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神の不在証明  ◆TPKO6O3QOM




 電車を知っていれば言葉が通じる奴の可能性が高い。これは、まあ事実だろう。だが、言葉が通じるが故の断絶ほど深いものはない。
 例えば、キメラアントと人間は言葉が通じる。だからって分かり合えるか?
 一部はイエスだ。おれとゴン、キルアとイカルゴみたいにな。
 じゃあ、王と人間はどうだ。分かり合う余地があれば、あんな戦いは起こらないわな。
 いや、そもそもそりゃあ人間同士にも言えることだ。道理を説いたところで殺す奴は殺すし、奪う奴は奪うし、犯す奴は犯す。話せば分かるなんて世迷い事が本当なら、警察官は皆失業だ。
 ただの獣だったら、脅してやれば逃げる。余計に追い詰めたりしなければな。
 だが、襲い来る相手が理性ある相手だった場合は脅したところで意味はない。ましてや言葉を尽くしたところで、止まることはない。
 見ず知らずの他人の言葉で揺らいでしまうぐらいなら、そいつは初めからそんなことはしない。そんなことも分からないで凶行に走るバカもいることは確かだが、そんな奴はそれほど怖い相手じゃーない。
 怖いのは狂信的な信念を持っている奴だ。使命感と言い換えてもいい。どんなことも自分の中で正当化してしまう。

 俺たちが出会ったのはそんな相手だった。残念ながらバカじゃなかった。
 そいつは駅の中に居た。鎧を身につけた、白くて気持ち悪い奴だ。
 そいつに初めに気付いたのはホロだった。




「誰ぞ居るな」

 マントの下でホロの尻尾が小さく揺れ、さらりという衣ずれの音を奏でる。ホロの口調は変わらずのんびりとしたものであったが、その端には警戒の色があった。
 身を低くして草叢から前方を臨む。日が昇りつつある白じみた空に赤紫の雲が薄くかかっていた。
 地下鉄の駅まではあと二百メートル弱といったところだろうか。当然だが、“円”など届くはずもなく、確かめようがない。

「確かか?」
「わっちの鼻を疑うのかや?」
 自信ありげに鼻を鳴らすホロを見上げたまん丸がよぉしと呟いた。
「じゃあ。ボクが見てくるね」
「ちょと待てい。何が“じゃあ”なんだ何が」
 ぱたぱたと草むらから出て行こうとしたまん丸の頭をむんずと掴んで止める。手の下でもがくまん丸を無視し、ホロに質問を重ねる。

「数は?」
「一匹じゃ。だが、血の臭いがするの」
 目を鋭くしたホロの口元から鋭い犬歯が覗く。先客は襲われたか、それとも襲ったのか。
「別の駅に行ってみるか?」
「それで、そっちにも先客がいたらどうするのじゃ? それは血の臭いのせぬ相手かもしれぬが、だからといって安心できる相手とは限るまい? 危険は今と然程変わらぬ。ぬしがどうしてもというのなら、わっちは止めはせぬがな」
「……中にいる奴をどう思う?」
「賢狼として明察を述べたいところじゃが……分からぬ。中におる者の鼓動は酷く静かじゃ。剣呑な音ではないが、心が休まるような音でもなし。ただ、積極的に友好を深めたい相手ではないの。ああいう音の相手は好かぬ」
「………………」


 まん丸から手を離し、メレオロンは左腕を指で叩いた。ホロの言うとおり、先延ばしにしても仕方がない。この地で完全に信用できる参加者はイカルゴだけだ。
 それ以外は自分で判断を下していくしかない。とはいえ、駅の中にいる先客は好ましい客ではなさそうだ。浮世離れた所があるが、ホロが経験豊富な魔獣であることはこれまでの会話で痛いほど知れた。
 彼女の勘は一考する価値がある。
 電車を使うことそのものを諦めるべきだろうか。いや、先客をやり過ごせればいい話だ。
 自分の念能力なら容易なことだ。だが、ホロとまん丸を加えるとなると話は別だ。
 リスクは大きくなり、何よりも自分の奥の手を晒さなくてはならなくなる。
 彼らは信頼にたる連中だろうか。
 まん丸は、一言でいえば子供だ。それ故の予測できない危うさがあるが、彼自身に危険はない。
 では、ホロはどうか。居丈高で図々しさがあり、少女の形をしてメレオロンを子ども扱いする。かと思えば、時折処女のような初々しく純朴な表情を垣間見せる。
 捉え処がないのだ。この手合いが一番信用しにくい。
 マントの下から尻尾を出し入れして、まん丸と遊んでいるホロを見、メレオロンはかぶりを振った。
 信用できないという点では誰もが同じだ。ならば、誰でもいい。少なくとも、現時点でホロに敵意はない。
 メレオロンは指を止めた。

