広島東洋カープバトルロワイアル2005
11.月に吠える
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匿名ユーザー
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枕元の時計に目をやった。
まだ、灯りを消してからそう時間は経っていない。
そのため眠りが浅かったのだろう。彼女はその異変に気がついた。
― …ン…ワンッ… ―
声は窓の外から。
(どうして、こんな時間に?)
まだ、灯りを消してからそう時間は経っていない。
そのため眠りが浅かったのだろう。彼女はその異変に気がついた。
― …ン…ワンッ… ―
声は窓の外から。
(どうして、こんな時間に?)
広島県が温暖といっても、それは瀬戸内の印象でしかない。
中国山地を背にした北広島町では、この季節は夜はもうだいぶ冷え込みが厳しい。
上着を羽織って外へ出れば、
「どうしたの、ミッキー?」
彼女の家族が、じっと空を見詰めたまま鳴き声をあげていた。
中国山地を背にした北広島町では、この季節は夜はもうだいぶ冷え込みが厳しい。
上着を羽織って外へ出れば、
「どうしたの、ミッキー?」
彼女の家族が、じっと空を見詰めたまま鳴き声をあげていた。
もともとミッキー(111)の性格は大人しい。
喜ぶ・甘えるという感情の表現は豊かだが、怒ったり吠えたりということは珍しかった。
ましてやこんな夜更けに。
「お腹…はすいてないよね。どこか痛いの?」
「クゥ…ン…」
横に座って声をかけると、ようやくミッキーが振り返った。
切ないげな声。そして
「え…」
背を撫でようと伸ばした手を、止めた。
(……泣いてる?)
喜ぶ・甘えるという感情の表現は豊かだが、怒ったり吠えたりということは珍しかった。
ましてやこんな夜更けに。
「お腹…はすいてないよね。どこか痛いの?」
「クゥ…ン…」
横に座って声をかけると、ようやくミッキーが振り返った。
切ないげな声。そして
「え…」
背を撫でようと伸ばした手を、止めた。
(……泣いてる?)
どうしたのと、もう一度問いかければミッキーは少し俯いて。
そしてまた、すぐに空を見上げる。
その瞳が泣いている。涙を流しているわけではない。
それでも彼女にはわかるのだ。ミッキーが泣いている。
「哀しいことがあったの、ミッキー?」
しかしミッキーはその問いには答えない。
視線の先で星が瞬いていた。
星座はゆっくりと天を巡り、南の空には冬の気配を纏った明るい星々が姿を見せ始めている。
その方角をじっと見詰めたまま、ミッキーは動かない。
「何があるの?あの空の向こうで、何があったの?」
両腕を伸ばした。
その暖かな首に顔を埋れば、微かに震えている。やはり泣いている。
そしてまた、すぐに空を見上げる。
その瞳が泣いている。涙を流しているわけではない。
それでも彼女にはわかるのだ。ミッキーが泣いている。
「哀しいことがあったの、ミッキー?」
しかしミッキーはその問いには答えない。
視線の先で星が瞬いていた。
星座はゆっくりと天を巡り、南の空には冬の気配を纏った明るい星々が姿を見せ始めている。
その方角をじっと見詰めたまま、ミッキーは動かない。
「何があるの?あの空の向こうで、何があったの?」
両腕を伸ばした。
その暖かな首に顔を埋れば、微かに震えている。やはり泣いている。
この夜、空の向こうで、一つの悲劇がその幕を開けている。
ミッキーの大切な者たちの激情と慟哭は、空を震わせて彼の耳に届いた。
だが、それを知ったところで、ミッキーに何ができるというのだろう?
その者たちの心の痛みを和らげることも、悲しみを癒すこともできず、
今はただ無力に、こうして空を見て泣くことしか出来ない。
ミッキーの大切な者たちの激情と慟哭は、空を震わせて彼の耳に届いた。
だが、それを知ったところで、ミッキーに何ができるというのだろう?
その者たちの心の痛みを和らげることも、悲しみを癒すこともできず、
今はただ無力に、こうして空を見て泣くことしか出来ない。
彼女は、この夜更けに急に泣き出したミッキーの悲しみの理由を知らない。
彼を愛した…そして彼が愛した者たちに訪れた悲しみを知らない。
だからただ、空を見詰めて泣く彼のことを強く抱きしめ続けた。
彼を愛した…そして彼が愛した者たちに訪れた悲しみを知らない。
だからただ、空を見詰めて泣く彼のことを強く抱きしめ続けた。
空には、月が出ていた。
【生存者残り41人】
リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A