゲームセンターを出て、陽が暮れ始めた繁華街に消えていった。
──数分後、水科は特徴と一致する娘に声をかけられ、
『一緒にカラオケ行こう』という話になり、彼女の後を付いていっていた。
(しかしこんなに早くかかるとはねぇ。俺って案外ラッキーなのかも。)
そう思い、チラリと3人組が尾けて来ている方を見やる。
野良猫と目が合った。
野良猫は「ニャー」と一声鳴くと何処かへと歩き去り、
その空間には誰もいなくなった。
(俺って案外アンラッキー?)
汗が一滴頬を伝った。
「ねー。何処まで行くの?こっちにカラオケなんてあったっけ?」
人気の無い裏道を歩きながら水科は訊ねてみる。
「この裏道を抜けたらすぐだから、もうちょっとよ」
前を歩く娘が答える。
(こりゃぁもうそろそろだな。)
そう思いL字の角を曲がった途端、水科目掛けて何かが振り下ろされた。
「って早すぎだろ!!」
叫びながら水科は間一髪でそれをかわす。
前髪にかすった「それ」は飴色の木刀だった。
「おいおい…当たったらシャレになんねーぞこりゃ!!って?」
何かに気付いた水科の動きが止まる。
そこを目掛けて木刀が降り下ろされる。
が、木刀が水科に届くことは無かった。
大田が振り下ろされた木刀を掴んで止めたのだ。
「お待たせしましたな。間に合って何より。さて…と?
うぅむ…これは……どういうことでしょう?」
向き直った大田も何かに気付いた。
「俺が訊きたいくらいなんだよね。どゆこと?」
水科を襲った人物は、意外にも囮役の女の子と同じ制服を着ていた。
彼らが話している間に、大田に木刀を掴まれた少女はそれを捨て、
囮役の少女と共に水科達と逆方向に駆けだした。
「ゲ!逃げやがった!!チックショあの女!!待てコラ!!!」
追おうとした水科を大田が制止する。
「何すんのよ大田さん!あいつ等逃がしちまうぜ!?」
「まあまあ。…そろそろですな。」
と、突然
「死ねコラァァァァァァ!!!」
と怒声が響いたと思えば、建物の影から塩澤が飛び出し
少女の横腹にそれはそれは容赦の無い蹴りをブチ込んだ。
「…てアレ?女?…どゆこと?俺、ひょっとしてやっちゃった?」
足下に崩れ落ちた少女を見て、流石の塩澤も狼狽える。
「それはコイツに訊けばいい。」
遅れて水科達の来た道から鳥海が姿を現す。
その右手には襟首を掴まれて、
今にも「ニャー」と言いそうな格好の少女をぶら下げていた。
- 15 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
04:53
-
水科達と少女達は駅前のチェーン系の喫茶店に居た。
鳥海の説明によれば、
水科達が路地に入った時、一本道の出口に塩澤を向かわせ
大田を水科の護衛役、そして自分は囮と攻撃者の連絡係を捜していた、
との事だった。
「さて、お話きかせてちょーだいな。」
水科が笑顔で問いかける。が、少女達は何も答えない。
「おいテメェ等。黙ってンじゃねぇよ!!また蹴り飛ばされてェのか?あ?」
塩澤が食いかかるが、先ほど彼に蹴られた少女が睨み返すだけだ。
「こりゃ困りましたね。」
始終を見ていた大田がコーヒーをすする。
と、鳥海が静かに口を開く。
「そうか…ならしょうがない。不本意だが後は警察に任せるか。」
そう言って携帯電話を取り出す。
流石にそれには少女達も動揺を隠せず、
「わかったわよ…話せば良いんでしょ…全部話すわよ…」
と重い口を開く。
話によれば、彼女達にはもう一人仲の良い娘が居たらしい。
だが、つい先月の事だった。彼女たちとは別の友人と
この繁華街を歩いていた時、つい近道をしようと入った裏道で
数人の高校生に襲われたらしい。
だから彼女達はこの繁華街で良く見かける高校生を襲っては学生証などを奪い、
なんとか逃げ延びたもう一人の方の少女に確認を取っていた、との事だった。
「話は大体解ったが、無実なのに襲われた方はたまったもんじゃないねぇ」
苦笑混じりに水科が指摘する。
「そりゃ悪いと思ったわよ…でも、こっちも必死なの!」
それまでは静かに聞いていた塩澤がそれを聞いて、ブチ切れた。
「開き直ってんじゃねぇぞテメェ!さっきから聞いてりゃ
なんだ?テメェ等被害者ぶって関係ねえ奴巻き込みやがって!!
こっちゃテメェ等の事情なんて関係ねぇんだよ!どう落とし前つけっかだ!