「ひとつ案がある。乗るか?」
 遊びを中断し、二匹が顔を上げた。
「聞くだけ聞いてやってもよいぞえ?」
「どうするの?」
 偉そうなホロに少し頬が引き攣るものの、どうにか堪え、メレオロンは“神の不在証明 (パーフェクトプラン)”を発現させた。ホロの眉が跳ね上がったのを確認し、メレオロンは息を吐く。

「ぬし、透明になれるとはいっておったが……それは」
「まあなんだ、とっておきって奴さ。“消え”ていられるのは、俺が息を止めている間だけだけどな。それで、だ――」

「すごーい!」

 手順の説明に移ろうとしたメレオロンをまん丸の歓声が遮った。
「メレオロンさんは本当はネンガさまみたいな忍じ――」
「声が高ーぞ、まん丸っ」
 慌てて手でまん丸の口をふさぎ、ホロを見る。フードの下の耳がぱたぱたと動いた。
「動きはありゃせん。しかし、お守も大変じゃな」

 苦笑を溢すホロを半眼で見やってから、メレオロンは一つ嘆息した。

「こいつは、俺に触れている奴にも同様の効果がある。手を繋いだりとかな。それで駅舎まで近づき、堂々とホームまで降りて電車に乗る。ばれたら、あんたらを抱き抱えて一気にホームまで走る」
「なんとも頭の悪い策じゃな」
「……悪かったな、頭悪くて」
「それにぬしの細腕でわっちやまん丸を抱えられるかや?」
「体力に自信があるとは言わねえが、女子供を抱えて走るぐらいなら出来るさ」
「ふむ。ロレンスよりは頼りになるか」

 言葉に反して、ホロは楽しそうだ。ロレンスという名は名簿になかったが、彼女の旦那か何かだろう。

「問題はどれだけ息が続くかだ。平時なら二分は余裕だが、動いてとなると一分もつかどうか。走ったら十秒を切るかもしれない」
「休憩しながら行かなきゃね」
「ああ、そうだ」
 まん丸に頷いてやる。ぽんぽんとまん丸の頭を叩いてやり、メレオロンは続けた。
「息がもたなくなった際の――」
「いや、それならばわっちが――」
 ホロの言葉とぶつかる。疑問の視線を投げかけると、ホロはついと顔を背けた。
「……なんだ?」
「なんでもありゃせん。続けてくりゃれ」
 どうせ小さすぎるとかなんとか、口の中でぼやいている。メレオロンは肩を竦め、言い直した。
「息がもたなくなったら、おまえらの手を親指で叩く。そうしたら気配を殺してくれ」
 二匹が頷くのを見、メレオロンは二匹の手を掴んで息を止めた。

 掻き分けられる草音は朝靄に吸い込まれていく。薄く煙った駅舎が少しずつ近づくにつれ、メレオロンの背中に冷たい汗が流れた。駅舎まで行けば、中を確認できる。先客の様子如何では声を掛けてみてもいいだろう。
 何度も休憩を挟み、駅舎は目と鼻の先の距離まで漸く進んだ。風の方向を確認し、最後の休憩と、二人の指を親指で叩く。
 “神の不在証明 (パーフェクトプラン)”を解いた直後、どてっと転ぶ音が響いた。まん丸だ。草にでも足を取られたか。

「ぬしっ!」

 ホロの警戒の声が飛ぶ。駅舎から先客が姿を現していた。いや、出現したと言った方が正しいか。先客の行動の足跡のようなものがないのだ。
 華奢にも見える身体をぬめりとした白い体皮が覆い、装飾の多い鎧を着込んでいる。右手は不自然にぶら下がっていた。
「よ、よぉ。いい朝だな」
 軽口も舌が上手く回らない。先客の目は大洋の底のように深く、静かな色を湛えていた。

≪全ポケモンの解放のため、死んでもらう≫

 キーンという不快な響きが脳に走る。それは肉声ではなく、思念だった。キメラアントの女王が用いるテレパシーのような。
「ぽ、ぽけもん?」
 問いには答えず、先客は同時に黒い渦のような球体を幾つも繰り出した。
 放出系の念能力か。その禍々しいオーラに悪寒が走る。メレオロンは右手で転んだまん丸を、左手でホロの腰を抱きかかえた。
 先客の瞳に宿るのは強い決意だ。ゴンの瞳がそれに重なる。それの放つ迫力に気圧され、メレオロンの口が歪んだ。
 交渉の余地はなしのようだ。メレオロンは大きく舌打ちする。

「しっかり掴まってろよ!」

 息を止め、メレオロンは地下鉄のホームへと走る。




 来訪者たちの姿が消えた。ミュウツーの目に戸惑いが浮かぶ。テレポートをしたのだろうか。いや、それにしては消え方がおかしい。
 自分の着ている鎧のように、不思議な力を持った道具で姿を消したのか。とすれば、彼らはまだ遠くへは行っていないはずだ。むざむざと逃がすわけにはいかない。

(なによりもカクレオンらと一緒に居た人間を逃してなるものか!)

