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Dances with the Goddess  ◆TPKO6O3QOM



 微風に揺れる狗尾草を目の前にして、ムックルは鼻先をむずむずとさせた。足でじゃれつきたい衝動を必死で堪える。伏せたまま、耳だけをぴろぴろと蠢かす。あれ以降、臭いも漂ってこない。周囲の獣は血の臭いを感じ取り、逃げてしまったのかもしれない。

 むふぅという不満げな吐息に、狗尾草が大きく揺れた。

 何者かの臭いが流れてきて然程時間は経っていない。いないのだが、早くも彼は飽きてきていた。
 彼は今満腹の状態だ。普段ならば狩りをする必要など、何処にもない。なりを潜めていた好奇心がむくむくと首をもたげ始めていた。
 そうなると、林立する墓石も彼の眼には面白そうな玩具に見えてくる。ただじっとしているのは苦痛でしかない。
 また、それに耐えきったところで、別の問題がある。

「むぅ〜……」

 重く垂れてきた瞼を、前足を擦りつけて留める。腹が満ちれば、自然と眠くなるものだ。
 太陽が昇り、辺りは心地の良い陽気に包まれている。母親と共に木蔭で横になっている頃合いだ。ましてや、伏せた状態でじってしているのだ。睡魔がすり寄ってくるのも致し方のないことだった。

(だめ! おかーさんのとこ、かえるんだから!)

 己に言い聞かせるも、その対象である母が目の前にいないのでは意識を常に彼女へと保ち続けることは難しいようだ。
 舟を漕ぎそうになるたびに前足で眼を擦って睡魔に抗い続けていると、何処からか人間の声が流れてきた。
 耳だけをそばだたせ、ムックルは墓石の影にその巨体を納めた。
 目的が具体的な形となれば話は違ってくる。ムックルの瞳から好奇心に満ちた無邪気さは消え、無表情な剣呑さを湛えた光と入れ変わる。
 しばし待つと、東の方に来訪者の姿が確認できた。どうやら二匹のようだ。モロとよく似た、しかし二回りは小さい白い獣と、それに跨る、外套(アペリュ)を纏った獣だ。白い獣の方は、体と顔に隈取りのような模様が走っているようだ。
 緊張しつつも、適度に弛緩した状態を保ちながら、来訪者の動向をつぶさに観察する。

 二匹は墓石の間を進んでいく。
 外套の獣は一応警戒しているのか、周囲をやけに見回している。だが、それは無駄も多く、さして気にするものではない。緊張をほぐすためか、やたらと喋っているが、そのことで自身の注意力を乱されている。
 問題は白い獣だ。おっ立てられた尾が警戒していることを表しているが、動作はゆっくりとしたものだ。しかし、気を周囲に無駄なく配っている。血の中に混じるムックルの臭いを感じ取られることはないだろうが、呼吸を僅かでも乱せばすぐに気取られることだろう。
 白い獣の警戒が乱れる様な事態が起こるまで待つか。いや、みすみす見逃す結果になる可能性が高い。
 ならば、射程に入った処で襲い掛かるより他にない。ただ、相手は小さく、身軽さではムックルが劣る。さらに、小さいとはいえ、背に獣一匹を乗せられるだけの充分に立派な体躯を誇っている。
 下手に襲いかかれば、西か東に風のように逃げ去ってしまうだろう。

 しかし、ここでムックルは気づいた。相手の逃げ道は西か東しかないのだ。
 彼らの逃走経路は墓石に邪魔されており、白い獣は墓石の間を縫えるほど小さくはなく、墓石を破壊できるほどの膂力もない。一方、ムックルにとって、墓石の林はさしたる障害にはならない。
 そして、一撃さえ決まれば、それで終わる。条件としては五分、対峙した場合ならばムックルの方が有利だ。



 ムックルは身を起こし、四肢の筋肉が柔らかく収縮させていく。白い獣の一向がムックルの目の前から少し通り過ぎたところで、彼は一気に筋肉の戒めを解いた。
 墓石の頭を蹴り上げ、陽光の中で巨体を躍らせる。邪魔な墓石は彼の体躯の前に粉と散った。外套の獣が何事か叫び、その前に気付いていたらしい白い獣が逃走の素振りを見せる。
 それを視界に捉えながら、ムックルは墓石を蹴って方向を変えた。足を踏みかえ、大きく跳躍する。
 墓石の間を一直線に駆け抜けようとする白い獣の背に向けて、前足の一撃を繰り出した。たとえ避けられても、次の一手で確実に仕留められる間合いだ。
 肩越しに振り返った外套の獣の眼が大きく見開かれる。ふと、白い獣の尾が何かを穿つような動作を見せた。