あ?どーすんだよコラ!!」
鳥海が塩澤をなだめる。
「お前も落ち着け。けど、コイツの言うことはもっともだ。
お前等、仮に真犯人を見つけたら巻き添えにした奴らにどうするつもりだ」
そう少女達に問いつめる。
「…それは…」
と少女達は言いよどむが、木刀の少女は
「全てが終わったら警察に出頭するつもりです。」
と答えた。
「そうか。」
とだけ鳥海は呟くと、
「なら、俺も協力しよう。」
と切り出した。
「あぁ!?何言ってんだ?マジかよオイ!?」
と塩澤が鳥海に向き直るが、
「ふむ。そうですな。俺も手伝いますよ。」
「ま、これに乗ればしばらくは退屈しないで済むか。」
と大田と水科は鳥海に賛同する。
「なんだってんだよ全く…わかったよ!俺も協力するよ!」
渋々といった様子で塩澤も賛同の意を表す。
「そういうわけだ。お前等は二度と路地裏で人を襲うな。
1週間以内にお前等の仲間を襲った奴を見つけてやる。」
そう言って鳥海は席を立った。
「鳥海さんに任せておけば大丈夫ですよ。安心してください。」
大田がそれに続く。
「いいか!俺は渋々だからな!」
「はいはい。ごめんねー。コイツ口悪いからさ。照れてるだけなんだよ。」
「誰が照れてんだよ!おい待て科!置いてくな!おいコラ!!」
水科と塩澤も後に続く。
残された少女達は急な展開に固まってしまっていた。
- 16 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
05:37
- なにこれ糞スレかとおもったけどおもろいじゃん。
- 17 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
07:15
-
盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !
- 18 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
16:05
- やべ、神スレじゃねーか…
- 19 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
18:51
- 続きが気になるね…
- 20 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/04(土)
22:50
- かなりおもしろいね。
- 21 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/05(日)
03:55
- 終業のチャイムが響く。
「みずぴー殺ったあぁぁぁぁ!!」
水科は後ろからダイブしてきた健太郎を事も無げにかわし、
足早に戸を潜る。
「なんだありゃ?」
どこかにぶつけたのだろう。鼻から血を流して机に埋もれていた健太郎が
珍しい物を見るように水科が消えていった扉を見つめていた。
水科は隣のクラス、2-Aの前に居た。
と、どうやらHRが終わったようで生徒達が扉を抜け始める。
その流れに逆らい教室に入り周囲を見渡す。
窓際の席で鳥海が荷物をまとめていた。
「よ。んで、今日はどーすんの?」
声をかけられた鳥海は水科を一瞥すると、溜息を吐きつつ
「暇な奴だな全く。今日は何もしない。
大田も部活だし、情報もまだ入ってこない。」
そう言うと鞄を持って教室を去っていった。
「…今日は俺も帰るか……」
大欠伸を漏らしながら水科も鳥海の後を追った。
- 22 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/05(日)
04:09
- 翌日。
水科は終業と同時に2-Aへ向かう。と、廊下で鳥海に出くわした。
「丁度いい。何件か有力な目撃情報が入った。今から確認に行く。」
2日。調査開始から僅か2日で有力な情報を得るに至った。
(どんだけの人脈なんだろねコイツは…)
「いやはや恐ろしいネットワークね。こりゃ迂闊にエロ本も買えねえや。」
軽口を叩く。
「安心しろ。既にお前が3日前に買ったエロ本のタイトルまで知ってる。」
「うへぇ…」
「大抵この時間にここを通るんすよ。あん時もそうでしたし。」
夕暮れの繁華街の一角。水科達は一度ゲームセンターに寄り、
情報提供者を拾って張っていた。
10数分が経過し、塩澤が痺れを切らせかけた時、
「あ、あれっす。あいつ等っす。あいつ等があの時女の子と揉めてたんすよ。」
それを聞いた鳥海が無言でアゴをしゃくる。
「オッケ。まあ見てろよ。ガラスの仮面と呼ばれた俺の力を見せてやんぜ!」
そう言って水科は柄の悪い集団へと駆け出す。
「あ、あの、すいません。この子の事知りませんか?
数日前にこの辺りで襲われたらしいんです。何でもいいんです!
何か知りませんか?」
気弱そうな雰囲気を演出しつつ襲われた子の写真を出す。
男達の動きが止まり、互いに顔を見合わせると
おどおどしている目の前の青年を見てニヤリと笑いを浮かべ、
「あぁ。知ってるぜ。ここじゃなんだから場所変えようか。」
と言って人気のない方へ歩いて行く。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
と言って後ろからついて行く水科の顔には意地の悪い笑顔が浮かんでいた。
- 23 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/05(日)
04:45
- 人気の無い路地裏に入ると男達は道をふさぐ。
一人の男が水科に近づく。
「んじゃ教えてやるよ。あの女ァな、俺等が襲ったんだよ!