 ミュウツーはサイコカッターを八方に放った。放たれた不可視の刃は駅舎の壁に傷を付け、首を刈られた草は風に舞う。何かが倒れる音はない。
 息を荒げるミュウツーの後方で、『マモナク、F−4行キノ電車ガ発車スルンダベ! 扉ガ閉マルンデ、注意スルベ!』という声が流れていた。
 血の臭いを感じ、ミュウツーは振り返った。駅の入り口に大量の血液が零れている。そして、それは地下への階段へと点々と続いていた。






 ぷしゅーという音を立て、扉が閉まった。
「痛い……」
 電車に飛び込んだ拍子に投げ出され、まん丸は強かにぶった頭を撫でた。
『次ハF−4、F−4ダベ』
 アナウンスがそう伝えた。

「……おまえら、無事か?」

 扉に背を預けて床に座り込んだメレオロンが聞いた。
「ボクは大丈夫だよ」
「……わっちも生きておる」
 ホロはまん丸の傍の座席に腰掛けていた。だが表情は険しい。よく見れば右腕を抑えている。
「そいつは……良かった」
 二匹の返答にメレオロンは小さく笑みを刻んだ。
「駅に着けば……勝手に、ドアが開く……誰も居ないようだったら、降りな」
「うん……」
 他人事のような口調のメレオロンに戸惑いを覚えながら、まん丸は返事をした。
「ホロ、頼むぜ。イカルゴのことも、な……」
「……眉の太いタコじゃったな。食いはせん。安心してくりゃれ」
 ほうと溜息のような声をメレオロンは漏らした。吐息とともに何か、大切なものまでもが吐き出されてしまうような溜息だった。
 まん丸は不安に瞳を揺れ動かした。理由のない恐怖が身体を縛る。

「煙草……吸いてえなぁ……」

 そう呟き、メレオロンは目を閉じた。戯けがと、ホロが悔しそうに呟くのが耳に入る。
「メレオロン、さん……?」
 呼びかける。しかし、返事はない。
 再度呼びかけようとしたまん丸の肩をホロの手が抑えた。その手は血で濡れている。ホロは怪我をしたようだ。
 見上げると、ホロは小さく首を横に振った。まん丸は困惑しながらも、黙る。早鐘のような自身の鼓動が不安を大きくする。

 メレオロンは動かなかった。ずうっと、ずうっと動かなかった。



【E-4/地下鉄内/一日目/早朝】
【まん丸@忍ペンまん丸】
【状態】:頭に打撲(小)、強い不安
【装備】:なし
【道具】:支給品一式、不明支給品×1〜3(本人、メレオロン、ホロ確認済)、チョコビの空き箱
【思考】
基本:念雅山に帰りたい、殺し合いには乗らない
0:メレオロンさん……?
1:タヌ太郎、ツネ次郎に会いたい。
※原作終了後からの参戦です。
※メレオロン、ホロと情報交換しました。



【ホロ@狼と香辛料】
【状態】右腕に切創(小)、怒り
【装備】:魔甲拳@ダイの大冒険
【所持品】:支給品一式、折り紙×10枚@忍ペンまん丸、ヨーヨー@HUNTER×HUNTER
【思考】
基本:ゲームに乗る気はない。ただし、向かってくる者には容赦しない
0:F−4駅に誰もいなければ降りる。その後、仲間探し。
1:麦、もしくは参加者を探すかや。
2:どうにかして血を手にいれたいの
3:わっちの麦はどこにあるのじゃ?
【備考】:参加時期は6話「狼と無言の別れ」の後です。
※メレオロン、まん丸と情報交換しました。
※生き血を飲んで変身できる事は話していません。



【E-4/駅前/一日目/早朝】
【ミュウツー@ポケットモンスター】
【状態】:右腕重傷(回復中。動かす事は不可能)、PP消費(小)、疲労(小)、怒り
【装備】:しんぴのよろい@ドラゴンクエスト5
【所持品】:支給品一式、不明支給品(0〜2個、確認済)
【思考】
基本:ゲームに乗る
1:相手が誰だろうと容赦なく殺し、優勝する
2:万が一人間を見掛けた場合、用いる限りの手段を使って惨殺する
【備考】
※自分の力が制限されていることに気がつきました。
※パスカルを殺したと思っています。
※キュウビに協力者がいるのではないかと考えています。
※傷が回復したとしても、右腕が動かせるようになるかは分かりません。
※ホロを人間と思っています。




【メレオロン@HUNTER×HUNTER 死亡】
【残り 38匹】
メレオロンのデイバッグ(支給品一式、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ、チョコビ(残り4箱)@クレヨンしんちゃん)は死体の傍に転がっています。




時系列順で読む


投下順で読む


031:狼×お子様×サッカー場 まん丸 057:夢有
031:狼×お子様×サッカー場 メレオロン 死亡
031:狼×お子様×サッカー場 ホロ 057:夢有
041:孤鬼 ミュウツー 060:残すものは言葉だけとは限らず




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