 途端、地面より樹木がせり上がり、ムックルの眼前を包んだ。無論、細木などがムックルを止められるはずもない。中ほどでへし折られた樹木の悲鳴が響く。
 しかし、摩訶不思議な現象にムックルの呼吸が乱され、次の行動が少し遅れた。着地と同時に繰り出すはずであった前足は力なく地面を叩く。
 だが、白い獣はそのまま逃走せず、背中の獣の外套を加えると大きく首を動かして、同行者を西へ放り投げた。ムックルと向かい合った白い獣の後方で、外套の獣が地面を転がっていくのが見える。

「アマ公――!?」

 すぐさま立ち上がり、外套の獣は白い獣に駆け寄ろうとした。そのとき、また不可思議な出来事が起きた。
 白いの獣の尾の動きに合わせて何か光芒のようなものが空間に走ったかと思えば、複数の墓石が両断され、白い獣と外套の獣の間の地面に大きな刃で抉ったような痕が刻まれる。
 粉塵が漂う中、白い獣は後ろに向かって尻尾を振って見せた。
 しばし、外套の獣は逡巡の表情を浮かべていたが、大きく頷くと踵を返して西へと走って行った。

 その間、ムックルは警戒のため、動くに動けないでいた。白い獣は、人間の一部が使う法術のようなものが使えるらしい。
 白い獣を相手にするより、外套の獣を追う方が容易いだろうか。視線を先の獣が行った方向に一瞬移したそのとき、鼻先を何かが撫でて行った。びくりと身体を震わせて眼を戻すと、白い獣の姿はない。

 わんっ! とすぐ近くで吠え声がした。大きく飛び退って見やれば、先の白い獣が尻を高く上げて、尻尾をゆらゆらと振っている。まるで、遊びに誘うかのように。
 間の抜けた面構えで、白い獣はもう一度大きく吠えた。
 何故だか言葉は分からない。だが、馬鹿にしていることは感じ取れる。
 あのとき、ムックルを仕留めることは可能だったはずだ。丈夫な体毛も、法術にはそれほど効果がない。それなのに、敢えてしなかったのだ。
 受けた恥辱は余りある。これまで、“森の主(ムティカパ)”に対して無礼た態度を取った存在などいない。

 白い獣は座った状態でひとつ大きく欠伸をすると、ぱっと身を翻して走り出した。
 ムックルは怒りに満ちた咆哮を上げた。墓石を弾き飛ばしながら白い獣を追う。
 どういうわけか、白き獣が走った軌跡には青草が生い茂っては消えていく。踏み躙られた草の香を避けるようにムックルは小さく跳び、爪撃を繰り出す。それを白い獣は旋風のように身を翻し、舞うように避けて行く。
 業を煮やし、ムックルは地面を蹴り上げ、まっすぐに突進した。血染めの鋼鉄の牙が生々しく光る。
 それを白い獣は宙返りをして回避すると、すれ違いざまにムックルの頭へ後ろ足を叩きつけていった。もっとも、ムックルには少し強く押された程度にしか感じなかったが。
 着地と共に反転し、音だけを頼りにムックルは白い獣を追撃する。唸りを上げる前足が、まだ宙にいる白い獣を貫いた――ように見えた。しかし、刹那の内に白き獣は眼前から陽炎が如く掻き消えていた。白い獣はすでに着地し、逃走に移っていた。
 白昼夢の最中にいる様な感覚。また何かしらの法術が使われたらしい。
 空を切った打突に体勢を崩される。流れた体躯を、後ろ足を踏みしめることで強引に戻し、転がるように後を追った。


 白い獣は蛇行しながら、石でできた櫓の脇を駆けていく。身体と顔から隈取りが消えているのが見えた。
 小回りは利かずとも、一歩で稼ぐ距離はムックルが圧倒的に勝っている。白い獣との距離はぐんぐんと縮まっていく。後ろ足を蹴り上げ、跳びかかる。しかし、事を急いたためか、呼吸が合わずに寸での処で爪は虚空を裂いた。
 だが、ムックルは空振りした両前足でさらに大地を掻き、勢いに乗せて、頭で白い獣の尻を撥ね飛ばした。
 白い獣は毬のように弾け、叢を転がっていく。相手が起き上がる前に、ムックルは突進する。されど、相手が回避行動に移る方が幾許か早い。白い獣は横へと転がり、振り下ろされた前足はその胴に浅く赤い筋を刻むだけに終わる。
 しかし、先ほどと同じ法術を使えば掠らせることもなかったはずだ。その疑問を脇に追いやりながら、ムックルは躍りかかる。