傑作だったなぁ?最後まで抵抗しちゃってよ。
男の力に敵うワケねーってんだよ!!頭わりィよなぁ!?」
そう言うと全員がドッと笑う。
「さて、教えてやったし、情報料ちょーだい。」
男が詰め寄るが、水科は態度を一変させると
「はいカット!証言取れましたー。」
と笑みを浮かべる。
「だっせェ演技だったなぁ!ギャハハハハ!!」
「いやいや、お見事ですな。」
「ご苦労。後は俺達の役目だ。」
見張りの男が倒れ、その向こうから鳥海達が姿を現した。
「んじゃ後はよろしく。やりすぎんなよー。」
水科は鳥海達が来た方へと目の前の男に背を向けてスタスタ歩き出す。
「待てコラ!何チョーシこいてシカトしてんだ?あ?」
そう言って水科の肩を掴んだ瞬間
男の体は「く」の字に曲がって吹っ飛んでいった。
「慌てんなよ!テメェ等全殺しにしてやっからよォ!ギャハハハハ!!」
塩澤が鳩尾に蹴りを入れていた。
そのまま水科は少し離れたところで乱闘を観戦する。
人数的に優位だった柄の悪い集団は瞬く間に減っていき、
ものの5分とせずに全員地を舐めていた。
- 24 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/05(日)
05:05
- 「さて…」
息一つ乱していない鳥海が水科と話していた男に歩を進める。
男は怯え、尻餅をついた状態で後ずさる。
「待て!待ってくれ!!俺達はただ頼まれただけなんだ!!」
男の言葉に歩みを止める。
男はそこに希望を見出したのか、半笑いで言葉を続ける。
「俺達が襲った奴と一緒に居た女さ!アイツが俺達に
『あの子ウザいからヤっちゃっていいよ』って持ちかけてきたんだ!
俺達はアイツの計画を手伝っただけなんだ!!」
男の様子から、嘘をついている風でもない。
鳥海は少しの間目を閉じ逡巡し、再び男へと歩を進める。
「待て!待って!ヒッ…」
グシャ、と何かが潰れるような音が2,3度。
耳障りな悲鳴が響いたきり、辺りは静かになった。
「さて、意外な展開になってきたねぇ。どーすんのこれから?」
「…」
鳥海は答えない。
「女ってのはなんだ…こう、吐き気がするぜ!胸クソ悪リィ!!」
「いささかこれは深刻ですな…」
やがて鳥海が口を開く。
「俺達は事実を報告するだけだ。」
そして繁華街へと表通りへと歩き出す。
空は彼らの心情を投影したように、
闇に包まれた空に浮かぶ月を分厚い雲で覆い隠していた。
- 25 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/05(日)
05:25
- 塩澤さんカッケェ
- 26 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/05(日)
12:09
- 塩澤さんDQN杉w
- 27 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/06(月)
05:16
- 続きマダー?
- 28 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/06(月)
07:17
-
塩澤さんは鮮血とバイオレンスのワインレッドですか
- 29 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/06(月)
17:34
-
塩氏はリアルでもこんなに恐ろしい人なのかと小一時間(ry
- 30 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/06(月)
18:53
- 見ているこっちが恥ずかしいw
- 31 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/06(月)
19:28
- 塩澤さんを怒らせたら、お前ら全殺しですよ
- 32 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/07(火)
12:52
- 保守
- 33 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/07(火)
19:57
- 期待age
- 34 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/09(木)
13:31
- そろそろ更新期待age
- 35 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/09/14(火)
18:33
- 更新マダー?
- 36 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/11/03(水)
18:11
- 一応保守
- 37 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/11/11(木)
20:03
- 保守age
- 38 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/11/17(水)
11:19
- 保守age
- 39 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/11/17(水)
16:29
- 5で麻雀やってた高瀬さん以外の面子は誰だろ?
- 40 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/11/22(月)
13:54
-
皆さんは本当にヤリまくれる出会い系サイトに出会った事はありますか。
サクラ(サイトが雇って文章打ち込んでるヤツラ)に
振り回されるのはもうたくさんですよね。
出会い系サイトも1つのサイトに男女が集中しつつあります。
ココはその代表格なんですが、無料でヤれてしかも参加者の4割が女性です。
フリーメールで登録できる = 匿名での参加ができるので周囲の人間に
ばれる心配は全く無いです。完全な無料なので試しに遊んでみて下さい。
出会い系サイトに対する価値観は間違いなく変わります。
http://www.cyber-ad01.com/sharanra/?ip=0004&id=B959
- 41 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/01(水)
21:47
- あ
- 42 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/02(木)
00:26
- >>39
高瀬、山口、塩澤、鈴木。
- 43 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/16(木)
11:46
- あげときます
- 44 名前: 名無しさん 投稿日: 2004/12/24(金)
23:10
- age
- 45 名前: 名無しさん 投稿日: 2005/01/06(木)
15:04
- けんちゃんつづきはー