 と、また先程の奇妙な感覚が身体を包み、白い獣の姿はまた掻き消えていた。
 少し離れた場所に転位した獣の顔には、消えていた隈取りがいつの間にか復活している。その尾が奇怪な軌道を描き、ムックルの周囲を突如豪風が包んだ。
 吹き飛ばされまいと四肢でしっかり地面を掴みながら、思わず目を瞑ってしまった。風が収まり眼を開けると、白い獣の姿はどこにもなかった。
 しかし、臭いは残っている。白い獣は北に行ったことを、その残滓は物語っていた。

 地面を嗅ぎながら、ムックルは二つのことに気付いていた。ひとつは、白い獣の法術は隈取りがある間しか使えないらしいこと。そしてもうひとつは、あの獣には殺気というものが全くないということだ。

 外套の獣が逃げるための時間稼ぎの役割だったのだろうが、法術を直接ムックルに使っていればもっと安全に事は済んだはずだ。
 しかし、あの獣は一度たりとムックルに危害を加えようとはしなかった。掠り傷とはいえ、一撃を受けて尚続けているのだから、その意志は相当固いようだ。
 ムックルは一度自分が来た方を振り返り、また顔を北に向けた。
 白い獣の目的や理由など分かるはずもないし、考えるつもりもない。だが、相手にこちらを害するつもりがないのならば、ムックルにとって非常に有利に働く。何しろ、ある程度の危険は度外視してもよいのだ。攻撃のみに専念できる。
 もっとも、相手の気が変わらないことが大前提ではあるが。

 ムックルは臭いを辿りながら、北へと足を進めた。


【C-4/南部/一日目/午前】
【ムックル@うたわれるもの】
【状態】:全身にダメージ(小)、精神的疲労(大)、母への強い思慕、血まみれ、興奮(小)、北方へ移動中
【装備】:鋼鉄の牙@ドラゴンクエスト5
【道具】:なし
【思考】
基本:殺し合いに乗る。
1:臭いを辿り、アマテラスを仕留める。
【備考】
※ムックルの参戦時期はアニメ第5話で、食料庫に盗み食いに入る直前です。
※ツネ次郎に懐きました。缶詰をツネ次郎がくれたものだと勘違いしたため。
※風雲再起に苦手意識を持っています。
※モロから一連の狩りの仕方(気配の殺し方等)を教わっています。
※アマテラスの本当の姿が見えています。



【アマテラス@大神】
【状態】:全身打撲(中・治療済) 、胴に裂傷(小・出血中)、北へ移動中
【装備】:所々に布が巻かれている。
【道具】:なし。
【思考】
基本:打倒キュウビ。絶対に参加者を傷つけるつもりはない。
0:??????
【備考】
※アマテラスの参戦時期は鬼ヶ島突入直前です。そのため、筆しらべの吹雪、迅雷の力は取り戻していません。
※筆しらべの制限に気付いているかもしれません。
※キュウビの目的について、何か勘付いているかもしれません。
※筆しらべ「光明」と「月光」で昼夜を変えることはできないようです。
※筆しらべ「桜花」で花は咲かせられるようです。
※筆しらべは短期間に三回使うと、しばし使えなくなるようです。爆炎などの大技だと、また変わってくるかもしれません。


【E-3/一日目/午前】
【ニャース@ポケットモンスター】
【状態】:健康、疲労(小)、保健所に移動中
【装備】:シルバー・ケープ@魔法少女リリカルなのはシリーズ
【道具】:支給品一式、エルルゥの薬箱@うたわれるもの(1/2ほど消費)、野原ひろしの靴下@クレヨンしんちゃん、麦の入った皮袋@狼と香辛料、アマテラスの支給品一式(食料:ほねっこ)と不明支給品1?3種類(確認済)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
0:アマ公!
1:保健所に向かう
2:C-2付近で死体を探して首輪を手に入れる。
3:大学か研究所で首輪の解析
[備考]
※異世界の存在について、疑わしいと思いつつも認識しました。
※キュウビや他の参加者をポケモンだと考えていますが、疑い始めています。
※アマテラスが、ただの白いオオカミに見えています。
※ピカチュウたちと情報交換しました。
※楽俊の仮説を知りました。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。


※E-3北部にムックルのデイバック、支給品一式、缶詰×10が散らばっています
※ミュウツーの首と、モロの死体が北部に転がっています。その周辺に血の臭いが漂っています。


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063:命ゆくもの ムックル 093:背なの上のぼの
059:距離を超えた遭遇 ニャース 086:雨迷風影
059:距離を超えた遭遇 アマテラス 079:雨がくる風がたつ




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